カテゴリ: 世界の軽量級,世界に挑む日本人

明日9月22日、京都市体育館。WBC世界ジュニアフライ級タイトルマッチがひっそりと行われます。

王者の寺地拳四朗は、これが9度目の防衛戦。18戦全勝10KO。万能型の寺地は階級最強候補の1人、無敗の〝スマイルフェイス・アサシン〟です。

一方、挑戦者の矢吹正道は、15戦12勝11KO3敗。世界挑戦は初めて。

その童顔と愛想の良い物腰から、王者を知らない人はボクサーだとは絶対に思わないでしょう。

一方の矢吹は物静かで強面、こんなのが銭湯の隣で体を洗ってたら緊張で固まってしまいそうです。

29歳という年齢以外に共通点を探すのが難しい2人の対決です。

心が揺さぶられるようなバチバチの打撃戦を期待したいのですが、戦前予想は王者に大きく傾いています。

矢吹の3敗はいずれも強い相手に負けたもので、恥ずかしい黒星ではありません。

ただ、3つの敗北からどれだけの上積みがあるのか?今の矢吹なら負けた3人に勝てたか?となると、考え込んでしまいます。ハートのある強い選手ですが、世界基準でトップクラスの寺地との差は大きいように見えます。
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それにしても地味な世界戦です。地上波では生中継なし。来週月曜日のWOWOWエキサイトマッチで録画放送と、かなり残念な扱いです。

世界的にも評価が高く、試合も面白い寺地ですが人気は今一つ。

コロナ禍でゲート収入が期待出来ない状況で、事実上のノーテレビは厳しい。

試合はカンテレドーガでPPV配信ということですが、強気なのかトチ狂ったのか@2200円という価格はどうなのでしょうか。

PPVが定着している米国では、バカなマニアが70ドル前後の料金を払ってますが、日本にその文化はありません。

その米国のPPVはショウタイムやフォックス、かつてのHBOなどの大手は人気階級(ウェルター級以上)かメキシコの超人気選手のメガファイトしかPPVには乗せません。

ジュニアフライ級では「マイケル・カルバハルvsウンベルト・ゴンザレス」も一部マイナーPPVで売り出されましたが「2200円」という価格は、この階級はもちろん、米国での注目度が一気に下がるジュニアフェザー級以下の超軽量級では史上最高値かもしれません。

しかし、どれだけ売れるのか?

常識的に考えると、1万件(2200万円)は不可能に思えますが…。

こんな無謀?な試み、ぜひ乗ってあげたいところですが、明日は大事なお約束があって見れません。

2200円ケチらずに、生で見れば良かった!と日本中のボクシングファンを歯ぎしりさせるような熱戦、激戦を期待しています。
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中谷潤人、スピードとパワー、テクニック、すべてのマトリクスが世界基準を超えた世界王者です。

立ち上がりこそやや固さが目立ったものの、ジュニアフライか上がりのアンヘル・アコスタにとって長身・万能型のサウスポーは荷が重すぎる相手でした。

2ラウンドから鼻血がひどくなり、2度のドクターチェックの末に4ラウンド32秒で主審が試合をストップ。

フライ級ではパワーですら世界基準が怪しい粗々のプエルトリカン相手では、中谷の凄みを見せつけるまでにはいきませんでした。

倒して試合を終わらせたいところでしたが、これは仕方がない。 
 Punch Stats   
 PUNCHESNAKATANIACOSTA 
 Total landed5740 
 Total thrown195147 
 Percent29%27% 
 Jabs landed81 
 Jabs thrown8337 
 Percent10%3% 
 Power landed4939 
 Power thrown112110 
 Percent44%36% 
 -- Courtesy of CompuBox   

会場のCasino Del Sol、屋外リング、い〜〜雰囲気。気温38度でも湿度が低く、気持ちのいいビールが飲めそうです。 




▶︎セミはガブリエル・フローレスvsルイス・ロペス。

フローレス、何度も指摘されてきた非力で防御に欠陥、それが全部さらけ出された試合でした。

趣味が悪いですが、トップランクの温室ホープが大きくつまずくのはざまあみろです。 




▶︎オスカル・バルデスvsロブソン・コンセイサン
IMG_6061














すっかり夜の帳が降りました。

第1ラウンドは両者に有効打はなかったものの、コンセイサンのこれぞリングジェネラルシップという戦いっぷりで10-9。

続く第2ラウンドも32歳のブラジル人が先に手を出す展開。10-9。バルデスはやりにくそう。 

第3ラウンドは王者が前進、ロープに詰めて右をクリーンヒットしますが、3分間通してみるとコンセイサンの手数をとって10-9。

第4ラウンド、バルデスは流れを変えようと前に出るもブラジル人のジャブに遮られます。10-9。 

第5ラウンド、コンセイサンの動きに余裕。ガードを下げる時間が長くなる。ジャブはもちろんどのパンチも引きが速い。打ち終わりを狙えない。ベルチェルトとは大違い。 10-9。

第6ラウンド、バルデスが強引に距離を潰して打撃戦に。初めて王者が手数で上回る。9-10。ここを取られてたらやばいラウンドを押さえます。

第7ラウンドもバルデスが手を出し続けて前進。両者クリーンヒットはないものの、挑戦者の表情から余裕が消えます。9-10。 

第8ラウンドは、コンセイサンが左ジャブでペースを取りも通そうとしますが、王者の前進は止まらない。両者とも有効打なし。10-10。

第9ラウンド、コンセイサンが減点1。ラウンドを支配したのはそのコンセイサン。10-10。

第10ラウンド、バルデスが疲れの見えたコンセイサンを攻め立てるも決定的な場面は作れない。コンセイサンのジャブはまだ生きてる。9-10で王者。

チャンピオンシップラウンド。コンセイサンの左ジャブが冴える。 10-9。王者は万事休す。倒さないと勝てない。

最終回、時間を使うブラジル人をメキシコ人が無策のまま追う。9-10で王者。 


オフィシャルはユナニマス、115-112*2、117−110でスティル…。まじか?


試合を中継したESPN+は114-113、ボクシングニューズ24は116−112でいすれもコンセイサン。

試合終了時の両者の顔の傷つき具合とスコアカードが絶対的にリンクするわけありませんが…。

第9ラウンドの減点も警告なしのいきなりでした。もちろん、悪質な場合は警告なしも当たり前ですが、流れの中で頭を押さえた行為が一発減点になるとは。

大きな試合にはAサイドとBサイドがあります。

この試合は「Aサイドとは何なのか」を、リングの外とリングの中の両方で教えてくれた素晴らしい教材でした。

バルデス、好きな選手だっただけに今回は試合前のドーピング、さらにこの判定(バルデスのせいではありませんが)、がっかりです。 
 Punch Stats   
 PUNCHESVALDEZCONCEICAO 
 Total landed83141 
 Total thrown390576 
 Percent21%25% 
 Jabs landed1938 
 Jabs thrown181279 
 Percent11%14% 
 Power landed64103 
 Power thrown209297 
 Percent31%35% 
 -- Courtesy of CompuBox  
 
スタッツは試合の実態を現しません。この試合もCompuBoxの数字ほど挑戦者が支配した展開ではありませんでした。

それでも、スタッツ上はフラジル人がジャブもパワーパンチも手数・精度ともに圧倒的に上回っています。

両者の顔面を見てもどちらのパンチが相手を痛めつけたかは明らか。

「スタッツでボロ負け」「試合後の顔面でも完敗」でも余裕の判定勝ち。そういう試合もあると思います。そして、バルデスはそんなタイプのファイターです。

しかし、今日の試合は断じてそうではありません。

バルデスはやりたいことが出来ずに空回り、コンセイサンは作戦通りに戦い抜きました。

KOするしかない、まではいかなくても決定的な場面をいくつか作らなければメキシコのスター選手には勝てません。

ポイント計算なんかして勝てる相手じゃありません。
 
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Friday 10, September 2021
  

Casino Del Sol, Tucson, Arizona
USA ESPN+ 

WBO Fly Title 



2020年11月、王座決定戦でジーメル・マグラモを8回2分10秒KOに屠った中谷潤人の初防衛戦。

対するアンヘル・アコスタはリング誌で8位評価を受けているように、まともな世界ランカー。24戦22勝21KO2敗という、軽量級離れした決定力は要注意です。

アコスタの最初の世界アタックは4年前。16戦全勝16KO無敗のパーフェクトレコードを引っさげ、田中恒成のWBOジュニアフライ級のストラップに挑戦するも完敗。

田中の返上で空位となったWBO王座を拾い、4度目の防衛戦でエルウィン・ソトにまさかの逆転KO負け。打たれ弱いわけではありませんが、勝負弱い印象が濃くなっている30歳です。

現状では、スター候補が次々に倒れる〝プエルトリコ・ドミノ〟の一枚です。

王者はここまで21戦全勝16KO無敗の23歳。リング誌とESPNがフライ級最強に推すWBC王者フリオ・セサール・マルチネス、IBF王者サニー・エドワーズ、WBA王者アルテム・ダラキアンとの団体統一戦をアピールするためにも、危険な挑戦者アコスタを明白に破りたいところです。
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前日計量は中谷は111.4 ポンド、 アコスタはリミット一杯 112ポンドで1発クリア。

ウィリアムヒルのオッズは王者の勝利が1/6(1.67倍)、挑戦者4倍。無敗の日本人が明白に有利と見られています。

完成度の高いボクシングを披露している無敗の中谷と、粗さと脆さが目立つアコスタではオッズも予想も傾くのは仕方がありません。

身長・リーチともに170㎝の中谷に対して、アコスタは身長163㎝/リーチ161㎝。サウスポーの中谷が右リードでアコスタの接近を阻みながら、左の強打を狙う展開か。

アコスタは早い段階で主導権を握りたいところですが、中谷は相当にやりにくいでしょう。

オッズと予想に沿った結果、王者の大差判定勝ちか、終盤ストップに落ち着きそうです。

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メインイベントはWBCジュニアライト級タイトルマッチ。

こちらも王者オスカル・バルデスの初防衛戦。直前のドーピング騒動で興行実施も危ぶまれましたが、さすがプロボクシング、雨天決行です。

バルデスは29戦全勝22KO、挑戦者ロブソン・コンセイサンも16戦全勝8KOの無敗対決。

バルデスはリミット一杯130ポンド。コンセイサンは129.6ポンド。

リオデジャネイロ2016でライト級金メダリストのコンセイサンは、アマチュア時代にバルデスに勝ったこともあり、プロの世界戦でのリマッチが実現しました。 
オッズは王者1/16(1.06倍)、挑戦者7倍とミスマッチのレベルに離れていますが、いろんな意味でコンセイサンにもチャンスがありそうです。
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誰だって大谷翔平のように最高峰の舞台で、投打で大活躍したい。

三冠王とサイ・ヤング賞なんて、あり得ないことですが、それ以上ない、最高の夢です。

野球を始めた〝少年〟が最初に夢見るのは〝そこ〟です。

「どんな夢でも描いてみろ」と言われて、送りバントや守備固めの役回りを夢見る〝少年〟はいません。

最初から競歩を目指す陸上競技選手など、いないのです。

キャリアを積む中で、何かを諦め、季節が深まり、どこかで自分と折り合いをつけて、生き残りの道を見出すのです。
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ボクシングで「どんな夢でも描いてみろ」と言われたなら、ウェルター級かミドル級で五輪金メダルを獲得、プロでも人気階級のスター選手を次々にノックアウトしてヘビー級まで制覇することでしょうか。

世界のボクシングを少しでも知っていたら「フライ級やバンタム級で完全統一王者になる」と夢見る〝少年〟はいません。

もちろん、持って生まれた体のサイズがあります。

生まれた国の歴史や文化があります。

かつて、井上尚弥は「具志堅用高の連続防衛記録を更新する」と大きな目標を掲げました。

また、ラスベガスデビューが決まったときにはMGMグランド・ガーデンアリーナを訪れ「ここでメインを張るのが夢」と話し「そのためにはバンタム級では無理。フェザー級に上がれば少しは景色が変わる」と語りました。

しかし、パンデミックの中でMGMグランドの会議室棟に設られたThe Bubble という、非常にわかりにくい舞台でメインを張ることに対して「まさかバンタム級でも」と前向きに捉えました。

このブログでも何度も書いていますが、自分が乗る船の身の丈にあった、勝手知ったる狭い港湾で絶妙の技術を披露する〝リカルド・ロペス〟と、「そんな笹舟じゃ絶対無理だ」という声を無視して遥かな大洋に乗り出して巨大戦艦を撃ち沈める〝マニー・パッキャオ〟に、優劣を付けることは出来ません。

もちろん、見る者を興奮させるのは後者ですが〝パッキャオ〟は傑出したパフォーマンスを披露し続けた勝手知ったる港湾を持っていません。

パッキャオやフロイド・メイウェザーは狭い港湾に安住することを拒否した、宿無しファイターです。

主戦場としたウェルター級、つまり大海原では、2人とも退屈な判定試合を繰り返すことしか出来ませんでした。

パッキャオが126ポンド・フェザー級、メイウェザーが135ポンド・ライト級にとどまって完全統一王者になっていたなら、歴史に残る絶対王朝が築かれていたかもしれませんし、そうでなかったかもしれません。

それは誰にもわかりません。

いずれにしても、パッキャオとメイウェザーは2人でのべ13階級も制覇しながら、どのクラスでも一度もUndisputed Champion(議論する余地の無い王者=完全統一王者)になれなかった(なろうとしなかった)のは動かぬ事実です。

パックメイがやったのは、広い大洋に乗り出して派手で目立つ獲物を追いかけ、地味な試合を繰り広げただけです。

一方で、派手さはなくても、狭くて浅い港湾でも、そこで出来得る最高に上質なパフォーマンスを追求することこそが、アスリートの正しい姿勢です。

ただ、私がかつての長谷川穂積や西岡利晃、井上尚弥に腐臭を感じるのは、狭くて浅い港湾をさも大海原のように見せかける嘘を重ねるからです。

帝拳は日本が世界に誇る大プロモーターですが、そういう体質だけは好きになれません。

狭くて浅い港湾でも、そこで傑出したパフォーマンスを見せること、たとえ、それが〝少年〟の夢見たものと違う形であっても、何も恥ずかしいことではないというのに…。
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ファイティング原田とエデル・ジョフレ。

輪島功一と柳済斗。

辰吉丈一郎と薬師寺保栄。

畑山隆則と坂本博之。


ライバルたちの決闘、その熱狂が聞こえなくなって長い時間が流れました。

世界の強豪との対戦。そして、同胞対決。

競技者のキャリアに強烈なリズムを刻んでくれるのはライバルの存在なしには考えられません。

もし、原田の戦績にジョフレがいなければ?

辰吉と薬師寺が、あのタイミングで邂逅していなければ?

畑山があのとき、坂本を選ばなければ?

輪島が柳との対戦に熱い血を沸騰させなければ?

モハメド・アリがジョー・フレージャーとジョージ・フォアマンと戦っていなければ?

マニー・パッキャオのキャリアからアントニオ・マルコ・バレラとエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスとの激闘が引き算されたら?

ライバルの存在。それは、運任せ。神様が配剤してくれるのを待つしかありません。

井上尚弥が「強いメキシカンのライバル」をいくら欲しても、そんなのバンタム級にはいないのですから。

モンスターの近未来に然るべきライバルが立ち塞がってくれるでしょうか?

唯一無二を目指す井岡一翔は、ファン・フランシスコ・エストラーダの待つリングを手に入れることが出来るでしょうか?



原田や輪島、辰吉、畑山、アリ、パッキャオは運が良かった…本当にそうだったのでしょうか。

彼らの火を噴くような情熱が、ライバルを呼び込んだ、それどころかライバルの輪郭を形成したとまでいうと、言い過ぎでしょうか。

ライバルの存在。そこには、本当は神様や運など介在していないのかもしれません。
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1980年から2017年まで、リング誌の年間表彰に付随する形で発表されていたBest Fighter Poll。

年間PFPとも呼べるこのBest10に名前を刻んだバンタム級ボクサーを回顧してみます。

バンタム級ではランキングされなかったジェフ・フェネックらは除外。バンタム級を含む複数階級でもランキングされた選手は、バンタム級でのランキングのみを記載。

※猫の目シャッフルされる電子版が登場した2008年以降で、フェルナンド・モンティエル、アブネル・マレス、アンセルモ・モレノや山中慎介らがランキングされましたが、これは電子版の瞬間的なPFPとは異なる、専門家投票(Poll)による年間PFPです。

電子版ではノニト・ドネアは3位が瞬間最高位ですが、あくまでBest Fighter Poll、年間PFPになります。
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【1982年】7位:ジェフ・チャンドラー

【1983年】5位:ジェフ・チャンドラー

【1984年】6位:ジェフ・チャンドラー(シュガー・レイ・レナードとタイ=47得点)

【1992年】6位:オルランド・カニザレス

【1993年】9位:オルランド・カニザレス

【1994年】5位:オルランド・カニザレス

【2004年】10位:ラファエル・マルケス(ディエゴ・コラレスとタイ=11得点)

【2005年】5位:ラファエル・マルケス

【2006年】6位:ラファエル・マルケス

【2005年】5位:ラファエル・マルケス

【2010年】6位:ノニト・ドネア

【2011年】6位:ノニト・ドネア

[参考]【2017年】6位:井上尚弥…ジュニアバンタム級での実績でランクイン


 1980年から37年間で、4人(のべ12人)のバンタム級ボクサーがランクイン。この数字が多いか少ないかは議論が分かれるところでしょう。

現在もBest Fighter Pollが存在していたなら、井上が上位に入るのは確実。バンタム級として2018年から3年連続でランキングされていたはずです。
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日本時間8月15日、カリフォルニア州カーソン。デグニティヘルス・スポーツパーク特設リング。

WBO世界バンタム級タイトルマッチ

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Showtimeで全米に生中継される世界タイトルマッチのはずですが、これほど無視されたカードがいまだかつて存在したでしょうか?

カジノで行われる興行でないので、オッズの立ち上がりが遅いとかいう次元ではありません。


3日前というのに…。



欧米で全く人気のないバンタム級で、フィリピン人とキューバ人がカリフォルニアで戦う…「いかに興味を惹かないカードをマッチアップするか」という競技があれば金メダル間違いなしなイベントです。

シートは定価で50〜200ドル。

井上尚弥も〜300ドルですから、同レベルです。軽量級の世界トップの試合、しかもカシメロvsリゴンドー という絶妙の組み合わせをリングサイド2万円で観戦できるなんて、東京・横浜でやってくれたら絶対購入します。

そして、井上の試合同様に今回もチケットが大量に余っています。

井上は米国ではチープでも、日本ならプラチナチケットですが「カシメロvsリゴンドー」では、地球上のどこでも非常に厳しいカードです。

アンダーカードも「ゲイリー・アントニオ・ラッセルvsエマヌエル・ロドリゲス」「ラウシー・ウォーレンvsダミアン・バスケス」と日本のボクシングファンから見るとなかなか想像力がかき立てられるラインナップ。

後楽園ホールならリングサイド10万円〜B席1万円でボクヲタ500人くらいは集客できそうです。

それでも、テレビはつかないだろうし…間違いなく大赤字です。

商業的には、米国で人気階級のビッグファイトで前座というのが一番なんですが、それも軽量級の存在を〝金魚の糞〟的にしてますます希薄化させることになってしまいます…。


個人的にはカシメロの試合は、最近のファイターの中でも一番偏愛しているので、楽しみにしています。

勝つことよりも、負けないことに軸足を置いたスターが多い中量級やヘビー級よりも、遥かに面白いと思うのです。

それにしても、面白い試合をするファイターには然るべき報酬と注目が与えられて欲しい。

まあ、こういう試合でめっちゃめちゃに面白いとすごく得した気分になりますが、アメリカって馬鹿だなあと残念な気分にも沈んじゃいます。

レオ・サンタクルスやアブネル・マレスよりもずっと面白いのに…。
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日本時間8月15日、カリフォルニア州カーソン。デグニティヘルス・スポーツパーク特設リング。

WBO世界バンタム級タイトルマッチ



欧米で人気のないバンタム級で、フィリピン人とキューバ人がカリフォルニアで戦う。米国や英国で無視され続けるのは慣れっこです。

井上尚弥やカシメロ、リゴンドーらの試合でもなんとか1週間前にはオッズは出揃い、ちょっとは記事も散見できたのに、今回はちょっと厳しい。

日本は五輪で「それどころではない」のかもしれませんが、試合はちゃんと実施されるのか?

ノルディーヌ・ウバーリvsペッチ・ソー・チッパッタナの試合みたいに中止なんてないでしょうね、楽しみにしてんのに。

アンダーカードは「ゲイリー・アントニオ・ラッセルvsエマヌエル・ロドリゲス」「ラウシー・ウォーレンvsダミアン・バスケス」と、なかなかな好カードなんですが。
スクリーンショット 2021-08-09 12.41.19
リゴとカシメロ↑この写真は弱そうです、どっちも。。。


リゴンドーの短いインタビューを見つけたので拙訳。


▶︎カシメロとの対戦について。


東京オリンピックを見て、刺激を受けている。この世界最高峰の大会で2つの金メダルを獲得したことを思い出させてくれた。

自分が史上最高のボクサーの一人であること、そしてまだ自分が優れたアスリートであることを世界に証明したい。

 I am confident that I am going to do that against the most avoided fighter in my weight class. 

バンタム級で最も対戦を避けられている危険なファイターを相手を倒す自信に満ちている。

私もそうだったから、彼の気持ちはよくわかる。彼と同じく、いろんな理由で、それもときにはこっちに原因があるように仕組まれて逃げられたことは何度もある。

誰もが逃げるカシメロは危険なファイターで、あのパワーは侮ることはできない。彼を技術で封じ込めることができるのは私だけ。

 

▶︎ロニー・シールズをトレーナーに迎えて。

シールズとのテキサスでのキャンプは素晴らしい成果をもたらしてくれた。

ロニーは多くの世界チャンピオンを手がけ、プロ仕様の設備が整ったボクシングジムを持っていて、世界王者や最高レベルのファイターが数多く集まっている。

緊張感のある空気が、私の中から新しいものを引き出してくれた。

今は、10歳は若返った気分。


▶︎WBO世界王座決定戦について
 
ノニト・ドネアを完封してWBOタイトルを獲得したことがあるが、今回はハングリーな若いライオンとの対戦。

またフィリピンの強豪から世界タイトルを獲得し、ファンの間で語り継がれるような素晴らしい試合をしたい。


▶︎1年間の休養を経てリングに戻ることについて
 
気分は最高。

私のキャリアで、リングから離れていた時間が心身の充実とリセットに効果的だったから、今回もプラスに働くはず。

私は戦い方もトレーニングも熟知している。

重要なのは回復の仕方を知っていること。体を壊さないように確実に鍛えること。

ジムではシャープな肉体を維持しつつ、オーバートレーニングにならないよう注意している。

A win against Casimero will do wonders for my career.

誰もが避けるカシメロに勝てば、素晴らしいことが起きるかもしれないし、起きないかもしれない。

井上やドネアを釣り上げることができたらいいのだが、ボブ・アラムはカシメロと私を恐れているし、ドネアは私とやってまた目を潰されたくはないだろう。


************

井上自身がカシメロを避けていることはないでしょう。井上が本人の意思も含めて対戦要求を避けたのは、おそらくエマヌエル・ナバレッテからのオファーだけです。

カシメロ戦は、アラムが「井上と同じようにファイトマネーの大幅カットを受け入れろ」 と迫って、交渉が決裂しましたが、井上の報酬が本当にカットされたかどうかは不明です。

井上の報酬はここ数試合、開催地の統括団体からの発表はなく大橋秀行会長の「100万ドル」というキレの良い数字が口にされるだけ。

ただ、トップランクがカシメロを避けているのは、おそらく間違いないでしょう。

ドネア陣営が自作自演でカシメロから逃げたというのは、事実はわかりませんが、かなり信ぴょう性のある話です。

ドーピング問題で話がこじれ、レイチェルへの侮辱で試合をキャンセル。

統括団体が試合を中止にするのではなく、陣営が怒りをぶちまけて試合を反故にする。この世界では非常にレアなケースです。

今回の一件はヤブヘビで「ドネアはドーピングにあれだけ厳しい姿勢を口にするのに、どうしてビクター・コンテと組んでるの?」という疑問が再燃しています。

もちろん、ドネアもレイチェルも何も答えません。
 
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1980年代の世界バンタム級のタイトルはWBAが短命王者がベルトを奪い合う戦国時代、WBCではミゲール〝ハッピー〟ロラとラウル〝ヒバロ〟ペレスが安定政権を築きますが、後世まで評価の高い王者になることは出来ませんでした。

タレントが限定される第3団体IBFでは1984年4月に新垣諭がエルガー・マラガーノと初代王座をかけて争い8ラウンドTKOで戴冠。

新垣はインターハイで玉熊幸人(のちのWBA世界フライ級王者レパード玉熊)を下した俊才でしたが、照準を合わせていたWBAジュニアフライ級は渡嘉敷勝男とルペ・マデラの王座たらい回しをJBCも黙認する不運。

さらに、所属したのがIBFの拠点となる奈良池田ジムという背景も、沖縄の才能の行く手を狭めてしまっていました。

そうです、ジュニアフライ級を主戦場としていた新垣は3階級も上のバンタム級にアタックしたのでした。

マラガーノは年齢不詳、戦績も不詳の謎のフィリピン人でしたが、のちに4連敗中の3勝7敗であることが判明。マラガーノはこの連敗記録を9まで伸ばして引退しています。

新垣には一片の罪もありませんが、プロボクシングの世界は今と同じく腐敗を極めていました。

しかし、どんなに怪しげな団体であろうが、本物のファイターがリングに上がる可能性はいつだってあります。

21歳の新垣が2度目の防衛戦に選んだのは、1歳年下で全く無名のオージー。戦績こそ6戦全勝6KO無敗でしたが、すべての試合を自国で戦い、当然強豪との手合わせはありませんでした。

しかし、勇躍、敵地シドニーに乗り込んだ新垣は9ラウンドでストップされ、タイトルを手放してしまいます。

ちなみに二人のジャッジが挑戦者にフルマークを与えたのに対して、日本人ジャッジは8ラウンドまでを80-80のドローとスコア。シドニーに奈良判定を持ち込んだ、失笑ものの採点でした。

9ラウンドにわたって拳を交えた新垣は〝マリックビルの殺戮者〟が次元の違うファイターであることに気づいていたはずですが、陣営は再戦を選んでしまいます。
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黎明期にもかかわらず、IBFバンタム級は2代目にジェフ・フェネック、4代目にオルランド・カニザレスという、リング誌年間PFP(Best Fighter Poll)の常連にして殿堂入りの118パウンダーを擁する幸運に恵まれたのです。

ビッグネームの存在するフェザー級からジュニアライト級に進出し、あまたの名勝負を残し、100万ドルファイターになったフェネック。

カニザレスは米国では関心の低いバンタム級の王座とはいえ、現在も記録に残る16連続防衛を果たし、メキシコのリカルド・ロペスと並んで「最も過小評価されたボクサー」と呼ばれました。

カニザレスの絶妙のポジショニング、ステップワークは、メディアやマニアには十分評価されていましたが、軽量級ゆえの悲哀、注目度と報酬面で過小評価されたということでした。


カニザレスが、同年代に日本で高額報酬を得ていた辰吉丈一郎や薬師寺保栄と戦っていたら…?

辰吉に屠られたサムエル・デュランに手を焼いたカニザレスは、辰吉の攻撃に怯みあっさり沈められたかもしれません。

あるいは、注目度も報酬も低い苛立ちを、裕福な日本人ファイターに向けて、怒りの拳をぶつけたかもしれません。
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バンタム級最後のLineal Champion、ベルナルド・ピニャンゴは決定していた六車卓也との防衛戦を反故にしてタイトルを返上、ここに正統王者の系譜が断絶してしまいました。

六車は1987年3月、空位のWBAタイトルをアサエル・モランと争い快勝、ファイティング原田以来、史上二人目の世界バンタム級王者の座に就きましたが、初防衛戦で失敗。

六車をヘッドバットで倒した朴讃栄も、やはり初防衛戦でウィルフレド・バスケスの強打に屈して陥落。

そのバスケスは2度目の防衛戦でカオコー・ギャラクシーとの激闘に競り負けます。

カオコーの初防衛戦を失敗に終わらせたのは文成吉でしたが、直接再戦で敗北。

1989年10月、カオコーの第二次政権もまた初防衛戦で、ルイシト・エスピノサに阻まれてしまいます。

六車からルイシトまでわずか2年7ヵ月。この間に6人、延べ7人の短命王者かWBAベルトを慌ただしくリレーしました。

初防衛に成功したのはバスケスだけ、といってもそのバスケスも2度目の防衛に失敗。この間のWBA王者の平均寿命は2.7ヵ月、なんと3ヵ月にも満たない短いスパンで王者が交代した計算です。


一方で、カウンターパートのWBCには評価の高いコロンビア人が君臨していました。

ミゲール〝ハッピー〟ロラです。

1985年8月にダニエル・サラゴサを攻略して王座に就くと、ウィルフレド・バスケスとの初防衛戦は「バスケスの強打を過小評価していた」というダウン応酬の激戦をなんとかモノにしてクリア。

そして、2度目の防衛戦にはバンタム級屈指の強豪エンリケ・サンチェスを迎えます。

「マイク・マッカラムvsジュリアン・ジャクソン」の前座にセットされたこの試合は、コロンビアから移り住んだマイアミ、ロラの第二の故郷で迎える大勝負でした。

戦前予想は25歳の王者がやや有利と見られていました通り、第4ラウンドにダウンシーンを演出したのはコロンビア人の正確無比な右。

この一撃で深刻なダメージを負った28歳のドミニカ人をロラは慎重に料理にかかります。
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第6ラウンド、狙い澄ました右アッパーで顎を跳ね上げられたサンチェスはそのままマットに沈んでゲームセット。

その後も、ロラは防衛のテープを7にまで伸ばしました。
 
そして迎えた8度目の防衛戦の相手は、ラウル〝ヒバロ〟ペレス。

この試合はドン・キングがプロモートしたビッグファイト、ライト級王座統一戦「フリオ・セサール・チャベスvsホセ・ルイス・ラミレス」のセミファイナル。

今も昔も米国で関心が低い軽量級にとって、人気階級のスター選手が登場するイベントのセミこそが最高の舞台です。

ラスベガス・ヒルトンセンターには8000人を超える観客が詰めかけ、大きく有利と見られたロラは「ついにここまで来た」と大きな会場の大観衆に喜びました。

一方のペレスは21歳の若さで41勝28KO1敗1分、キャリアでは円熟27歳の王者の31戦全勝15KO無敗を上回ります。

ペレスはバンタム級の試金石的なパンチャー、ロラが苦戦したバスケスにきっちり勝利を収めるなど、身長180㎝のメキシカンを評価する声もありました。

そして、試合は終盤に挑戦者が支配、第11ラウンドには一方的に王者を打ちまくり、番狂わせを起こします。
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ペレスは、その長身と攻防兼備のスタイルから「パナマ・アル・ブラウンの再来」「サルバドール・サンチェスの後を継ぐメキシカン」と最大級の期待を集めます。

そのペレスも防衛回数を7まで伸ばしますが、圧倒的有利と見られていたグレグ〝ザ・フレア〟リチャードソンの出入りの激しいボクシングに手を焼きまさかの判定負け。

このときの会場がカリフォルニア州イングルウッド、ザ・フォーラム。言わずと知れた「番狂わせの館」です。
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ペレスの陥落で、WBCのバンタム級王座も液状化が進んでしまいます。

そしてすばしっこい〝ザ・フレア〟(ノミ)に挑んだのが辰吉丈一郎でした。

このときの辰吉は人気だけでなく、その評価も後の長谷川穂積や井上尚弥をも凌駕する、それどころかファイティング原田をも上回るほどの熱量で巻き起こっていました。

日本中のボクシングファンが美しくも儚い幻覚、蜃気楼に酔い痴れていたのです。

頑丈なだけで凡庸極まるビクトル・ラバナレスとの2戦で私たちは夢から覚めたと、思いました。

しかし、辰吉丈一郎というファイターの輪郭を、誰もが見誤っていました。

幻覚が消えても、私たちは、まだ夢から覚めてなどいなかったのですが、それはまた別の話。



私たちに夢の続きを見せてくれた辰吉から王座を奪ったウィラポン・ナコンルンプロモーションに至って、WBCの王座はようやく安定しますが、ハッピー・ロラもペレスもウィラポンにも殿堂の壁は高く、世界的にはせいぜいBプラスかB級王者の評価にとどまってしまいます…。
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