カテゴリ: ヘビー級が動くが如くボクシングは動く

井上尚弥の東京ドーム興行を見るまでもなく、ボクシングはローカル色の色濃いスポーツです。

敢えて世界的な注目度となると、やはりヘビー級のメガファイト。

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5月18日、サウジアラビア・リアドのキングダムアリーナで行われるのが、WBC王者タイソン・フューリーと、残るタイトルの全て(Lineal/Ring誌/IBF・IBO・WBA・WBC・WBO)を持つオレクサンデル・ウシクとのUndisputed championshipです。

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270ポンドを超える体重で秤に乗るフューリーと、220ポンドのウシク。その差50ポンド、ヘビー級ならではのハンディキャッチアップマッチです!

ナチュラルのスーパーヘビー級、フューリーと、クルーザー級から上げてきたウシク。

これで、フューリーがただデカいだけの木偶の坊と見られているのならまだしも…。

目も眩む体格差はPFP愛好家やフレーム信者の立場からは「ウシクが勝っては絶対にいけない!!!」という禁断のマッチアップです。

当初のオッズはウシクの4倍からスタートしましたが、フューリーの怪我や何よりもMMAファイターのフランシス・ガヌーに大失態の試合を演じたことで、今現在のウィリアム・ヒルのオッズは両者とも1.91倍。

世界的な人気カードでオッズの変動も激しいものの、当日までにウシク有利になるのではないでしょうか。

「前日の計量は全く同じでしたが、ナバレッテの方が大きく見えませんか?」なんて、他の階級でありがちなコメントとは一切無縁、開始ゴング前、リング中央で主審の注意を聞くために向き合ったフューリーとウシクを見て出てくる言葉は「うわ〜…」しかありません。

楽しみです!
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日本人の体格が飛躍的に逞しくなっているにもかかわらず、プロボクシングの世界ではそれに逆行して貧弱になってしまっている原因は、大きく2点に集約されます。

①中量級におけるジュニア階級のメジャー化と、②ボクシングのマイナー化という二つの流れです。

かつて日本人にとって現実的なクラスであったジュニアウェルター級やジュニアミドル級はオリジナル8から外れたスキマ階級でしたが、いまや欧米の強豪がひしめく人気階級に〝昇格〟。

ジュニアウェルター級とジュニアミドル級は日本人にとって、とても現実的とは言えない難関になってしまいました。

一方で、日本のボクシング人口は減少の一途を辿り、国会議員にまで心配される有様。

野球やサッカーが本物の世界で戦うスポーツとしてステージを上げているのに対して、ボクシングでは欧米の大舞台、つまり人気階級に日本人ボクサーを送り込むことは全く出来ていません。

これはボクシング界が正確な情報を発信していない(大橋秀行の「コロナ禍のラスベガスでファイトマネー100万ドル、このまま防衛回数を重ねたら天文学的数字になる」などはその典型)ことに加えて、人気階級をターゲットに出来る体格の若い才能がボクシングを選ばないという傾向が以前よりも色濃くなっていることです。

子供人口が減少の一途を辿る中で、やるスポーツの多様化も進み、野球やサッカーですら大きな危機感を抱いて取り組んでいます。

若い才能にそのスポーツの魅力を伝えるーーー米国や英国の巨大アリーナやスタジアムで華やかに挙行される世界ヘビー級タイトルマッチは、それに十分だと思うのですが、日本はそこから目を逸らしている、そんなことはないでしょうか?

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今では、ヘビー級など夢のまた夢。ウェルター級を核とした人気階級へのアプローチすらままならない、そんな惨状が続いています。


もちろん重岡銀次朗や中谷潤人、井上尚弥らが繰り広げる軽量級のボクシングは最高に面白いと思います。

些細で機微に富んだNPBには、MLBにない魅力が溢れています。しかし、MLBを識ってそれを叫ぶのと、そうではないのとでは、やはり何かが違う気がします。


さて、私が初めて見た「挑戦」、その主人公である西島洋介山です。



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但馬ミツロがアレクサンドル・ジュルになすすべもなく殴られ、倒され、惨敗してしまいました。

一発喰らってKO負けの方が、まだ希望のカケラが残る結果でしたが、全盛期ですら世界のクルーザー級シーンで辺境にいたかどうかという引退間際の38歳のロートルに弄ばれた挙げ句、病院送りにされたのです。

試合後に呆然と立ちすくんで遠くを見つめていたミツロは、全てを悟ったはずです。

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ぬるい雨に濡れるソメイヨシノの蕾を見ながら、ヘビー級について考える新シリーズです。


世界ヘビー級チャンピオン。


その夢を最初に描いたのは、プロレスラーの力道山でした。

あれから70年。

ボクシングで唯一言い訳の入り込む余地がない無差別級への挑戦は、間歇的に行われてきました。

その一方で、この70年で日本人の体格は劇的に向上しているというのに、ボクシングの世界はどんどん小さくなっているのが現実です。

平成・令和の時代でも西島洋介山、藤本京太郎、そしてミツロがNO-Limit の世界に勇敢に挑戦しましたが、その結果はどんなに能天気な楽観主義者でも希望の破片すら見出すことのできない、絶望するのも馬鹿らしいものでした。

冗談抜きに、彼らは村田諒太にも惨敗するでしょう。

日本ボクシングは、欧米から無視された超軽量級でPFPなどの言い訳の詭弁にまみれるしかないのでしょうか?

それとも、野球における大谷翔平のように力づくでアメリカをねじ伏せるような才能が現れる可能性がほんの少しでもあるのでしょうか?


昭和の力道山から、日本ボクシング界、いや日本スポーツ界で最大の挑戦を振り返りながら、もしかしたら希望の破片のカケラかもしれないモノでも見つけることが出来ないのか…探してゆきます。


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3150FIGHT  vol.8

最も印象に残った試合は、但馬ミツロとアレクサンドル・ジュルのブリッジャー級8回戦でした。

世界大会でのアマチュア実績が皆無のミツロが世界ヘビー級タイトルに挑戦するには、地域タイトルを地道に集めてチャンスを待つしかありません。

重量級の29歳は十分未来が窺える年齢ですが、現時点で何も持っていない29歳となると話は別です。

亀田興毅の〝ムーンショット〟「層が薄く世界的に認知が進んでいないブリッジャー級でまず世界王者になる」というアイディアは秀逸でした。

そして、欧州の実績がそこそこあるロートルを踏み台に一気に224ポンド級のタイトルを奪うという青写真も非常に現実的に見えました。

元WBC地中海クルーザー級王者のジュルは直近10試合で5勝5敗、直近3試合では1勝2敗と欧州レベルでも完全に終わった38歳。

ミツロにとってキャリア最強の相手、普段のヘビー級の試合から約30ポンド(13.6kg)減量という二つのハードルがありましたが、いずれもクリアするのに大きな問題となる高さには見えませんでした。

しかし…。

この4年間で3試合しか戦っていないジュルは、クルーザー(200ポンド)級の全盛期ですら世界レベルにはありませんでした。そんな完全劣化バージョンのジュルにミツロは圧倒され、翻弄された挙句、病院送りにされたのです。



ブリッジャー級でも世界タイトルを獲れるほど強くないとは思っていましたが、まさかここまで弱かったのか…というのが正直な感想です。

これまでの10戦全勝8KOの相手は、やらない方がマシという、実力に何の上積みにもならない毒でしかありませんでした。連続1ラウンドKOなど意味の無い記録に縛られて、むしろ形を崩すだけ、でした。

試合後に担架に乗せられ病院へ急行したミツロ。心配です。

本気で世界を目指していたでしょう。しかし、厳しすぎる現実がこの1戦ではっきりわかりました。もうこれは引退させるべきです。危険すぎます。

4団体17階級時代でも、1000%無理です。パワーもスピードも耐久力も技術も何もかも全てが、世界レベルから悲劇を通り越して喜劇的なまでに引き離されています。

MLB挑戦を諦めない筒香嘉智を応援するのとは、全く違います。MLBの壁に何度跳ね返されても、筒香はいつか笑って日本に帰ってくることができます。

しかし、ボクシングはそうならないかもしれないのです。

そもそも、ジュルに病院送りにされて次、誰とやらせるというのですか?!

ジュルは全盛期でも「世界の壁」ではありません。その手前ですらありません。しかも、ヘビー級ですらありません。






今回も運営面で気になりましたが、亀田興毅ファウンダーのリング上のコメントは不要です。「真剣勝負」と繰り返しながら、日本人に偏った楽屋コメントをリング上で披露するのは違和感しかありません。

あんなもの、世界中どこでもやってません。プロレス以外は。

旧来のボクシング興行とは違った形を模索しているのは理解できますが、ダメなものはやめて良いものを取り入れていかなければなりません。

米国ボクシングの影響を強く受けている私の見方も偏っているのでしょうが、表面上は公明正大な透明なカメラを通したように、進行するべきです。そっちの方が、あからさまな誇大広告よりもはるかにスポーツファンの心を刺激します。
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Friday 8, March 2024
  
Kingdom Arena, Riyadh, Saudi Arabia
◾️commission:British Boxing Board of Control

◾️promoter:Eddie Hearn (Matchroom Boxing)
       Frank Warren (Queensberry Promotions)

◾️matchmaker:Steve Furness, Kevin Rooney Jr
◾️media:DAZN




階級に貴賎がないとするならば、このイベントのメインを飾るのはWBCフェザー級タイトルマッチ(©️レイ・バルガスvsニック・ボール)であり、セミファイナルはWBO暫定ヘビー級タイトルマッチ(©️ヂャン・ヂレイvsジョセフ・パーカー)であるはずです。

まあしかし、違うわけです。

現実には、アンソニー・ジョシュアとフランシス・ガヌーのヘビー級ノンタイトル10回戦がメインです。

「フェザー級、すげぇ!」とか言ってるのは、そこが最重量級である栄養失調な国のボクシングファンだけです。

とはいえ、「フェザー級、すげぇ!」とは絶対言わない英国もまた、おかしな国です。

その話はまた別に進めてるところで…ガヌーです、ガヌー。

前回は、LIneal championとはいえ精神不安定なタイソン・フューリーが相手。本人は「真剣に戦った。ガヌーが強かった」と主張していますが、「キャンプでもほとんど練習してなかった」という話が複数から伝えられていました。

オッズはジョシュアの勝利が2/7(1.43倍)、ガヌーは11/4(3.75倍)。明白にジョシュアが有利です。

常識的に考えると、スピードとパワー、何よりも経験と技術で上回るジョシュアが序盤でガヌーを見切って粉砕するーーーという予想になります。

しかし、また何かが起きたら…今度はもうフロックではありません。



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3150FIGHT vol.8 × PRIZE FIGHTER in NAGOYA

◾️3月31日(日)名古屋国際会議場イベントホール
◾️コミッション:日本ボクシング・コミッション
◾️プロモーター:エディ・ハーン/亀田興毅
◾️メディア:ABEMA PPV


重岡兄弟がストロー級タイトルを賭けて揃い踏み、亀田和毅のレラト・ドラミニへのリベンジマッチ、なかなか興味深い試合がパックされた亀田プロの名古屋初見参。

この興行でキャリア初の世界ランカーと戦う但馬ミツロは、2年前のデビューから10戦全勝10KOとパーフェクトレコードを継続中とはいえ、多くのボクシングファンを「どの視点で応援して良いのか」と悩ませ続けてきました。

そんな29歳ですが、今月31日には応援の視点にある程度の方向性が示されるかもしれません。

対戦相手はアレクサンドル・ジュル、38歳。ボクシングマニアでも初めて聞く名前のルーマニア人です。

但馬の最終目標が世界ヘビー級王者であることは変わりませんが、飛び抜けてグラマラスな階級だけに、何の実績もない無名の日本人では挑戦へのアプローチすら見えてきません。

そこで、ハードルが低いブリッジャー級でストラップを取って、なんとかヘビー級への通行手形にしたいという考えです。ブリッジャー級がヘビー級への橋渡しになるとは思えないのですが…。

なぜかWBCブリッジャー級27位のジュルと、やはりなぜか21位のミツロのなぜだかわからない対決ですが、亀田興毅ファウンダーは「この試合次第。簡単に突破すれば年内にも可能性ありますね」と、世界戦の実現を示唆しました。

ミツロは直近の試合で252ポンド3/4(114.6kg)でリングに上がったのがキャリア最軽量。ブリッジャー級リミット224ポンド(101.6kg)まで約13kgも減量しなければなりませんが、軽量級選手の乾いた雑巾から一滴の水を絞り出すような減量とは違います。

減量は高いハードルにならないでしょう。



興毅ファウンダーはWBCブリッジャー級王者ルカシュ・ロザンスキーとすでに接触、31日にミツロが綺麗に勝利すると年内にタイトルマッチを挙行する計画です。

38歳のロザンスキーは15戦全勝14KOの戦績こそ立派ですが、その全ての試合をポーランドで行い、昨年4月22日にアレン・バビッチを初回KOしてWBCブリッジャー級王者に就きました。

どんなに贔屓目に見ても世界タイトルを争う技術は持ち合わせていません。

ミツロもこんなのとやるなら、村田諒太か藤本京太郎と練習した方がいいかも…負けそうだけど。

「応援する視点が見えてくる」なんて書いちゃいましたが、「スーパーミドル、ライトヘビー、クルーザーを飛び越えて日本人最重量級王者誕生!」なんて阿鼻叫喚な事態になると、ますますどう応援して良いのか困り果てた選手になりそうです。

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3〜4ポンドで細切れされる軽量級では「階級の壁」という言葉が好んで使われますが、前日計量での体重はほとんど変わりません。

しかし、ヘビー級では前日計量時点で10ポンド以上の体重差があるのは当たり前、30ポンド以上のケースも珍しくありません。

「PFPがー!」「階級の壁がー!」「フレームがー!」と騒ぎ立てる減量階級と、ヘビー級は何が違うのでしょうか?

極言すると、ヘビー級は「より強い相手を求めて最強の自分を追求する」のに対して、過酷な減量は「より弱い相手を求めて自分も弱体化する」ということです。

過酷な減量のダメージから計量後に自力で上着も着れなかったジェイミー・マクドネルのような光景は、ヘビー級で見ることはできません。

そのマクドネルを破壊した井上尚弥の計量時の特徴はこけた頬ととがった顎ですが、そんなやつれたヘビー級の選手もいません。

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オレクサンデル・ウシクとタイソン・フューリーが同じ体重で戦うのなら、小さなウシクの短いリーチは、ドネアを弄んだフランプトンのようにクロスレンジで強力なアドバンテージを発揮します。また、相打ち狙いも戦略のオプションの一つです。

しかし、50ポンド以上の体重差があると、小さな体のアドバンテージは減退、相打ち狙いなど論外です。



井上やマクドネルのようなヘビー級で戦うことが不可能なサイズのファイターが、その他16の減量階級で戦うしかないのは当然で、そこに過酷な減量が伴うのも理解できます。

そして、減量階級でも素晴らしいファイターが素晴らしい試合を繰り広げ、私たちを楽しませてきました。

最近ならマニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーが非ヘビー級の醍醐味を堪能させてくれました。…しかし。ウェルター級時代の彼らは過酷な減量とは無縁に見えますが、それは大間違いです。

パッキャオやメイウェザーは対戦相手にキャッチウェイト、つまり過酷な減量を突きつけ、彼らを弱体化することも珍しくありませんでした。

ヘビー級では、そんな小細工はありえません。

ヘビー級が特別な階級(無差別級を「階級」と呼ぶのは間違っているのかもしれません)であることは誰もが認めるしかないでしょう。


そのヘビー級で圧倒的なオイルマネーによってUndisputed championが来月、誕生します。

そして、その防衛戦でも実にユニークなファイターが待ち構えています。



ヘビー級が動くが如くボクシングは動く。

それは昔も今も変わりません。


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山田  2024/01/10 16:10


実際に自分より計量の時点で重い相手に勝つウシクなんてPFPランキングに入れてはいけません!
「もしも、同じ体重だったら」がPFPの大前提なんですから!
ウシクはPFPをバカにしすぎですよ!
元記事: PFPトップはバドとモンスターの一騎打ち。 (編集)/IPアドレス:60.105.32.45



・・・ウシク、PFPが「弱者の言い訳」であることをリングの上で証明していますね。

それにしても、ヘビー級は神秘的です。
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ウシクが日本人なら…どれほどのスーパースターになっていたでしょうか?


階級の壁を破壊した代表はオリジナル8の時代に3階級制覇、4階級目にも手をかけたヘンリー・アームストロングと、4団体17階級時代に8階級制覇を果たしたマニー・パッキャオの2人でしょう。

アームストロングは126ポンドのフェザー級を手始めに、147ポンドのウェルター級まで21ポンドを蹂躙。

パックマンは112ポンドのフライ級から154ポンドまでの42ポンドでストラップを集めました。

とはいえ、アームストロングがウェルター級王者バーニー・ロスに挑んだときは133ポンド、ロス(142ポンド)よりもわずか9ポンド軽いだけ。

パッキャオに至っては、アントニオ・マルガリートと空位のWBCミドル級を争ったとき、ウェルター級リミットも下回る144ポンド、マルガリートはキャッチウエイトの151ポンド、その差はたったの7ポンドでした。

3ポンド、4ポンド刻みで細分化された軽量級なら2〜3階級がすっぽり入る体重差ですが、ヘビー級の倒錯と比べるとなんとも瑣末な話です。



この2人を世界ヘビー級王者と認めるかどうかは別にして、デビッド・ヘイ(217ポンド)はニコライ・ワルーエフ(316ポンド)を相手に、なんと99ポンドもの体重差を跳ね返し、WBAタイトルを獲得しました。

オレクサンデル・ウシクもまた、アンソニー・ジョシュアとの再戦で221.5ポンド、ジョシュアの244.5ポンドと比べると20ポンドも軽かったのです。

ウシクが最初にタイトルを獲ったクルーザー級(200ポンド)からは約45ポンド、ストロー級(105ポンド)とジュニアミドル級(154ポンド)の差です。

来月17日に完全統一戦を戦うタイソン・フューリーは280ポンドに迫る重量で仕上げてくることもあり、その差は約60ポンド、ストロー級(105ポンド)とスーパーミドル級(168ポンド)にあたります。クルーザー級起点なら80ポンドです。

ウシクの階級制覇数は2に過ぎませんが、105ポンドのストロー級ボクサーが14階級上のライトヘビー級を大きく上回る185ポンドの巨人と戦うようなものです。

200ポンド起点のウシクを、105ポンドに例えて体重差だけをそのままで考えるのは正確な判断とはいえませんが、それを差し引いても、1ポンドや2ポンドでギャアギャア騒ぐ世界から見上げるヘビー級が全くの異世界であるのはお分かりいただけるでしょう。

ウシクを2階級制覇とするのは、人間の幻覚に過ぎません。

強いやつが、強いのです。

PFPがヘビー級人気の陰で目立たないシュガー・レイ・ロビンソンに光を当てるために持ち出された詭弁、弱者の言い訳であることに立ち返ると、バウンド・フォー・パウンド(体重同一時)という弱者の詭弁から最も遠く離れて、体重非同一時で戦うヘビー級の小さな巨人たちこそが史上最高のファイターなのかもしれません。

弱者の詭弁を嘲笑う小さな巨人たちの系譜です。


①ボブ・フィッツモンズ

ミドル級の世界王者がヘビー級を制した史上唯一のサンプル。

BoxRecなどでは身長・リーチともに182㎝とされていますが、もっと小さかったという説も。

ミドル級〜ライトヘビー級の体重でヘビー級を侵略した怪物。



②ジャック・デンプシー

身長、リーチともに185㎝、体重は190ポンドあるかないかの軽量、何もかも全てが伝説。

ローリング・トウェンティー。ベーブ・ルースはもちろん、大統領よりも有名で人気のあったスーパースター。



③ロッキー・マルシアノ

身長179㎝/リーチ173㎝、190ポンドを割り込むクルーザー級(200ポンド)にも満たない小さな体でヘビー級の世界戦を7戦全勝6KO。

マルシアノの49戦全勝43KOのパーフェクトレコードを、フロイド・メイウェザーが更新したとは誰も考えていません。



④フロイド・パターソン

1952年ヘルシンキ五輪のミドル級金メダリスト。

「ヘビー級王者には返り咲くことが出来ない」というジンクスを打ち破った伝説。

スポーツ・イラストレイテッド誌のスポーツマン・オブ・ザ・イヤーに選出された事実からは、当時のボクシングヘビー級が堂々のメジャースポーツであったことを窺わせてくれます。



⑤レオン・スピンクス

モントリオール五輪で弟マイケル(ミドル級)と共にライトヘビー級金メダリストに輝く。

プロ9戦目で世界王者。軽量級並みのスピード戴冠でした。

さて、このレオンの記録をフランシス・ガヌーが更新できるのか?



⑥マイケル・スピンクス

モントリオール五輪のミドル級金メダリスト。

プロでは自力でライトヘビー級のUndisputed Champion、完全統一王者に。

「ライトヘビー級王者はヘビー級王者になれない」というジンクスを破ったレコードメーカー。

最重量はマイク・タイソン戦の212ポンド¼でしたが、残るヘビー級の世界戦3試合は199ポンド¾(ラリー・ホームズ初戦)、205ポンド(ホームズ第2戦)、201ポンド(ステファン・タングスタッド戦)。



⑦マイク・タイソン

WBC王者トレバー・バービックを宇宙遊泳させて初戴冠したときのウェイトが221ポンド¼と、全盛期は220ポンド前後でリングに上がったアイアン・マイクが自分より重い相手と戦った世界戦は9試合、15ポンド以上の体重差があったのはトニー・タッブスとレノックス・ルイスだけ。

同時代のヘビー級と比べて重く、ナチュラルなヘビー級のタイソンをベスト10に数えるのは違和感がありますが、タイソン信者の心の拠り所をリスペクトして。



⑧イベンダー・ホリフィールド

タイソンよりも軽量ながら自分よりも軽い相手との世界戦はゼロ。レノックス・ルイスやジョージ・フォアマン、ニコライ・ワルーエフらに勇敢に立ち向かってゆきました。

史上唯一のクルーザー級とヘビー級のUndisputed 2階級制覇。



⑨マイケル・モーラー

「サウスポーはヘビー級王者になれない」というジンクスを初めて破った、元WBOライトヘビー級王者。

175ポンドのライトヘビー級から、220ポンド前後のヘビー級に成長した身長188㎝/リーチ198㎝の〝Double M〟。

歴史的にはジョージ・フォアマンの奇跡を演出してしまった脇役か。



⑩オレクサンデル・ウシク

アマチュア時代はヘビー級を主戦場にした身長190㎝、リーチ198㎝の体躯はモハメド・アリ(191/198)とほとんど変わらず、計量時の体重もよく似ています。

しかし、それぞれの時代でアリを小さなヘビー級、ウシクを大きなヘビー級と呼ぶ人はいません。

大巨人の時代に戦うウシクこそが、史上最高のファイターなのかもしれません。


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明治維新を進めた日本が脱亜入欧を目指したのは、国家として生き残るためという大命題があったからでしたが、そこにもう一つ、欧米への単純な憧れがあったことも否定出来ません。

サウジアラビアやアラブ首長国連邦などには「国家としての生き残り」という喫緊のミッションはないものの、欧米に向けての〝国威発揚〟という承認欲求を抱えているように見えます。

文字通り、〝カネ(石油)なら地中からいくらでも湧いてくる〟彼らの承認欲求を最も満たしてくれるのは五輪招致ですが、五輪を開催するにはアラビア半島は暑すぎます。

それでも五輪に次ぐ欧米の視界に真正面に映るメガイベント、サッカーW杯はカタールが2022年に開催、サウジも2034年の招致に成功しました。

かつて、ザイールのモブツ大統領やフィリピンのマルコス大統領らが国威発揚と欧米への承認欲求から、モハメド・アリのメガファイトを自国に招致した構図と同じです。

彼らが承認欲求を満たす究極である五輪、キンシャサ五輪や、マニラ五輪を開催したかったのは間違いありません。


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これは、イエメン王朝などの湾岸諸国がナジーム・ハメドの米国進出を巨額のオイルマネーで後押ししたこととは、少し色合いが異なります。

ハメドは、西岡利晃や井上尚弥をラスベガスの舞台に送り込んだケースの超拡張版で、国威発揚や欧米への承認欲求よりも「俺たちのヒーローをバックアップする」のが目的でした。

一方で、今回のヘビー級ウォーズは、サウジアラビア・リディアを舞台にボクシング界で最も注目度の高いヘビー級のトップ選手、つまりは外国人選手を招聘して世界のボクシングメディアとファンの興味・関心を焚きつけるのが目的。

サウジやザイール、キンシャサと、ハメドとの共通点があるとしたら「採算度外視、ビジネスではない」ということです。

そりゃ、MGMグループが「彼らと招致合戦はしない」と白旗を揚げるのも無理はありません。



ハメド型の援助メガファイトから国威発揚に利用されたメガファイトまで、ビジネスを度外視したメガファイトには「独裁者」の別の意図が込められていました。

サウジの〝国威発揚〟は、かつてのモブツ大統領やマルコス大統領とは少しだけ色合いが違います。

サウジの国民は指導者に大きいな不満を募らせているわけではないのです。

それでは、なぜ?


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現在、商業的に最も大きな成功を収めるであろうカードは「このまま両者が負けてキャリアにキズがつかない」ことを前提にして、Forbes Fighterのタイソン・フューリーvsアンソニー・ジョシュア でしょう。

一応、まだ無敗とはいえリングの中でも外でも不安定なジプシーキングは、ユニークなキャラクターもあってまだまだ商品価値はあるものの、MMAファイターのフランシス・ガヌーとボクシングルールで実質敗北の拙戦を演じて株を下げました。




また、AJもアンディ・ルイスJr.とオレクサンデル・ウシクに大番狂せで敗れ、保持していたLineal Titleと4つのベルト(WBA /IBF /WBO /IBO)を失いました。そして、ウシクにはダイレクトリマッチでも敗北。

フューリーとジョシュアは、最短で1試合を挟んで激突すると見られています。

WBC王者フューリーは、ジョシュアから5つのタイトルを奪ったウシクと2月17日に完全統一戦を、ジョシュアはフューリーを追い詰めたフランシス・ガヌーと3月7日に、共に非常に危険なリングに上がります。

オッズはフューリー8/11(1.73倍)、ウシク6/5(2.2倍)。ジョシュア1/4(1.25倍)、ガヌー11/4(3.75倍)。2人ともにトップドッグですが、フューリーがウシクに翻弄され、ジョシュアがガヌー凶拳に倒されても大きな驚きはないでしょう。

デオンティ・ワイルダーは、3連戦で完敗したフューリーが勝ち上がってこなければ、ジョシュアやガヌーと興味深いマッチメイクになるかもしれませんが、次戦はフューリーvsガヌーのアンダーカードで最強のダークホース、ヂャン・ヂレイと激突します。

フューリーと同じ270ポンドを超える北京2008の銀メダリスト相手に、実質ブリッジャー級のブロンズ・ボンバーはアンダードッグ、40歳の中国人がヘビー級ウォーズの最終勝者となると…ヂャンには失礼ですが、世界のヘビー級熱はクリチコ兄弟の治世よりも冷え込むことになりそうです。

このヘビー級大戦争の台風の目が、中国人の〝Big Bang〟ヂャンと、カメルーン人の〝The Predator〟ガヌーであることは間違いありません。

しかし、40歳の中国人と37歳のカメルーン人は招かれざる客。つまり、惨敗すると大きなチャンスから遠ざけられてしまいます。

ガヌーが互角以上に戦ったフューリーは、まともなコンディションではなかったと言われています。

もちろん、戦前は「絶好調のガヌーと、絶不調のフューリーが激突しても勝負にならない」と見られていたのですから、The Predatorが一定の実力を持っているのは明らかです。

もし、ジョシュアにも勝つようなことになると「WBCだけでなく他の3団体もランキングに入れることになる」(ESPN)。そうなるとプロ3戦目で世界タイトル、それもUndisputed Heavy weight championになる可能性も十分です。

その一方で、身体能力の高いジョシュアの攻撃に序盤でノックアウトされてしまうと、商品価値は暴落。WBCのランクからも追放されるのは間違いありません。

ビッグバンにしてもワイルダーの一撃に轟沈すると世界戦線から大きく後退、次のチャンスはさらに年齢を重ねて大きく衰えたタイミングまでズラされるでしょう。

ただ、この2人、しぶとそうです…。
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