3150FIGHT  vol.8

最も印象に残った試合は、但馬ミツロとアレクサンドル・ジュルのブリッジャー級8回戦でした。

世界大会でのアマチュア実績が皆無のミツロが世界ヘビー級タイトルに挑戦するには、地域タイトルを地道に集めてチャンスを待つしかありません。

重量級の29歳は十分未来が窺える年齢ですが、現時点で何も持っていない29歳となると話は別です。

亀田興毅の〝ムーンショット〟「層が薄く世界的に認知が進んでいないブリッジャー級でまず世界王者になる」というアイディアは秀逸でした。

そして、欧州の実績がそこそこあるロートルを踏み台に一気に224ポンド級のタイトルを奪うという青写真も非常に現実的に見えました。

元WBC地中海クルーザー級王者のジュルは直近10試合で5勝5敗、直近3試合では1勝2敗と欧州レベルでも完全に終わった38歳。

ミツロにとってキャリア最強の相手、普段のヘビー級の試合から約30ポンド(13.6kg)減量という二つのハードルがありましたが、いずれもクリアするのに大きな問題となる高さには見えませんでした。

しかし…。

この4年間で3試合しか戦っていないジュルは、クルーザー(200ポンド)級の全盛期ですら世界レベルにはありませんでした。そんな完全劣化バージョンのジュルにミツロは圧倒され、翻弄された挙句、病院送りにされたのです。



ブリッジャー級でも世界タイトルを獲れるほど強くないとは思っていましたが、まさかここまで弱かったのか…というのが正直な感想です。

これまでの10戦全勝8KOの相手は、やらない方がマシという、実力に何の上積みにもならない毒でしかありませんでした。連続1ラウンドKOなど意味の無い記録に縛られて、むしろ形を崩すだけ、でした。

試合後に担架に乗せられ病院へ急行したミツロ。心配です。

本気で世界を目指していたでしょう。しかし、厳しすぎる現実がこの1戦ではっきりわかりました。もうこれは引退させるべきです。危険すぎます。

4団体17階級時代でも、1000%無理です。パワーもスピードも耐久力も技術も何もかも全てが、世界レベルから悲劇を通り越して喜劇的なまでに引き離されています。

MLB挑戦を諦めない筒香嘉智を応援するのとは、全く違います。MLBの壁に何度跳ね返されても、筒香はいつか笑って日本に帰ってくることができます。

しかし、ボクシングはそうならないかもしれないのです。

そもそも、ジュルに病院送りにされて次、誰とやらせるというのですか?!

ジュルは全盛期でも「世界の壁」ではありません。その手前ですらありません。しかも、ヘビー級ですらありません。






今回も運営面で気になりましたが、亀田興毅ファウンダーのリング上のコメントは不要です。「真剣勝負」と繰り返しながら、日本人に偏った楽屋コメントをリング上で披露するのは違和感しかありません。

あんなもの、世界中どこでもやってません。プロレス以外は。

旧来のボクシング興行とは違った形を模索しているのは理解できますが、ダメなものはやめて良いものを取り入れていかなければなりません。

米国ボクシングの影響を強く受けている私の見方も偏っているのでしょうが、表面上は公明正大な透明なカメラを通したように、進行するべきです。そっちの方が、あからさまな誇大広告よりもはるかにスポーツファンの心を刺激します。