カテゴリ: トレーナー/プロモーター/舞台裏の主役たち

ハンス・オプト、エディ・ジョーンズ、トム・ホーバス。

サッカー、ラグビー、バスケ。団体球技の夜明けを手繰り寄せたのが外国人監督であったことは単なる偶然ではなかったのかもしれません。

彼らは、選手との対話を完全に閉ざすことはありませんでした。

「こんな練習をしたら死ぬ」と拒否反応を示した選手に「練習で死んだ奴はいない」と恐るべき「量」を押し付けたジョーンズの同点狙いの指示を潔しとせず、スクラムを選択した2015年W杯の南アフリカ戦。

自分の指示に従わなかった選手たちを見るジョーンズの目は、どこか優しげですらありました。

外国人監督ではありませんが、栗山英樹はもちろん、代表チームのレベルが跳ね上がったサッカーで監督に就いた森保一もまた選手に非常に近い監督です。

代表選手から見ると、特に栗山の選手時代は特別なものではなかったということが言えます。

選手が監督をリスペクトしないというリスクは孕みますが、選手と監督の意見交換がスムースになるという大きなメリットも生まれやすくなります。

一方で、王貞治やジーコになると、気軽に反対意見は言いにくいでしょう。それでも、選手はもちろん、対戦相手からのリスペクトは絶大。

国際試合で相手チームの首脳陣がジーコに礼を尽くして挨拶に来る(つまりジーコから挨拶に行くことはほとんどない)光景は、まだ自信が固まっていないチームにとって心強かったはずです。

一方で、長嶋茂雄のような圧倒的な存在感がある象徴天皇的な監督像も、成熟し切ったチームではありでしょう。

さらに、采配も技術論も高い次元で結晶した落合博満のような監督も、もちろんありです。




高校生でもラプソードを利用して練習する今の時代では、コーチの細かい技術指導的役割は減り、選手が力を発揮しやすい環境を作り上げるモチベーターとしての仕事範囲が増えているように思えます。

それでも、まだ自分の成功体験を押し付ける監督、指導者も少なくありません。

例えば、阪神時代の藤浪晋太郎、彼の制球難を強制するために「サイドスロー転向」なんて選択を強要していたら…世界の宝をドブに捨てる、古代ギリシャ時代の貴重な金貨を溶かす作業だったでしょう。日本だと、それ、やりかねません。


もちろん、人に教える、何かを伝えるのは「自分の成功体験」を還元させる作業です。そのまま押し付けたら、とんでも無いことになるのは言うまでもありません。

三冠王・落合を作り上げた礎は、野球が大好きなのに先輩後輩の理不尽な関係などに嫌気がさして鬱々とした思いでプロボウラーを目指した日々でした。

大好きな野球を思う存分出来る、そうなったときの喜び、鬱積されたエネルギーの爆発はどれほど凄まじいものだっったのか想像もつきません。

しかし、彼の成功体験で還元して良いのは「野球を好きになってとことん追求すること」だけです。それ以外の人生の回り道はもちろん、神主打法も押し付けたり、選手も真似してはいけません。




…また、また正解のないお話が始まりました。

理想の監督像とは?

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清潔なタオルとワセリン、水、エンスウェル、カットマンの道具箱に入っているのはそれだけ。道具箱といっても、それは100均で売ってるようなバケツです。

それにも関わらず、彼らの技術に大きな差が生じてしまうのは、なぜでしょうか?

リング誌が「The Mysterious Art(神秘の芸術)」と表現したカットマンの職人芸。

優れたカットマンの顔も持つルディ・エルナンデスは「There are no real secret (秘密なんて何もない)」と笑い飛ばします。

I guess it's more complicated to describe it than to just do it. (ただし、やってることは至極簡単なんだけど、それを誰かに伝えたり教えるのはかなり難しい)。 

ルディがそう言う時点で、この仕事が「至極簡単」 なわけがないと、ど素人でもはっきりわかります。

「タオルとワセリン、水、エンスウェルの四つの道具を使うが、タオルにはガーゼやさまざまな形態のものが含まれ、水は液体と固体(氷嚢)、もしかしたらその中間的なものまで使い分ける」。

優れたカットマンは、この四つの道具を間違いのない順序と、使い方でファイターの血と汗と涙を拭き取ってやるのです。

Maybe not the last. There's no crying in boxing.

ああ、最後の「涙」は取り消します。リングの中で流れるのは血と汗だけ。そこでは、涙なんて流している余裕などあるわけがないのですから。

トレーナーが兼ねることもあるカットマンですが、ほとんど専業で有名なカットマンももちろん存在します。

ジェイコブ〝Stich〟デュランはボクシング、MMAの世界で30年以上もカットマンの世界で最も高い評価を得ている一人です。

昨年大晦日に議論を呼ぶ判定になった「井岡一翔vsジョシュア・フランコ」のジュニアバンタム級団体統一戦、バッティングを警戒した井岡陣営が呼び寄せたのが旧知の〝Stich〟デュランでした。

https://fushiananome.superknova.org/archives/23695007.html

https://fushiananome.superknova.org/archives/10573738.html

〝Stich〟デュランが特徴的なのは海藻から取った繊維をコーティングした特殊なガーゼを使うこと。

これは通常のガーゼよりもはるかに柔らかく「素早く血を吸収し、内出血や凝固するのを防ぐ。カサブタになる前の状態の血の塊が一番神経を使う。全て取り除くと血が噴き出すのだから」。

この特殊なガーゼは他のカットマンに言わせると「柔らかすぎて力加減がわからなくなるから、使えない」という代物。誰でも使いこなせるわけではありません。



また、〝Stich〟デュランはもちろん、ほとんど全てのカットマンの必需品が「エンスウェル」です。

氷水で十分に冷やしたエンスウェルは、腫れた〝患部〟に直接当てて使います。

ボクシングをはじめ、MMAなど他の格闘技でもお馴染みのエンスウェルですが、その歴史、原型は意外と古く、20世紀初頭には、冷やした50セント硬貨やツナ缶などで氷嚢よりも効率的に腫れを散らし、内出血を抑えていたと伝えられています。

しかし、それは全く一般的でなく、ほんの一部のトレーナーが実験的に使っていただけでした。


では、いつを境にエンスウェルは爆発的に広まったのか?いつから、ボクシングファンなら誰でも知っているカットマンのツールになったのか?

この種の話では極めて珍しい事象ですが〝そのとき〟は「いつ」「どこで」「何があって」世界中に知られるようになったのかが、ハッキリ分かっているのです。



1981年9月16日、ネバダ州ラスベガス。シーザースパレス特設リングで行われたメガファイト。

エンスウェルがデビューしたのは、世界中が注目していた、この試合の第5ラウンド終了時のことでした。

そうです。ウェルター級のUndisputed championship、完全統一戦。WBC王者シュガー・レイ・レナードとWBA王者トーマス・ハーンズとの、今なお「史上最高試合」と語り継がれている、あの名勝負です。


レナードの参謀、アンジェロ・ダンディは友人で熱狂的なボクシングファンだったマイケル・サビア医師から「これがエンスウェルだ」(つまりサビアが名付け親)と、数ヶ月前に紹介されていました。

「氷水か氷嚢の中で十分に冷やして使うんだ」と薦めるサビアに、ダンディは「面白い!」と歓迎しましたが「打たれないし腫れにくいレナードには必要ないな」とも語っていました。

稀代の名参謀が、ハーンズ戦で氷袋の間にお守り代りにエンスウェルを挟んでいたのを思い出したのは、第5ラウンド終了時にコーナーに戻ったレナードの左瞼が大きく腫れているのを見たときでした。

「このまま終盤までもつれると、レナードの左目は完全にシャッターを下ろしてしまう」。

史上最高の名勝負、そのラウンドインタバルに登場した銀色の金属片に世界中のボクシング関係者とメディア、ファンがザワつきます。

「ダンディが持っている、あの金属は何だ?!」

もちろん、それはレナードも同じことでしたが、見たこともない金属片を〝患部〟に押し付けられても「これはなんだ!」と拒みませんでした。

ダンディが「これは知り合いの医師から紹介された腫れどめ金具だ」と教えたのは、エンスウェルの処方を終えた、第6ラウンドのゴングが鳴る直前のことでした。

リングの中ではあれほど狡猾で疑い深いシュガー・レイ・レナードが、コーナーではダンディに全幅の信頼を寄せていたのです。

カットマンの一番大事な仕事とは、そういうことなのです。

そのあと、8度のインタバル全てで、ダンディはエンスウェルを使いました。

あそこで、レナードが「そんな見たこともない小さな金属を当てないで、いつものように氷嚢だけで冷やしてくれ!」と拒否していたら、腫れがもっと酷くなって、終盤には左目の視界が完全に奪われていたでしょう。

あるいは、ダンディを少しでも疑う気持ちが芽生えて、レナードの集中力が分散していたら、あの感動的なグランドフィナーレは訪れることなく、歴史が変わっていたかもしれません。

そして、もし、あの試合でレナードが目を腫らさなければ、エンスウェルは世界にお披露目される大きな機会を失っていたことになります。

あるいは、ダンディがもっと腫れやすい別の無名選手に先に使っていたら、あれほど大きな注目を集めなかったはずです。

いずれにしても、あの日あのとき、あの試合、あの展開でなければ、エンスウェルが世界に広く知られるのが大幅に遅れていたのは、間違いありません。


今ではその呼び名も形状もさまざまなバリエーションを持つようになったエンスウェル。小さなアイロンのようにハンドル付きのものが主流になり、より冷温をより長く内包できる構造に進化しています。

そして、何よりも、優秀な職人カットマンという神秘的な世界に、画期的な技術革新をもたらし、レナードのように腫れを抑えることで大きなチャンスをものにする、数えきれないファイターを生み出してきました。

もちろん、このエンスウェルですら未熟なカットマンが使い方を誤ると、傷口を広げたり、内出血を酷くする〝凶器〟に早変わりするのですが…。



…エンスウェル話で脱線気味になりましたが、カットマンのお話は、まだまだ続きます。 
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バンデージ巻き(ハンド・ラッパー)にカットマン、トレーナーが兼ねることもあるリングサイドの職人たち。

熟練の技術はもちろん、彼らに求められる絶対条件はファイターとの信頼関係です。

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一番大切な二つの拳にバンデージを幾重にも巻く繊細な作業,吹き出した血が目に入り視界が塞がれる、いつドクターチェックが入るかわからない不安…。

もし、違和感を覚えるようなバンデージや、止血の不安が解消されなければファイターが対戦相手に集中することは不可能です。

「焦っているファイターと一緒になって、カットマンまでジタバタしては絶対にいけない」(ルディ・エルナンデス)。

「ファイターを安心させてやることだ。少なくとも次の3分間は大丈夫だと、ゆっくりと説き伏せるように止血してやるんだ。といってもインタバルは60秒しかない、とにかく無駄を削ぎ落として何をするのか、何を話すのかを研ぎ澄まさなければならない」。


英国の重鎮ケリー・ケイエスは語ります。

「カットマンがミスを犯せば、試合を落とす。一つの敗北が優秀なボクサーのキャリアを崩壊させる可能性もあるのがボクシングだ」と自戒します。

「ファイターという生き物は、表面上はどんなに冷静を装っていても興奮状態でコーナーに戻ってくる。もし彼がカットしていたら、さらに興奮してパニックになっているのが普通だ。『傷の深さは?長さは?』『止まるのか?酷くなるのか?』『次のラウンドでスパートをかけるべきか?』『出血が酷くなってもタオルを投げないと約束してくれ』…インタバルの60秒で答えられるわけもないことを聞きたくて彼の頭はパンクしているのだ」。

「それは良くないことだ。選手は目の前の相手だけに集中すべきで、自分の傷の状態を気にしてはいけない」。

「たった60秒足らずで、出来れば試合終了まで、最低でも次の3分間は出血が酷くならないように処置しなければならない。傷の状態はもちろん、選手と相手のスタイル、その日の試合展開によって処置のやり方は無限に変化する」。

数え切れない試合でカットマンをつとめてきたケイエスは、非常に思い出深い選手としてリッキー・ハットンの名前を挙げています。

「ハットンは気性が激しく、わかりやすい分、まぁ厄介なヤツだった。対戦相手だけでなく、カットマンとも戦おうとするファイターだった。ただ、ああいう男は一旦信用するととことん信用してくれる」。

コンビを組んだ当初、ハットンはカットしてコーナーに戻ると、大したカットでなくても「深さは?」「長さは?」「血は止まるのか、止まらないのか?」「次のラウンドで決めに行かなきゃダメか?」「出血がひどくなっても絶対にタオルを投げないと、今ここで誓え!」…矢継ぎ早にまくし立てたそうです。

それが、ケイエスを信頼するようになると、インタバルの口数はどんどん減っていったといいます。

「インタバルでは、黙ってカットマンに処置を任せる。こちらが何も言わなければ何も聞いてこない、つまりカットマンが何も言わなければ『次のラウンドは大丈夫、無理に行く必要はない』ということを理解しているということ」。

「そこまで選手との信頼関係を築くことをが出来たら、第一段階は完了だ。出血はカットマンが止める。選手は普段通りに戦うだけだ」。

ケイエスの言葉には重みがあります。 

「傷口は絶対に強く拭いてはいけない。絶妙の手加減で抑えるんだ。出血させないことと同じくらいに大切なのは、腫れさせないことだ」。
 
「強く抑えたために内出血して腫れてしまい、瞼がシャッターを下ろしてしまう…良く見る光景だが、あれはカットマンが未熟だから。カットマンは外科医ではない。試合中の長くて20分の間だけ、出血と腫れを抑えることが仕事だ」。



ーーー続きます。
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OF MICE AND (CUT)MEN〜The Mysterious Art of stopping Blood Flow

ジョン・スタインベックの名作「二十日鼠と人間(OF MICE AND MEN)」にシャレを効かせた(CUT)MENとは、もちろんボクシングのカットマンのことです。

The Mysterious Art of stopping Blood Flow〜噴き出る血を止める神秘の芸術家〜それがカットマンです。

今夜はちょうど10年前のリング誌2013年8月号に掲載された連載物Sweet Scienceの「OF MICE AND (CUT)MEN〜The Mysterious Art of stopping Blood Flow」や、英国BBCの「Adrenaline, Vaseline and composure - Kerry Kayes on the art of being a boxing cuts man(アドレナリン、ワセリン、そして冷静。その3つを操るケリー・ケイエスは芸術的なカットマンである)」を題材に、「カットマン」の世界へご案内します。




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“I can't see nuthin.Gotta cut open my eye. Cut me Mick” 

何も見えないぞ。なんとか見えるようにしてくれ、ミック!

世界ヘビー級王者アポロ・クリードのパンチで、腫れ上がって目が塞がったロッキー・バルボアは コーナーに戻ると、カットマンのミッキー・ゴールドミルに緊急事態を告げた。

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第49回アカデミー賞で作品賞・監督賞・編集賞の三賞を獲得した映画「ロッキー」のワンシーンです。 

ミックは、いにしえの時代の元世界バンタム級王者でトレーナーであり、カットマン。

「カットマン」と言っても、カット(切る)するのが仕事ではありません。 

彼らは「カットして噴き出した血を止める」「内出血した瞼の腫れを抑えること」が仕事です。


その出血を止めることが出来るかどうか。

彼らに与えられた時間はラウンドインタバルの60秒。実際に施術できる時間は50〜55秒が一杯一杯でしょう。

そんな短時間で「少なくとも次の3分間に血が噴き出さないようにする」のが、カットマンの任務です。

Keep the fighter in the ring.That's your job.You're always trying to give them one more round.

2004年からカットマンも務める世界的に有名なトレーナー、ルディ・エルナンデスは語ります。

「レフェリーに止めさせないのが私たちの仕事だ。私たちは常に、ボクサーにもう1ラウンドをプレゼントしてやろうとする。それが私たちの仕事だ」。


カットマンの仕事が、トレーナーと同じか、あるいはそれ以上に勝敗を左右する要素であることを否定するボクシングファンはいないでしょう。

井上尚弥vsノニト・ドネアの初戦、WBA/IBFバンタム級団体統一タイトルマッチ。ドネアの左フックで井上が切った右眼上のカットは「筋肉まで薄皮一枚」という見た目以上の深傷でした。

もし、大量に出血していたらボディでダウンを奪う11ラウンドに至る前に試合がストップ、TKO負けとなっていた可能性大。いいえ、それ以前にドクターチェックが入れば、極めて厳しい状況でした。

出血すると選手は「早く試合を決めないと止められる」と焦る気持ちを抑えることができません。

優秀なカットマンが出血を最小限に止めて「絶対に大丈夫。最終ラウンドまで持つから焦らずにプラン通りに戦いなさい」と囁いてくれたら、どれほど安心して勇気が湧くことでしょうか。



日本のボクシングファンなら誰でも知っているトレーナーのルディや、フレディ・ローチらは優秀なカットマンの顔も持っています。



インターバルでコーナーに戻ったパッキャオは座る前に問い詰めます。「フレディ!傷は深いのか?」。

焦るパッキャオにローチは、例のゆる〜いリズムで答えます。

「マニー、血は止めるから〜慌てるな。まだ先は長〜い、じっくりゆ〜っくり仕留めよう〜ぜ」。 

カットマンが使えるキットは限られています。

清潔なタオル、水、ワセリン、エンスウェル…そして彼らの繊細な指。

それだけです。その意味では「何の秘密もない」(ルディ・エルナンデス)のです。 

…しかし、これこそ、私たち素人には理解が及びにくい、一番厄介な職人芸です。 

続きます…!
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スポーツイラストレイテッド誌から、sanctioning bodies(認定団体)についての考察を拙訳。

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昨年9月、スーパーミドル級の完全統一王者カネロ・アルバレスに敗れたゲンナジー・ゴロフキンは「私はミドル級で三つのベルトをまだ持っている」と笑って見せました。

GGGはWBAとIBFのストラップは持っていても、もう一つは?…一部の人はすぐに思い付かなかったかもしれませんが、三つ目のベルトはIBO(International Boxing Organization)のタイトル。

今年6月に返上するまで12年間も保持していたタイトルでした。

ボクシングにはWBA、WBC、IBF、WBOと4つが主要団体とされ、それぞれ17階級で世界タイトルや地域タイトルを認定、その承認料が彼らの売上、生業を支えています(WBCはブリッジャー級を含めて18階級)。

1988年の設立以来35年、IBOはマイナー団体の座に甘んじてきました。1999年にIBOの会長を務めるエド・レバインは「私たちは(野球で例えると)AAAかもしれないが、このスポーツを健康な形にしたい」と語り「主要団体の目に余る腐敗がボクシングを堕落させ、信用を失い、人気スポーツから締め出されてしまった」と嘆きます。

「私たちはまともなランキングと真っ当な世界王者を認定したい」。

IBOが設立された1999年にはIBFのロバート・リー会長が賄賂を受け取ってランキングを操作。WBCはフランチャイズチャンピオンを最上位タイトルと言い張り、他団体の追随を待ってブリッジャー級を見切り発進しましたが、現時点では失敗。WBAは各階級に3人の王者を平然と認定してきました。

WBOも問題だらけの団体です。2000年12月にスーパーミドル級6位に入ったダリン・モリスは、1試合もしていないのに翌年1月に5位にランクを上げました。他の団体ではもっといきなりのアップもありえますから、それは驚くべきことではありません。

驚くべきは2000年10月にモリスはすでに亡くなっていたということです。

信じられないかもしれませんが、単に買収されるだけでなく、このような杜撰なランキングは他の団体でも横行しています。

その結果、主要4団体のランキングは、作成した各団体の担当者ですら説明できないほど、バラバラのリストになっているのです。

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トップランクはWBO、PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)はWBAとの繋がりが濃厚なのはランキングを見れば一目瞭然。

しかし、IBOでは地域タイトルでの承認料の支払い与信や、コネクションではなくコンピュータのシステムによって公正にランキングが作成されています。

BoxRecを活用したランキングは、賄賂やコネが入り込む余地はありません。

また、レバインは他のスポーツではありえない承認料についても「大幅に低い数字で設定している」と語り、「他団体で当たり前の指名試合(そもそものランキングが無茶苦茶なので多くの指名試合に意味はない)も強要しない。指名試合にタイムリミットを設ける最大の理由は、タイトルマッチを数多くこなして承認料を稼ぐことだが、IBOはそんなことはしない」。


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このブログでも繰り返していますが、承認団体の腐敗ぶり、ランキングの錯乱ぶりは目に余るものがあります。

すでに、主要団体は4つに増殖しています。IBOは米国ではAAAかもしれませんが、欧州では極めて主要に近い存在。米国でもほぼ全ての州コミッションでタイトルマッチが承認されています。

4つも5つも一緒。JBCがIBOを認めたら英断だと思いますが、既存の4団体は反対するでしょう。  

リング誌タイトルもその存在感はどんどん薄まるばかり。そもそも、捏造ランキングはリング誌も手を染めてしまいました。

このままだと、マイナースポーツの底なし沼にハマり続けるこのスポーツは、スポーツとして認められなくなる日も訪れるかもしれません。

「腐敗するから人気がなくなる、人気が低迷するから腐敗する…ボクシング界が抱えるデフレスパイラル」ーーー米国ボクシングの代名詞HBOが「ボクシングは死にゆく産業」と撤退、リング誌も廃刊した今、新たなシリーズの開幕です。
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米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が、スポーツ報道部を解散すると発表しました。

スポーツチームや試合に関する取材や報道は、傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」が担当するそうです。

ジ・アスレチックはNYTが昨年、5億5千万ドル(約778億円)で買収した後に有料会員を伸ばしていますが、経営は赤字。

https://fushiananome.superknova.org/archives/28355846.html

NYTのスポーツ部に所属する約35人の記者や編集者は他の部署に移る予定で、スポーツ部は秋までに消滅するスケジュールです。

NYTは既にスポーツ報道を縮小し続けており、記事は激減していました。

そんな中でも、大谷翔平の大特集を組んだのです。米国スポーツにおける大谷翔平の衝撃度がどれほど大きいのかを窺わせる一つの事例です。

ちなみに、21世紀になってからの日本のボクサーはロンドン五輪金メダルの村田諒太が試合結果のみ開催されたほかは、井上尚弥も井岡一翔も一度もふれられていません。

「米国ボクシング」が凋落、そもそも関心が低い「超軽量級」の「アジア人」という三重苦では致し方ありません。

 NYTによると、ジ・アスレチックは23年3月時点で有料会員が300万人超。1日あたり約150本の記事を発信。

しかし、23年第1四半期は780万ドル(約11億円)の赤字で、6月にはリストラを行うなど、経営は順調とはいえません。

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ニューヨークタイムズ。

ボクシングファンにとっては、最も郷愁を煽られる新聞です。

海外ボクシングに興味のある方なら「ニューヨーク州公認 世界ヘビー級チャンピオン」「公式採点はニューヨークタイムズ」なんて活字を目にしたことがあるでしょう。

さて、ニューヨークタイムズとボクシングのお話、はじまり、はじまり。

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テオフィモ・ロペスが不利予想を覆してWBOジュニアライト級王者ジョシュ・テイラーに勝利、2階級制覇を成功したあと、引退宣言をしたことには様々な憶測が飛び交っています。

まず、まだ25歳のロペスがこのままリングを去るわけがないというのが大方の見方です。

しかし、正式にライセンスを返上、とりあえずは現役ボクサーではありません。

浪費家の妻との離婚交渉を有利に進めるために無職になった、などゴシップ的な見方もされています。

しかし、ロペス本人は「最大の原因は、トップランクとESPNの私の扱い」とプロモーターとネットワークへの不満をぶちあげています。

ESPNは今年のESPYボクシング部門にガーボンタ・デービス、デビン・ヘイニー、クラレッサ・シールズ、シャクール・スティーブンソンをノミネート、自分が外れていることが気にいらないようです。

「こんなの、本当に価値があるのはクラレッサだけだろう。どうして私の名前がないんだ?WBOのベルトは返上した、リング誌ベルトもそうするつもり。もちろん、リングのベルトは価値があるから返上は1年後に考える」。

「私はトップランクとESPNに関わりの深いファイター。その私をサポートしたくないというなら、私の選択はたった一つ」。

テオフィモはESPNが9フィギュア(9桁=100億円)レベルの契約を結ぶつもりなら、ボクシングを続けると語っていました。

https://espnpressroom.com/us/the-2023-espys-nominees/

ちなみに、ESPYのあらゆるスポーツ部門を包含した総合の最優秀アスリートをボクサーが受賞したことは一度もなく、今年もノミネートすらされていません。

大谷翔平は昨年、この総合最優秀に輝きましたが、今年はノミネートされていません(淡々としたビデオメッセージが悪印象だったか?)。

野球部門ではゴールドシュミット、ジャッジ、バーランダーと共に大谷もノミネート、これは獲りそうです。
 
「友達も家族も私が本当に引退したとは思っていない。ただ、人生最大の戦いを裁判所で戦うことになる。私の子供にとっても大切な戦いだ。私は誰かの言いなりにはならないし、ボクシングの奴隷でもない。少し、時間が欲しいんだ」。

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▶︎▶︎▶︎ よく言えば純情、悪く言えば幼稚なんです、テオフィモ。

そんなにESPYのボクシング部門にノミネートされたかったのか?ちょっと女々しい。

大谷はきっと要らない(ノミネートされたことも知らない可能性大)から、譲ってもらえば?
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WBAはいつだって魑魅魍魎、腐臭を撒き散らしています。

The World Boxing Association (WBA) Championships Committee approved on Monday, June 5, 2023, that Marlon Tapales, WBA super bantamweight champion, will unify his belt against the winner of Naoya Inoue and Stephen Fulton.

Meanwhile, Murodjon Akhmadaliev and Tomoki Kameda must meet in a final eliminator to determine the division’s mandatory challenger.


▶︎WBAはマーロン・タパレスが(要求していた)7月25日のWBO/WBCジュニアフェザー級王者スティーブン・フルトンvs井上尚弥の勝者との対戦を認めた。

(タパレスに敗れて無冠となった)ムロジョン・アフマダリエフは、亀田和毅と指名挑戦者の座を争うことになる。
 
 
Tapales defeated Akhmadaliev last April 8 to retain the crown in a controversial and close fight. Matchroom Boxing made a direct rematch request to the WBA and although there are elements that could support it, it is not feasible to do so at this time. 
 

▶︎4月8日に議論を呼ぶ判定でタパレスに敗れたアフマダリエフをプロモートするマッチルームはダイレクトリマッチをWBAに申請、それは納得できる側面もあるものの、今回は優先事項にならない。


The new champion and his team asked the WBA for permission to fight the winner of Inoue and Fulton, whose bout will be on July 25. This bout would be a unification of the WBA, IBF, WBC and WBO titles, which is a powerful reason to admit it for the sake of boxing. 

▶︎タパレス陣営は井上vsフルトンの勝者との試合を認めるようWBAに要求していたが、この試合はWBAとIBF、 WBC、WBOの全てのベルトがかけられた完全統一戦になる。WBAはボクシング界のために、この試合を優先させた。
 
 
Akhmadaliev will now fight Kameda, who won a semi-final eliminator against Yonfrez Parejo and the winner of this fight will be the next opponent of whoever wins between Tapales / Inoue /Fulton on a date to be determined later.

▶︎アフマダリエフは、ヨンフレズ・パレホとの挑戦者決定戦の準決勝に勝利した亀田と戦う。この試合の勝者が、タパレスか井上、フルトンいずれかの完全統一王者に挑戦することになる。


 
◾️◾️◾️タパレス(傷だらけのフィリピン人)、フルトン(米国でも全く人気がなく試合もつまらない実力者)、亀田(日本ではビッグネーム)、井上(日本では超ビッグネーム)、アフマダリエフ(資源大国ウズベキスタンの英雄)の5枚のカード、WBAにとっての悪夢はフルトンかタパレスが生き残ることでしょう。 

万一、フルトンが井上に勝ってタパレスとUndisputed championshipなんてことになると、これはもはや試合事故です。団体統一戦史上、最も人気のないカード間違いなしです。

それにしても「亀田vsパレホ」 はいつ「準決勝」に格下げされたんだ?
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トップランクとゴールデンボーイ・プロモーションズが、米国市場を代表する2大プロモーターだった時代がありました。

今や「ここまで落ちぶれるのか」というレベルの体たらくです。

かつて、人気階級ウェルターにオスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザー、ミゲール・コット、アントニオ・マルガリート、マニー・パッキャオらドル箱スターを擁していた栄華は跡形もなく、ライト級以下の不人気階級に小粒なファイターを抱えるだけ。

トップランクとESPNが興行した「デビン・ヘイニーvsワシル・ロマチェンコ」のPPVは単価を抑えたにもかかわらず、売り上げは15万件と悲惨な結果に終わりました。

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エディ・ハーンは「ESPNは使い物にならないトップランクと手を切る。次の契約更新はしないだろう」と嘲笑い、ボクシングのインサイダーの中には「ESPNはボクシング事業から撤退、あるいはさらに予算を大幅縮小するのでは」とも危惧されています。 

メディア部門でもボクシングのページは減退傾向が目にあまり、MMAに完全に抜き去られているのが現状です。もはやMMAはライバルでないのはもちろん、目標とする格闘技ですらないほどに引き離されつつあります。

廃刊間際のリング誌がMMAコーナーを設けたり、ロンダ・ラウジーや井上尚弥という既存のボクシングファンが興味を示さないファイターをカバーしたのも、このスポーツの没落ぶりを象徴していました。

一方、英国から米国市場に進出したマッチルームは「カネロ・アルバレスの試合はヘイニーとかロマチェンコとは次元の違う規模。GGGやビボルとのビッグファイトも、トップランクの興行とは全く違い成功を収めている。15万件しか売れない試合なんて、ビッグファイトとは呼べない」(ハーン)。


Top Rank has no big fights, but I’m going to ask you a question. What was the last big fight Top Rank done?

トップランクにはビッグファイトを組む力もない。ところでトップランクが打った最後のビッグファイトって、どこまで遡ればいいんだ?誰か教えてくれよ。


「テオフィモ・ロペスとジョシュ・テイラーがマディソン・スクエア・ガーデンで戦うらしいけど、あれもビッグファイトにもならない。4000席でフルハウスのシアターでやるんだから。ラスベガスもMGMグランドガーデンアリーナが精一杯(T -Mobileアリーナではムリ)、ニューヨークでもマディソンスクエアガーデンのアリーナやバークレイズセンターでは出来ない」。

「ボブ・アラムのことは尊敬している。ここまで生き延びたんだから。でも、もう終わりだ」。



モハメド・アリの「スリラー・イン・マニラ」「キンシャサの奇跡」、マービン・ハグラーやシュガー・レイ・レナードらのFOUR -KINGSのメガファイトを手がけてきたボブ・アラムも92歳。

盛者必衰、かつての帝国の、瓦解が進んでいます。
 
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ライアン・ガルシアが、トレーナーのジョー・グーセンとの契約関係を清算したというニュースが入ってきました。

ガーボンタ・デービスに初黒星を喫してまだ1ヶ月も経っていませんが、あの試合結果が影響したことは間違いありません。

グーセンは、ガルシアがまだ南カリフォルニアで無名のアマチュア選手だった頃から指導に関わってきました。


ジョー・グーセンの〝最高傑作〟は、100人に聞いて100人がこの「試合だ」と答えるでしょう。


ガルシアは父のヘンリーもコンビを組み、2018年からはチーム・カネロの〝総裁〟エディ・レイノソにも師事、キングライのトレーニングとコーナーの風景はいつも玉虫色の光を放っていました。

69歳のグーセンがコーナーに着いたのはエマヌエル・タゴエ(12ラウンド判定勝ち)、ハビエル・フォルトゥナ(6ラウンドKO勝ち)、そしてタンク・デービス(7ラウンドKO負け)の3試合。

この世界でボクサーとトレーナーが袂を分つ理由は、敗北とカネです。

「敗北」の最近ではデオンティ・ワイルダーとマーク・ブリーランドがわかりやすいサンプルです。

エマヌエル・ロドリゲスも苦戦と敗北のたびにトレーナーを変えてきた〝責任転嫁型〟ボクサーの代表格。

「カネ」では、鉄の絆と思われたゲンナジー・ゴロフキンとアベル・サンチェスが、DAZNの巨額の複数年契約を前にガラガラと崩れて落ちてしまいました。

数々のドラマを演じてきたマニー・パッキャオとフレディ・ローチも、ファイトマネーの15%といわれたローチの取り分を巡って関係が解消されました(現在は修復)。

儒教的精神が根付く日本ではなかなか理解できないかもしれませんが、日本も選手とトレーナーの一蓮托生的な関係がもっと緩やかになって然るべきだrと思います。

ロドリゲス的なのは、ちょっと… ですが。
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