カテゴリ: 採点について考える

スノーボード 男子ハーフパイプ決勝。

平昌五輪銀メダルの平野歩夢が1440を3度飛ぶ史上最高難易度の構成を成功、スノーボード日本史上初の金メダルの大偉業を成し遂げました。
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平野は縦3回転・横4回転の超大技「トリプルコーク1440」を五輪史上初めて成功。

競技後のインタビューで平野は「最後の最後で出しきれて、2本目の点数が納得していなかったので、そういう怒りが自分の気持ちの中で、最後の力になったのかなと」とコメントしました。

今大会でショーン・ホワイトが引退とあって、特に米国の報道はスーパースターの話題で持ちきりでしたが、決勝2本目の平野のスコアが2位だったことに批判が巻き起こっています。

「23歳の日本人は2本目、ハーフパイプで最も難しいトリックであるトリプルコークを含む、最高のパフォーマンスを見せたにもかかわらず、豪州のスコット・ジェームズに次ぐ2位のスコアしか与えられなかった。明らかな誤審。ジャッジは何を見ていたのか?」とESPNのコメンテーターやソーシャルメディアの怒りは沸騰、Twitterでは#robbedや#triplegateがトレンドとなりました。

平昌で銅メダル、Xゲームでも5度メダルを獲得しているアリエル・ゴールドもThat is quite possibly the worst judging I’ve ever seen (こんな酷い採点は見たことがない)と非難。

それでも平野は3本目にさらに素晴らしいパフォーマンスを披露、ジャッジをねじ伏せて96.00点をスコア、金メダルを獲得しました。

採点競技に議論を呼ぶスコアは付き物とはいえ…。平野が〝逆転〟したから良かったものの、問題は根深いです。
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繰り返しになりますが、カリフォルニアやニューヨークはもちろん、左ジャブを偏愛するネバダ州でも同じようなスコアリングになったと思います。
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命がけの矢吹正道と、焦りが先走った寺地拳四朗の名勝負でした。

2人とも、今何をしなければならないのかを、正確に実行しました。
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結果も展開も知れ渡っている試合ですが、世界評価も高く、具志堅用高の連続防衛記録更新という悪い意味ではなく非常に保守的でドメスティックな目標を掲げていた寺地拳四朗のキャリア初黒星。

階級最強の呼び声高いWBCジュニアフライ級王者、寺地拳四朗は、これが9度目の防衛戦。リング誌やESPNでもPFP入りが取りざたされる、プライムタイムの29歳。

完全ホームの京都で迎え撃つは、矢吹正道。日本レベルでは強豪ですが、その技術は世界レベルには無いと見られ、試合は「寺地がどう勝つか」が焦点でした。

「最初の4ラウンドでジャッジ2人が矢吹のフルマーク」の公開採点で、寺地が作戦変更せざるをえなかった、寺地永も「悪くてドローと見ていた」という言葉には少し違和感を覚えました。

この4ラウンド、寺地の左ジャブが矢吹をコントロールしていたとは到底見えません。「日本人ジャッジだからジャブを評価しなかった」なんて意見はあきらかにおかしい。

1、2ラウンドは浜田剛史と飯田覚士も一致していたように矢吹です。寺地はバランスを崩す場面が多く、メカニクスは最初から狂ってました。カリフォルニアやニューヨークならもちろん、ラスベガスでも寺地に振れません。

3−4ラウンドは、寺地が左ジャブから立て直しを図りますが、バランスとリズムは狂ったまま。バランスとリズムが欠落してるのは矢吹も同じですが、それが矢吹らしさ。逆に寺地はらしくない。

4ラウンド終了の公開採点は38-38のドローが1人、40-36で矢吹のフルマークが2人。全然、ありうる採点です。

第5ラウンドも寺地のリズムは戻りませんが、強引に手数を増やし、矢吹にオーバーペースの疲れも見えますが懸命に打ち合います。寺地サイドからは取られたと計算しなければないませんが、10-10にスコアすべきラウンド。

第6〜8ラウンド。あの滑らかな寺地のメカ二クスがここまで狂ったままとは。矢吹は懸命に突進するも、空振りが目立ち、これぞ「単なる突進」。右目周りの腫れが目立ちます。

矢吹のエネルギータンクにはもう何も残っていません。試合の趨勢は決まりました。

しかし、8ラウンド終了時点の公開採点は74-78、73-79、75-77。「残り4ラウンドを全てピックアップして三者三様のドロー」(浜田)という厳しいスコアです。

迎えた9ラウンド「倒さなければ勝てない」状況に追い込まれた寺地は当然のスパート。ガス欠の矢吹はボディを叩かれ、完全にグロッキー。ヘッドバットで寺地の猛攻を遮断する矢吹。寺地の顔面は流血で真っ赤に染まります。

「寺地の流血はパンチによるもの」とアナウンスされますが、本当にそうか?(すみません、その後オフィシャルが出てるでしょうがフォローしていません)。

「10−8でもいい」(浜田)という、この試合初めての決定的な3分間でした。

第10ラウンドも寺地がフィニッシュを狙いに、猛攻。弱々しく反撃する矢吹。「ここで返さないと止められますから」(浜田)。

打ち疲れた寺地の顔面に矢吹の必死の左右がヒット。交代してロープを背負う王者に、挑戦者が襲いかかります。

もう限界、一滴のエネルギーも残っていない、そんな状況でも相手が怯んだり、弱気な表情を見せてくれると、体の奥底に隠されていたもう一つのエネルギーのダムが解放されるのです。

「マラソンとボクシングはよく似ている」と語ったのは中山竹通でしたが、まさにそのとおりです。私たちは、この二つのスポーツで、そんなシーンを何度見てきたことでしょうか。

9ラウンドまでのスコアカードは、88-83/86-85/87-84。そして、主審が試合を止めたときの時計は2分59秒。

一番近くで見ていた主審の判断を尊重すべきですが、11ラウンドがあると別の展開があったかもしれません。

矢吹の根性がスリリングなシーソーゲームを演出してくれました。

寺地拳四朗にだって、こんな夜もあります。やれることは全部やりました、さすがです。

矢吹の勝利者インタビュー、最高でした。

「拳四朗を応援してた人には申し訳ない。でも、ときが来たらまた戦います。そのときは両方応援してください」。

こう試合に水を差す意見かもしれませんが、WBCの公開採点は即刻やめるべきです。米国でもその弊害を指摘して、大きな試合ではほとんど採用されません。

この話もリング誌の特集などで取り上げてますが、百害あって一利なし。「あとから採点を書き換えてる」と批判されたWBCが採用した見苦しいシステムですが、逆効果です。というか、もう信用など取り戻せません。
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昨日、いただいたホタテ。ソテーにしていただきます。


寺地が目指したのは、具志堅用高の13連続防衛更新でした。山中慎介や井上尚弥も公言したこともある、最後の国民的ヒーローのボクサーが刻んだ不滅の大記録。

寺地同じ8度防衛の頃の具志堅は堂々たる国民的ヒーローに登り詰め、首相官邸に招かれるなど、王貞治とともに日本スポーツ界を代表する顔でした。

一方の寺地は、テレビ放映もないまま9度目の防衛戦に失敗。

約40年の時間的隔たりがあるとはいえ、同じスポーツとは思えない格差です。
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これは、具志堅と井上や井岡一翔と比較しても、同じ構図です。人気も報酬もこの40年で、ボクシングは地に堕ちました。

「ファイトウィークになってようやく複数立ち上がるオッズ」「リングサイド席がまさかの300ドル」 「観客数発表なし」「ネバダ州アスレティック・コミッションからのファイトマネー発表なし」「米国大手メディアでの報道はなし」…それでも井上の報酬はいつもキレのいい「100万ドル」で「このまま防衛回数を増やしていけば天文学的数字になる」そうです。

もちろん、対戦相手の報酬は発表されません。

「西岡利晃のラスベガス」 も全く同じ、井上は西岡のデジャブです。西岡も全く同じ100万ドルでした。

もう、いい加減にやめましょう。

トップランクと業務提携にあるはずのESPN が「井上なんて全く無名」と書き捨てたのは、放映権料交渉の牽制球でしょう。味方にディスられる、あんな屈辱はありません。

売り出すつもりがない、トップランクとは手を切るべきです。

日本市場の旨味を嗅ぎつけたドン・キングは、大金を用意して競争入札に参加しました。キングですらリスクを冒したんです。

「さいたま」の再現があれば、トップランクと帝拳、大橋との共同興行になるんでしょう。馬鹿らしいにもほどがあります。

井上が米国でPPVメインに乗るとか、1000万ドルファイターになるとか、そんなことがありえないのは過去のバンタム級と、現在のバンタム級(最大のライバル、カシメロのキャリア最高報酬は7万5000ドル、それも1回きり)を見れば、どんな敬虔な信者でも目を覚ますでしょう。

日本の誰も得しません。

もう、いい加減にやめましょう。 
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不可解なスコアカードが生まれる最も大きな原因は、どのラウンドも無理矢理に「10-9」で振り分ける悪しき慣習が定着してしまったからです。

「バルデスvsコンセイサン」で117-110と採点してしまったステファン・ブレアも、二つの過ちを犯してしまったと反省、まず最初に挙げたのが「not to score 10-10 in 2 rounds I felt there was not a clear winner, (明白な差が無いと感じたにもかかわらず2つのラウンドで10−10を付けなかった)」ということでした。

世界中のどのコミッションでも「各ラウンドは独立した単位で判定する」のが基準です。

各ラウンドをバラで考える、というそれ自体が試合の全体像から離れてしまう採点につながるようにも思えますが、すぐに改定されるとは思えないここには触れないでおきましょう。

議論を呼ぶ判定の原因は「ジャッジに10-10を付ける勇気が無い」「10-9の幅が大き過ぎる」という2点に集約されます。

今回の「バルデスvsコンセイサン」は、その典型でした。

ざっくりいうと「明白に5ラウンドを抑えたコンセイサンを、微妙な7ラウンドを拾ったバルデスが上回った」展開です。

そして「各ラウンドは独立した単位(試合)として採点する」とするなら、ドロー試合と同程度の割合で10-10のスコアが出現するはずです。

しかし、そうはなっていません。ドローのラウンドは滅多に見ることができません。

ホセ・スライマン会長(当時)は「微妙なラウンドを振り分けるのがジャッジの仕事。10−10の乱発は実際の試合とは異なる結果を導いてしまう」と今聞くと「はぁ?」という声明を出しました。

安易に10−10、10−9を付けるのは、どちらもおかしな結果を招きます。

現在、ジャッジに「10−10」を付けることを逡巡させているのは、一度このスコアリングをしてしまうと以降のラウンドでより接近した内容になると10−10とつけざるをえない、結果10−10だらけのスコアになる危険を孕んでいるということです。

それが、早いラウンド、例えば1ラウンドで付ける勇気のあるジャッジは、ほとんどいません。

しかし、全く互角だと判断したら何ラウンド目であろうが10−10を付けるべきなのです。10−10だらけのスコア、それが試合の実態を反映しているのなら結構なことです。

例え、それで120−120のドローになったとしても。

「安易に10−10を付ける」のと「安易に10−9を付ける」のは、ジャッジが無能さを映す鏡のようなもので、同根です。

暗愚なホセ・スライマンが「10−9」を奨励したのは「シュガー・レイ・レナードvsロベルト・デュラン第1戦」(1980年7月20日)の採点を受けたものでした。
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この試合の採点は、Raymond Baldeyrou 144-146/Harry Gibbs 144-145/Angelo Poletti 147-148 。2点差が1人、1点差が2人のペーパー上は接戦でした。

デュラン勝利は妥当でしたが、人気者がタイトルを失ったことに納得できない(というポーズを人気者に訴求する)スライマンは「10−10のスコアが多すぎた」と、それぞれ5ラウンド、4ラウンド、そして10ラウンドをイーブンとしたジャッジを批判。

この試合が一つの契機となり、10−9スコアが支配的になります。

本来なら10−10とすべきラウンドが、無能なジャッジが頭の中でサイコロを転がすようにどちらかに振ってしまうようになりました。

そして、無能なジャッジが最も恐れるのは、自分の無能さがばれることです。明らかな「Aサイドにポイントを振れば無難」と考えるのは、無能として自然な思考回路です。

こうした〝10−9支配〟は「ボクシングは10−9を付けなければ ならない」と勘違いしているファンも生み出している有様です。

「浅いラウンドで10−10は付けられない」なんて言うのは「俺、無能」と表明してるのと同じです。 
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左がステファン・ブレアのスコア。

9月10日(金)の夜、アリゾナ州トゥーソンで行われた「オスカー・バルデスvsロブソン・コンセイサン」のジャッジの一人が謝罪する内容が書かれた、WBCからのメールを友人が転送してくれました。

バルデスの試合前検査で減量促進剤であるフェンテルミンの陽性反応が出たというニュースは8月31日に発表され、その後、多くの議論がなされました。

普通に考えると、このイベントからメインのカードを外すか、あるいは30歳のメキシカンのWBOジュニアライト級王座を剥奪し、挑戦者のコンセイサンが勝利した場合は新王者誕生となる…そんな当たり前の裁定が下されると思われました。

The “show must go on”

しかし「ショーは続けなければならない」という考えが試合を決行、バルデスは王者として完全Bサイドのブラジル人との防衛戦を行いました。

挑戦者が前半の大量リードを守って判定をものにしたように見えた試合は115-112、115-112、117-110のユナニマスデジション、王者の防衛を支持したのです。

リング誌は115−112でバルデス、ESPNは114−113でコンセイサンなどクロスゲームであったことは間違いありません。

個人的には明白にコンセイサンと見ました。私の目にそう映ったのは明白に取ったラウンドがコンセイサンの方が明らかに多い、という印象からだったのかもしれません。微妙なラウンドを全て王者に振り、不可解な減点も上乗せすると115-112の「1ラウンド差」のスコアはありです。

しかし、バルデスの117−110勝利と採点したステファン・ブレアは、試合中に夢でも見ていたのでしょう。誰がどう見てもコンセイサンが3ラウンドしか取っていないわけがありません。

以下は、2003年からWBCの試合を審査しているブレアの謝罪と弁解です。

▶︎9月21日に行われた「バルデス対コンセイサン」の採点に関して、公開書簡を書くことにした。

私は30年以上、アマチュアとプロの両方でリングオフィシャルとしてボクシングに携わってきた。日本、タイ、韓国、中国、ロシア、メキシコ、アメリカなど、世界各国で60以上のタイトルマッチをジャッジやレフリーとして裁いてきた。

これまでに200試合以上のジャッジ、500試合以上のレフリーを経験してきたが、今回のような論争を引き起こしたことは一度もない。

私は試合を見直し、徹底的に分析した。

その結果、私が採点した117-110というスコアは正確ではなかったと認めます。

この試合では接戦のラウンドがいくつかありましたが、私は2つのミスを犯しました。

1)明確な勝者がいないと感じた2ラウンドで10-10を採点しなかったこと。2)接戦のラウンドでチャンピオンに有利な採点をしてしまったこと。

バルデスを応援する観客の声が非常に大きかったことに引っ張られてしまったのかもしれません。

私の席からは序盤の攻防を見るには視界が狭く、コンセイサンのパンチが死角になっていた。そして、バルデスがパンチを打ったときとは逆に、観客は静まっていた。

また、バルデスが私の左隣の赤コーナーにいたため、カメラマンが押し寄せてきて何度も接触した。

左隣のカメラマンと右隣のカメラマンに挟まれ、彼らがチャンピオン・コーナーに走るときに、ぶつかったり、足を踏まれたりした。

もちろん、どんな状況下でも、自分の仕事を100%遂行できると思っていたが、それができなかったのかもしれない。

このような理由が複合的に組み合わさって、私は最初の4ラウンドのうち3ラウンドをバルデスに与えました。

あらためてビデオで試合を採点し直すと、115-112、あるいは114-113でバルデスという結果だった。

私は、NABF/WBCリングオフィシャル委員会と連絡を取り、徹底したトレーニングと研修プログラムを受けることを決めた。

このプロセスを完了するまで、私はいかなるチャンピオンシップのジャッジも受けません。

私はボクシングに深い愛情と知識、そして敬意を持つ高潔な人間。ただ、誰にでも過ちがあることを理解して欲しい。

悪い夜を過ごし、注目される試合で不必要な論争を引き起こしてしまったことを謝りたい。

 


ブレアがすぐに過ちを認めて謝罪したことは、評価しなければなりません。

そして、このブログでも繰り返して指摘、今回もブレアが犯したミスの最初に挙げた「1)明確な勝者がいないと感じた2ラウンドで10-10を採点しなかったこと。」は、重大な問題です。

これを機会に「10−10」を付ける勇気を持つジャッジが増えてくれると良いのですが、難しいでしょう。

馬鹿みたいに「10−9」に振り分けてると、今回のように「明白に5ラウンド取ったのに、微妙な7ラウンドを拾われて負ける」というあってはいけない採点が生まれてしまいます。

コンセイサンもWBCに訴え、多くのメディアも「WBCは再戦を命じるべき」と報道しています。

 The “show must go on”

 
それでも「Aサイドのショウは決行しなければならない」のでしょう。

トップランクがBサイドの役割を当てて契約したのは、コンセイサンもわかっていたはずです。

オスカル・バルデスは「ポイント計算をして接戦を引き寄せることが出来る相手ではない」のです。

公正な採点が行われると思ってたとしたら、カネロと戦ったゴロフキン並みのお花畑です。

もう一歩危険を冒してでも、決定的な場面を作らなければなりませんでした。

「そんな馬鹿なことがあるか!」と怒る常識人もいるでしょうが、これがプロボクシングです。 

パッキャオの後を継ぐ、電光石火のBサイド、メキセキューショナーの出現をお祈りして…今夜はおやすみなさいませ。
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昨日のWBOジュニアライト級タイトルマッチ。

ロブソン・コンセイサンが前半の貯金を守って王座奪取に成功したように見えましたが、公式採点は115-112が二人、もう一人はなんと117-110。

戦前のオッズが大きくバルデス寄りに傾いていたことも、今になって考えるとコンセイサンのBサイドを織り込み済みだったのかと勘繰ってしまいます。

主審の減点と117-110の採点は論外にしても、米国メディアの見方は115-112を議論を呼ぶスコアとは捉えていません。

日本のボクシングファンが米国の試合を見る場合、無意識のうちにラスベガスの採点基準で考えてしまいがちですが、今回の舞台はアリゾナ州。

アリゾナやテキサスの採点が、カリフォルニアやネバダ以上にメキシカンに寄るのは周知の通りです。

さらに、興行を管理したのはPascua Yaqui Tribe Athletic Commission。

Pascua Yaqui Tribe はメキシコ国境に住む先住民族。Casino Del Sol もいわゆるインディアンカジノでしょう。

​非常にデリケートな組織であることは想像できます。

デリケートな組織について、勝手な憶測でこんなことを書くのは良くないのでしょうが「魚心あれば水心あり」的なさまざまな取り引きが出来る相手のような気がします。

バルデスのドーピングが発覚したにもかかわらず、すぐに試合決行を発表したことからも、トップランクとESPN、そしてWBCの意向と阿吽の呼吸に見えました。

そう考えると、9ラウンドに主審がコンセイサンから減点したのも、バルデス勝利に念を入れただけでなく、3人のジャッジへの無言のメッセージだったのかもしれません。

なんだか陰謀小説かサスペンス映画みたいな話ですが、とにかくガッカリな判定でした。
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“It makes a fight complicated when somebody’s trying to run the whole fight,” Valdez said. “I’m trying to put on a good show for my fans, give the fans what they want, which is a good fight. But you can’t win a fight running like that. I’m sorry I didn’t give you guys a knockout or a great fight. I wish I could have given it to you but it’s hard to hit someone when they’re running the whole time.”

相手が逃げ回ると難しい試合になる。ファンに面白い試合を見せたかったが、逃げ回ってるボクサーは勝てない。ノックアウトして面白い試合をお届けできなかったことはお詫びする。逃げるのは自由だが、ずっと逃げ回る相手を捕まえるのは難しい。(オスカル・バルデス)



“This is boxing. I cannot go with his game. I played my game,” Conceicao said through an interpreter. “Look at his face and look at my face. I have nothing on my face. Oscar’s is all fu—- up. I won this fight.”

これもボクシングと言ってしまえばそれまでだが、私は彼のペースで試合をするわけにはいかない。そして、私は自分のペースで試合ができた。彼の顔を見てくれ。そして私の顔を。どっちが勝者だ?私が勝っていたはずだ。(ロブソン・コンセイサン)


これで、10月27日に行われる「WBOジュニアライト級王者ジャメル・ヘリングvsシャクール・スティーブンソン」の勝者との対戦に前進したバルデス。

花形のウェルター級でスター選手を持たないトップランクとしては、ジュニアライト〜ジュニアウェルターでスター選手を育て、大きなイベントを重ねたい…それはわかりますが、いくらなんでも露骨すぎます。

Top Rank chairman Bob Arum has said repeatedly he wanted to make that fight if Valdez defeated Conceicao and he has not changed his tune.

“If the fighters want the fight, I have no problem putting Oscar in with the winner of Jamel Herring and Shakur Stevenson,” Arum said after Friday’s fight.
ボブ・アラムは「もし判定がバルデスの負けになっていたら?」と聞かれると「ヘリングとスティーブンソンの勝者と戦わせる路線に変わりはない」と何度も繰り返し「選手同士が戦いたいと言っているのだから何の問題もない」と話しました。

判定が逆でも新王者のコンセイサンではなく、敗者のバルデスがビッグファイトの舞台へ進むのは当然ということです。

バルガスが大型契約を結んでいるトップランク&ESPN連合、そのESPNは114−113(減点がなければ115−113)でコンセイサンを支持した一方、リング誌は115-112でバルデス。

115−112は驚くようなスコアじゃないのか?
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判定が読み上げられるとロブソン・コンセイサンは首を軽く振って何度も微笑みました。

試合後、マネージャーのセルヒオ・バルテリが32歳のブラジル人のコメントを伝えました。

「私が勝っていた。試合を見ていた人はわかったはずだ」。

PUNCHESVALDEZCONCEICAO
Total landed83141
Total thrown390576
Percent21%25%
Jabs landed1938
Jabs thrown181279
Percent11%14%
Power landed64103
Power thrown209297
Percent31%35%
-- Courtesy of CompuBox
試合展開は5ラウンドまで挑戦者がコントロール。6ラウンドから強引に打撃戦に引きずり込もうとした王者が前進しますが、決定的な場面は作ることができないまま最終回のゴングが鳴りました。

オフィシャルの3枚は115−112が二人、もう一人は117−110。

母国のリオデジャネイロ2016で金メダルを勝ち獲ったコンセイサンの戦いぶりはお見事でした。

相手の打ち終わりを狙う王者の必勝パターンを長くて速くて、そして引きも速い左リードで封じ込め、なりふり構わぬ突進しかできない状況に持ち込みました。

強引に距離を潰してくるバルデスを右アッパーで迎撃。バルデスはジャブをかいくぐっても乱打戦に持ち込めません。

9ラウンドにコンセイサンが減点1を取られたのはラビットパンチということです。しかし、流れの中で頭を押さえつけたのかラビットなのかよくわかりませんでした。

いずれにしても、注意や「次やったら減点」の警告なしに下された裁定でした。

後頭部への打撃はバルデスにも見られましたが、明らかなラビットパンチを打ち下ろしたメキシカンには注意を与えただけ。

しかし、減点を受けたあとの金メダリストのアクションは流石でした。このままだと9ラウンドを10-8で落とすところを、左ジャブを軸に一気の攻勢を見せて支配。減点がなければ10-9、減点があったので10-10で切り抜けます…そのはずでした。

バルデスが攻勢に出ても必ず反撃します。

バルデスは試合後に「KOできなくて申し訳ない。挑戦者は逃げてばかりいた」と、数週間前のジョンリール・カシメロのような言葉を吐きましたが、コンセイサンと怯懦のキューバ人は全く違います。

リゴンドーは本当に逃げるだけでしたが、リオの金メダリストはしっかり手数を出して、試合を主導していました。
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これはboxingscene.comのスコアカードですが、最初の5ラウンドを挑戦者が抑え、王者が残り7ラウンドを全て奪った という採点です。

ラウンド表現で7-5、1ラウンド差。減点があるので115-113ではなく115-112。ふたりのジャッジと同じ数字です。

これは許容範囲の採点かもしれませんが、オフィシャルで最初の5ラウンドを挑戦者の完封とスコアしたのは一人だけ。一人は3ラウンド、もう一人は2ラウンドしか与えませんでした。

6ラウンドを迎えたとき、私は「このラウンドを取られたらバルデスの判定勝ちは極めて難しくなる」と思いました。

しかし、この時点のオフィシャルは挑戦者から見て50-45/48-47/47-48。つまりしっかり貯金できていたのは一人のジャッジだけ。

また、バルデスの検体から禁止薬物が陽性反応を示したVADAの検査報告を統括団体のthe Pascua Yaqui Tribe Athletic Commissionと、トップランクはコンセイサン陣営にすぐに伝えませんでした。

緊急調査機関を設置したWBCもタイトルを剥奪せずに試合を承認することも、コンセイサン陣営に通知されたのは決定から3日後。


バルデスはタイトル剥奪どころか、何のペナルティも受けませんでした。同じメキシコ人でも雑魚のルイス・ネリとはえらい違いです。

ネリのケースは軽量級の本場・日本で粗相を起こしたためにWBCも厳しく動かざるをえなかったという事情はあったでしょう。

ネリの処分も相当に軽いと非難を浴びましたが、そのネリもこの裁定には呆れているかもしれません。

雑魚やBサイドは損をして当たり前、それが世の中なのです。

Such is the life of the unheralded B-side fighter.

「Bサイドは何をされても文句が言えない。スイスにスポーツ仲裁裁判所がある?聞いたことがないな、きっとそこはAサイドもBサイドもない、公平な条件で競技を争うスポーツだけが対象なのだろう。残念ながらボクシングは不公平が大前提のスポーツだ」。

「何度防衛しても母国で戦えない王者がいる一方で、必ず母国で世界王者を迎える挑戦者もいる。Aサイドを訴えるどころか、試合に負けたら『私を選んでくれてありがとう』と感謝するのが礼儀だ。それがBサイドってやつなのさ」。

「酷い話じゃないさ。勝ちゃあいいんだ。パッキャオみたいにAサイドを倒しまくって、食いまくって、自分がAサイドになりゃあいいんだ。コバレフだってカネロに勝ちゃあ良かった。ロアチェンコだってテオフィモに勝ちゃあ良かったんだ。ただそれだけの話さ」(イジス・キリマス=セルゲイ・コバレフやワシル・ロマチェンコのマネージャー)。

キリマスに言わせると、今日の試合は「Bサイドに中途半端な勝利なんてない。ノックアウトするかボコボコに殴り続けるか。コンセイサンが悪い」となるのでしょう。

私たちは、またいつか「マニー・パッキャオ」を見ることが出来るのでしょうか?
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「10−10をつける勇気を持つべき」「ジャッジは鍋底のような低い所ではなく、テニスのジャッジのように俯瞰できる場所から見るべき」「ジャッジは一旦資格を得たら永久免状ではなく一定期間で更新・研修させるべき」…。

 そんな採点問題の本質ではなく、井岡一翔の精度の高さ、それも実態以上に精度を高く見せる技術です。
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トータルでは井岡が562発中140発をヒット、的中率は24.9%。ロドリゲスJr.さんは井岡を100発以上上回る682発を放ちながら、ヒットは134発にとどまり的中率19.6%と空振りが目立ちました。

普段と比べると物足りないものの、ジャブは井岡と思いきや的中したのは井岡14、ロドリゲスさん15で挑戦者が1発ながら上回っていました。

しかし、これは機械的にリードパンチを目視して数えた数字に過ぎません。つまり、両者合わせて29発放たれたリードブローは全てジャブではないのです。

その意味でも、ジャブの優劣は明らかに王者でした。ジャブで試合をコントロールしたとはお世辞にもいえませんが。この辺りも「パンチスタッツに意味はない」と言われてしまう所以です。

そして、パワーパンチ。井岡は126発、ロドリゲスさんは119発と、これもほとんど変わらない着弾数でした。

しかし、放った数は 353と527、井岡の空振りは227発でしたが、ロドリゲスさんは181も多い408発が空砲でした。

やみくもな突進と空振りを最も嫌うラスベガスなら、採点は議論を呼ぶレベルで大きく井岡に振れていた可能性大です。

パンチの見映えも井岡はコンパクトで、ロドリゲスは大ぶりで流れがち。見た目の印象は数字以上に、日本人王者でした。

とはいえ、井岡も不用意に被弾する場面が多く、楽勝という内容ではありません。

全般的にジャブが少ない、序盤でキーパンチになると思われたボディも攻撃も中途半端なまま36分間が過ぎてしまいました。

いろんな意味で井岡にとって、難しい試合でした。

何よりも「ここで死んでも構わない」ロドリゲスは「ここで死ぬわけにはいかない」井岡にとって最も厄介な相手だったかもしれません。

ロドリゲスはリング誌7位評価の「まともな世界ランカー」でしたが、それ以上でもそれ以下でもありません。

つまり、ジェルウィン・アンカハスが本調子ならもっと強いし、ファン・フランシスコ・エストラーダとローマン・ゴンザレスはさらに一段上のステージです。

もちろん、完全統一を賭けた大勝負になれば、プロ13年27勝2敗、世界戦だけで20戦18勝2敗の井岡が「ここで死んでも構わない」と全ての持ち札をお披露目してくれるはずです。

。。。。ずっと書いてるテーマですが、まだまだ続きます。 
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 暇つぶしの名無しさん 2021年09月02日 02:23
 
自分は車椅子バスケを見てて(ちなみに勝って準決勝に進みました)全ては見れませんでしたが、ネット民にとっては地元判定にしか見えなかったらしく炎上してましたね

確かに、まともに食らって顔面を跳ね上げられるシーンが目立ってましたね
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外見で人を判断してはいけません。このほんわかした女子大生は世界最高のジャバーです。


ネットで試合結果のニュースを探すと(というほどそんなにたくさん見てませんが)、確かに 「地元判定」「井岡は負けてた」という趣旨のコメントが目立ちました。

ただ、そのコメントの多くはボクシングの判定について詳しい知識がある人でなく「井岡が嫌い」という捻れた感情から反吐を撒き散らしてる感じを受けました。

畑山隆則や竹原慎二ら元世界王者の方々も「ロドリゲスの勝ち」と、オフィシャルの結果に戸惑っていたそうですが、彼らは採点基準をきちんと把握していません。

ジョー小泉もたびたびパッキャオ寄りの判定をするなど物議を醸し出しますが、これらは根っこは同じで、よく理解しているはずの小泉ですらいざ解説になると世界の潮流を忘れてしまい、30年前の日本の感覚でスコアリングしてしまっているのです。

CompuBoxのヒット数は両者ともほとんど変わりませんでしたが、私のようなフシ穴でも井岡の精度が勝っていたのは明らかにわかりました。

浜田剛史は「ドロー」と見ましたが、琉球のサムライも30年前のモノサシしか頭の中にありません。1986年12月のロニー・シールズ戦(2−0のSD勝利)は 35年後の2021年・東京なら完敗です。

「ラスベガスは下がってパンチを避ける方にポイントが流れる」「ニューヨークは手数と攻勢を評価する」…統括団体(日本ならJBC、米国なら各州のコミッション)によって、ルールブック上の採点基準はほとんど同じでも、現実のスコアリングは明らかに違います。

しかし「デオンティ・ワイルダーvsタイソン・フューリー初戦」で英国の巨人が2度ダウンを奪われながらドローにもつれ込んだのは「手数が同じなら精度で上回っていたボクサーの勝ち」 という絶対基準に沿ったからです。

もちろん「井岡vsロドリゲスJr.さん」は、7−1というオッズからも勝ち方を問われていた井岡にとって難しい試合でした。

もっとわかりやすく言うと「ここで死んでも構わないロドリゲスさん」と「ここで死ぬわけにはいかない井岡」の差が「技術だけ見て採点すべき」というルールブックに「挑戦者は井岡のパンチで鼻血を流し、バッティングで目を切っても諦めていない」という感情論が紛れ込んでいたのかもしれません。

議論を呼ぶ採点が生まれるのは「10−10をつけないから、ジャッジの中で自己崩壊して奇天烈な採点結果になる」(リング誌)というのが最大の原因です。

「10−10」は付けてはいけないと誤解しているファンもいますが、それは間違い。

ただ、今回の試合については、メキシコの中継テレビ局も井岡勝利としたように、そんなもの関係なく井岡の勝ちで問題ありません。

オフィシャルは116−112の「2ラウンド差」。ロドリゲスさんの母国メキシコのテレビ局は115−113の「1ラウンド差」。大差ではありませんが、井岡の勝ちは揺るぎません。

井岡の巧さは、絶妙のポジショニングから打ち込まれるパンチのAccuracy=精度の高さに集約されます。

井岡の場合は、普通の選手のAccuracyから更に一段上の「見た目の良さ」も内包しています。

CompuBoxは試合の実態を表現しないケースが普通にある、といつも書いてる私ですが、今日はCompuBoxの数字を拾って昨日の試合を振り返ります。


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