結果も展開も知れ渡っている試合ですが、世界評価も高く、具志堅用高の連続防衛記録更新という悪い意味ではなく非常に保守的でドメスティックな目標を掲げていた寺地拳四朗のキャリア初黒星。

階級最強の呼び声高いWBCジュニアフライ級王者、寺地拳四朗は、これが9度目の防衛戦。リング誌やESPNでもPFP入りが取りざたされる、プライムタイムの29歳。

完全ホームの京都で迎え撃つは、矢吹正道。日本レベルでは強豪ですが、その技術は世界レベルには無いと見られ、試合は「寺地がどう勝つか」が焦点でした。

「最初の4ラウンドでジャッジ2人が矢吹のフルマーク」の公開採点で、寺地が作戦変更せざるをえなかった、寺地永も「悪くてドローと見ていた」という言葉には少し違和感を覚えました。

この4ラウンド、寺地の左ジャブが矢吹をコントロールしていたとは到底見えません。「日本人ジャッジだからジャブを評価しなかった」なんて意見はあきらかにおかしい。

1、2ラウンドは浜田剛史と飯田覚士も一致していたように矢吹です。寺地はバランスを崩す場面が多く、メカニクスは最初から狂ってました。カリフォルニアやニューヨークならもちろん、ラスベガスでも寺地に振れません。

3−4ラウンドは、寺地が左ジャブから立て直しを図りますが、バランスとリズムは狂ったまま。バランスとリズムが欠落してるのは矢吹も同じですが、それが矢吹らしさ。逆に寺地はらしくない。

4ラウンド終了の公開採点は38-38のドローが1人、40-36で矢吹のフルマークが2人。全然、ありうる採点です。

第5ラウンドも寺地のリズムは戻りませんが、強引に手数を増やし、矢吹にオーバーペースの疲れも見えますが懸命に打ち合います。寺地サイドからは取られたと計算しなければないませんが、10-10にスコアすべきラウンド。

第6〜8ラウンド。あの滑らかな寺地のメカ二クスがここまで狂ったままとは。矢吹は懸命に突進するも、空振りが目立ち、これぞ「単なる突進」。右目周りの腫れが目立ちます。

矢吹のエネルギータンクにはもう何も残っていません。試合の趨勢は決まりました。

しかし、8ラウンド終了時点の公開採点は74-78、73-79、75-77。「残り4ラウンドを全てピックアップして三者三様のドロー」(浜田)という厳しいスコアです。

迎えた9ラウンド「倒さなければ勝てない」状況に追い込まれた寺地は当然のスパート。ガス欠の矢吹はボディを叩かれ、完全にグロッキー。ヘッドバットで寺地の猛攻を遮断する矢吹。寺地の顔面は流血で真っ赤に染まります。

「寺地の流血はパンチによるもの」とアナウンスされますが、本当にそうか?(すみません、その後オフィシャルが出てるでしょうがフォローしていません)。

「10−8でもいい」(浜田)という、この試合初めての決定的な3分間でした。

第10ラウンドも寺地がフィニッシュを狙いに、猛攻。弱々しく反撃する矢吹。「ここで返さないと止められますから」(浜田)。

打ち疲れた寺地の顔面に矢吹の必死の左右がヒット。交代してロープを背負う王者に、挑戦者が襲いかかります。

もう限界、一滴のエネルギーも残っていない、そんな状況でも相手が怯んだり、弱気な表情を見せてくれると、体の奥底に隠されていたもう一つのエネルギーのダムが解放されるのです。

「マラソンとボクシングはよく似ている」と語ったのは中山竹通でしたが、まさにそのとおりです。私たちは、この二つのスポーツで、そんなシーンを何度見てきたことでしょうか。

9ラウンドまでのスコアカードは、88-83/86-85/87-84。そして、主審が試合を止めたときの時計は2分59秒。

一番近くで見ていた主審の判断を尊重すべきですが、11ラウンドがあると別の展開があったかもしれません。

矢吹の根性がスリリングなシーソーゲームを演出してくれました。

寺地拳四朗にだって、こんな夜もあります。やれることは全部やりました、さすがです。

矢吹の勝利者インタビュー、最高でした。

「拳四朗を応援してた人には申し訳ない。でも、ときが来たらまた戦います。そのときは両方応援してください」。

こう試合に水を差す意見かもしれませんが、WBCの公開採点は即刻やめるべきです。米国でもその弊害を指摘して、大きな試合ではほとんど採用されません。

この話もリング誌の特集などで取り上げてますが、百害あって一利なし。「あとから採点を書き換えてる」と批判されたWBCが採用した見苦しいシステムですが、逆効果です。というか、もう信用など取り戻せません。
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昨日、いただいたホタテ。ソテーにしていただきます。


寺地が目指したのは、具志堅用高の13連続防衛更新でした。山中慎介や井上尚弥も公言したこともある、最後の国民的ヒーローのボクサーが刻んだ不滅の大記録。

寺地同じ8度防衛の頃の具志堅は堂々たる国民的ヒーローに登り詰め、首相官邸に招かれるなど、王貞治とともに日本スポーツ界を代表する顔でした。

一方の寺地は、テレビ放映もないまま9度目の防衛戦に失敗。

約40年の時間的隔たりがあるとはいえ、同じスポーツとは思えない格差です。
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これは、具志堅と井上や井岡一翔と比較しても、同じ構図です。人気も報酬もこの40年で、ボクシングは地に堕ちました。

「ファイトウィークになってようやく複数立ち上がるオッズ」「リングサイド席がまさかの300ドル」 「観客数発表なし」「ネバダ州アスレティック・コミッションからのファイトマネー発表なし」「米国大手メディアでの報道はなし」…それでも井上の報酬はいつもキレのいい「100万ドル」で「このまま防衛回数を増やしていけば天文学的数字になる」そうです。

もちろん、対戦相手の報酬は発表されません。

「西岡利晃のラスベガス」 も全く同じ、井上は西岡のデジャブです。西岡も全く同じ100万ドルでした。

もう、いい加減にやめましょう。

トップランクと業務提携にあるはずのESPN が「井上なんて全く無名」と書き捨てたのは、放映権料交渉の牽制球でしょう。味方にディスられる、あんな屈辱はありません。

売り出すつもりがない、トップランクとは手を切るべきです。

日本市場の旨味を嗅ぎつけたドン・キングは、大金を用意して競争入札に参加しました。キングですらリスクを冒したんです。

「さいたま」の再現があれば、トップランクと帝拳、大橋との共同興行になるんでしょう。馬鹿らしいにもほどがあります。

井上が米国でPPVメインに乗るとか、1000万ドルファイターになるとか、そんなことがありえないのは過去のバンタム級と、現在のバンタム級(最大のライバル、カシメロのキャリア最高報酬は7万5000ドル、それも1回きり)を見れば、どんな敬虔な信者でも目を覚ますでしょう。

日本の誰も得しません。

もう、いい加減にやめましょう。