カテゴリ: 村田諒太

ロブ・ブラントは評判以上に速くて、上手くて、タフでした。

それでもミネソタ生まれのブラボーが、世界基準を大きく上回るボクサーには到底見えませんでした。

そう見えたとしたら、村田諒太が遅すぎて、下手くそで、易々と打たれ過ぎましたからかもしれません。

応援していたボクサーが、思いもかけない相手に惨敗する。

他のスポーツ観戦では味わうことのない、ザラついた苦々しさがそこにはあります。

「五輪の敗北は、五輪の勝利でしか取り返せない」。よく聞く言葉ですが、ボクシングの場合、絶対に取り返すことのできない重大な敗北が、ときとしてありえます。

いきなり訪れた、ブラックサンデー。村田の株は暴落しました。

クラス最高と謳われた防御は簡単に間を割られ、最強の右はついに一度も火を噴きませんでした。

ただ、これで終わりじゃありません。村田が、自分の口から引退発表をするまでは、何一つ終わっちゃいません。

彼が引退宣言するまでは、その株価は今は底値かもしれませんが、これが終値ではありません。



日本のボクサーが喫した、ショッキングな敗北について振り返ってみたいと思います。


🌇長期政権の終焉🌇

10度以上の長期連続防衛を続けるチャンピオンの敗北は、いつか訪れるものと覚悟をしていてもショッキングなものです。
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具志堅用高(1981年3月8日:WBAジュニアフライ級14度目の防衛戦/ペドロ・フローレンスに12ラウンドTKO負け)、長谷川穂積(2010年4月30日:WBCバンタム級11度目の防衛戦/フェルナンド・モンティエルに4ラウンドTKO負け※モンティエルはWBO王者だったが、当時JBC非公認のため長谷川が勝っていても統一王者にはなれなかった)、内山高志(2016年4月27日:WBAジュニアライト級12度目の防衛戦/ジェスレル・コラレスに2ラウンドKO負け)、山中慎介(2017年8月15日:WBCバンタム級13度目の防衛戦/ルイス・ネリに4ラウンドTKO負け)。

彼ら四人の敗北は、いずれも格下と見られていた挑戦者に完敗、惨敗を喫したものでした。

その一点においては昨日の村田のケースと同じ〝サドンデス〟です。

しかし、10度以上にわたる防衛戦でボクシングの精度が落ち、劣化も懸念されていた長期政権王者と、まだ坂を登る途中の村田の挫折は同列に語ることはできません。


🌇希望の灯が消えたとき🌇
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辰吉の初黒星を悲嘆するナンバー誌の緊急増刊号から。

1992年9月17日、大阪城ホール。ここでも、目にしたくなかった大番狂わせが起きました。

前年9月19日に、グレグ・リチャードソンを圧倒、デビュー7戦目でWBCバンタム級王者に就いた辰吉丈一郎の評価は天井知らずでした。

リチャードソン戦後に左目網膜裂孔のため丸1年のブランクを作っても、メキシコのラフファイター、ビクトル・ラバナレスには苦戦すらしない、そう誰もが考えていました。

34勝18KO10敗2分、凡庸な戦績のラカンドン族の末裔は、アルマンド・カストロ(後の鬼塚勝也の最強挑戦者)や、アルマンド・サラサールら世界挑戦経験者に勝利を収め、李勇勲にも負傷判定で勝って暫定王者になっていましたが、スタミナまかせの不器用な突進しか出来ないレベルの低いボクサーと見られていましたし、その見立ては間違っていません。

しかし、この日、スタミナまかせの不器用な突進に辰吉が耐えられたのは9ラウンド1分19秒という、30分足らずの時間だけでした。

辰吉の初黒星は、ナンバー誌が緊急増刊号を出すほどに、当時のスポーツシーンではショッキングな〝事件〟として扱われました。

そして、ナンバー誌をはじめほぼ全てのメディア、ほぼ全てのファンは「敗因は眼疾によるブランク」と考えましたが、翌年の再戦で辰吉は雪辱を果たすものの2−1のSD、辰吉もまたラカンドンと同じ水準の愚鈍なファイターに過ぎないことを露呈してしまいます。

「マイク・タイソンはバスター・ダグラスに敗れて別人になってしまった」。同じロジックで、辰吉のラバナレス戦が語られることもありますが、タイソンも辰吉も、格下相手には鮮やかなパフォーマンスを見せる一方で、致命的な欠陥を抱えたボクサーという一点で共通していました。

タイソンはナンバリングシステムに侵されたワンパターンと、それ以上に深刻な精神の脆弱さを。辰吉は初歩的なショルダーブロックすらマスターしていないのに、いたずらにガードを下げる危険きわまる無防備を。

しかし、タイソンと辰吉が〝完璧なボクサー〟という幻想を打ち砕かれてからのキャリアで、人間的な魅力を解き放ち、現在も多くのファンを惹きつけてやまないという事実は非常に興味深いものがあります。

過去の日本人ボクサーにはない、その可能性に、多くのファンが大きな夢を託したということでは、辰吉と村田の輪郭は明らかに重なり合います。

しかし、完璧なボクサーという幻影を多くの人に見せた…ということを考えると、辰吉と村田の敗北の間にシンクロする要素は見当たりません。

しかし…。

もし、村田がこのあと評価の高いチャンピオン相手に感動的な大番狂わせを起こすようなら、二人のキャリア、生き様がオーバーラップして見えるかもしれません…。
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まさかの敗戦。

「点数、何点だろうが、負けは負け。(大差を)つけられてもおかしくない。ブラントは速かった。インテリジェンスで上だった。打ち終わりを研究していた。自分のボクシングの幅の狭さ。ベストは尽くした」。

達かに予想以上にブラントは速くて、よく動いていました。

これまで必ず序盤で対戦相手を絡め取ってたプレッシャーの網をブラントが易々とくぐり抜けた時点、つまりかなり早いラウンドでBプランを発動すべきでしたが、村田にできたのは折り返しの7ラウンドになって強引に攻め込むだけでした。

「自分のボクシングの幅の狭さ」。聡明な青年の自己分析は常に的を得ています。

ブラントは「村田に関するものはビデオはもちろん、発言まで手に入るものは全てチェックした」という言葉通りに、日本の期待の星を研究し尽くしていました。

ボブ・アラムは「3月か4月に東京でリマッチ。その内容と結果は今回とは全く違うものになる」と再戦条項を行使するつもりですが、当の村田は
「再戦を要求するような内容じゃないので、僕が言うことじゃない。今後は考えられない。今すぐどうというものではない」と進退そのものを明らかにしていません。

アッサン・エンダムに不当判定で盗まれた昨年5月20日の有明コロシアムと、今回のパークシアターの敗北は、オフィシャルでは同じ1敗でも、その内容は真逆の意味を持ちます。

有明コロシアムの夜も、村田は「いろんな人が関わっている。自分がまだやりたいからと言って出来るものじゃない」と進退を保留しました。

確かに、電通やフジテレビがプロジェクトチームを立ち上げて「日本人がボクシング中量級で覇権を確立する」というMission Impossible に取り組んできました。

多くの企業がスポンサーに名乗りを上げ、ボクシングファンを超えて日本中が応援したことを考えると、これは、二社だけのプロジェクトではなく国家的な事業だったのかもしれません。

有明の夜、今なおリング誌がミドル級の10傑に数える世界的な強豪アッサン・エンダムを相手に、リング誌やESPNをはじめ多くの海外メディアが「117−111」と採点した〝敗北〟は、このプロジェクトを支えるスポンサーやファンを絶望させるどころか「ほら!世界に十分通用したじゃないか!」という明らかな手応えを感じさせてくれました。

当時のエンダムはリング誌でミドル級5位、ESPNの年間最高KO賞に輝いたばかりの紛うことなきトップ選手でした。

しかし、日本時間で今日の白昼に遠くラスベガスで繰り広げられた36分間の戦いは、希望を見出すにはあまりにも厳しい内容でした。 

2013年から5年、16戦目で初めて見せた蹉跌です。

しかし、村田は何もない場所から叩き上げられたボクサーではありません。

10代でプロデビューしての5年目ではありません。

デビューから、日本を代表する大企業が組み上げた神輿に乗って、日本中が声を枯らして応援した、この国のボクシング史上でも全く前例のないエリートボクサーです。

よし!もう一回、やり直したるぜ!とリセットするには、途方もなく多くの人や、貴重な時間や、膨大なお金を巻き込んでしまいました…と、本人は思っているでしょう。

もちろん、その通りですが…。

村田はもう一度、大航海に戻ることが出来るのか。

私たちはもう一度、パイレーツ・オブ・カリビアンを聞くことが出来るのか。

村田は「自分がやりたいと言って、やれるもんじゃない」と吐き出しましたが、やるかやらないかは村田の意志です。

重圧という風を常に受け止めなければいけない神輿の上から、降りてもいいかもしれません。

もちろん、実質初めての挫折でメインスポンサーが離れることはなく、神輿から降りることは許されないかもしれません。

「ミドル級だからラスベガスの大会場でビッグファイトと思ってたけど、日本のボクシングを考えたらそれは東京ドームでいいんじゃないかと考えるようになった」「自分が注目されてボクシングが見直され、日本王者になってもアルバイトをしないと食べていけない現状が少しでも変われば」…。

村田諒太は、もっと自分勝手に生きていいと思います。

2011年、アゼルバイジャンのバクーで開かれる世界選手権に乗り込んだ時だったと思います。

「ミドル級なんて日本人には絶対ムリ?日本人にはムリなのかもしれないけど、僕は村田諒太だから」と豪語した姿は輝いていました。

ずっと応援し続けてきたファンの一人として、続けて欲しいのか、それともここで潔くグローブを吊るして欲しいのか…正直わかりません。




「ブラント相手に完敗するようじゃ先が知れてる?ここでへこたれるようなボクサーじゃない、だって僕は村田諒太だから」。

そう強がって欲しい気もしますが…。

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戦前のオッズも事細かく出揃いました。

ウィリアムヒルでは、村田勝利が1/6(1.16倍)、ブラント2/7(3.5倍)と、ラスベガスのオッズよりも接近。

KO決着なら村田1.57倍、ブラント7倍と、大きく開いていました。
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パイレーツ・オブ・カリビアンに乗って、入場する村田のTシャツには「DON'T STOP UNTILL THE TOP」の文字が。

第1ラウンドから少し何かが違いました。

老いたユルゲン・ブレーマーを相手に何もできずに、迷いっぱなしで12ラウンドを浪費したブラントでしたが、今日のリングでは別人のような固い意志を最後まで貫徹してみせました。

村田は途中、何度も右足を気にして、9ラウンドには後ろ足を蹴る仕草をはっきり繰り返してしまいます。

調整に失敗していた可能性が高いですね。

一方でブラントは、本当によく村田を研究していました。

試合を通してブラントは下がり続けましたが、4、5ラウンドを除いて村田の重圧はかかっていません。残るラウンドは、村田が前に出されていただけです。

終盤は村田の方がダメージを負い、スタミナも消耗しているように映りました。

ベストコンディションでなかったのは明らかですが、それも含めて絶対に勝たなければいけない試合でした。

大幅な減量をしない村田ですから、減量でどうこうはなかったと思いますが、いくつかの細かい調整がうまくいかず、リングの上で大きな狂いが噴き出したのかもしれません。

しかし、そんな推測も全て、言い訳です。

今の時点で、来春の東京ドームは村田には大き過ぎます。5−1に開いたオッズをひっくり返されたのです。

悔しいですが、これが現実です。

オフィシャルは119−109×2に118−110。村田寄りに付けた私の採点も117−111。左ジャブと手数を重視するラスベガスという場所を考えたら、119−109は全然ありうるスコアです。

とにかく完敗です。
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PHOTO / @TRBOXING

DON'T STOP UNTILL THE TOP。トップに立つまで止まらない…はずでしたが…。

大きな挫折です。悲しい敗北です。

急ブレーキのかかったアジアの重戦車はこれからどこへ向かうのでしょうか?

   



*****

NABF北米ジュニアウェルター級タイトルマッチ、王者マキシム・ダダシェフvs挑戦者アントニオ・デマルコは、32歳のメキシカンが大健闘。

7ラウンド終盤には、デマルコの攻勢に28歳のロシア人がクリンチに逃れる場面も。

大方の予想を裏切り、判定までもつれ込んだ一戦は3−0でダダシェフに軍配が上がりましたが、全勝のロシアンはキャリア二度目の判定を味わいました。
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村田諒太vsロブ・ブラント、注目の一戦が迫ってまいりました。

米国では「村田勝利は確実。問題は勝ち方」と見られているように、ほとんどのブックメイカーが村田勝利に1.25倍、ブラント4倍と、アバウト4−1で日本の金メダリストが明白に有利のオッズを張っています。
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betfair に至っては村田の勝利は1.13倍です。

Fightnews.com は現地のオッズは5−1と伝えていますから、ラスベガスでは村田が圧倒的有利というムードなのでしょう。

クラス最強のフィジカルと右の大砲を持つ村田が、特別なものは何一つ持たない謎の世界ランカー、ブラントを圧倒する、と予想されているのです。

しかし、予想の内容は、逃げるブラントを捕まえ切れずに、12ラウンド判定勝ちというのが大方の見方です。

これは、何としても倒して欲しいですね。

チケットはまだ残ってるそうです。まあ、村田の米国での知名度はまだまだ低いですし、ブラントはそれ以下ですからね。

Tickets are priced at $204, $104, $54 and $29, not including taxes and handling fees, (税込みで2万4500円、1万2500円、3800円)

それにしても、高い!…カジノ&リゾートでの試合なので無料チケットが大半なのでしょうが、窓口価格はもう少し抑えてもいい気がします。
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村田は調子が良さそうですね。口も滑らかです。

「この試合をクリアしたら一番戦いたい相手は誰?」と聞かれて  「“I would like to fight Canelo Alvarez, but without the Mexican beef!”  カネロ・アルバレスと戦いたい、でも(筋肉増強剤入りの)メキシコ産牛は無しで」と軽妙に答えて、米国の報道陣を喜ばせていました。

ブラントは「村田は五輪の金メダリストで、今は世界王者。日本人なのにラスベガスでメインを張るのだから、普通じゃない。村田のことは尊敬している。最高の自分を出さなければ勝てない相手だが、その状態に仕上げることができた」と、村田へのリスペクトを示しつつも自信満々です。

現地では「村田とvsカネロ戦は実現可能性が薄いが、来年の早い時期にゲンナディ・ゴロフキンと東京ドームで戦うだろう」と既定路線のように報道されています。

心配性のファンにとっては「まずはブラントに圧勝してから」と、先の話は控えたい気もしますが、やはり楽しみです、胸が躍ります。 
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村田諒太が目指すもの。

それは、増殖した団体が乱立させる a Champion の一人になることではありません。誰も異論のない、議論する余地のない、The Undisputed Champion の座を勝ち取ることです。

そして、Undisputed Champion を求める磁力は、ミドル級ではいつの時代も絶えることがありませんでした。

WBCがWBAから分離独立した直後もミドル級は、ニノ・ベンベヌチ、エミール・グリフィスの二強時代からカルロス・モンソンの絶対王政へと王座は移行、統一王者を擁立し続けます。

もし、モンソンが軟弱な王者であったなら、とっくの昔にミドル級は、他階級と同様に王座の威厳は液状化し、タイトルは散逸していたでしょう。

カルロス・モンソン。〝Escopeta〟(ショットガン)の異名が物足りないほどの凶悪なミドル級王者です。

一度はWBCから剥奪されたベルトを再び取り戻し、ミドル級のUndisputed Champion の系譜を守り抜いた偉大で恐るべきチャンピオンです。
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GONG WORLD BOXING 1982年2月号増刊「衝撃のミドル級 この一冊に衝撃のミドル級栄光不滅の全ドラマがある」=写真左の女性がスサナ・ヒメネス。

リングの中での圧倒的な強さと、リングの外での破天荒な生き様。「プロボクサーの世界チャンピオン」という一つの典型を、映画のように走り抜けたアルゼンティーナでした。

メガファイトを何試合も繰り広げたモンソンですが、1試合を選ぶとなるとウェルター級王者ホセ・ナポレスの野望を打ち砕いた七度目の防衛戦を挙げます。

ウェルター級の名王者をミドル級の絶対王者がひれ伏せさせる…ボクシング史を彩るスペクタクルの代表的な傑作です。

ときは1974年2月9日、場所は花の都パリ。なにゆえパリか?このメガファイトをプロモートしたのが、誰あろう、ボクシングに心酔していた当代きっての名優アラン・ドロンだったのです。
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ナポレスのシャープな左フックがモンソンの顎にヒット!先にペースを掌握したのはウェルター級王者でしたが…。

試合はまさに絵に描いたような「ウェルター級の名王者vsミドル級の絶対王者」の展開を見せます。

スピードに勝るナポレスが、左ジャブを起点に右のパンチへとつなげる〝Mantequilla〟(バター)の渾名通りの滑らかな攻撃で、2ラウンドまで主導権を握ります。

しかし、ナポレスのタイミングを読み切ったモンソンが3ラウンドから手数を増やし、強烈で正確なショットガンがナポレスの顔面を何発も撃ち抜きます。

6ラウンドにはモンソンの重層な攻撃にナポレスは何も抵抗できません。

7ラウンド開始ゴングが鳴っても、誇り高きメキシコのMantequillaはストゥールから立ち上がれません。ナポレスは、座ったまま試合を放棄する屈辱を味わいます。

しかし、それにしても、モンソンのなんと強いことか。この前の年、浮気性のモンソンは怒り狂った妻に足を撃たれ、半日に及ぶ大手術と1ヶ月に渡る入院を強いられていたというのに。

あのモンソンが、拳銃で撃たれたくらいで怯む訳がありません。リングの中と同様に、リングの外でも破天荒な生活を満喫します。

アルゼンチンの人気女優スサナ・ヒメネスとの浮気に、妻への度重なるDV…モンソンはパパラッチの格好の餌食になりましたが、日本の有名人のように不倫やDVを暴かれて謝罪会見を開くような女々しいことをモンソンはしません。

謝罪会見の代わりに、こっそり写真を撮り記事にしたパパラッチを殴り倒して半殺しにしてしまいます。

1977年7月30日、ロドリゴ・バルデスとの再戦に勝利を収め、14連続防衛に成功したモンソンは「もはやリングの上で証明することは何一つない」と、王者のままグローブを吊るします。

しかし、私生活は現役時代同様、荒れまくります。モンソンの暴力に恐怖したヒメネスは、彼の元を去ります。

それでも、ウルグアイの美人モデル、マリシア・ミュニズとすぐに結婚。破滅的に凶悪な男性は、女性を惹きつける不思議なフェロモンを発散させるのかもしれません。

1981年には4年半のブランクを破って「マービン・ハグラーを倒せるのは俺だけだ」とカムバック宣言をしますが、不摂生を重ねた39歳のアルゼンチーナに、無敵の27歳に立ち向かう能力はもちろん、厳しい練習に耐える精神力が残されているはずがありませんでした。

気まぐれな復帰宣言を繰り返しながら、モンソンは狂乱の生活を送り続けます。

1988年に妻ミュニズの首を絞めたあと、ベランダから突き落として殺害。懲役11年の刑を宣告されます。

そして1995年1月、仮出所したモンソンは運転中に事故を起こし、そのまま帰らぬ人となりました。

享年52歳。

「ミドル級の呪い」。忌々しいジンクスに、また新たなページが加えられてしまいました。

そして、モンソンが手放して、その磁力を喪うと心配されたミドル級は、アルゼンティーナの強さをそのまま引き継いだ不動明王のようなマービン・ハグラーの拳によって、タイトルは散逸することなく、強力に束ね続けられることになるのです。

 次は、ミドル級が最も絢爛豪華に輝いたハグラーの時代です。
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今週末、ビリー・ジョー・サンダースがドーピング違反のために空位のとなったWBOミドル級王座をウォルター・カウトンドクワと争うデメトリアス・アンドラーデは「トップファイターが互いに敬遠せずに戦うべきだ」と、カネロ・アルバレスやゲンナディ・ゴロフキンが目先の報酬だけを求めて、指名試合や強豪との対戦を避けている現状を批判しました。
“I think Middleweight can be the new glamour division in boxing,” 
ミドル級はもっと魅惑的なクラスになる可能性がある。〜デメトリアス・アンドラーデ
しかし、歴史を振り返ってみると、ミドル級は常に魅惑的で、ときには全階級を通じて最も豪奢なクラスであることも珍しくありませんでした。

そして、今なお全階級を見渡しても、ミドル級ほど統一への求心力が強いクラスは存在しません。

人気階級であるがゆえにファンやメディアがUndisputed Champion を強烈に求めること、そして何よりも圧倒的な強さを誇る王者が間断なく出現していることが、承認団体と階級がガン細胞のごとく増殖してゆく時代でも、この階級を特別な存在たらしめてきました。 

今から遡ること半世紀あまりの1966年、WBAからWBCが完全に分離独立、プロボクシングは深い魔宮に迷い込み、悲劇の二団体時代に突入してしまいます。

1980年にはIBFがやはり、WBAの下部組織NABFから発展独立、世界王者が三人も乱立するもはや喜劇の時代が幕を開けました。

こうして、「他の誰にも王者を名乗らせない、Undisputed Champion 、The Champion」になるには少なくとも三人の「a Champion」を倒さなければならないシュールな時代が訪れたのです。

団体が分裂してしまうと、ただでさえプロモーターやTV局の利害関係が複雑に交錯するプロボクシングの世界で Undisputed Champion を産み出すことは至難の業、ほとんど不可能でした。

現実に日本では、二団体時代も欧米から取り残されたジュニアミドル級でUndisputed Champion の座を保持していた1975年の輪島功一を最後に、Undisputed Championは半世紀近くも生まれていません。

WBSSで優勝候補筆頭の井上尚弥が下馬評通りにモハメド・アリ杯を獲得したとしても、WBCのピースはコレクションできず、過酷なトーナメントを勝ち残ってもUndisputed Champion は名乗ることが出来ないのが現実です。

「1966年、ボクシングは死んだ」。そう言われる所以です。

しかし、そんな魔宮、魔界でも奇跡的に聖域が残されました。

ミドル級です。1970年に絶滅したはずのUndisputed Championでしたが、このクラスだけを例外に、荘厳に生き続けたのです。

マーベラス・マービン・ハグラーが実質5年以上のブランクから復帰したシュガー・レイ・レナードとの対決を選択、WBAとIBFが王座を剥奪された1987年まで、なんと17年間も聖域が守られました。
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欧米で人気のミドル級はアジアにとって高く分厚い壁であり続けています。最初にこの壁に風穴を開けたのはフォリピンのセフェリノ・ガルシアでした。

1890年の創設以来、初代王者の〝Nonpareil〟(天下無双)ジャック・デンプシー、史上初めてヘビー級を制覇したボブ・フィッツモンズ、「ミドル級の呪い」(王者は非業の死を遂げる)の最初の犠牲者スタンレー・ケッチェル、実は右目は義眼で片目で怪物的な強さで君臨したハリー・グレブ、ヘンリー・アームストロングの4階級制覇を阻んだフィリピンの英雄セフェリノ・ガルシア、〝鋼鉄の男〟トニー・ゼールから「傷だらけの栄光」(1956年公開:主演ポール・ニューマン)を掴んだロッキー・グラジアノ、殿堂創設のきっかけとなったカーメン・バシリオ、そして近代ボクシングを創設した拳神シュガー・レイ・ロビンソン…。
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シュガー・レイ・ロビンソン。「生まれ変われるのならロビンソンの試合をこの目で見たかった」(ジョー・小泉)。この深淵なスポーツについて知れば知るほど、誰もが彼の偉大さを思い知らされることになります。

豪華絢爛な歴史を紡いできた160ポンドですが、ここでは団体分裂後も聖域を守り抜いたTHE CHAMPIONの偉大な系譜を辿っていきます。
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村田諒太がラスベガスでメインを張る、WBAセカンドタイトルの二度目の防衛戦まであと5日。

リング誌やESPNのランキングはもちろん、他団体ですらTOP10に入っていない無名のロブ・ブラントが相手とあって、試合が迫っても盛り上がりに欠たままです。

「東京ドームでGGGとの統一戦」という夢プランが、少なくとも〝統一戦〟という意味からは潰えたしまったことも、その原因かもしれません。

しかし、世界のミドル級は動いています。10月16日現在のリング誌ランキングから総覧していきましょう。
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まずはWBAスーパー/WBCのタイトルを持つ【リング誌チャンピオン】カネロ・アルバレス。

傑出した人気を誇るメキシカンはスーパーミドル級に進出、ロッキー・フィールディングの持つWBAセカンドタイトルに挑戦することが決定(12月15日マディソン・スクエア・ガーデン)しています。

オッズはカネロ勝利1.04倍、フィールディング8倍。

昨年5月の干からびたフリオ・セサール・チャベスJr.戦以来のスーパーミドルですが、8ポンドも重いスーパーミドルでカネロがどこまで動けるのか注目です。

ここで大きな焦点が、カネロはミドル級に戻ってくるのか?です。

西海岸に絶大なサポーターを抱えるカネロが、英国人のフィールディングとニューヨークで戦う狙いは「米国征服」と「英国進出」(といってもホームに英国のスターを呼ぶ構図です)でしょう。

現状のミドルとスーパーミドルを見渡すと、カネロにとって美味しいタレントが揃っているのは明らかにスーパーの方です。

ヒルベルト・ラミレスとの同胞対決。

WBSS優勝のカラム・スミスが兄リーアム(2016年:カネロに9ラウンドKO負け)の仇打ちに、カネロと戦う。

英国の人気者、ジェイムズ・デゲイルとクリス・ユーバンクJr.とのマッチアップも大きな興行になるでしょう。

ここで、いつカネロウェイトが発動するかも注目です。168ポンドがカネロにとって重いことは間違いありません。

第一次カネロウェイトは155ポンドでミドル級の世界タイトルマッチを敢行しました。160ポンドのミドルよりも154のJr.ミドルに肉薄する理不尽なキャッチウェイトでした。

強豪のスーパーミドル相手なら、161ポンドのキャッチウエイトを要求してくる可能性大です。



【1位】はゲンナディ・ゴロフキン。

カネロとの再戦に敗れて、GGGは8年以上もその腰を離れることがなかった世界チャンピオンのベルトを一本残らず手放してしまいました。

36歳のGGGがキャリアのフィナーレを考えて、ビッグファイトを希求し続ける気持ちはこれまで以上に強くなるはずです。

カネロには人気で大きく劣るため、熱望してる第3戦は赤毛の28歳がボールを握っています。

ミドル級にこだわると、カネロに次ぐビッグマネーを得られるのは村田諒太と東京で戦うことですが、村田がブラント戦をクリアしても賭けられるベルトはWBAセカンドの一本だけ、Undisputed Champion を希求し続けたGGGにとっては寂しいですね。

日本のファンにとっても「ミドル級最強、PFP1位」でなくなった今のGGGの株は大きく下落してしまっています。



【2位】ダニエル・ジェイコブスは、10月27日マディソン・スクエア・ガーデンで、【4位】セルゲイ・デレビャンチェンコと空位のIBFタイトルを争います。

これは強豪激突、注目の一戦です。ミドル級で実績十分のジェイコブスに、サム・ソリマン、トルエノ・ジョンソンといったミドル級の門番的選手をKOして評価を上昇させてきたウクライナの俊才が挑むという構図です。

31歳のジェイコブスと、32歳のデレビャンチェンコ。ミラクルマンの方が若いというのは、両者のプロキャリア(ジェイコブス34勝29KO2敗/デレビャンチェンコ12戦10KO無敗)からは意外ですが、ウクライナの〝ザ・テクニシャン〟(わかりやすい異名です)がトップアマでプロデビューが遅れただけの話です。

二人とも技術はもちろん、強力なパワーを持ち合わせているだけに、スペクタクルな試合になるかもしれません。



【3位】はドーピングでWBO王座を失ったビリー・ジョー・サンダース。 

英国で人気も地位もあるボクサーだけに、すぐに復帰するんでしょうが興味は失せますね。

言い訳を何ダースもほざいていますが、他の競技なら永久追放までいかなくとも、最大4年の出場停止処分です。



【5位】はジャーマル・チャーロ。

ジュニアミドル級時代から「カネロが敬遠したボクサー」と多くのファンが信じているスラッガーです。

このジャーマルがWBC暫定王座を保持しており、このままだとまたWBCから対戦指令を出されることを恐れたWBC王者カネロがスーパーミドルに逃避した、なんてことまで言われるほど勝ちっぷりのいいボクサーです。

「すぐに対戦しなかったとから逃げた」いうロジックでは、前WBC王者のGGGも対戦を避けたことになります。

実際にアベル・サンチェスは「(WBCが指名挑戦者にランクしても)ジャーマルとはすぐ戦わない」と公言していましたが、人気のないジャーマルは優先順位が落ちるということです。
 
一発強打のスラッガーなのに結構まとまっていて、ミドル級の米国人にしては全く人気がない、そして無敗。

確かに、誰もが戦いたくないボクサーの典型です。 誰かが最初に鈴を付けてくれる、魔法を解いてくれるのを待っている状態ですね。

アル・ヘイモン傘下の28歳は、プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)のリングにいつデビュー出来るのか、本人は相当苛立っているはずです。



さあ、そして【6位】村田諒太です!

この人には、あまり説明は要らないですね。

週末、ブラントを豪快に吹っ飛ばしましょう。

世界的には「右の一発とフィジカルだけならトップ」という評価ですが、それって十分ですよね。

日本人が、利き手のパワーと肉体の頑健さでトップと認められてるなんて嬉しくなります。

そして、五輪金メダリストが、次の引き出しを持っていないはずがありません。

ブラント相手ではBプランはお披露目してくれないでしょうが、今後が楽しみです。



【7位】はカナダの伊達男デビッド・レミュー。

ハンサムな容姿と左右の強打でカネロ、村田に次ぐマネーパワーを誇りますが、GGGに惨敗、サンダースにまで完封されたのを目の当たりにしてしまうと、カナダ人じゃない私の興味は失せました。

GBPが売り出した過大評価の見本です。

先月、アイルランドの伊達男?ゲイリー・オサリバンを1ラウンドで屠った試合も、オサリバンが予想以上の見掛け倒しの未熟者だっただけです。

GGGにねじ伏せられる前、アッサン・エンダム戦までのレミューならサンダースを逃さなかったと思いますが、そんなことを言っても仕方ありません。



【8位】デメトリアス・アンドラーデ。

 ジャーマルと同じ、ジュニアミドルからの無敗の転校生。

10月20日ボストンで、サンダースのWBOタイトルに挑戦するはずでしたが、英国人がまさかのドーピング陽性反応。

急遽、代打に送られたウォルター・カウトンドクワと空位のWBO王座を争うことになりました。

オッズはアンドラーデ1.07倍、カウトンドクワ10倍、おおよそ10−1です。

アンドラーデ25勝16KO、カウトンドクワ17勝16KOと無敗対決ですが、ガーナのリングに上がった1試合以外の全16試合を母国ナミビアで戦ってきたカウトンドクワの戦績は世界基準から離れた対戦相手によって作られたものです。

経験不足のナミビア人にとって、サウスポーのアンドラーデと渡り合うのは厳しいかもしれません。

それでも、〝死刑執行人〟と渾名されるナミビア人にビッグマウスのアンドラーデを倒して欲しいですね。



【9位】はアッサン・エンダム。
 
なんだか、懐かしい名前に感じてしまいます。

村田との初戦を戦ったのが昨年5月ですが、もっと長い時間が経った気がします。再戦で完敗してしまってから、休眠状態であるからかもしれません。

ストップされたのは村田だけ、という稀代のタフガイですがもう34歳。残された時間は多くはありません。

ピーター・クイリンとレミューを最後まで手こずらせたカメルーンのゾンビは、年間最高KO賞に輝く強打まで持ち合わせていました。

WBA暫定王者アルフォンソ・ブランコを1ラウンドで仕留めたシーンは戦慄でした。

ゾンビと強打の残像が、村田の脳裏から離れなかったことが初戦でトドメを刺せなかった最大の理由でしょう。 



【10位】マチェック・スレッキ 

12月に予定されているジャーマルのPBCデビューで、対戦相手の有力候補に挙げられています。

今年4月にジェイコブスに敗れたとはいえ、このクラスで10傑に数えられる技術の持ち主であることも証明しました。

一方で、このポーランド人の拳は左右共に軽すぎます。フェザータッチのボクシングではミドル級では限界があります。 
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井上尚弥のWBSS初戦が明日に迫った日本時間10月6日、カネロ・アルバレスがスーパーミドル級で戦うというニュースが飛び込んできました。
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因縁のゲンナディ・ゴロフキン第3戦、北米の人気者デビッド・レミューと防衛戦、ミドル級でカネロに次ぐマネーパワーを持つ村田諒太とのビッグファイト…様々なオプションが囁かれる中で、まさかの転級宣言です。 

「次の試合が内定して興奮している。12月15日に、(東海岸デビューとなる)マディソン・スクエア・ガーデンで戦う」。

SNSで28歳のメキシカン本人が書き込んでいます。

対戦相手はWBAセカンド王者のロッキー・フィールディング(27勝15KO1敗)。この〝二番王者〟にカネロが挑戦する形となります。

WBAスーパーミドル級は、先日行われたWBSS決勝で優勝したカラム・スミス(25勝18KO無敗)がWBAスーパーを保持しているため、フィールディングスは主要メディアで王者と認められていません(腐敗承認団体が乱立するのはまだ許せても「1団体が二人の世界王者を承認するのは明らかに間違っている」という極めて真っ当な理屈です:日本では WBAセカンドを〝正規王者〟と呼ぶこともありますが、世界的にはスーパー王者が存在するケースでは、このタイトルは〝二番王者=真の王者ではない〟と見られています)。 

リング誌とWBCダイアモンド(WBCが発作的・恣意的に認める気まぐれなタイトルのため世界王座と認められていません)もスミスが腰に巻いていますが、IBFはホセ・ウスカテギ(28勝23KO2敗)、WBOはヒルベルト・ラミレス(38勝25KO無敗)、WBCはデビッド・ベナビデス(20勝17KO無敗)と、WBSS決勝戦が終わったというのに群雄割拠の状態は変わりません。

168ポンド、スーパーミドル級は伝統的に英国で人気を集めてきたクラスです。

ボクシング人気沸騰中の英国は現在もスミスを筆頭に、スミスにWBSS決勝で敗れたジョージ・グローブス、北京五輪金メダル、元IBF王者ジェイムズ・デゲイル、この階級をメジャーにした父親の遺伝子を継ぐクリス・ユーバンクJr.らスター選手がひしめいています。

フィールディングもリバプール生まれの31歳、沸き立つ母国でメジャープレイヤーの仲間入りを狙っています。

9月15日の世紀の再戦でGGGに勝利、PPVで110万世帯を売り上げ、約60億円のファイトマネーを荒稼ぎしたカネロは、その代償に左目上を深く切ってしまいましたが、傷の回復は順調なようです。

今回も判定が議論を呼んでしまいましたが、初戦とは立場逆転の「攻め込んで勝利した」カネロの評価は高騰、次戦を選り好みしても批判するファンやメディアは少ないでしょう。

現状のミドル級を見渡すと、村田諒太を除くと興行的に美味しい相手は見当たりません。その村田にしても米国でのアトラクションは低く「敵地・東京に乗り込む」という条件付き。それでもGGG2ほどの報酬は期待出来ません。

英国に巨大なファンベースを築いているスーパーミドル級でカラム・スミスや復帰が噂されるカール・フロッチとのメガファイトまで漕ぎ着ければ、GGGよりもローリスクで同等かそれ以上の報酬が期待出来ます。

ニューヨーク、東海岸デビューに加えて、英国での注目度も上げることが、28歳のメキシカンの商品価値をさらに引き上げることは間違いありません。

長らく蜜月関係にあったHBOがボクシングから撤退、米国とプレミアムケーブルの没落が鮮明になったいま、エディ・ハーンやDAZN、ESPNがカネロにラブコールを送るなど、新時代突入です。

フィールディングはセカンド王者のベルトを持っているとはいえ、まともな対戦相手はスミスだけ。その試合も1ラウンドで敗れています。

カネロにとってはチェリーピッキング、日本でいう〝雑魚狩り〟です。

フィールディングをプロモートするハーンは「英国のロッキーがニューヨークで大番狂わせを起こす」とついにカネロと絡めたことに興奮しています。

北米最大のスターだけに世界的な注目度も半端じゃありません。

すでにオッズも立ち上がって、ウィリアムヒルの数字はカネロ勝利1/25(1.04倍)、フィールディング8倍。8−1でカネロ圧倒的有利です。

その一方で「東京ドームで村田と対決!」というドリームマッチは、厳しい見通しとなってしまいました…。
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採点結果を聞くと、インタビューを拒否してリングを降りてしまったゲンナディ・ゴロフキンでしたが、控室で5㎝に渡ってカットした右目上を8針縫うと、質問に応じました。
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「ジャッジが決めたんだから勝敗にとやかく言うつもりはない。ファンに喜んでもらえるいい試合ができたと思う。接戦だったが、私が試合をコントロールしていたはずだが…。(カネロはメキシカンスタイルで挑んできたか?)それは見た人で判断してくれ」。

そして、カネロとの3度目の対決については「是非、やりたい」と即答しました。

一方で、2012年から蜜月関係が続いていたHBOとの契約は、この試合で満期終了。契約を更新するかどうかが、日本のファンにとっても注目です。

というのも、村田諒太が契約しているトップランクのESPN+か、マッチルームのDAZNと契約するなら両者の東京ドーム決戦は実現に向けて一気に進みそうですが、「カネロ3」を優先してHBOと新たに契約を結ぶようなら、交渉は難航しそうです。

GGGは勝っていたら、フリーになって村田との東京決戦でビッグマネーを稼ぐ算段でしたが、この敗北でご破算です。

Next to a third fight with Canelo, Golovkin’s likely best chance for a big payday would be for him to fight World Boxing Association ‘regular’ middleweight champion Ryota Murata.

However, the Top Rank promoted Murata fights on ESPN, so a fight between him and Golovkin might not be possible unless the two of them were fighting on the same network.


ゴロフキンにとって「カネロ3」の次に、大金が稼げるのは、WBAレギュラー王者の村田諒太との一戦だ。 ただし、村田をプロモートするトップランクはESPNと契約しており、両者が放映権の問題で妥協しない限り、この試合は実現しない。

HBOと大型契約を結んでいるカネロについても同じことが言えますが、カネロ戦となれば村田でも圧倒的なBサイド、相手の土俵に乗り込むしかないので、逆にわかりやすいといえます。

今日の番狂わせで、村田諒太のロードマップの視界を遮る濃霧が立ち込めてしまいました。

やるとなれば、どっちが相手にしても強敵です。

村田の強打と重圧には、カネロは後退するしかないと思っていましたが、今日の試合を見ると村田相手でも足を止めて打ち合ってきそうです。

それにつけても、GGGもカネロも恐ろしいほどの打たれ強さをあらためて証明しました。村田の右がまともに当たればゲームオーバーでしょうが、彼らがまともに当てさせてくれるかどうか…。 
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村田諒太の2度目の防衛戦が、指名挑戦者のロブ・ブラントに落ち着きました。
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Park_MGM
MGMグランドを中核とするラスベガスのMGMグループの一つ、パークMGMに付設されたパークシアターに特設リングと5200席がセットアップされます。村田にとって3度目の米国リングですが、今回はメインイベンターで、過去の日本人が上がった米国会場と比べても何段階もグレードの高い舞台です。かつてのモンテカルロ・カジノ&リゾートです。

10月20日土曜日、ラスベガスのMGMリゾートパーク・シアター で行われ、試合はトップランクが主催、ESPN+で全世界にストリーミング放送されます。

ESPN+の対象地域ではない日本では、DAZN(ダ・ゾーン)が生中継します。

さて、ブラント(23勝16KO1敗)なんですが、①まともな相手は1敗したユルゲン・ブレーマーだけ、②その他の全キャリアで戦った雑魚相手でも何度ももたつく試合を演じている、という実力的に世界基準にあるのかきわめて怪しい選手で、リング誌やESPNなどメディアのミドル級10傑には数えられていません。

いまだにリング誌で9位にランクされるアッサン・エンダムと比べると、知名度はもちろん、実力評価で大きく劣る相手です。一階級上のスーパーミドル級で戦ったとはいえ、峠の過ぎた39歳のブレーマーに完敗しているのですから、底が見えたボクサーで、村田が勝って得られるものはほとんどありません。

〝Bravo〟の異名を持つボブ・ブラントは16歳からボクシングを始め、2010年にはゴールデングローブの178ポンド(ライトヘビー級)で優勝してるものの国際経験は乏しく、井の中の蛙です。

プロ24戦の相手を見渡しても、大きく負け越している選手が多く、村田が屠ってきた咬ませ犬たちが超強豪に見えてくるほど貧弱なキャリアです。

他団体では唯一IBFで12位にランクされていますが、世界基準の実力があるとは口が裂けても言えません。全然〝Bravo〟じゃないんです。

村田戦前のエンダムは前戦で、WBA暫定王者アルフォンソ・ブランコを鮮烈にKOして、ESPNの年間KO賞に輝いていました。エマヌエレ・ブランダムラにしても返上したとはいえ、欧州王者でした。

今回の試合、WBAが指名試合を突きつけてきたときに村田陣営は「(WBAの指名挑戦者とはいえ)評価の低いブラントではなく(ゴールデンボーイ・プロモーションの秘蔵っ子)ジェイソン・クイグリーとの対戦を強行する」と表明していました。

クイグリーは、GBPが持つミドル級のカードでも〝絵札〟です。もちろん、〝エース〟はカネロ・アルバレス。

村田本人も「指名挑戦試合を強制するならタイトル放棄する、剥奪されても構わない」と表明、WBAが命じた競争入札には帝拳もトップランクも参加を拒否、ブラントのプロモーター、グレグ・コーエンだけが入札に応じる異例の事態となりました。

20万ドルからスタートした入札は、コーエンが20万2114ドルを提示した時点で決着。入札前からコーエンはファイトマネー50−50を強要していましたが、この結果数字上は両者が受け取るのは各10万1057ドル、約1100万円となります。

WBAは、昨年の村田vsエンダムの初戦の時点で指名挑戦者だったブラント陣営から、両者の再戦でさらに世界挑戦を引き伸ばされた代償として「WBSSの参加とその結果にかかわらず指名挑戦権は保持できること」「村田陣営との入札ではWBAルールの王者70–挑戦者30ではなく、50−50」という要求を受けその二つにパーミッションを与えていました。

ただ、これは腐敗承認団体と、実力も人気もないブラント陣営の陰謀です。「村田陣営が入札に参加すると100万ドルを軽く超えるのは間違いなく、WBAはそれに比例した承認料を掠め取り、ブラントは過去最高報酬の何十倍もの金額を手に入れる」という皮算用でした。

こうなってくると、昨年のエンダム1の不当判定も、直後のヒルベルト・メンドサ会長の再戦司令も全てが出来レースかと穿った見方もしてしまいます。

ゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスの勝者とのメガファイトを急ぎたい32歳の村田にとって、ブラント戦は回り道でしかない上に、乞食のようにまとわりつくWBAとブラントが鬱陶しかったのでしょうが、急転直下で契約が成立したのは「入札に勝ったはずのブラント陣営がトップランクに興行権を譲ったこと」だけでは考えられないですね。

それにしても、入札で勝ったのに興行権を譲るなんて、もうヘタレにもほどがあります。「村田がタイトルを返上するわけがない」というコーエンの甘い読みが完全にはずれた格好です。

もちろん、WBA&ブラント陣営としては「村田がタイトル返上、空位の王座を低報酬で無名ボクサーと争う」というのが最悪のシナリオですから、村田陣営の強硬姿勢に最大の譲歩を示したのでしょう。

いくら詫びを入れて譲歩しても、村田陣営からしたらブラントが「回り道」なのは変わりません。それでもこの試合を受け入れた背景には、GBP陣営からカネロ戦についてなんらかの、信頼出来る約束を取り付けたのかもしれません。

すでに、カネロ以外とはメガファイトが期待できないゴロフキンの陣営は「東京ドームで村田戦」にプロモーターもトレーナーもGGG本人も非常に前向きです。

村田陣営としては、自分たちの人気と経済力では釣れない大魚、カネロ陣営の思惑だけが心配の種でした。

もし、GBPからも好感触を得ているのなら、あとの心配は9月15日の「GGGvsカネロ2」がまた議論を呼ぶ判定にもつれ込んで、ダイレクトの第3戦が避けられない状況になることですね。

最良のシナリオは、GGGが文句無しのKOでカネロを沈めて、来春の東京ドームが決定することですが…。

まあ、その前にブラントです。おそらく逃げ廻るでしょうが、しっかり捕まえて倒して下さい。
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