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WBSSバンタム級トーナメント、エカテリンブルグで行われたWBO王者ゾラニ・テテvsミーシャ・アロイヤンの準々決勝は3-0(114-111×2/114-110)でテテが勝利を収めました。


これで、南アフリカの長身サウスポーはライアン・バーネットvsノニト・ドネアの勝者との準決勝へ。

判定までもつれるとアロイヤンの〝ロシアンコネクション〟が作動すると懸念されていましたが、テテが1ラウンドにダウンを奪ったことで、落ち着いて試合を進めることが出来ました。

しかし、アロイヤンがキャンバスにグローブを付けてしまったこのダウン、確かにパンチによるダウンですが、主審のケニー・チャバリアがスルーしてもおかしくないシーンでした。

よく言えばチェスマッチ、悪く言えば塩分過多の展開は、両者ともホールディングを繰り返し、テテが11ラウンド、アロイヤンが12ラウンドに減点されてしまいます。

114-111と114-110。試合を見ずにスコアだけ見ると、いったい何が起きたのかという試合でしたが、両者の「負けないボクシング」への執着と技術は評価できるものの、「勝ってやる!」というスピリットはファンの心に届きませんでした。

テテ勝利は揺るがないにしても、意外にも〝ロシアンコネクション〟は全く機能しませんでした。

テテは「アロイヤンは上手い。来年には世界王者になれるだろう。準決勝は(より大きな報酬が見込める)バーネットと戦いたい。バーネットがドネアを倒すはずだ」と語り、28勝21KO3敗にレコードを更新しました。

プロ初黒星のアロイヤンは4勝0KO1敗。

井上尚弥もテテと戦うとになると〝チェス〟に巻き込まれてしまうかもしれませんが、チェス台を叩き割るようなスペクタクルを魅せてほしいですね。
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今朝、台風25号は関東を逸れて温帯低気圧になりました。

横浜の空は、すべての雲を吹き払った晴天。日中は、太陽がまぶしい夏日となり、夜になっても屋外リングで試合ができそうなコンディションとなりました。

バンタム級130年の歴史に新たな爪痕を残すことになる、最強決定トーナメントが横浜から火蓋を切ります。

WBAセカンド王者井上尚弥(16勝14KO無敗)が迎え撃つのは、元WBAスーパー王者ファン・カルロス・パヤノ(20勝9KO1敗)。

強打のPFPファイター、25歳の井上に対して、パヤノは目立った武器を持たない34歳のドミニカン。

オッズは10−1、パヤノ勝利を予想するメディアも専門家も見当たらない、圧倒的有利と見られた中で第1ラウンド開始のゴングが鳴りました。

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井上尚弥、プロ17戦。そのキャリアで最高の試合です。日本ボクシング史上に残るワンツーです。

フィニッシュの右のなんとコンパクトなことか!パヤノの顎に吸い込まれるタイミングのなんと鮮やかなことか!

パヤノは全く見えてませんでした。両足を揃えて、背中からキャンバスに落下。打たれた瞬間に意識を飛ばされた証拠です。

パヤノはロートルです。飛び抜けた能力も何一つありません。世界トップの実力はありません。

しかし、タフで老獪なバンタム級の強豪であることは、リング誌やESPNのランキングを見るまでもありません。簡単にノックアウト出来る相手ではないはずでした。

試合が長引くと厄介な展開になる。

そういう危惧もありましたが、杞憂でした。

もちろん、長引いた試合で引き出しの多さを見せることは重要ですが、それも忘れさせてくれる快勝劇でした。

圧勝が続くことが、頂点を目指すボクサーにとって大きな副作用を伴うサンプルは、今までに何度も見てきました。

それでも、そんなことがどうでもよくなるスペクタクルでした。

118ポンドでどこまで通用するのかは2試合続けて棚上げです。しかし〝追試〟はもう不要でしょう。

バンタムデビューが112秒、今回が70秒、合わせて182秒。井上は、この階級でまだ3分2秒しか戦っていません。

それでも、バンタム級でも怪物…いいえ、この階級ではさらに怪物度を上げているのは明らかです。

次はIBF王者のエマニュエル・ロドリゲスvsジェイソン・マロニーの勝者。おそらく、今夜の〝ベイビー・パッキャオ〟パヤノに続いて、二人目のパッキャオ、〝マニー〟ロドリゲスが勝ち上がってくるでしょう。

そしてIBFなら当日計量。当日10ポンド以上の増量が認められないことは、リバウンダーの井上にとってはマイナス要素です。

それでも、今日の試合を見たロドリゲスは戦慄したでしょう。井上が言うように「(次の)相手にいいアピール」になりました。

大番狂わせでマロニーが上がってきても、いずれにしても準決勝は無敗対決になります。

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バンタム級の完全統一、Undisputed Champion の系譜は1972年のエンリケ・ピンダーを最後に46年間も途絶えたままです。
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ピンダーは、初防衛戦に選んだロメオ・アナヤが「挑戦者資格がない」とWBCから王座を剥奪されます。この時からバンタム級のタイトルはバラバラに散ってしまったまま、46年も経ってしまいました。

半世紀の時を経て、バンタム級のピースが一つになろうとしています。

偉大なファイティング原田は Undisputed Champion の座を、歴史的な強豪王者エデル・ジョフレを倒した1試合で手に入れました。

「世界王者は世界にたった一人しかいない」。

当たり前のことが、当たり前に認められていた古き良き時代の話です。

現代は主要団体と呼ばれるだけで少なくとも4人が世界王者を名乗る、欺瞞の時代です。

原田が1試合で手に入れた栄光は今や、その完全統一王座を目指す方法すら分からない混迷の時代です。

しかし、井上尚弥にはその道筋が与えられました。バンタムの精鋭が待ち構える荒れ狂った道とはいえ、ここを突き進めば、その先に栄光のゴールが用意されているチャンスが。

掴み取るしかありません。
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さあ、日曜日が迫ってきました!

マニー・パッキャオとの共通点はサウスポーという以外は一切ないファン・カルロス・パヤノですが、ニックネームは〝ベイビー・パッキャオ〟です。

どこまでもクリーンな強打者、パッキャオに対して、ベイビー・パッキャオは21戦20勝9KO1敗。KO数を試合数で割るKO率は42.8%の羽毛の拳で、さらにはヘッドバッド常套のラフファイター。

世界中のボクシングファンは知っています。「異名に〝パッキャオ〟を絡めるボクサーは99.9%がマガイモノ」だと。 

ただし、このドミニカンはパッキャオとは似ても似つきませんが、どうしようもない雑魚ではありません。タフで老獪なバンタム・ウォリアーです。

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本当に世界が注目する試合はCNNやBBCでもニュースで報じられますが、井上vsパヤノは日本でもフジテレビ限定の「世界が注目するファイト」です。

今夜は昨日、パヤノにリング誌がインタビューした内容を拙訳させて頂きます。


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台風が日本列島を襲い、甚大な被害をもたらしてしまった、この時期にファン・カルロス・パヤノが来日した。

パヤノとトレーナーのヘルマン・ケイセドが帝拳ジムに到着すると、彼らは20人近い日本の報道陣に取り囲まれた。

軽量級で圧倒的な勝利を重ねる井上尚弥は、日本の希望の星だ。

パヤノ戦は前売り券ですでに80%もさばいている。
会場の横浜アリーナは1万7000人のキャパがある屋内スタジアム。つまり、マディソン・スクエア・ガーデンと同規模なのだ。

米国には、バンタム級以下でMSGをフルハウスに出来るボクサーなんて考えらない。それどころか、メインを張れるボクサーすらいない。

日本では「試合は序盤で終わる」と信じられている。
パヤノに聞いてみた。

ー完全なアンダードッグだが?

Payano「そんなの気にしない。これまでも何度も負け犬扱いされてきたから。そして、それが間違いだってことを、何度も証明してきたんだから。井上のパンチは強いから、まともには打ち合わない。フルラウンド使う作戦が、Aプランになる」

ー仕上がりは?

P「最高の状態に仕上がった。この試合のために、マイアミのジムに寝泊まりして練習漬けの毎日を送った。スパーリングも完璧だった。言い訳はしない。110%でリングに上がれる」

ー井上のパワーをどう思うか?

P「彼は思い切りパンチを打ち込むタイプ。私にもそれが通用すると考えているなら、命取りになる。ここは118ポンドの戦場だ。115ポンドとはレベルが違う」。

セイケド「マクドネルは強豪とは言えない。しかも重病状態のマクドネルなんて…放っておいても1ラウンドでしゃがみこんだんじゃないか」

ー得意のパンチは?

P「全部。すべてのパンチが必殺だ」




*****今度は井上真吾トレーナーに聞いてみた。

ーパヤノをどう見ているか?

「仕上げてきたね。戦績も素晴らしいし、この試合にかける思いは、強いはず。リングの外では物静かな紳士だが、ひとたびリングに上がると凶暴な獣になる」

*****大橋秀行プロモーターは井上尚弥に全幅の信頼を寄せている。

「井上は、若いのにいつも落ち着いている。井上だけでなく、私は傘下の選手を信じている。なんの心配もない」。



パヤノは、これ以上にないアンダードッグで、しかも井上の地元で戦う。

ただし、このドミニカ人は、井上が戦ってきた相手のレベルでは飛び抜けてAクラス。バンタム級ということも考慮に入れると、キャリア最強だろう。

井上は過去16戦すべてを、圧倒的有利の予想が立つ相手ばかりと戦ってきた。

それは今回も同じだが、生粋のバンタムで、本当の世界ランカーの実力のあるパヤノは井上にとって格好のテストになるだろう。

この試合は米国でも、最初の1カ月無料のDAZNで日曜日朝に生で観ることができる。日本では地上波大手のフジが生中継する。
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WBSSバンタム級トーナメント決勝戦。その舞台は横浜か、はたまたサウジアラビア・ダッジか、アブダビ・ドバイか。

オッズの通りなら決勝の組み合わせは、井上尚弥vsエマニュエル・ロドリゲスの無敗対決となります。
日本人とプエルトリカンのバンタム級の試合…さすがにヨーロッパ開催は算盤が壊れてしまいますから、普通に考えたら横浜開催ですね。

という話は脇に置いて、彼らがその系譜に名前を刻まんとしている「無敗の頂上決戦」です。

無敗のファイターが、階級最強を決定すべく激突した炎の名勝負を振り返ります。

台風24号が北上接近する日曜日の白昼、独断と偏見で決定した5位から10位の発表です。



 5位【1973年1月22日:ジャマイカ キングストン 国立競技場】ジョージ・フォアマン(37戦全勝34KO)vs ジョー・フレイジャー(29勝24KO)
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米国ボクシングがスポーツの王様であった時代は、1950年代で終幕してしまいます。 

しかし「ヘビー級が最もエキサイティングだった時代はいつか?」という問いには、モハメド・アリを主人公にジョー・フレイジャーやジョージ・フォアマン、ケン・ノートンらが熱闘を繰り広げた「1970年代」という絶対的な答しか存在しません。

ジャック・ジョンソンが君臨した1910年代でも、ジャック・デンプシーが旋風を巻き起こしたローリング ’20でも、ジョー・ルイスが対ナチスの代理戦争のリングに立った1930〜40年代でも、ロッキー・マルシアノが完璧なキャリアを完成させた1950年代でもありません。

ましてやマイク・タイソンが席捲した低レベルの1980年代でも、クリチコ兄弟が圧政を敷いたヘビー級の地位もレベルも失墜した21世紀でもありません。

誰に聞こうが、答はひとつです。「1970年代」。

そんなヘビー級最盛期の宝石箱の中で、最も戦慄的に輝いているのがフォアマンvsフレイジャー第1戦です。

東京五輪金メダリストのフレイジャーが保持する統一ヘビー級王座に、メキシコ五輪金メダルのフォアマンが挑む、黄金の無敗対決はアリに勝利を収めたフレイジャー有利と見られていました。

「象をも倒す」と言われたフォアマンの大きな拳は脅威でしたが、その無敗無敵のキャリアは温室で供給された肥料のように口当たりの良い雑魚ばかりでした。

五輪メダリストなど有望なホープを育成する温室培養は、このときのフォアマンが典型で〝フォアマン方式〟と呼ばれるようになります。

しかし、フォアマンの強さは本物でした。2ラウンドKOの瞬間まで不撓不屈のフレイジャーを6度もリングに転がしたのです。有名な「キングストンの惨劇」です。

メディアやファンは「フォアマンは温室に保護されている」といったのは間違いで、温室に見えたのは凶暴な猛獣を閉じ込める檻だったのです。

檻から解き放たれた凶獣を止める術など誰も持ち合わせていませんでした。

初防衛戦(日本開催)でホセ・ローマンを1ラウンド、2度目の防衛戦はアリの顎を砕いたケン・ノートンを2ラウンドで粉砕してしまいます。

三つの世界戦で要したラウンドはわずか5ラウンド。どの対戦相手も3ラウンド開始ゴングを聞く前に病院送りとなりました。 

スポーツに三段論法は通用しません。

しかし、フレージャーに倒され、ノートンに実質敗北している32歳のアリが、25歳の怪物王者フォアマンに挑戦することが決まったとき「4ヶ月後の天気は誰にもわからないが〝キンシャサの惨劇〟は確実に起きる」と報じられたことに異論を挟む者など世界中に誰一人いませんでした。

アリの勝ち目は万に一つもない、誰もがそう確信していたのです。

〝キングストンの惨劇〟を目撃してしまった当時のファンやメディアが、フォアマン勝利を露ほども疑わなかったのは仕方がないことでした。

それほどまでに〝キングストンの惨劇〟は衝撃的だったのです。 



4位【1978年10月28日:プエルトリコ ロベルト・クレメンテ スタジアム】ウィルフレド・ゴメス(21戦全勝21KO1分)vs カルロス・サラテ(52戦全勝51KO)

ゴメスのWBCジュニアフェザー級王座にサラテが挑んだ、史上空前のKOキング対決。

両者の戦績を合計すると74戦73勝72KO無敗1分。

「ボクシングにおける数字は何の意味も持たない」というのは揺るぎない真実ですが、さすがにこの二人の場合は充実した内容を伴っての、この嘘みたいな数字です、凄いとしか言えません。

これを超えるKO対決、マッチアップは未来永劫見ることができないでしょう。

WBCバンタム級王者サラテは、前年にWBAバンタム級王者アルフォンソ・サモラ(29戦全勝29KO)とキャッチウェイトで全勝同士の頂上決戦を経験済み(4ラウンドTKO勝ち)で 、タイトルも8連続防衛中。

対するゴメスも5連続防衛中でしたが、当時のジュニアフェザーは「水増し階級」と揶揄され対戦相手の質にも疑問符が付けられていました。 
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「VIA CLOSED CIRCUIT」(クローズド・サーキット=劇場生中継)、「NO HOME TV or RADIO」(家庭のテレビ・ラジオでは視聴できません)。この時代にはメガファイトはすでに無料地上波放送から離れて、閉鎖的なクローズド・サーキットで効率良く集金する〝麻薬〟にどっぷり浸かっていました。

勝負は結果が全てです。

減量に失敗したサラテは必死で計量に臨むも、2ポンドオーバー。最軽量でもリミットの122ポンドを作れず、3度目の計量でようやくパス。

当日計量の時代です。サラテは「1ラウンドからフワフワして、足に力が入らなかった」と万全の状態ではありませんでした。

一方のゴメスは「サラテは早く試合を終わらせたいはず。強引に攻めてくるから注意しなければならないが、隙はいっぱいあるはず」と余裕で構えます。

それでも、勝負は結果が全てです。減量失敗がなければ?なんてタラレバは何の意味も持ちません。実はゴメスも1回目の計量に失敗しています(サラテと同じ2ポンドオーバーの124ポンド)。

3ラウンドまで十分にフォロースルーの効いた一打必倒のパンチを交換する両者ですが、決定的な場面は作ることが出来ません。

4ラウンド。スタミナと集中力の消耗からサラテは「早く倒さなければならない」と強引に攻め立てます。ゴメスが想定していた流れが現実になります。

サラテがゴメスをコーナーに追い詰めて右フックを振るいます。バズーカ・ゴメスが最も自信を持つ必殺打、左フックを放つ瞬間が、ついに訪れました。

強烈なカウンターを浴びたサラテはたまらずダウン。崩れ落ちたメキシコの英雄を「どうだ!」と言わんばかりにゴメスが二度も覗き込みます。

ダメージの残るサラテを追い回してゴメスがダウンを追加します。

これはゴング終了後のパンチでしたが、主審ハリー・ギブスは雪崩の大歓声にゴングが聞き取れません。

勝利を確信したゴメスは5ラウンドの開始ゴングから猛ラッシュ。サラテは逃げ回ることしかできないままロープに追い詰められて腰から砕けます。

ゴメスの最後のパンチは、倒れたサラテに放たれた打ち下ろしの右でした。

主審が試合をストップするのと、サラテのコーナーからタオルが投入されるのはほぼ同時でした。

リング誌年鑑2003年度版(現在は定期刊行していません)はThe 100 Greatest Puncher of All-Time! でゴメスを13位、サラテを21位にランキングしていますが、これを聞いて多くのオールドファンは「二人とももっと上だろう」と舌打つのではないでしょうか。
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近代ボクシング120年の歴史の中で「階級最強を決める無敗対決」は、この50年くらいで見られるようになった比較的〝最近〟のことです。

今では考えられない試合数を、信じられない間隔でこなしていた1950年代までのボクサーは、無敗のままキャリアを積み上げて世界王者になることが難しかったのです。

ましてや「階級最強を決める無敗対決」は、そんな稀有なボクサーが二人必要になるわけです。

しかし、団体や階級の増殖で無敗のまま頂点に立つことが格段に安易になった現代では「無敗の頂上決戦」は、過去ほど珍しいものではなくなっています。

直近では、今年7月にWBSSのクルーザー級決勝戦(オレクサンダー・ウシク:14戦全勝11KO vs ムラト・ガシエフ:26戦全勝19KO)、昨年8月にWBC/WBOジュニアウェルター級王者テレンス・クロフォード(31戦全勝22KO)vsWBAスーパー/IBF王者ジュリウス・インドンゴ(22戦全勝11KO)が挙行されています。

気の早すぎる話ですが、井上尚弥vsエマニュエル・ロドリゲスも、そんな無敗決戦の系譜にその名を刻むことを熱望しつつ、独断と偏見のベスト10です!
 
10位【2007年11月3日:英国カーディフ・ミレニアムスタジアム】ジョー・カルザゲ(英国:43戦全勝32KO)vs ミッケル・ケスラー(デンマーク:39戦全勝29KO)

ヨーロッパ、特に英国で最も人気のある階級が168ポンド、スーパーミドル級です。

そのスーパーミドルにハンサムなカルザゲが登場、IBFとWBOのベルトを獲得。英国ではボクシングの枠を超えたスポーツセレブになります。

WBA/WBC王者でデンマークでは国民的英雄ケスラーとの頂上決戦は、今日の英国ボクシングブーム爆発の導火線に火をつける名勝負でした。

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〝バイキング・ウォリアー〟ケスラーの海賊パフォーマンスもボクシングファンを喜ばせてくれました。

会場には5万3000人が詰めかけ、ヨーロッパでの最多観客動員を記録。

カルザゲが3−0の判定勝ちを収めますが、ケスラーもデンマークに恐るべきボクサーがいることを世界に知らしめました。

カルザゲにも負けない端正な容姿のケスラーは今、母国でモデルやタレントとして活躍しています。



 9位【2013年9月14日:ネバダ州MGMグランドガーデンアリーナ】フロイド・メイウェザーJr.(44戦全勝26KO)vs カネロ・アルバレス(42勝30KO1分)

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「THE ONE」と銘打たれたメガファイト。

カネロが持つジュニアミドル級のWBAとWBCタイトルがステイクされ、PPVで220万件(オスカー・デラホーヤvsメイウェザーの240万件に次ぐ当時史上2位)を売り上げる記録的なヒットとなりました。

メイウェザーはすでにプライムタイムが過ぎた36歳、フットワークの衰えは明らかでしたが、ハンドスピードと天下無双のショルダーブロックは健在。

一方のカネロは43戦のキャリアがあるとはいえ、まだ23歳。メイウェザーの老獪なボクシングに空回りを余儀なくされ2−0の判定負け。

この試合を引き分けとスコアした女性ジャッジのCJ・ロスは、マニー・パッキャオvsティモシー・ブラッドリーでも首をかしげる採点をしており、批判が噴出。この試合を最後にリングサイドから去りました。

カネロにとっては「早すぎた試合」でしたが、大怪我をする相手ではなく、稀代のリングマスターとの12ラウンド36分間の授業は、その後のキャリアに生かされる貴重な経験となりました。



 8位【1988年6月27日:ニュージャージー州アトランティックシティ・コンベンションホール】マイク・タイソン(34戦全勝30KO)vs マイケル・スピンクス(31戦全勝21KO)

タイソンの3団体統一タイトルがステイクされた待望の一戦。

しかし、両膝を故障した31歳のスピンクスにかつての輝きはなく、破竹の快進撃を続ける21歳のタイソンにわずか90秒で屠られてしまいます。

スピンクスは、3年前の1985年9月21日にもラリー・ホームズの49連勝を阻む「無敗同士の頂上決戦」を制していますが、その全盛期はライトヘビー級時代でした。

現在のPFP評価ではスピンクスがタイソンを上回るランキングも見られ、タイソン信者を苛立たせていますが、対戦相手の質を考えると十分納得出来る〝逆転評価〟です。



7位【1992年11月13日:ネバダ州ラスベガス トーマス&マックセンター】リディック・ボウ(31戦全勝27KO)vs イベンダー・ホリフィールド(28戦全勝22KO)

試合直前のオッズは7−5で統一ヘビー級王者ホリフィールド有利と出ていましたが、現実の試合は体格で勝るボウが、ホリフィールドの勝負根性を押し込む展開。

結果は、11ラウンドに勝負を決定づけるダウンも奪ったボウが3−0の判定勝ちで新王者に就きました。

無敗の頂上決戦、しかもヘビー級というのに注目度が物足りなく映ったのは、アメフトのシーズンが佳境に入っていたからだけではありません。

新王者ボウの、磁力の弱いキャラクターと散漫な性格に、ボクシングファンは胸躍らせる未来図を描くことが出来なかったからです。

実際、ボウは目先のカネと安易なマッチメイクに目がくらみ、WBCの指名挑戦者レノックス・ルイスを回避、タイトル剥奪を忠告されるとベルトをゴミ箱に放り込むパフォーマンスで応酬しました。



6位【1985年12月6日:ネバダ州ラスベガス ラスベガスヒルトン】ドナルド・カリー(23戦全勝17KO)vs ミルトン・マクローリー(27勝22KO1分)

WBA/IBF王者カリーと、WBC王者マクローリーのウエルター級王座完全統一戦。

この試合ほどリアルタイムと後世の評価、興奮に落差がある一戦は他にありません。

シュガー・レイ・レナードの引退で、全階級通じて最も華やかな147ポンド、ウエルター級は新しいスターを渇望していました。

そこに、無敗の王者が雌雄を決するのですから盛り上がらないはずがありません。

しかし、当時あそこまでこの試合が熱視線を集めたのは、それだけではありません。

当時のボクシング界はマービン・ハグラーという強くて試合も面白いのになぜか人気は比例しないという巨大な月が太陽を打ち砕く〝好ましからざるシナリオ〟が展開されていました。

そうです。この試合の勝者には「レナードの後継者」だけではなく「打倒ハグラー」まで期待されていたのです。

そして、ファンの思い描いていた〝好ましいシナリオ〟を凌駕する結果がもたらされました。

カリーのカウンター一閃、これ以上ない鮮やかな2ラウンドKO勝ち。

そして、ローンスター・コブラの過大評価は、ハグラーvsトーマス・ハーンズのリングサイドで最高潮に達します。

試合開始前にカリーが紹介されると大歓声が沸き起こり、肝心の試合が壮絶な形で終わっても、「次はカリーだ、カリーならハグラーを倒すだろう」という期待の歓声が、カリーの背中に突き刺さるのでした。

そして、カリーは当時を知らないボクシングファンからは記憶にインプットされることなく、殿堂入りのウエイティングサークルに閉じ込められたままです。 
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今朝行われたWBSSのスーパーミドル級決勝。

WBAスーパー王者ジョージ・グローブスvsWBCダイアモンド王者カラム・スミス。勝者はリング誌からも世界スーパーミドル級王者に認定されます。

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会場はサウジアラビアはダッジのキング・アブドュラー・スポーツシティ。ヨーロッパのビッグファイトを踏襲したシックな演出で彩られました。

試合は、Mundo(世界に羽ばたく男)の異名を持つスミス四兄弟の末っ子、28歳のカラムが、30歳の〝聖ジョージ〟グローブスを押し気味に進みます。

スミスはデカイですね、身長191㎝。対するグローブスは身長・リーチともに182㎝。

6ラウンドまでの採点は57−57、59−55、55-59と三者三様のドローでしたが、グローブスが「スミスのパンチの強さに驚いた」「ボディパンチであんなに効かされたことは今まで一度もなかった」と振り返るようにWBAスーパー王者の方がダメージを負って7ラウンドに入ります。

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互角のパンチ交換から、スミスの左フックがカウンターで入ると、グローブスはロープに引き寄せられるように後退、スミスはすかさず追撃、右のボディをえぐられてグローブがダウン。

意識はしっかりしているようだったので立てるようにも見えましたが、ボディがよほど効いていたのでしょう、そのままカウントアウトされてしまいました。
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CALLUM SMITH WEARS THE RING SUPER MIDDLEWEIGHT TITLE AFTER DEFEATING GEORGE GROVES IN THE WORLD BOXING SUPER SERIES 168-POUND FINAL ON SEPT. 28, 2018. PHOTO / WBSS

グローブスは、カール・フロッチに2連敗、バドュー・ジャックにSD敗に続く4つ目の黒星を喫しました(28勝20KO4敗)。

WBSS優勝、スーパーミドル最強に登りつめたカラム・スミスは、無敗のレコードを伸ばして25戦全勝18KO。

クルーザー級のオレクサンダー・ウシク(15戦全勝11KO)に続いて、WBSSトーナメント・シーズン1を制したのは勢いに乗る無敗のボクサーでした。

ウシクがリング誌と主要4団体のタイトルを統一したのに対して、スミスはWBAの正規王者と認められるスーパーと、WBCの正規王者とは認められないダイアモンドのタイトルはコレクションしたものの、WBC(デビッド・ベナビデス)、WBO(ヒルベルト・ラミレス)、IBF(ホセ・ウスカテギ)がそれぞれ王座のピースを持っており、Undisputed Champion(議論する余地のない王者)を名乗ることは出来ません。

それゆえに、このWBSS優勝を受けて、ウシクのようにPFPランキングでいきなり上位に躍り出ることはないでしょう。

さあ、次はいよいよシーズン2。ジュニアウェルターとバンタム級でトーナメントが繰り広げられますが、いずれも「優勝=undisputed Champion」にならない刃こぼれ感がありますが、注目はもちろんバンタム級です!

あまりにも気が早いのですが、ここでも「勢いのある無敗のボクサー」が優勝するとなると、WBAセカンド王者・井上尚弥(16戦14KO)、WBAスーパー王者ライアン・バーネット(19戦9KO)、IBF王者エマニュエル・ロドリゲス(18戦12KO)、ジェイソン・マロニー(17戦14KO)、ミーシャ・アロイヤン(4勝0KO)が候補です。

しかし、すっきりした勝ちから遠ざかっているバーネット、経験不足でKO勝利もないアロイヤンは「勢いがある」とは言えず、マロニーは無敗とはいえ対戦相手の質が相当に低いので、残るは〝マニー〟ロドリゲスだけです。

25歳の日本のエースと、万能型のプエルトリカンの無敗対決。

もし、決勝戦が井上vsマニーなら開催地は横浜アリーナになる公算大ですが、出来ればサウジアラビアやUAEに招致して頂いて巨額の報酬を獲得して欲しいところです。
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井上尚弥のWBSS初戦、ファン・カルロス・パヤノ戦までいよいよあと1週間。

このバンタム級トーナメントは、横浜アリーナ( WBAセカンド/10月7日:井上vsパヤノ)、エカテリンブルグEXPO(WBO/10月13日:ゾラニ・テテvsミーシャ・アロイヤン)、フロリダ州のCFEアリーナ(IBF/10月20日:エマニュエル・ロドリゲスvsジェイソン・マロニー)グラスゴーのSSEハイドロアリーナ(WBAスーパー/11月3日:ライアン・バーネットvsノニト・ドネア)と日本、ロシア、米国、英国と四カ国で初戦の火蓋が切られます。

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WBSSバンタム初戦では最もキャパが大きいのは横浜アリーナ(1万5000人)、次いでTHE SSE ハイドロ(1万3000人)です。SSEは2014年の〝英連邦のオリンピック〟コモンウェルズゲームズのために建設された多目的アリーナです。なんだか格好良いですね〜。


経済力のある日英露の井上とバーネット、アロイヤンが自国で開幕戦を迎え、プエルトリカンのロドリゲスも母国のコミュニティが確立しているフロリダで戦うという、わかりやすい構図です。

決勝まで進んでも、井上が日本を出ることはないかもしれません。

海外に出るとしたらバーネットとの対決が考えられますが、経済原理優先なら日本の井上>>>英国のバーネットです。

ジュニアバンタムのカリド・ヤファイ、フェザーのカール・フランプトンという英国軽量級の二枚看板なら日本に来ないでしょうが、横浜アリーナのチケットはすでに即売状態、マネーパワーで井上がバーネットを上回っているのは明らかです。

オレクサンダー・ウシクが優勝したばかりのクルーザー級で立て続けに開催するなど、迷走気味のWBSSですが、経済原理優先の姿勢はブレていません。

バンタムでの開催地だけでなく、明日決勝を迎えるスーパーミドル級のジョージ・グローブスvsカラム・スミスは、なんとサウジアラビアのダッジでリングが組み上げられます。

オイルマネーと王族の分厚い財布から、これまでもサウジやUAEがマニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザー、パッキャオvsアミール・カーンのメガファイトの招致を試みましたがいずれも実現には至りませんでした。

グローブスとスミスが拳を交えるのはキング・アブドュラー・スポーツシティ。今年は米国WWEのプロレス興行を招致するなど、熱心に格闘技の興行を呼び込んでいます。

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ボクシングファンには馴染みのない「キング・アブドュラー・スポーツシティ」ですが、巨大なスポーツ施設の中心にあるサッカースタジアムは6万5000人を飲み込みます。昨年はアジア最終予選で日本代表も戦い、サウジに0−1と惜敗したあのスタジアムです。

プロモーターのカレ・サウザーランドは「中東の砂漠でボクシング興行を打とうなんてプロモーターは誰もいなかったが、これは偉大な歴史の最初の1ページになる。私は成功を確信している。砂漠の決闘と聞いてラスベガスを思い浮かべる時代はもうすぐ終わるかもしれない」と自信満々です。

WBSSの仕掛け人の一人、サウザーランドは「モハメド・アリの〝スリラー・イン・マニラ〟〝ランブル・イン・ジャングル〟を想像してくれ。新天地は常に大きな可能性を秘めている」と語り、フィリピンのマルコス大統領、ザイールのモブツ大統領という独裁者が国家と自らの権威発揚のために超弩級のメガファイトを招致した〝前例〟を挙げましたが、まさに全く同じ構図と捉えて良いでしょう。

招致フィーは明らかにされていませんが、ラスベガスのメガファイト相場1000万$レベルかそれ以上と推測されます。

ただし、サウジアラビアです。イスラム圏のど真ん中です。イベントを盛り上げるパーティや、当日の会場でもアルコールの販売はありえませんし、リングで腰を振るラウンドガールも見ることはできません。

サウジアラビアの王家は、マルコスやモブツのような刹那の独裁者ではありませんが、メガファイトを招致した動機は単なる気まぐれでしょう。というか「サウジが招致したからメガファイトになった」とも言えるかもしれません。

まあ、大金持ちの気まぐれでも大歓迎ですね。

バンタムトーナメントのメンバーを見渡して、井上尚弥は日本を出ない、出る必要がないと書いてしまいましたが、サウジの気まぐれでバンタム決勝も招致してくれたら、それは嬉しいですね。

実際には100万ドルもないとみられるバンタム級の優勝賞金も、サウジの招致フィーが加算されるなら話は全く変わってきます。

来年の今頃、井上尚弥はキング・アブドュラー・スポーツシティの特設リングに立っているかもしれません。その対角線のコーナーには誰がいるのか?

いやぁ、お楽しみがいよいよ始まります!
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米国メディアがほとんどスルーのWBSSですが、日本は盛り上がっていきましょう!

正確な賞金が発表されない、またクルーザー級でやるとか…もはや脳ミソ腐ってるとしか思えない運営ですが、それは無視して、階級最強トーナメントをブチ上げた功績は大きい、ひたすら大きいです!

というわけで 、WBSSです!特にバンタム級トーナメントです!とにかくバンタム級トーナメントです!

井上尚弥の初戦に加えて、ジュニアウェルター級の試合も横浜アリーナにネジ込んできたことは、野球のワールド・ベースボール・クラシックがジャパンマネーをハイエナのように貪った絵面を思い出してしまいますが、ボクシングファンとしては目的(面白い試合が見たい!強いヤツのツブシ合いが見たい!)のためには手段は選ばず、です。

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ブックメーカー各社のオッズ総覧です。

優勝候補は全てのブッカーで、井上尚弥の一点張り。気持ちいいですね。平均すると井上優勝のオッズは1.67倍。

続いてエマニュエル・ロドリゲスが5〜6倍で付けています。 ライアン・バーネットはさすが人実者、2社が4.5倍を叩いています。 ゾラニ・テテも5〜6倍と、ここまでの4人が優勝候補です。

「地元判定」の恩恵を最も受けると警戒されているミーシャ・アロヤンは20〜33倍、日本のファンも思い入れのあるノニト・ドネアは1社が40倍で、他は33倍と高配当です。

大穴はジェイソン・マロニーと、ファン・カルロス・パヤノ。二人とも50倍という大きな数字が目立っています。

まあ、オッズだけ見ると井上が抜けていますが、今までまともな強豪との手合わせのない日本のエースにとって簡単なゲームになるわけがありません。 

井上だけではなくロドリゲスも「魔法がかかった」状態で、初戦を迎えます。苦戦して「魔法が解ける」と次戦では、自信を持った対戦相手がカサにかかって攻め込むため、2人の魔法使いが優勝するなら「魔法をかけたまま=圧勝」でモハメド・アリ トロフィーを獲得しなければ、あっけなく脱落も考えられます。

「強豪との対戦が多いバーネットにアドバンテージがある」(BBC)という見方は、あながち間違っていません。井上があの細いアゴを叩かれてリングに沈む…日本のファンにとっては悪夢ですが、ありえない光景ではないのです。今まで誰も叩いたことがないのですから。

このトーナメントは「井上尚弥は本物なのか」を証明する舞台です。 

正直、1.67倍という数字はありがたくないですね。「マニー・ロドリゲスが優勝候補」と言われる方が、ファンは燃えます。もしかしたら、井上もそうかもしれません。

「日本の軽量級は世界最高の層の厚さを誇っている」「後楽園ホールは世界軽量級のメッカ」「日本のエースは海を渡らないが、それは海外では報酬が釣り合わないから。将軍が江戸城を出ないのと同じで、日本のエースは間違いなく強い」。

昨日の井岡のカムバック戦で、海外メディアが日本の軽量級にあらためて敬意を表した記事からです。井上有利のオッズが出されたのと時系列は逆転しますが、そういう認識は欧米では以前から定着しています。

考えようによっては、「優勝候補がその通りに勝つ」のが最も美しく強いのですから、井上が優勝して「フロックだ」とは誰も言えないわけです。

つまり、8人の勇敢な軍鶏たちの中で、優勝によってその強さを最も際立たせることが出来るのが、井上なのです!

来年末の決勝戦が終わったとき「そういや1.67倍とかだったな。随分とバカにされたオッズやったなあ」とブッカーをみんなで嘲笑いましょう!
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WBSSバンタムのトーナメント準々決勝、最後に占う4試合目は井上尚弥vsファン・カルロス・パヤノです。


10月日本開催が有力視されている一戦は、他の3試合以上に王者有利のオッズが叩かれ、井上勝利が1/33、1.03倍。パヤノ勝利は10/1、丁度10倍ですから、アバウト9-1〜10-1で井上圧倒的有利です。

ベイビー・パッキャオと呼ばれるパヤノですが、容貌はけしてベイビーではありません。そのファイトスタイルも若きパッキャオのような荒々しさも、現在の成熟したパッキャオの精緻さとも無縁のドミニカンです。

中米・カリブ選手権を二度も優勝するなど華やかなアマ実績を持っていますが、ダーティーなテクニックも躊躇なく駆使する、けして美しいファイトスタイルではありません。

リング誌の「2018年版 BEST FIGHTERS IN THE WORLD 100」では井上が8位に付けているのに対して、パヤノは95位。

決め手に欠くドミニカンの20勝(9KO)1敗のキャリアで、最も大きな勝利が2014年9月26日のアンセルモ・モレノ戦であることに異を唱える人は一人もいないでしょう。

当時バンタム級のリネラル王者だったモレノを負傷判定で下した大番狂わせに世界中のボクシングファンが驚きましたが、リング誌は「Pyano's win did't really provide an indication as to how good he is.」(今回のパヤノの勝利は彼がどれほど素晴らしいボクサーかを示すものではない)と断定、長らくバンタム級に君臨してきたモレノは「the surprisingly sluggish 118-pounder(驚くほど衰え、鈍重だった)」と冷静に分析しました。

モレノはパヤノに敗北してから山中慎介との2戦を含めた5試合で1勝4敗、全盛期を知るファンなら目を覆いたくなる劣化ぶりで引退に追い込まれました。

パヤノはモレノを倒した大金星の後、ルーシー・ウォーレンと一進一退のダルでダーティな2連戦でタイトルを失いましたが、今年3月フィリピンのマイク〝マジック〟プレイニアを3−0判定で下して空位のWBOインターコンチネンタルのバンタム級王座に就いています。

warren-payano-recap_1パヤノのロングの右がウォーレンの顔面を捉えますが、ドミニカンのパンチは悲しいほど軽いのです。

プレイニアは14戦全勝(7KO)、「Next Paquiao(パッキャオ2世)」と期待された21歳のホープで〝ベイビー・パッキャオ〟パヤノとの「パッキャオ対決」でした。

プレイニアは「99.9%がマガイモノ」と揶揄される「Next Pacquiao」の例に漏れず、まともな相手とは一度も戦ったことのない作られた無敗ボクサーでしたが、このバッタモンですらパヤノは倒しきれないばかりか、決定的なダメージを与えることすら出来なかったのです。

しかし決定力がないとはいえ、弱いボクサーかといえば絶対にそうではありません。リング誌でもESPNでもバンタム級トップ10に数えられているように、この階級では屈指の強豪です。

バンタム級というクラスまで考慮すると、井上のキャリア最強のボクサーであることは間違いありません。

そして、井上には「おそらく欠点」とみられる、まだ試されていない部分がいくつもあります。

その一つは、あの細い顎。普通に考えれば井上は打たれ弱いでしょう(同じように打たれ弱いと見られていたマイク・タイソンが実際には打たれ強かったという例はありますが)。

あのパヤノに井上の顎を正確に打ち抜く技術があるとは考えにくいかもしれませんが、四角いリングの中では何が起きても不思議はありません。

また、かねてから不得手と見られているクロスレンジでのパンチの交換も不安材料です。

しかし、プロ野球でも内角球を完璧に捌ける打者が稀有なように、多くのボクサーにとって体に近いクロスレンジは危険な距離でしかありません。この距離を好む変態は歴史を紐解いてもロベルト・デュランとパッキャオくらいなものです。

また、タイソン同様に井上は「下がる展開になれば何もできずに崩壊するのではないか」という懸念も、パヤノが井上を押し込めるとは考えられません。

この試合の興味は限定的です。

118ポンド、バンタム級でも井上尚弥は怪物たりうるのか?

ジェイミー・マクドネルが重病患者レベルの健康状態であったため先送りされたこのテストに、井上がどんな解答をするのか? それだけが焦点になる試合です。
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エマニュエル・ロドリゲス(18戦全勝12KO)vsジェイソン・マロニー(17戦全勝14KO)。

このトーナメント唯一の無敗同士が激突するカードです。

オッズはロドリゲス1/20、マロニー8/1。アバウト8−1で、やはりこのマッチアップも王者有利です。

今年5月に、英国の強豪ポール・バトラーから2度ダウンを奪って完勝、ライアン・バーネットが返上して空位となっていたIBFバージョンの王座を獲得して評判通りの実力を見せつけた〝マニー〟は、優勝候補・井上尚弥の対抗馬に躍り出ました。

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さて、さて〝カリブのマニー・パッキャオ〟はその異名通りの怪物なのでしょうか?

2010年にユース五輪で金メダル、ユース世界選手権で銀メダル、アマチュア通算171勝11敗。トップアマとして培った技術をベースに、プロでも無敵の快進撃を続けているロドリゲスの特徴は「欠点が見当たらない」(リング誌)という完成度の高さでしょう。

2016年6月には山中慎介が9ラウンドで破壊したアルベルト・ゲバラと対戦、メキシコの強豪をシャットアウトしていますが、バトラー戦もそうであったようにこのマニーは無理に倒しに行かない冷静な戦い方をします。

一方で、12のKO勝利のうち5つが2ラウンドまでに決着。1ラウンドKOも3つあることからチャンスと見たら一気に攻め落とす殺傷本能もしっかり持ち合わせているのです。

そのマニーより1歳年上、27歳のマロニーはアマ実績の乏しい叩き上げのオージーです。

ただ、叩き上げと呼ぶには豪州の温室で大切に育てられて来ました。
WBAオセアニアタイトルをジュニアフェザー級(2016年)、バンタム級(2017年)と逆二階級制覇、今年2月には英連邦タイトルも手にしています。

5月には、キャリア最強の相手、タフな河野公平を持て余しながらも日本人の右目を切り裂いて6ラウンド終了TKO勝ち、オセアニア・バンタム級王座の2度目の防衛に成功。
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「河野はタフだった」と試合を振り返るマロニー。双子の弟、アンドリューも無敗(17戦全勝10KO)のジュニアバンタム級ボクサーです。

無敗同士とはいえ、懐の深いロドリゲスに無骨なマロニーが勝機を見出すのは難しそうです。
大きく開いたオッズ、大方の予想に右倣えの予想をするのは忸怩たる思いもありますが、このカードは王者が無難に勝利を収めると見ます。
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