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WBSSバンタムのトーナメント準々決勝、最後に占う4試合目は井上尚弥vsファン・カルロス・パヤノです。


10月日本開催が有力視されている一戦は、他の3試合以上に王者有利のオッズが叩かれ、井上勝利が1/33、1.03倍。パヤノ勝利は10/1、丁度10倍ですから、アバウト9-1〜10-1で井上圧倒的有利です。

ベイビー・パッキャオと呼ばれるパヤノですが、容貌はけしてベイビーではありません。そのファイトスタイルも若きパッキャオのような荒々しさも、現在の成熟したパッキャオの精緻さとも無縁のドミニカンです。

中米・カリブ選手権を二度も優勝するなど華やかなアマ実績を持っていますが、ダーティーなテクニックも躊躇なく駆使する、けして美しいファイトスタイルではありません。

リング誌の「2018年版 BEST FIGHTERS IN THE WORLD 100」では井上が8位に付けているのに対して、パヤノは95位。

決め手に欠くドミニカンの20勝(9KO)1敗のキャリアで、最も大きな勝利が2014年9月26日のアンセルモ・モレノ戦であることに異を唱える人は一人もいないでしょう。

当時バンタム級のリネラル王者だったモレノを負傷判定で下した大番狂わせに世界中のボクシングファンが驚きましたが、リング誌は「Pyano's win did't really provide an indication as to how good he is.」(今回のパヤノの勝利は彼がどれほど素晴らしいボクサーかを示すものではない)と断定、長らくバンタム級に君臨してきたモレノは「the surprisingly sluggish 118-pounder(驚くほど衰え、鈍重だった)」と冷静に分析しました。

モレノはパヤノに敗北してから山中慎介との2戦を含めた5試合で1勝4敗、全盛期を知るファンなら目を覆いたくなる劣化ぶりで引退に追い込まれました。

パヤノはモレノを倒した大金星の後、ルーシー・ウォーレンと一進一退のダルでダーティな2連戦でタイトルを失いましたが、今年3月フィリピンのマイク〝マジック〟プレイニアを3−0判定で下して空位のWBOインターコンチネンタルのバンタム級王座に就いています。

warren-payano-recap_1パヤノのロングの右がウォーレンの顔面を捉えますが、ドミニカンのパンチは悲しいほど軽いのです。

プレイニアは14戦全勝(7KO)、「Next Paquiao(パッキャオ2世)」と期待された21歳のホープで〝ベイビー・パッキャオ〟パヤノとの「パッキャオ対決」でした。

プレイニアは「99.9%がマガイモノ」と揶揄される「Next Pacquiao」の例に漏れず、まともな相手とは一度も戦ったことのない作られた無敗ボクサーでしたが、このバッタモンですらパヤノは倒しきれないばかりか、決定的なダメージを与えることすら出来なかったのです。

しかし決定力がないとはいえ、弱いボクサーかといえば絶対にそうではありません。リング誌でもESPNでもバンタム級トップ10に数えられているように、この階級では屈指の強豪です。

バンタム級というクラスまで考慮すると、井上のキャリア最強のボクサーであることは間違いありません。

そして、井上には「おそらく欠点」とみられる、まだ試されていない部分がいくつもあります。

その一つは、あの細い顎。普通に考えれば井上は打たれ弱いでしょう(同じように打たれ弱いと見られていたマイク・タイソンが実際には打たれ強かったという例はありますが)。

あのパヤノに井上の顎を正確に打ち抜く技術があるとは考えにくいかもしれませんが、四角いリングの中では何が起きても不思議はありません。

また、かねてから不得手と見られているクロスレンジでのパンチの交換も不安材料です。

しかし、プロ野球でも内角球を完璧に捌ける打者が稀有なように、多くのボクサーにとって体に近いクロスレンジは危険な距離でしかありません。この距離を好む変態は歴史を紐解いてもロベルト・デュランとパッキャオくらいなものです。

また、タイソン同様に井上は「下がる展開になれば何もできずに崩壊するのではないか」という懸念も、パヤノが井上を押し込めるとは考えられません。

この試合の興味は限定的です。

118ポンド、バンタム級でも井上尚弥は怪物たりうるのか?

ジェイミー・マクドネルが重病患者レベルの健康状態であったため先送りされたこのテストに、井上がどんな解答をするのか? それだけが焦点になる試合です。