今朝、台風25号は関東を逸れて温帯低気圧になりました。

横浜の空は、すべての雲を吹き払った晴天。日中は、太陽がまぶしい夏日となり、夜になっても屋外リングで試合ができそうなコンディションとなりました。

バンタム級130年の歴史に新たな爪痕を残すことになる、最強決定トーナメントが横浜から火蓋を切ります。

WBAセカンド王者井上尚弥(16勝14KO無敗)が迎え撃つのは、元WBAスーパー王者ファン・カルロス・パヤノ(20勝9KO1敗)。

強打のPFPファイター、25歳の井上に対して、パヤノは目立った武器を持たない34歳のドミニカン。

オッズは10−1、パヤノ勝利を予想するメディアも専門家も見当たらない、圧倒的有利と見られた中で第1ラウンド開始のゴングが鳴りました。

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井上尚弥、プロ17戦。そのキャリアで最高の試合です。日本ボクシング史上に残るワンツーです。

フィニッシュの右のなんとコンパクトなことか!パヤノの顎に吸い込まれるタイミングのなんと鮮やかなことか!

パヤノは全く見えてませんでした。両足を揃えて、背中からキャンバスに落下。打たれた瞬間に意識を飛ばされた証拠です。

パヤノはロートルです。飛び抜けた能力も何一つありません。世界トップの実力はありません。

しかし、タフで老獪なバンタム級の強豪であることは、リング誌やESPNのランキングを見るまでもありません。簡単にノックアウト出来る相手ではないはずでした。

試合が長引くと厄介な展開になる。

そういう危惧もありましたが、杞憂でした。

もちろん、長引いた試合で引き出しの多さを見せることは重要ですが、それも忘れさせてくれる快勝劇でした。

圧勝が続くことが、頂点を目指すボクサーにとって大きな副作用を伴うサンプルは、今までに何度も見てきました。

それでも、そんなことがどうでもよくなるスペクタクルでした。

118ポンドでどこまで通用するのかは2試合続けて棚上げです。しかし〝追試〟はもう不要でしょう。

バンタムデビューが112秒、今回が70秒、合わせて182秒。井上は、この階級でまだ3分2秒しか戦っていません。

それでも、バンタム級でも怪物…いいえ、この階級ではさらに怪物度を上げているのは明らかです。

次はIBF王者のエマニュエル・ロドリゲスvsジェイソン・マロニーの勝者。おそらく、今夜の〝ベイビー・パッキャオ〟パヤノに続いて、二人目のパッキャオ、〝マニー〟ロドリゲスが勝ち上がってくるでしょう。

そしてIBFなら当日計量。当日10ポンド以上の増量が認められないことは、リバウンダーの井上にとってはマイナス要素です。

それでも、今日の試合を見たロドリゲスは戦慄したでしょう。井上が言うように「(次の)相手にいいアピール」になりました。

大番狂わせでマロニーが上がってきても、いずれにしても準決勝は無敗対決になります。

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バンタム級の完全統一、Undisputed Champion の系譜は1972年のエンリケ・ピンダーを最後に46年間も途絶えたままです。
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ピンダーは、初防衛戦に選んだロメオ・アナヤが「挑戦者資格がない」とWBCから王座を剥奪されます。この時からバンタム級のタイトルはバラバラに散ってしまったまま、46年も経ってしまいました。

半世紀の時を経て、バンタム級のピースが一つになろうとしています。

偉大なファイティング原田は Undisputed Champion の座を、歴史的な強豪王者エデル・ジョフレを倒した1試合で手に入れました。

「世界王者は世界にたった一人しかいない」。

当たり前のことが、当たり前に認められていた古き良き時代の話です。

現代は主要団体と呼ばれるだけで少なくとも4人が世界王者を名乗る、欺瞞の時代です。

原田が1試合で手に入れた栄光は今や、その完全統一王座を目指す方法すら分からない混迷の時代です。

しかし、井上尚弥にはその道筋が与えられました。バンタムの精鋭が待ち構える荒れ狂った道とはいえ、ここを突き進めば、その先に栄光のゴールが用意されているチャンスが。

掴み取るしかありません。