カテゴリ: 世界のミドル級,世界に挑む日本人

9月16日(日本時間17日)のゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスの結果によって、ミドル級はもちろん、パウンド・フォー・パウンドの風景も今とは大きく異なったものに変容する可能性大です。

GGGとカネロ、勝負が僅差、小差の判定なら、カネロが再戦契約を行使して、ミドル級戦線は膠着します。

しかし、多くのファンが期待している、決定的なKO劇が起きれば…。

カネロが惨敗したら、そのダメージは大きいものの、27歳の世界一の人気者には、まだ挽回のチャンスがあります。ここまでの輝きは失いますが、再戦条約を放棄して、ジュニアミドルに舞い戻るなど選択肢は十分に残されています。

一方、35歳のGGGが痛烈にKOされてしまったなら、その被るダメージは甚大です。ダニエル・ジェイコブス戦で劣化と弱点を露呈、カネロに粉砕されたとなると、引退の二文字もよぎります。

いずれにせよ、明日の勝者がPFP1位に限りなく接近することは間違いありません。

そして、その評価と人気の匂いを嗅ぎつけて、ミドル級とその周辺階級から強豪たちがハイエナのように群がるでしょう。

村田諒太も、その一人です。

ここからは、村田が10月22日のアッサン・エンダム戦を明白な形で勝利を収めるという前提でのお話です。

ピーター・クイリンも、デビッド・レミューも息の根を止めることができなかったカメルーン人を、五輪金メダリストが倒したとなると、その評価はWBO王者ビリー・ジョー・サンダースを凌駕、GGGとカネロの勝者を除く、王者のピースを持つa championとしては、際立った存在になります。

GGGとカネロの勝者が、次の試合で階級最強候補の一人、ジャーマル・チャーロや、不気味なセルゲイ・デレビャンチェンコを選ぶことは考えられませんから、統一戦線という道筋なら、次は村田かサンダースです。

村田がエンダムに勝てば、1995年にやはりWBAミドル級王座に就いた竹原慎二以来、22年ぶりの快挙です。

竹原は「広島の粗大ごみ」から「日本の宝石」に昇華しましたが、その実力は世界レベルからは大きく乖離していました。ミドル級の長い長い歴史の中でも、あの日あの時のホルヘ・カストロ以外からはタイトルを奪うことは至難の技だったでしょう。


【アマエリートで人気のミドル級、村田が海外メディアで最もよく取り上げられる日本人ボクサーであることは当然といえば当然です。リング誌のミドル級ランキングでは9位、同誌では、ロンドン五輪の村田を「正確なパンチと高度な防御技術をスマートに使いこなし、日本史上二人目の金メダリストに輝いた」と絶賛。「勤務先は東京大学」というのは間違いですが、ご愛嬌です。米国から見たら東京も東洋も変わりありません。】

当時、あまりにも無謀な挑戦と見なされ、知名度も低かった竹原の試合は、生中継されず、その偉業は深夜にひっそりと録画放送されました。

しかし、その実績と実力がすでに、海外メディアから「ミドル級のトップを狙うウェイティングサークルに入っている」と評価されている村田の立ち位置は、竹原とは全く異なります。エンダムに圧勝したら、日本中量級史上最大の偉業と言い切って良いでしょう。

さらに、GGGとカネロの勝者も破って、議論する余地のない世界ミドル級王者に登り詰めれば、これは世界基準でも一発殿堂クラスの大偉業です。

最も評価される近代部門で殿堂入りした日本人はファイティング原田、ただ一人だけ、しかも事実上の一発殿堂でした(具志堅用高と大場政夫は「オールドタイマー部門」で殿堂入り)。不世出と思われた原田のポジション、そこに、並ぶわけです。

世界の中量級に思い焦がれ続けてきた憧憬と、日本人には絶対無理という諦観をゴチャ混ぜにしながらボクシングを見てきたファンにとっては、村田がそこまで辿り着いてくれたら、ファイティング原田よりも偉大な業績だと考えたいくらいです。

マービン・ハグラーvsシュガー・レイ・レナード。オスカー・デラホーヤvsフェリックス・トリニダード。マニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザーJr.…。

日本から遠く遠く離れた異国の地で、日本人とは全く関係なく、壮大に繰り広げられるファンタジーを見るような思いで、海外のメガファイトを、ずっと見てきました。

「ミドル級のレナードなら大和田正春にもチャンスある」とか「大東旭とトリニダードは噛み合いそう」とか「亀海喜寛ならメイウェザーを押し込めそう」とか、そんなこと妄想することも出来ませんでした。

世界の中量級。それもスーパースターがひしめく階級。今なら、それは、ウェルターじゃなくて、間違いなくミドル級です。

その場所は「ああ、日本人が一人も絡めなくて悔しいなあ」という嫉妬も、「いつかレナードと対等に戦う日本人が現れて欲しい」という希望すらも抱くことが出来ない、それほど遠く、遠く離れた夢舞台だったのです。

そんな、まばゆい大舞台の袖に、主役の座を狙って日本人がスタンバイしているのです。

行っちゃって下さい。もう、最後の頂上まで登りきって下さい。

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ゲンナディ・ゴロフキン、カネロ・アルバレス、共にリミット一杯の160ポンドで前日計量をクリア。

試合開始のゴングまで、次に注目すべきは、当日計量です。今回、賭けられているWBAスーパー、WBC、IBF、IBO(ゴロフキン)と、リング誌(カネロ)の6つの団体とメディアで、当日計量で規定(前日から10ポンド以上の増量を禁止)を設けているのはIBFだけです。

GGGはいつものように10ポンドラインのギリギリまで戻して来るでしょう。問題は、カネロです。

GGGを避け続けてきたカネロ陣営が、この待望の一戦に応じた大きな理由の一つが、3月のダニエル・ジェイコブス戦で35歳のカザフスタン人に明らかな劣化の兆候と、弱点を見出したからです。

特に、当日計量で180ポンド(81.6kg)を超えてリングに上がったジェイコブスに、体格負けしたGGGの姿は印象的でした。ミドル級の戦いですが、現実のリング上で繰り広げられていたのは、スーパーミドル級のGGGと、クルーザー級のジェイコブスというハンディキャップマッチでした。

18連続KO防衛の世界記録更新が期待されたGGGでも、〝仮想・階級の壁〟には阻まれてしまった格好です。

この試合でもIBFタイトルが賭けられていましたが、ジェイコブスは意図的に当日計量をパスします。この時点でIBFのベルトはGGG勝利なら防衛、ジェイコブス勝利なら空位となりました。

さて、カネロもIBFタイトルを無視して、このジェイコブス戦法を使うかどうか、です。


二人は、リミット一杯(160ポンド)で計量を終えましたが、身長では179㎝のGGGが4㎝ライバルを上回る一方、骨格、体格はカネロが勝っていました。両者の筋肉のライン、肌の枯れと絞り具合からも、カネロの方が減量幅が大きかったように思えます。

カネロもアルファベットタイトルには全く興味は無いでしょうから、ジェイコブス戦法を選ぶかどうかは、明日の戦術プランのよるでしょう。ミドル級にめぼしい相手がいなくなっても、この階級にこだわったGGG陣営は、階級の壁を恐れているから、とも言われ続けていました。

GGGでなくても、明らかに体格の違う相手と戦うストレスは相当なものです。先週、ローマン・ゴンザレスをKOしたシーサケット・ソールンビサイも、リング上では3階級近く上のボクサーに見えました。

相手の嫌がることをする、それを優先するなら、世界で最も保護されてきたメキシカンは、10ポンド以上増量するアドバンテージを選ぶでしょう。

しかし、自分のベストを発揮することを選ぶなら、スピードが殺される増量は避けるはずです。

階級制の根本にあるのは公平・平等ですが、ボクサーの健康を最優先して生まれた前日計量が、胃袋が強く増量に適応できる体質のボクサーを有利にし、もう一方のボクサーの健康を危険に晒すという皮肉な結果をもたらしている現状は、もっと憂慮、避難されるべきです。

ボクシングは胃袋の強さや、リバウンドを争う競技ではありません。カネロには、10ポンド以内の増量に抑えてリングインして欲しいところです。

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毎週末に注目ファイトが用意され、ボクシングファンの夏はまだまだ終わりません。

明後日は今年最大のメガファイト、ゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスが、ついに激突します。

セルヒオ・マルチネスからリネラル王者の座を奪ったミゲール・コットに勝ったカネロが、リング誌王座も保持、アルファベットタイトルを丹念にコレクションしたゴロフキンよりも価値のあるベルトを巻いているとはいえ、どちらが世界ミドル級チャンピオンで、どちらが挑戦者なのかについて、誰に聞いても意見が分かれることは無いでしょう。

オッズは、GGG勝利が4/6(1.66倍)、カネロ勝利が5/4(2.25倍)と試合が近づくにつれ接近していますが、それでもミドル級で18度も防衛を重ねているカザフスタンの英雄に、本当のミドル級(160ポンド)で戦った経験が一度も無いメキシコの人気者が挑む、という構図は揺るぎません。

とはいえ、このメガファイト、カネロが圧倒的なAサイドであることも揺るぎありません。両者の報酬は共に1500万ドルで同じですが、PPV歩合の取り分はカネロのLION’s Share、現代最高の人気者が殆どを持って行きます。

さらに、カネロが負けた場合は、再戦要求の権利がありますが、GGGが負けても再戦条項は付帯しない契約です。つまり、カネロにだけ勝ち逃げが用意されているのです。

仕方ありません。人気商売です。PPVで100万世帯を売りあげるカネロに対して、15万世帯前後で低空飛行のカザフスタン人はPPVの分け前について何も言えません。

それでも、GGGはついにメガファイトの舞台に辿り着きました。


「A TOUR DE FORCE IN ANY LANGUAGE」(ファンベースを持たないために、世界中を旅してKOを量産するゴロフキンは、どこにだって行くし、そこで相手をぶっ倒す)。

五輪メダリストの高等技術と、危険極まりない左右のパンチを併せ持つGGGはミドル級のビッグネームから避けられ続けました。

セルヒオ・マルチネスは「ゴロフキンは強いよ。強いけど人気が無い。リスクとリターンが見合わない相手だ。コット戦を優先させることを恥ずかしいとは思わない」(マネージャーのルー・ディベラ)と明白に避け、そのマルチネスに勝ったコットはゴロフキンを完全に無視。

そのコットに勝ったカネロも「誰からも逃げない!」と威勢がいいのは口先だけで、対戦は具体的な進展を見せません。

実績のあるマルチネスや、人気のあるコット、カネロにとっては、逃げるというよりも「こっちの人気に便乗するな」くらいの気持ちだったのかもしれません。

いずれにしても、多くのファン、メディアが「階級最強」と評価するゴロフキンが、リネラル王者になれないというネジレの時間が続きます。

リング誌も、誌面で批判するだけじゃなく、160ポンドで戦わないカネロからベルトを剥奪する超法規処置を下しても良かったと思います。

しかし、何はともあれ、ついに実現しました。

人気だけなら現代最強のカネロが、ミドル級統一に動き出したことで、この人気階級はもちろん、ウェルター級やジュニアミドル級など、やはり層の厚い周辺階級の実力者たちも「GGGとカネロの勝者と戦いたい」と前のめりになっています。

カネロと戦いたいというのはもちろん、GGGがカネロに勝てば、この不遇のカザフスタン人も、ようやく陽の目を見ることが出来ます。

現在、ESPNでもリング誌でもPFP2位につけているGGGと、6位と7位のカネロの勝負の結果は、1位のアンドレ・ウォードが「あと1戦で引退」と言われている中では、PFP1位に直結します。

ゴロフキンがカネロに勝てば、強くて危険なだけだったボクサーが、戦う価値が十分にある金看板を背負うことになるのです。

やはり、9月16日にウィリー・モンローJrと防衛戦を行うWBO王者、ビリー・ジョー・サンダースも、これまでゴロフキンとの対戦を回避しまくっていたのに「勝者と戦う。逃げていたんじゃ無い、このタイミングを待っていたんだ」と、強気の詭弁を語っています。

そして、それは我らが村田諒太も同じです。「アッサン・エンダムをしっかり倒して、勝者と戦いたい」。

また、「ゴロフキンを倒すためにミドル級に上がった」というジャーマル・チャーロ、ウクライナの凶弾セルゲイ・デレビャンチェンコも控えていますが、村田がエンダムに勝って王者のピースを拾いあげれば、 GGGとカネロの勝者に対峙する、サンダースに次ぐ候補に浮上します。

もちろん、サンダースがモンローに勝つのが前提ですから、もし負ければ、村田が一番手でしょう。

日本ボクシング界が、いまだ垣間見ることも無かった、怒涛の栄光へ。

10月22日、エンダムに勝てば、次はメガファイトという扉が、あっけなく開くかもしれません。

来年、ラスベガスの新しい中心地、T-モバイルアリーナのリングに村田諒太が上がっているかもしれないのです。

その、対角線のコーナーに立っているのはカザフスタン人か、メキシコ人か。

いやぁ、ゴロフキンvsカネロだけでも心躍るメガファイトだというのに、ここに日本人が絡むなんて、もう嬉しくて、嬉しくて、クラクラしてしまいます。

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いよいよ今週末、9月16日にカネロ・アルバレスとゲンナディ・ゴロフキンが雌雄を決します。

しかし、カネロがゴロフキンに挑戦する図式なのに、どうしてカネロが先に来るのでしょうか?カネロがAサイドだからというのが理由でしょうけど、釈然としません。

なにはともあれ、リング誌王者のカネロと、WBAスーパー、WBC、IBF、IBOのアルファベット王者のゴロフキンが5つのベルトを賭けて戦います。もしかしたら、WBCのメキシコベルトもお目見えするかもしれませんから、6つのベルトが賭けられる可能性もあります。


WBCは性懲りも無く、また「メキシコベルト」を作成しました。画像上がカネロvsチャベス戦のために作ったものの、カネロは「汚らわしいWBCベルトをリングにあげるのは許さない」と激昂、お蔵入りとなったメキシコベルト。

画像下は、WBCが必死の土下座外交でカネロのご機嫌とりで作った9月16日バージョンのメキシコベルト、腐臭漂うWBCはカネロに許してもらえるのでしょうか?当日、リング上にこのベルトが上がれば、許しを得たことになります。

世界ミドル級には、もう一つのピースがあります。ビリー・ジョー・サンダースが腰に巻くWBOベルトです。サンダースは、同じく9月16日、エリザベス女王五輪公園内にあるカッパーボックスアリーナで、ウィリー・モンロー・ジュニアの挑戦を受けます。

3−1のオッズの通りにサンダースが勝てば、カネロと GGGの勝者との対決を希望しています。

また、アッサン・エンダムがレギュラーのWBAタイトルを持ってはいますが、こちらはスーパーの下の「second title」扱いですので、カネロvsGGGの勝者と、サンダースが戦って最後に勝ったボクサーが、Undisputed Middle weight Champion of the World、議論する余地のない世界ミドル級王者となります。

もちろん、存在感の薄いWBAレギュラーとはいえ、世界王者のピースに変わりはありません。10月22日、村田諒太がエンダムとの再戦で奪取を目指すこのピースは、ミドル級統一戦線への参戦パスポートです。

GGG、カネロ、サンダースが揃い踏みする9月16日で、ミドル級の勢力図が大きく変わる可能性がありますが、とりあえず現在のマップを広げてみましょう。

ESPNのミドル級ランキングでは、1位ゴロフキン、2位はカネロ、以下、ダニエル・ジェイコブス、デビッド・レミュー、ビリー・ジョー・サンダース、セルゲイ・デレビャンチェンコ、アンディ・リー、ジャーマル・チャーロ、村田、エンダムと続きます。

直接対決で勝ったエンダムが10位、負けた村田が9位というのは、世界があの試合をどう判定したかという証左ですね。

そして、そのタイトルマッチを戦った村田とエンダムを差し置いて、8位に付けているのがミドル級ではテストマッチ1試合しか経験していないジャーマル。このランキングから、このスピードとパワーを高次元で結晶させた黒人アスリートの評価が伺えます。WBCの指名挑戦権を獲得していますが、ゴロフキンサイドも「カネロに勝ったら、次はジャーマルとは限らない」と二の足を踏んで、早くも敬遠しています。

ジュニアミドル級時代にチャーロ兄弟をアレルギー症状のように避け続けたカネロにも、「WBCに険悪な態度を取る本当の理由はジャーマルが怖いから」という意地悪な意見も少なくありません。


【リング誌11月号ではカネロvsGGGを37ページにわたって大特集。「アマチュア実績がほぼゼロのカネロと、五輪銀のアマエリートのGGG。メキシカンであるがゆえに温室栽培のカネロと、ファンベースを待たないがゆえに故郷を離れてドイツやパナマ、モナコ、英国などの国々を流浪、米国上陸後も西海岸と東海岸を行き来しているGGG。ボクシングマジョリティ、メキシカンであるがゆえにスペイン語しか話そうとしないカネロと、ロシア語、ドイツ語、英語を流暢に操るGGG。二人の間に共通点と呼べるものは、職業がプロボクサーという以外、一切無いのだ」。】

村田のプロ13戦を下回る、わずか11戦(全勝9KO)で6位にランクされているデレビャンチェンコも、この階級の台風の目です。豊富なアマチュア経験を持ちながらビッグタイトルには無縁。プロ転向後は、元王者サム・ソリマン、タフで知られるトルエノ・ジョンソンを一蹴、アマエリートにもかかわらず、厳しいマッチメイクをことごとくクリアしてきました。

経済大国日本の金メダリスト、文字どおり金看板を背負って保護された線路を走ってきた村田とは、180度対照的なウクライナ人なのです。

さらに、ウェルター級最強の呼び声高いエロール・スペンスJr.も「カネロとGGGの勝者と戦いたい」とブチあげるなど、さすがミドル級、カラフルなタレントには事欠きません。

10月22日、村田は、エンダムを倒した瞬間から、ライバルに事欠かない、極めて豊饒で荒れ狂う海に、その船を漕ぎ出すことになります。

メガファイトでの勝利を重ねた先には、目的の港があります。これは、間違いなく日本ボクシング史上最大の挑戦です。

エンダムから奪い取るのは、WBAレギュラーという、か細く頼りないワラシベです。そこから、ミドル級王座のピースを全て集めていくのです。途轍もなく過酷な大航海です。

鉄壁のガードと、階級最強の右、五輪金の洗練を感じさせない、攻防分離のスタイルは不器用にも見えますが、対戦相手はやりにくいでしょう。村田は、ミドル級のエデル・ジョフレです。

メイウェザー引退、パッキャオの黄昏で、最も絢爛豪華であるはずのウェルター級が色褪せている現状、ミドル級が最も熱いクラスと言い切って差し支えないでしょう。この統一戦線を生き残れば、ミリオネア(100万ドルファイター)どころか、ビリオネア(1000万ドルファイター)の仲間入りは確実です。

そして、その激しく、過酷な戦いの果てに、ビリオネアの港に接岸するのは、村田諒太です。

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日本時間今朝のニューヨーク、バークレイズセンターで行われたマイキー・ガルシアvsエイドリアン・ブローナー、この興行のセミファイナルで元ジュニア・ミドル級王者ジャーマル・チャーロが、ミドル級に初見参。154ポンドで見せた圧倒的な動きを、160ポンドでも披露、ホルヘ・セバスチャン・ハイランドを4ラウンドでストップしました。

「ミドル級のビッグネームと戦いたい。俺はトミー・ハーンズの再来だ、この階級は俺に合っている」。今日の相手、ハイランドのレベルを差し引いても、ジャーマルが160ポンドでもトップファイターであることに、疑う余地はありません。

この勝利で、ジャーマルはゲンナディ・ゴロフキンが持っているWBCタイトルへの使命挑戦権を獲得。ゴロフキンが9月16日にカネロに勝てば、早ければ次戦でジャーマルがタイトルマッチのリングに上がることになります。

ここで、ややこしくなるのが、もしカネロがゴロフキンに勝ったケースです。9月16日のメガファイトではWBCのタイトルは賭けられない可能性が高いというのです。そうなると、カネロが勝つとWBC王座は空位となります。


【リング誌:STATE OF THE GAME(各階級詳説)のミドル級から。トップ戦線の一角を担ってきたアッサン・エンダムを事実上圧倒した村田は今や、ミドル級スターウォーズで注目される惑星の一つです。】
 
さらに、根本的な問題としてカネロ、というかゴールデンボーイ・プロモーションがジュニア・ミドル級時代からチャーロ兄弟との対戦を徹底的に避けてきたという背景があります。もちろん、プロボクシングはスポーツである前にビジネスですから「強いけど名前がない」チャーロ兄弟は、ハイリスク・ローリターン、戦う意味がありません。

カネロファンは、オースティン・トラウトやエリスランディ・ララは「強いけど名前がない」ボクサーじゃないのか?と反駁するかもしれませんが、トラウトとララの拳は優しく、危険はありません。もし、カネロがゴロフキンに勝ったとしても、すぐに凶悪な拳を持つジャーマルと戦うことは無いでしょう。

現状でこの階級で最もパンチがあるのはゴロフキン、スピードはカネロではなくジャーマルでしょう。ガードの固さと、純粋な1発のパンチなら村田がトップでしょうが、それでは攻撃力とデフェンスはトップなのかとなると、悔しいかな、現状では一番とは言い切れません。

黒人特有のバネとスピード、パワーを自在に操るジャーマルは、日本人が最も劣等感を感じてしまう存在ですが、村田にはその時が来たら、倒して、勝って、重たい霧を晴らして欲しいですね。

さらに、ここにウェルター級最強と目されているエロール・スペンスJrも食指を伸ばしています。

IBF王者スペンスはWBA/WBC王者キース・サーマンとの統一戦、あるいはマニー・パッキャオとのメガファイトを熱望していましたが、サーマンが肘のケガから戦線離脱、復帰は早くても来年前半、パッキャオもジェフ・ホーンに負けていなかったとしても危険極まりないスペンスを対戦相手に選ぶ理由はありません。

スペンスは「キースの復帰は待ってられない。ゴロフキンとカネロの勝者と戦いたい。普段の体重は160ポンドを超えている。9月16日の勝者とミドル級タイトルを争うことに何の問題も無い」と、BOXING NEWS 24に語っています。

さすがに、ミドル級ではパワー不足でしょうが、カネロ相手ならスペンスのジャブは有効でしょう。トラウトやララ、フロイド・メイウェザー、ミゲール・コット、ジャブの名手にことごとく手を焼いたカネロが、卓越したスピードと回転力のあるスペンスのジャブをさばけるとは到底考えられません。

もちろん、カネロはスペンスとは絶対やりませんが。

いずれにしても、ミドル級戦線、9月16日が最終決着ではなく、そこから本当の物語が始まります。

我らが村田諒太がどのタイミングで、どのビッグネームと激突するのか、期待がどんどん膨らみます。

メガファイトの舞台で、勝ち名乗りを受ける日本人を見てみたいです。見せてください!

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村田諒太が世界のミドル級でトップクラスの実力があることを証明、亀海喜寛はあのミゲール・コットと世界戦を戦うことが内定と、日本のファンがずっと憧れてきた中量級の夢舞台世界が現実のものとなっています。

長らく世界をリードしてきた米国でボクシングの地位は長期凋落傾向の中、リング誌をはじめ米国メディアは日本、軽量級寄りの傾向をはっきり打ち出してきています。1980年から現在の形で発表されているリング誌PFP10傑は、日本人への門戸を固く閉ざしていましたが、この2年で山中慎介、井上尚弥が揃ってベスト10に名を連ねました(ファイティング原田の時代にこの制度があれば間違いなく3位以内に入ってたでしょうが…その時の序列は1位:原田、2位:エデル・ジョフレ、3位:モハメド・アリかもしれません、想像するとちょっとシビれますね)。


【日本の年間表彰式の模様が、リング誌3月号でレポートされました。日本でもボクシング人気は低落傾向ですが、米国ではもっと深刻、日本を中心としたアジアのボクサーの露出度は増しています。かつて頓挫したリング誌日本版が再創刊される日も近い?】

今夜は、夢ではなく現実として目の前にあるであろう日本人ボクサーの可能性を探ります。

まずは、亀海と村田です。世界のミドル級は9月16日で大きく変わるかもしれません。オッズはゲンナディ・ゴロフキン勝利が1.57倍、カネロ・アルバレスが2.38倍と、アバウト3−1で予想通りゴロフキン有利ですが、番狂わせの可能性は十分あります。カザフスタンの英雄には失礼ですが、予想通りの結果だとミドル級には何の波風も立ちません。

しかし、カネロがオッズをひっくり返すと、これは日本のボクシングファンにとっても非常に面白い、本当に非常に面白い展開が期待できます。カネロが勝てば、年内にもう1試合やると言われています。その相手は先日、ゴールデン・ボーイ・プロモーションと複数試合契約を締結したコットとのリマッチになることが濃厚です。

実際に、カネロの名前は出ませんでしたが、亀海戦の発表会見では「コットは12月にも戦う。相手は誰になるかはお楽しみ」とオスカー・デラホーヤが語っています。亀海を完全に無視した発言でムカつきますが、逆に考えるとコットを倒せば、亀海はカネロとのビッグマッチに駒を進める可能性が高いのです。

その時、亀海はWBO世界ジュニアミドル級王者、ゴロフキンに勝ったカネロは〝議論する余地の無い〟世界ミドル級王者。亀海はジュニアミドル、ミドルの2階級制覇が懸かるリングに上がるわけです。夢のような話ですが、現在のコットの実力が全盛期からは程遠いのは間違いありませんし、しかも長いブランク明けです。

亀海の実力評価は世界トップレベルとはお世辞にも言えませんが、海外メディアでも「亀海のモチベーションの高さと、引退の儀式を考えている今のコットでは、デラホーヤの台本通りに物語は進まない」という見方も少なくありません。

そして、村田です。こちらもゴロフキン、カネロとの絡みが期待出来るばかりか、亀海には申し訳ないですが、村田は世界基準の実力があります。トップ戦線にとどまる可能性が高いのです。

アッサン・エンダムとの再戦か、それとも他団体の王者との決戦か、次の試合はわかりませんが、勝ち進む実力は十分あると思います。ファンの夢を語らせてもらうなら、メガファイトに勝ってミドル級最強王者となって、ウェルター級の精鋭の侵略もねじ伏せる、カルロス・モンソンやマービン・ハグラーのような、ミドルの歴史になって欲しいですね。とりあえずは、まず、次の試合です!

そして、そして、やはり日本の屋台骨は軽量級が背負っているのです。ノニト・ドネアが挫折、ローマン・ゴンザレスまでが急停車した現在の軽量級の世界地図は、もしかしたら日本人にとっては非常に難しいものになっているのかもしれません。

つまり、日本人のタレントが揃うジュニアフェザー級以下でのビッグネームが見当たらず、いるのは誰もが敬遠する純粋に強いだけのギレルモ・リゴンドーだけ。フェザーにはレオ・サンタクルスとカール・フランプトンの100万ドルファイターがいますが、井上尚弥にとってはフェザーは遠く、山中慎介は残念ながら誰もいないバンタムで骨を埋める腹でしょう。レオやカールも、この階級にいつまでいるかもわかりません。

そう考えると、井上vs山中というカードか、井上vsリゴンドーなんです。今のリゴンドーは天笠尚戦でも隙を見せたように、パーフェクトなボクサーではありません。ましてや天笠戦でも2年半も前です。ビッグネームからは敬遠され、試合間隔も空いています。

欧米のファンも、リゴンドーは評価はしても嫌いです。「誰でもいいから、あの上手いだけのキューバ人を叩きのめして欲しい」。そう願っているボクシングファンは少なくありません。

【リゴンドーとワシル・ロマチェンコは、実質的なPFP1、2位と言われています。この難攻不落のアマエリート、ある意味小賢しいテクニックの亡者を、プロの剛腕でぶっ倒すボクサーが現れたら…スター誕生です。シュガー・レイ・ロビンソン賞(最も名誉ある年間最高選手賞)確定です。井上尚弥にそれを期待するのは過重でしょうか?】

日本人の世界王者でも白黒はっきりつけて欲しいですね。田中恒成と田口良一は、絶対やらねばなりません。井岡一翔も「唯一無二の存在」に本気でなりたいなら、もう回り道してる時間はありません。井上だって同じです。

「世界王者」が、しかも近隣階級で10人レベルまで増殖してる現状を「ボクシング黄金時代」と捉えることがどれほど異常な思考か、それがわからない、わかろうとしないのはいただけません。メディアが一番悪いのですが。

エースの井上は雑魚を相手にして、弱小ジムの村中優は英国の強豪と戦う…これが長い間続いている、日本ボクシング界の腐敗の構図です。もちろん、井上は不利な条件を飲んで英国まで行く必要はありませんし、プロテクトされていない村中は呼ばれたらチャンスです。仕方がないのですが…これがずっと繰返されて、井上も内山高志のようにナマクラばかりを切り続けた挙句に、ナマクラにブッタ斬られておしまい…とかは悲しすぎます。

村田vsエンダム戦は、5億円興行、日本史上最大の規模だったと言います。もし、サンタクルスを呼べば5億じゃ済まないです。西海岸で戦えば1億円以上もらえるのですから、彼の報酬だけで2億以上積まないと、危険な日本には来るわけがないでしょう。

しかし、そういう興行が成り立つようにメディアも、ファンも盛り上げなければなりません。

井上や井岡の報酬は推定で5000万円レベルです。これは、彼らが米国で試合して支払われるわけもないとんでもない金額なんです。

西岡利晃はラファエル・マルケス戦で100万ドルの報酬を受け取ったと言いますが、それが事実だとしたらそのお金はあの興行からは絶対に出ていません。はるかに大きな興行だった、ドネア戦での報酬は日本のスポンサー収入も加味されて10万ドルです、西岡が日本で弱い相手に防衛戦をしてる方が何倍ももらえてるのです。もちろん、西岡が悪いのではなく、責任はむしろ別のところにあります。とにかく、こんな恥さらしは二度としてはいけませんし、日本のボクシングファンは忘れてはいけません。

ただ、西岡が日本で弱い相手に戦うよりも、報酬は3分の1以下でも、ただ名誉だけを求めてドネアをリングに引っ張り上げたことは忘れてはなりません。

井上、井岡に戻ると、日本で弱い挑戦者相手に5000万円もらえるのに、敵地で強豪相手に1000万円ももらえないなんて、そんなもん、ビジネスとして成立しません!井上がカリド・ヤファイと戦い、英国の大観衆にその実力を見せ付けてくれたら、日本のファンは大喜びですが…。

そうなると、英国では当たり前の同国人対決です。これは間違いなく盛り上がります。あるいは、世界中のビッグネームが敬遠するリゴンドーです。

【リング誌2016年PFP100傑から。リゴンドー6位、山中9位、井上11位、パッキャオ12位、井岡も22位につけています。】

とにかく強い相手と戦いましょう。聞いたことがないのといたずらに防衛戦を重ねるのは、安上がりなのはわかりますが、もういいです。ちゃんと世界を見せましょう。

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村田諒太の偉大な挑戦は、これ以上ない、本当に爽やかな結果に帰結しました。

恥ずかしい話、泣きました。やっぱり、スポーツって素晴らしい、ボクシングって素晴らしい。

あの判定には、私を含めて日本中が怒号に包まれました。当事者のWBA会長までもが「謝罪する」と公式に表明する異常な事態に発展しました。

あんな判定、嫌な後味しか残りようのない、最悪の土曜日の夜でした。そのはずでした。

しかし、あの試合、あのリングで戦ったのは日本の誇りと、カメルーンの誇りです。その二人、たった二人だけなんです。

レフェリーも、3人のジャッジも、もちろん無責任に応援していた私たちファンも、あの二人以外は全員が「傍観者」でしかないのです。

ファンがどう騒ごうが、公式のジャッジがどう判定しようが、承認団体の会長が何をほざこうが、実際にあの小さなリングで殴り合った、二人の当事者がお互いにリスペクトして試合が終わったのです。これ以上に、清々しい試合はありません。

ガタガタ言ってた自分が本当に恥ずかしくなりました。

私には、プロボクシングは「国際的な統括団体を持たずに、文字面通りにマルチ商法的にベルトを売りつける承認団体がいくつも乱立して、小刻みな階級で王座を粗製乱造する魑魅魍魎の世界」としか見えません。サッカーやテニスの世界チャンピオンと、ボクシングの「世界チャンピオン」は全く違います。

もちろん、それでもボクシングは大好きです。昔のお祭りに並ぶテキ屋の出店のような怪しさに満ちた世界。捏造された偽物が平然と溢れるそんな露店のジメジメした暗がりから、滅多にないことですが、ときに奇跡のように現れる正真正銘、本物のアスリートが放つ強烈にまぶしい輝き、そのギャップがたまりません。

モハメド・アリがテニスや野球選手でなく、ボクサーであったことは決して偶然なんかじゃありません。テニスやサッカーのシステムではマニー・パッキャオのような超常現象は起き得ません。

プロボクシングの世界がどんなに矛盾に満ちて、醜いことが横行していようとも、選手は純粋に自分の拳がどれだけ強いのか、それだけを試したくて一対一のリングに上がっているんです。

そんな単純で基本的なことを、恥ずかしながら、忘れてしまっていました。本物のアスリートは、他人の評価なんかよりも、もっともっと大切なことがあることをわかっているのです。

試合終了のホイッスルでジャージを交換し合うサッカーやラグビー選手、全身全霊を捧げて競り合ったランナーがゴール後に抱き合う光景は、神聖なまでに美しい。

本当は、極限までに技術を研ぎ澄ませたアスリートにとって、審判も、もしかしたら観客すらも必要ないのかもしれません。

「究極に高まった瞬間は大きなスタジアムも、絶叫する観衆の声も、見えないし聞こえない、目の前の相手しか見えないし、聞こえるのは自分とそいつの息遣いだけ」…よく聞くことですが、そんな境地で戦った二人に「判定がおかしい」「 WBA会長がツイートしてる」「海外メディアも疑問を呈してる」なんて、よく考えたら小さいことです。くだらないことです。

ボクシングは、野球やサッカー、テニスのような世界の統括団体が存在するスポーツではありません。ボクシングの世界王者の価値は「テニスやサッカーの世界30傑」以下でしょう。もっと下かもしれません。

それでも、リングの上で二つの拳だけで、シングルス(タイマン)以外にない不器用なスタイルで、互いの急所めがけて殴り合う、そんな非常識なスポーツ(私はスポーツだと思っていませんが)だからこそ、他のスポーツとは一線を画した思いがあります。

団体スポーツなら、ものすごい遺恨を引きずったかもしれませんが、この二人の人格の素晴らしさがそんな小さなものを吹き飛ばしました。

試合直後のあんなに苦々しい感情が、二人のツーショットとそのコメントで、全てが、あんな土曜日の夜が最高の時間になるのですから、アスリートは素晴らしいです。アッサン・エンダムと村田諒太には、感謝しかありません。

もし、再戦があるなら。カメルーンはありえませんからパリか東京でしょう。おそらく東京になるでしょうが、土曜日の有明と明らかに違うことがあります。

ミドル級の世界タイトルマッチという、大きさと重さだけに押し潰れてた二日前とは違います。エンダムの入場にも暖かい歓声が送られるでしょう。

最もレベルの高い階級のミドル級の世界戦〜今回、日本中が注目した一番大きな理由、そんなことまでが、今やつまらない、小さなことになってしまいました。

はっきりわかっているのは、正真正銘の二人のスポーツマンが、決着をつけるべく、決闘するのです。

ミドル級とかWBAとか、もはやどうでもいいのです。

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村田諒太様

素晴らしい試合、お疲れ様でした。

全く理解できない判定はプロだけでなくアマでも、ありえないことではないのですが、それがまさか今夜起きるとは、本当に思ってもみませんでした。

ニュース番組であなたの言葉を聞きました。

「これだけ多くの人に支えられて勝てなくて。じゃあ、もう一回と無責任なことは言えない」「負けたらもう1回できるなんて、そんな気持ちでやってきていない」。

私を含めて多くのファンの方こそが、あなたを無責任に応援してきました。あなたの拳には、日本人には絶対無理だと諦めていた、分厚く重たい扉をブチ破ってくれる可能性があると信じていたからです。

私はあなたが明白に勝つと思っていました。そして、その通りに、いいえ、私の予想以上に村田選手は見事に試合を支配して最終ゴングが鳴りました。

ボクシングは純粋なKO以外は判定競技です。TKO(ストップ)も主審の「主観」です。純粋な10カウントのKOなんて滅多にあるものじゃないから、ボクシングは「主観に基づく判定競技」だと言い切ることもできます。それゆえ、アマでもプロでも到底許せない不可解な判定が、時として起こりえます。

こんな誰でも知っている判り切った説明を、あろうことか村田選手にしてしまう無礼をお許し下さい。

判定を聞く前に「正直、胸騒ぎがした」、そうおっしゃいました。その胸騒ぎは、そういうことだったと思います。恐ろしく聡明で鋭敏な感覚を持った、あなたらしい直感です。

そんな直感、当たってほしく無いのですが…。

今後のことについては「気持ちの整理が必要」とおっしゃいました。

もちろん、ゆっくり休んで下さい。

「力を貸してくれた多くの皆さん、集まってくれたファンに勝つ姿を見せることができずに申し訳ない」ともおっしゃいました。しかし、あなたを応援していた誰一人残らず、あなたが負けたとは思っていません。勝ったと思っています。

村田諒太様。あなたは、日本のボクシングファンの夢を乗せた船を、もう漕ぎ出してしまったのです。その船が転覆したら、私たちも潔く、諦めます。

しかし、今夜、夢の船は明らかに順風満帆に大洋に出ました。そう見えなかったのは、おそらく世界で二人だけです。パナマとカナダから来た二人の審判だけが「この船は転覆した」と言っただけです。

あのアッサン・エンダムを倒して36分間も圧倒した日本人が、ここで船を降りるなんて、それこそ無責任です。

間違いなく世界標準のミドル級選手が、日本人の攻撃にひたすらバックステップを踏んで、12ラウンドを逃げたのです。そんな光景を目の当たりにさせておいて、続きは無い、なんてありえません。

一緒に観戦した友人は、今夜初めてボクシングを見ました。十分に試合を楽しんでいたのですが、判定を聞くと「ボクシングは難しいな、あれが負けになるんだな。素人にはよく分からない」、そんなことを呟きました。

村田諒太様。責任を取って下さい。あなたの責任ではなく、ボクシングが抱える暗部の問題ですが、責任を取って下さい。ボクシングの素晴らしさを、今夜も十分に見せてくれましたが、もっと見せて下さい。

私たちの夢の船は、転覆も座礁もしていません。無傷のまま、大海原に漕ぎだしました。ここで船を降りることなんて、絶対にありえないし、許されませんが、もし、そんな決断をされたなら、最も幸運なのはゲンナディ・ゴロフキンやカネロ・アルバレスらでしょうね。

そして、最も不幸なのは、日本のボクシングファンです。

航海を、続けて下さい。

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現在のミドル級の世界地図を俯瞰すると、世界王者はアルファベット主要4団体でWBAスーパー(ゲンナディ・ゴロフキン= GGG)、WBA正規(空位)、WBC(GGG)、IBF(GGG)、WBO(ビリー・ジョー・サンダース)、そしてリング誌認定の世界王者はカネロ・アルバレス(メキシコ)となっています。

村田諒太は現在空位のWBA王座をかけて、5月20日有明コロシアムで暫定王者ハッサン・ヌダム・ヌジカム(フランス)と拳を交えるわけです。

この人気階級のタイトルを狙うボクサーは GGGを苦しめて負けて株を上げたダニエル・ジェイコブス(米国)にデビッド・レミュー(カナダ)、アンディ・リー(英国)といった返り咲きを狙う元王者のグループが第一集団を形成、さらには今月22日にWBO暫定王座をかけて無敗のトミー・ラングフォード(英国)と戦う実力者アブタンディル・クルティゼ(ジョージア)、やはり無敗の村田、マチェック・スレッキ(ポーランド)、世界戦線再浮上を伺うマット・コロボフ(ロシア)、ウィリー・モンローJr(米国)と多士済済です。

ここに人気階級のお約束、下の階級から強豪王者がタイトル簒奪を狙って侵略してきます。すでにジャーモル・チャーロ(米国)がIBFスーパーウエルター級王座を返上して、ミドル級戦線に乱入、スター選手がアレルギー症状を起こすWBAスーパーのスーパーミドル級王者エリスランディ・ララ(キューバ)もGGGとの対戦を熱望しています。

階級最強がGGGであることに異論を唱える人はいないでしょうが、どうしてカネロが、承認料目当てのアルファベット団体と一線を画して、最も権威があるリング誌王者なのか。
諸悪の根源はミゲール・コット(プエルトリコ)とカネロいうヒスパニックのまさに東西横綱、超純正Aサイドの二人です。


【コットとカネロ、ヒスパニックの人気トップの二人がミドル級の正義をぶち壊してきました。どちらがAサイドなのかわからない人気者対決にリング誌はダブルの表紙で特集を組みました】

21世紀のミドル級は4団体統一を果たしたバーナード・ホプキンスが完全なる支配を続けていましたが、2005年ジャーメイン・テーラー(アメリカ)を相手に微妙な判定を落としてしまいます。

テーラーはシドニー五輪ミドル級で銅メダルを獲得、ホプキンスとは対極のキャリアを歩んできたホープでした。ホプキンスは「判定を盗まれた。ホープに勝たせたいのはわかるがリング上では実力だけが勝敗を決めるはずだ。多数決で決められたらやってられない」と嘆きましたが、後の祭りです。最初から分かっていたはずです。倒さなければいけなかったのです。

これは村田も同じです。ヌジカムは東京に呼べましたが、もしカネロと戦うとなると100%敵地でしか試合は組んでもらえません。カネロへの熱狂的な大声援にも押されて戦う村田に微妙な判定勝ちの目はありません。Bサイドに回ったら、明白にAサイドを叩きのめすしか勝ち目はないのです。

テーラーがホプキンスから掠め取ったミドル級のバトンをしっかり持ち続けることができれば良かったのですが、彼にはその握力はありませんでした。2007年9月29日、ケリー・パブリックとの無敗対決にまさかの逆転KO負け。その後、スーパーミドル級の画期的なトーナメント「 SUPER6」に参戦しますが、グラスジョーのテーラーが強打者揃いのこのグループに飛び込んだのは、まさに自殺行為でした。

次世代の王者であるはずのテーラーがあっけなくバトンを落としてしまったものの、ミドル級の未来はまだ楽観的に見ることができました。強打を振り回して相手をなぎ倒すオハイオ州ヤングスタウン出身の白人は、絵に描いたようなホワイトホープだったのですから。PFP10傑にもその名を刻み、黒人からヒスパニックに変遷したアメリカボクシングの人気の波を、懐古郷愁の白人の手に引き戻す、そんなまさか、まさかの期待までが膨らみました。

しかし、パブリックもまたバブルな王者でした。テーラーからタイトルを奪ってからわずか1年後の2008年10月18日。43歳のホプキンスに引導を渡すべく用意された試合では12ラウンドにわたって弄ばれ、老雄の引き立て役に甘んじてしまいます。この敗北で唯一の救いはノンタイトル戦だったことですが、その世界王座も2010年4月17日にセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)に大番狂わせを起こされ、失ってしまいました。

この試合は大番狂わせと報じられた他にも、「This win was first new middleweight title for an Argentinian fighter in over 40 years since Carlos Monzon, who they remembered. Martinez stated in the press conference his pride at bringing the title to Argentina again.(名王者カルロス・モンソン以来、ミドル級タイトルを40年ぶりに母国に取り戻した歴史的な勝利だと、記者会見でマルチネスは胸を張って語った)」と、40年ぶりにアルゼンチンにベルトが帰ったことも世界中に伝えられました。

ここで、日本のボクシングファンは「あれ?」と思うはずです。「竹原が1996年にタイトルを奪ったホルヘ・カストロもアルゼンチン人だったじゃないか!40年ぶりは間違いで14年ぶりだろう!」と。

カストロは分裂した王座のピースを持っていただけで、「正統な最強王者(Lineal Champion)」とは認められていないのです。ホプキンスから継承した正統王者の本物の玉座はテーラーからパブリック、そしてマルチネスへと受け継がれたのです。

「最強王者に勝たなければ正統な王者ではない」「王者に勝った者が王者」という考え方が欧米では根強く残っています。ただのアルファベット王者は「a champion(王者の一人)」と軽い表現をされ、暫定王者至っては王者にカウントされません。日本では5階級制覇と認められるノニト・ドネアが、暫定のスーパーフライ級を数えられずに4階級制覇とされているのはそのためです。

そしてLineal Championという考え方ならドネアはフライ(倒した相手はビック・ダルチニアン)、バンタム(フェルナンド・モンティエル)の2階級制覇となります。

日本と海外の考え方が大きく違う典型的なサンプルがマニー・パッキャオです。日本ではメジャー4団体の王者になれば相手が誰でもカウントする一方で、それ以外の王者は一切認めませんから、パッキャオはフライ、スーパーフライ、スーパーフェザー、ライト、ウエルター、スーパーウエルターの6階級制覇となります。しかし海外では、ここにフェザーとスーパーライトの2階級(いずれもリング誌タイトル)が加わり8階級制覇と広く認められています。

そのパッキャオも正統な最強王者を倒さなければならないLineal Championの縛りではフライ(チャチャイ・ダッチボーイジム)、フェザー(マルコ・アントニオ・バレラ)、スーパーフェザー(ファン・マニュエル・マルケス)、スーパーライト(リッキー・ハットン)の4階級制覇となります。

日本では「4団体じゃないから」という理由で認めていないフェザーとスーパーライトが、パッキャオの王座の中でも特に価値のあるものだと世界では認められているというのが興味深いですね。

【AサイドのカネロがGGGの衰えを慎重に観察しながら待つ…プロボクシングの醜悪な慣行が今も繰り返されています】

そして、「王者を倒した王者が正統」と「誰もが認める最強」というLineal Championの曖昧な二重基準が、今このミドル級にねじれを起こしてしまっています。

マルチネスに勝ったコットに勝ったカネロが「正統」のLineal Championです。そして「誰もが認める最強王者」がGGGです。リング誌はカネロが1年間ミドル級で戦わないか、転級を正式発表するか、引退表明するか、その場合でしか王座を剥奪できません。

もちろん、この有様でカネロがLineal Championなのはあくまで系譜上の話であって、GGGこそがその冠にふさわしいことは誰もが認めています。ほとんど全てのスポーツが最強を決める試合が必ずセットされます。当たり前です。その当たり前が通用しないのがプロボクシングの世界です。プロボクシングの深い闇が、ここにも垣間見えているのです。

村田が来月掴み取るのは残念ながらLineal Championではなく、「a Champion」です。まぁ、始まりはAからでいいんです。アルファベットもAから始まるんですし。どう始まるかなんて全く問題ではありません。問題はどこにたどり着くのか、ただそれだけなのですから。とりあえず、最初のピースをしっかりコレクションしましょう。

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アメリカ人なのに、人気階級のミドル級を圧倒的な強さで君臨したのに、フェリックス・トリニダードに勝つまでのバーナード・ホプキンスは不遇の時代を過ごしてきました。

その理由は
①五輪メダリストのようなエリートではない叩き上げ選手のため遠回りのキャリアを余儀なくされた、②デビューも黒星スタート、強力なプロモートと縁が無かった、③ヒスパニックの時代が深まりアメリカ人であることのアドバンテージは希薄になっていた、というところでしょうか。

もし、ホプキンスが金メダリストなら違うキャリアが用意されていたでしょうし、叩き上げでもデビューから破竹のKO勝ちを重ねていたらもっともっと注目されたはずです。もし、メキシコかプエルトリコの血を引いていたらヒールを演じる必要もなく、トリニダードやデラホーヤとのメガファイトはさらに大きな興行になっていたことも疑う余地はありません。



【リング誌2017年3月号は「ホプキンス引退特集」。通常号の裏表紙は一面広告ですが、この号は表も裏もホプキンス!】

ホプキンスは過小評価されることに苛立ちながらも、その理由も、自分がスターダムにのし上がるために何をすべきかも、よく理解していました。「スターになるにはスターを潰さなければならない」。

ただし、スーパースター選手とそのプロモーターは、十分な実力を持つ危険な相手との対戦には当然慎重になります。ましてや、その相手が大きな興行につながる人気を持っていないとなると、慎重になるどころか敬遠します。当たり前すぎる話です。

中量級黄金時代の80年代にマイク・マッカラムが、超人気の4人(レナード、ハグラー、デュラン、ハーンズ)の誰とも一度も絡めなかったのは、その強さが敬遠されたことよりも、その人気の無さこそが最大の要因でした。

危険な実力を持っていても、スター選手が対戦を選ぶ場合もあります。スター陣営が「間違いなく勝てる」と踏んだ時です。デラホーヤとの大一番に勝ち、ミドル級でも無敵の快進撃を続けて自らに酔っていたトリニダードには、衰えが指摘される36歳のホプキンスの実力を正確に見抜くことは難しかったでしょう。

トリニダード戦を成立させるために、ホプキンスは契約条件で大きく譲歩します。ミドル級王者同士の対決にもかかわらず二人の報酬はトリニダード900万ドルに対して、ホプキンスは250万ドルと3分の1以下。人気の差を認めただけではなく、ホプキンスにはスーパースター、トリニダードに勝つことで、もっと大きな獲物、ボクシング界最大のスターが食いついてくることがわかっていたのです。

トリニダードとの「1000年に一度の戦い」に敗れたデラホーヤは、黄金のキャリアを汚すこの黒星を何としても精算しなければなりませんでした。本物のスーパースターは敗北の負債を必ず精算しなければなりません。トリニダードに圧勝したホプキンスは、勝てば負債がチャラになるどころか大きなお釣りも戻って来る、格好の相手でした。

デラホーヤにとっての問題は「いつ戦うか」に尽きました。ホプキンスがまだまだ危険な相手であることはわかっていますが、一方で40歳の大台を目前に大きな衰えを露呈していつ誰に負けてもおかしくない状況です。自分と戦う前にホプキンスが負けてしまっては元も子もありません。

ホプキンスがトリニダードを粉砕してから3年後の2004年9月18日、デラホーヤは精算のリングに上がります。ホプキンスの衰えを3年も待っただけでなく、157ポンドのキャッチウェイトというAサイドのエゴ剥き出しの保険までかけました。ホプキンスはここがゴールであることをわかっていましたから、デラホーヤからの要求を全て飲みます。

報酬はデラホーヤが3000万ドル、ホプキンスが1000万ドル。無名の叩き上げボクサーが、ついにビリオネアのステージに辿り着き、スーパースターの仲間入りをした瞬間でした。もはやホプキンスの実力を見誤る専門家もブッカーもいません。オッズは2−1でホプキンス。

9ラウンド、ホプキンスが放った痛烈な左ボディにデラホーヤが苦悶に沈みのたうつ光景は、このスポーツの残酷さと恍惚を同時に見せてくれました。

「ボクシングファンは俺のことをみんな認めてくれていたが、この試合で俺はボクシングを超えたスポーツファンに知られる存在になった。長い間、自分はこうあるべきだと信じていた存在に、今ようやくなることができたんだ。俺はたどり着いたぞ!」。

村田諒太もミドル級であるがゆえに、勝ち続ければメガファイトの舞台が確実に待っています。しかし、そのリングにはホプキンスと同じBサイドで上がる可能性大です。Bサイドには用意された台本はありませんし、レールも敷かれていません。

それでも、Aサイドが周到に書き込んだ台本を破り捨て、栄光のゴールへ延伸するはずのレールをひん曲げることが出来るのはBサイドの特権です。PFP1位のゴロフキンの進路を阻み、世界一の人気者カネロの台本を踏みにじるようなことになれば、あのプライドの高いマネーがまたリングに舞い戻るはずです。「村田と戦う。東京ドームでやってもいい」と。

メイウェザー戦なんて今はまだまだ妄想の域を出ませんが、マネーも含めてミドル級には巨大な獲物が何匹も回遊していることは事実です。

まずは、最初に有明コロシアムでカメルーンの大魚を釣り上げましょう!

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