毎週末に注目ファイトが用意され、ボクシングファンの夏はまだまだ終わりません。

明後日は今年最大のメガファイト、ゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスが、ついに激突します。

セルヒオ・マルチネスからリネラル王者の座を奪ったミゲール・コットに勝ったカネロが、リング誌王座も保持、アルファベットタイトルを丹念にコレクションしたゴロフキンよりも価値のあるベルトを巻いているとはいえ、どちらが世界ミドル級チャンピオンで、どちらが挑戦者なのかについて、誰に聞いても意見が分かれることは無いでしょう。

オッズは、GGG勝利が4/6(1.66倍)、カネロ勝利が5/4(2.25倍)と試合が近づくにつれ接近していますが、それでもミドル級で18度も防衛を重ねているカザフスタンの英雄に、本当のミドル級(160ポンド)で戦った経験が一度も無いメキシコの人気者が挑む、という構図は揺るぎません。

とはいえ、このメガファイト、カネロが圧倒的なAサイドであることも揺るぎありません。両者の報酬は共に1500万ドルで同じですが、PPV歩合の取り分はカネロのLION’s Share、現代最高の人気者が殆どを持って行きます。

さらに、カネロが負けた場合は、再戦要求の権利がありますが、GGGが負けても再戦条項は付帯しない契約です。つまり、カネロにだけ勝ち逃げが用意されているのです。

仕方ありません。人気商売です。PPVで100万世帯を売りあげるカネロに対して、15万世帯前後で低空飛行のカザフスタン人はPPVの分け前について何も言えません。

それでも、GGGはついにメガファイトの舞台に辿り着きました。


「A TOUR DE FORCE IN ANY LANGUAGE」(ファンベースを持たないために、世界中を旅してKOを量産するゴロフキンは、どこにだって行くし、そこで相手をぶっ倒す)。

五輪メダリストの高等技術と、危険極まりない左右のパンチを併せ持つGGGはミドル級のビッグネームから避けられ続けました。

セルヒオ・マルチネスは「ゴロフキンは強いよ。強いけど人気が無い。リスクとリターンが見合わない相手だ。コット戦を優先させることを恥ずかしいとは思わない」(マネージャーのルー・ディベラ)と明白に避け、そのマルチネスに勝ったコットはゴロフキンを完全に無視。

そのコットに勝ったカネロも「誰からも逃げない!」と威勢がいいのは口先だけで、対戦は具体的な進展を見せません。

実績のあるマルチネスや、人気のあるコット、カネロにとっては、逃げるというよりも「こっちの人気に便乗するな」くらいの気持ちだったのかもしれません。

いずれにしても、多くのファン、メディアが「階級最強」と評価するゴロフキンが、リネラル王者になれないというネジレの時間が続きます。

リング誌も、誌面で批判するだけじゃなく、160ポンドで戦わないカネロからベルトを剥奪する超法規処置を下しても良かったと思います。

しかし、何はともあれ、ついに実現しました。

人気だけなら現代最強のカネロが、ミドル級統一に動き出したことで、この人気階級はもちろん、ウェルター級やジュニアミドル級など、やはり層の厚い周辺階級の実力者たちも「GGGとカネロの勝者と戦いたい」と前のめりになっています。

カネロと戦いたいというのはもちろん、GGGがカネロに勝てば、この不遇のカザフスタン人も、ようやく陽の目を見ることが出来ます。

現在、ESPNでもリング誌でもPFP2位につけているGGGと、6位と7位のカネロの勝負の結果は、1位のアンドレ・ウォードが「あと1戦で引退」と言われている中では、PFP1位に直結します。

ゴロフキンがカネロに勝てば、強くて危険なだけだったボクサーが、戦う価値が十分にある金看板を背負うことになるのです。

やはり、9月16日にウィリー・モンローJrと防衛戦を行うWBO王者、ビリー・ジョー・サンダースも、これまでゴロフキンとの対戦を回避しまくっていたのに「勝者と戦う。逃げていたんじゃ無い、このタイミングを待っていたんだ」と、強気の詭弁を語っています。

そして、それは我らが村田諒太も同じです。「アッサン・エンダムをしっかり倒して、勝者と戦いたい」。

また、「ゴロフキンを倒すためにミドル級に上がった」というジャーマル・チャーロ、ウクライナの凶弾セルゲイ・デレビャンチェンコも控えていますが、村田がエンダムに勝って王者のピースを拾いあげれば、 GGGとカネロの勝者に対峙する、サンダースに次ぐ候補に浮上します。

もちろん、サンダースがモンローに勝つのが前提ですから、もし負ければ、村田が一番手でしょう。

日本ボクシング界が、いまだ垣間見ることも無かった、怒涛の栄光へ。

10月22日、エンダムに勝てば、次はメガファイトという扉が、あっけなく開くかもしれません。

来年、ラスベガスの新しい中心地、T-モバイルアリーナのリングに村田諒太が上がっているかもしれないのです。

その、対角線のコーナーに立っているのはカザフスタン人か、メキシコ人か。

いやぁ、ゴロフキンvsカネロだけでも心躍るメガファイトだというのに、ここに日本人が絡むなんて、もう嬉しくて、嬉しくて、クラクラしてしまいます。