カテゴリ: ヘビー級が動くが如くボクシングは動く

Saturday 21, September 2024
  
Wembley Stadium, Wembley, London, United Kingdom
commission:British Boxing Board of Control

promoter:Eddie Hearn (Matchroom Boxing),
Frank Warren (Queensberry Promotions)
matchmaker:Steve Furness

inspector:Neil Scott
media:DAZN

IBFヘビー級12回戦




ハコはウェンブリースタジアム、チケットはソールドアウト!興行規模という点では紛うことなきメガファイトですが、その内容はオレクサンデル・ウシクに喰われた者同志のLeftovers(残飯)対決。

商品価値でカネロを凌ぐジョシュアのタイトル奪還マッチです。


昨日行われた前日計量では挑戦者ジョシュアが252.3ポンド、王者デュボアが248.4ポンド。

「より弱い相手を求めて自分も弱体化する、その最高のバランスを追求する」階級での体重コントロールは一部の変態を例外にして、過酷な減量です。

一方で、無差別級は「相手のスタイルに合わせて最強の自分を作る」のが体重コントロール。

ジョシュアはいつも通りの250ポンド前後にシェイプアップ。しかし、デュボアはキャリア最重量まで体重計のメモリを振りました。

デュボアは昨年8月26日にオレクサンデル・ウシクのが持つUndisputed titleに挑戦、第5ラウンドに強烈なボディでダウンを奪う大健闘も、ルイス・パボン主審はローブローと判定。これが唯一の見せ場で、結果は9ラウンドKO負け。

明日のジョシュア戦は、それから13ヶ月足らずで4試合目。現代のヘビー級トップ選手としては非常に精力的にリングに上がり続けています。

対するジョシュアも同じスパンで4試合目。直近では今年3月にフランシス・ガヌーの夢を木っ端微塵に打ち砕いています。

この二人、高い身体能力を全面に出すスタイルもよく似ています。

5年前の2019年12月、デュボアに藤本京太郎が5分10秒で処刑されたのは「いつか日本人もヘビー級の世界王者へ」という夢まで抹殺された瞬間でした。

リング誌の予想は19勝1敗でジョシュアが圧倒的有利ですが、予想を上回る脆さを見せることもあるジョシュアだけに何が起きるかわかりません。



…なんて書いていたのですが、まあジョシュアの圧勝と思っていました…。
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ウクライナのウォロデミル・ゼレンスキー大統領が怒りの声明を出しました。

ロシアに対してではありません。

今週末にロンドンで開催されるヘビー級のメガファイト、IBF王者アンソニー・ジョシュアとダニエル・デュボアに招待されたLineal/The Ring/WBC/WBO/IBO王者オレクサンデル・ウシクが経由地のポーランドのクラクフ・ヨハネ・パウロ2世国際空港で税関警察に拘束されてしまったのです。

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“I spoke with Oleksandr Usyk on the phone after he was detained,” Ukraine president Volodymyr Zelenskyy said. “I was disappointed by this attitude towards our citizen and champion. I instructed the Minister of Foreign Affairs of Ukraine, Andrii Sybiha, and the Minister of Internal Affairs of Ukraine, Ihor Klymenko, to immediately look into all the details of the incident at Kraków airport.

“Now, everything is fine, our champion has been released. He is no longer being detained. In the photo, he is with our Consul General in Kraków right after being released.”

ゼレンスキー大統領は「拘束された後、電話でウシクと話した。ウクライナ国民であり世界チャンピオンでもある彼を拘束した空港関係者には失望している。外務大臣と内務大臣に(ポーランド政府も協力して)どうしてこんなことになったのか調査するよう求めた」「当面の問題は解決し、私たちのチャンピオンは解放された。この写真は解放された直後に、現地のウクライナ総領事と撮ったものだ」と伝えました。

空港の税関警察が何の容疑でウシクに手錠をかけたのかは不明ということですが、嫌疑は完全に晴れたようです。


*********


こんなこと言ったらダメなんでしょうが…。ポーランドの空港警察を許してあげて欲しいです。彼らも悪気なんてなかったはずです。

ウシク、面構えが只者じゃ無さ過ぎます。

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ヘビー級では小柄でも身長191㎝、リーチ198㎝、体重220ポンド(99.8kg)、岩のような体躯、そしてあの面構え…見るからに只者じゃありません。

あんなのが取り巻きに囲まれてタラップを降りてきたら、取り押さえられて手錠をかけられても仕方がありません。

今頃、身柄を拘束した署員たちは「もし殴られてたら…!」と、生きた心地がしてないでしょう。



いやぁ、大好きなウシクにまた一つ伝説が加わりました。




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リング誌電子版7月号から「THE LEGACY OF DEONTAY WILDER(デオンティ・ワイルダーとは何者だったのか?)」をご紹介。


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米国最後の世界ヘビー級チャンピオンになってしまったデオンティ・ワイルダー。

2005年、アラバマ州タスカルーサの自宅を改造したジムでワイルダーがグローブをはめたのは20歳になったとき。

ワイルダーがWBC世界ヘビー級タイトルを獲得すると、トレーナーのジェイ・ディースはオレンジ色のボードを掲げました。

ヘビー級の短命王者と、長寿王者の名前を書いたものでした。

「短命」はレオン・スピンクス、トレバー・バービック、ピンクロン・トーマス、トニータッブス、フランク・ブルーノ、バーメイン・スティバーン…。

ヘビー級の短命王者トップ6のうち4人までがマイク・タイソンが勝った相手。タイソンの時代が史上最もヘビー級のレベルが低かった、後世のタイソン評価が厳しい事実を物語るリストです。

弱い相手にどんなに鮮やかに勝っても、後世からは評価されません。

せめて、クロスゲームだったイベンダー・ホリフィールドとの初戦に勝っていたなら…。

まだ王者になったばかりというのに、ディースはWILDERの名前を長寿王者のコーナーに大きく印字しました。

その願いが通じたのでしょう。

2015年から2020年までの61ヶ月間もワイルダーはタイトルを守り続けるのです。

これは、ジョー・フレイジャー、レノックス・ルイス、ロッキー・マルシアノをも凌ぐ数字です。この3人がいずれもUndisputed championだったこと、強豪を倒して一発殿堂に輝いたように、ワイルダーも後世から評価されるかどうかは別にして、ボクシングを始めた時期があまりにも遅過ぎたように見えた彼は間違いなく長寿王者でした。

ワイルダーの世界戦はWBCという小さな〝世界〟で、タイソン同様に「誰に勝ったのか?」と聞かれると目を逸らして薄笑いを浮かべるしかないような相手ばかり。

そして、WBCの世界戦ですらワイルダーの代名詞であるKOパワーも減退していました。

ヂャン・ヂレイに無惨に破壊されたとき、ワイルダーの抱える問題が全て曝け出されてしまいました。

中国人のショートカウンターに枯葉のように舞い、360度も回転させられてしまいます。

ライト級の選手がミドル級の選手に吹っ飛ばされたように。現実にはそれ以上の体重差がありました。ワイルダーはヘビー級巨人時代に、何十ポンドも軽い痩身で自分よりも遥かに重い相手に、蟷螂の斧で立ち向かったのです。

いいえ、彼は頭抜けて軽いヘビー級であっても、左右の拳には巨人を一撃で倒すパワーを秘めていました。

ルイス・オルティスとの2試合はいずれもパンチャーズ・チャンスをものにした大逆転劇。タイソン・フューリーとの3連戦は詳しく見るといずれも完敗でしたが、それは「ダウンを奪ったラウンドを除くと」という注意書きが必要です。

ワイルダーとタイソンを「弱い相手にしか勝てなかった」と括るなら、その人に聞きたい。タイソンは一度でも逆転勝ちをしたことがあったでしょうか?

あるいは、タイソンはワイルダーのように自分よりも重くて強い相手にむき出しの勇気だけで立ち向かったことがあったでしょうか?

たったの一度もありません。

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ワイルダーは名誉の殿堂入りをするかもしれません。

もちろん、ヘビー級のレベルが高かった時代、いや決して高いとまでは言えないクリチコ時代と重なっていたら、ワイルダーはWBCのストラップすら獲れなかったでしょう。

殿堂の投票者でもあるパトリック・コナーは「ワイルダーの殿堂入りはありうる」と明言します。

「ロン・ライル、ジェリー・クーニー、レイ・マーサー、アンドリュー・ゴロタ、レーザー・ラドック、デビッド・ツアはワイルダーと同じくらいか、それ以上の対戦相手と戦ってきましたが殿堂入りはならなかった。ただ、殿堂にはスリリングなファイターを高く評価する傾向がある。アーツロ・ガッティはその代表格だ。ガッティは勇気があったが、誰に勝ったというのか?」。

「ベーブ・ルースが人々に興奮を与えたのは、本塁打の魅力を教えてくれたからだ。そして、その興奮は当たってたら本塁打という、三振を見ても沸き起こった。ワイルダーの人気はまさにそこにある。ただ、バンビーノは卓越したテクニシャンでもあったが、ワイルダーは史上最も下手くそな世界王者だ」。


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“Like a howitzer mounted on a baby carriage.”〜カノン砲を搭載した乳母車

「なんという、ワイルダーを見事に言い当てた表現だろうか!1発にさえ気をつけていたら、ワイルダーには簡単に勝てる…1発にさえ。しかし、その1発が火を噴くとゲームオーバー。過去15年間、ボクシングの試合を取材続けてきたが、ワイルダーの右は全く特別なもので、あんな凄まじい火力のある武器は見たことがない」。

「そして、ワイルダーのスパーリングも何度も見てきた。その〝練習試合〟のほとんどでワイルダーは負けていたのだ。タイソン・フューリーとの初戦に臨む前に、トレーナーのマーク・ブリーランドに聞いたことがある。『8歳でボクシングを初め他あなただが、ワイルダーの技術をどう見ているのか』と。五輪金メダリストは真剣な表情で『11歳の頃の私の方が技術的には上』。それなのに『勝つチャンスは十分ある』と言い切るんだ」。

「それも納得だ。ワイルダーは乳母車かもしれないが、カノン砲を積んでいるのだから」。




当時のボクシングシーンは、ワイルダーとアンソニー・ジョシュア、フューリーが無敗の王者として割拠していました。

今や、3人ともあの頃の輝きを失ってしまいました。

多くの専門家から史上最強の呼び声が高かったフューリーでしたが、その錯覚はどこからきたのか?

あの錯覚の源泉は、デオンティ・ワイルダーに3連勝したからです。

現在、最強と見られているのはオレクサンデル・ウシク。

しかし、引退を拒否している稚拙な乳母車がウシクへの挑戦権を手に入れて、あの機動力抜群の戦車をひっくり返したら?

「ワイルダーがウシクに勝てるわけがない」と否定するボクシングファンは、おそらく少数派でしょう。

乳母車に搭載されたカノン砲がクルーザー級上がりのウシクのチンやテンプルに炸裂したら?誰もが、それにワクワクするはずです。

米国ヘビー級というプライドを守るために保護されてきたワイルダーの評価は、確かに蜃気楼でした。それが事実です。

そして、彼の拳が飛び抜けた破壊力を秘めていることも、またもう一つの事実なのです。





さあ、The Ring デジタル(月270円前後)で購読しよう!

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リング誌からWHY OLEKSANDR USYK IS AN ALL-TIME GREAT.です。

5月18日にタイソン・フューリーに勝利したオレクサンデル・ウシクは、リング誌でほぼ全員一致のPFP1位に推された。

この試合の結果に関わらず、ウシクの業績は一発殿堂、ポスト・クリチコ時代では文句なしのヘビー級最高ファイターだ。

では、その枠をも飛び越えて、このウクライナ人はヘビー級史上最高のファイターなのか?

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まず、そのアマチュア実績から査定してみよう。


・通算335勝15敗。

・2008年北京五輪代表。

・2008年欧州選手権・金メダル。

・2011年世界選手権・金メダル。

・2012年ロンドン五輪・金メダル。

・ワールドシリーズ・ボクシング(2012〜13年)参戦。ジョー・ジョイスらに勝利して6戦全勝。


アマチュア実績がそのままプロに反映されるとは限らないとはいえ、ここまで極めると別格。

そして、プロでは…。


・クルーザー級王者(2016〜18年)

・WBSSクルーザー級優勝(2018年)

・クルーザー級Undisputed  champion (2018年)=4団体史上初

・SUGAR RAY ROBINSON AWARD(2018年)

・団体統一ヘビー級王者(2021〜23年)

・ヘビー級Undisputed  champion (2024年)=4団体史上初


ホーム有利、Aサイドに忖度されるプロの試合でウシクの世界戦は全てがロード、敵地。これは現代ボクシングにおいて、非常に稀有なこと。

単なるロードウォリアーというだけではない、ウシクは体格面でも自分より大きな相手を叩きのめしてきた。

現代では2階級制覇は簡単な作業だが、クルーザー級からヘビー級となると6階級制覇するよりも出現率は低い、つまり遥かに難しいのだ。

ウシク以前にクルーザー級でUndisputed  champion になったのはリミット190ポンドだった(それはそれで凄いが)3団体時代のイベンダー・ホリフィールドだけ。

そして、クルーザー級とヘビー級でUndisputed  champion になったのもホリフィールドとウシクの二人だけ。

デビッド・ヘイのWBAヘビー級はウラジミール・クリチコが上位王者に就いていたセカンドタイトルで、リング誌では王者と認めない。そして、何よりもヘイはクリチコに完敗してしまう。

その意味でも、やはり「二人だけ」なのだ。

二人はよく似ているが、ホリフィールドは米国人でAサイドでリングに上がることがほとんどだったのに対して、ウシクは生粋のロードウォリアー。

それを言い出すと、マニー・パッキャオしか対抗馬はいなくなるがパッキャオはヘビー級まで来ることが出来なかった。

ウシクより最高のヘビー級チャンピオンはいないのか?



そもそも、米国人のスーパースターなのにアウエーで戦ったグレートなんて存在するわけがない…いや、たった一人だけいる。アウエーもアウエー、アメリカ合衆国を相手に戦った世界ヘビー級チャンピオンが。

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朝の丸の内線3駅話。

というわけで、チャチャっと珍奇なヘビー級オールタイムランキングを紹介。

このランキングを考えた人は「マイク・タイソンを外すなんて考えられない」という、最初のパズルを無理やりはめてしまった結果、こんなランキングになりみした。

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「トレバー・バーバックに圧勝したタイソンなら史上最強」と考えるのは、小学生時代の運動会で父兄も驚くような2位に圧倒的な差で優勝したから五輪でも金メダルが獲れるというのと同じ、「誰に勝ったのか?」が抜け落ちた理屈です。

このお二人も流石にそこは理解していて、しかしそうなると言い訳の効かない大勝負、メガファイトでKO負け、無様な姿を晒け出したイベンダー・ホリフィールド戦と、レノックス・ルイス戦を無視するわけにはいきません。

カス・ダマトが生きていれば、ケビン・ルーニーがいてくれたらというバカにもほどがあるイフも、ダマトはトレーナーではなく、そもそもダマト存命の時からタイソンがドン・キングとネンゴロになっていたのは間違いありません。

さらに、ルーニーが名とれーなーというのは、もはやバカを通り越しています。テディ・アトラスと決別しなければ、というならまだ分かりますが、それを持ち出すとダマトの元にいながらもタイソンが好き勝手に凶悪な限りを尽くしていたことが許されていたということから離れて語れません。

そんなこんなを加味して、タイソンを評価してしまうとホリフィールドとルイスはその上にランクするしかないので、この珍奇なランキングが出来上がってしまうのです。

もちろん、これは妄想なお遊び。タイソンを不動の1位に固めても全く問題はなく、間違いとも言えません。

ただ、世の中の多数決的には珍奇になります。

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この2週間で、タイソン・フューリーがオレクサンデル・ウシクの14連打にまさかのダウンを喫して敗北、デオンティ・ワイルダーは十分予想されていたとはいえヂャン・ヂレイに衝撃的に撃沈されてしまいました。

現在、ヘビー級トップ戦線のフロントランナーはUndisputed championのウシク。

PFPキングに返り咲いたウクライナ人に対抗するのは、中国のヂャン・ヂレイ。

そして、痛烈な敗北で評価を落としていたアンソニー・ジョシュアとダニエル・デュボアが、ウシクの背中が見えるポジションまで浮上してきました。

そして、遥か後方ながらジャレッド・アンダーソンがトップ戦線を窺っています。ウシクとの無敗対決が期待できるのはアンダーソンくらいですが、経験不足のThe Real Big Babyがトップファイターとの激戦に生き残れるとは考えられません。

だからこそ〝アメリカ代表〟交代の儀式が、8月というワイルダーにとって過酷な感覚でセットされていたのかもしれません。

アンダーソンのために用意された儀式の相手がワイルダーではなく、ヂャンになってしまうと〝アメリカ最期の日〟のお葬式になってしまいそうです。


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私がアメリカのボクシングに興味を持った1980年代、ヘビー級はすでにアメリカの階級でした。

そもそも、英国発祥のボクシングはクイーンズベリー・ルールが施行された19世紀末から〝英国圏〟の米国も大きな市場として産声を上げます。

まだ、階級性が整備されていない時代、ボクシングとは大英帝国と米国だけのスポーツでした。

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そして、20世紀が幕開けすると米国の黒人奴隷たちの子孫たちと、ヨーロッパで差別されたり貧困からアメリカ大陸に駆け込んだユダヤやイタリア、アイルランドーーー社会の底辺で行き場のないエネルギーのマグマを鬱屈させた若者たちが、その怒りをリングの上で爆発させます。

アスリートどころか、スポーツなんて言葉も一般的ではなかった時代。労働者階級の男たちを熱狂させたという点で、職業ボクサーと競馬馬の間に何の違いもありませんでした。

そんな、虐げられた人々の中でもアフリカ系黒人は特殊でした。

遥か遠くアフリカから、栄養と衛生状況最悪の船底に閉じ込められながら何ヶ月もの航海を経てアメリカ大陸の土を生きて踏んだ黒人奴隷たちが、人類史上稀に見る過酷な選別をくぐり抜けた強靭な肉体を持っていたのは至極当然のことでした。

そして、彼らの遺伝子を継ぐ子孫たちが屈強であることも、当たり前すぎる真実でした。

ジャック・ジョンソンやモハメド・アリは、何がどう間違っても白人や黄色人種である可能性はなかったのです。

そんなブラックパワーがリングの上で最強であることは、聖書などに書かれていなくても、神が定めた法則でした。

そのはずなのに…。


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デオンティ・ワイルダーは〝彼らの100年物語〟の最後に登場する王者になってしまったのでしょうか?


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張志磊(ヂャン・ヂレイ)がヘビー級のビッグネーム、デオンティ・ワイルダーを5ラウンドで破壊。

予想の範囲内の結果とはいえ、ボクシングの面白さをわかりやすく伝え続けてくれたThe Bronze Bomberが無惨に撃ち落とされた姿は、多くのファンにショックを与えました。

Wilder said before the fight that if he lost, "this could be the final goodbye, the farewell of Deontay Wilder."

「もし負けるようなことがあったら、今度こそ本当のさよならだ。デオンティ・ワイルダーの引退だ」と、戦前に語っていたワイルダー。

その「もし」が、これ以上ない残酷な形で現実となってしまいました。

一方で、キャリア最高の勝利を手にしたのがヂャン・ヂレイ。

アジアのボクシングファンからすると「史上初のヘビー級トップ戦線で活躍するファイター」です。

中国はさぞわきかえっているだろうと思いきや…新華社通信でも人民網でも主要メディアでの報道は私には全く確認できませんでした。

今回も、全く盛り上がっていないようです。

「中国ではボクシングは日本や米国以上にマイナースポーツだから」というのは事実にしても、鄒市明(ゾウ・シミン)という先行サンプルを考えると納得できる理由ではありません。

かつて、ヂャンと同じ自国開催の2008北京五輪で金メダルを獲得したゾウは「国民的英雄」と思える報道がなされていましたが、その差はどこにあるのでしょうか。

ヂャンは銀メダルだったから…というのも違う気がします。

中国を拠点にして最後は自身が中国にプロモーション会社を立ち上げたシミンと、ニュージャージー州ブルームフィールドに居を構え、ニューヨークやラスベガス、ロンドン、リヤドの巨大アリーナでメガファイトを繰り広げるヂャン。

一族郎党も米国に住居を移しているとしたら、共産党は人質を持たない状況で、ヂャンはいつグリーンカードを取得するかわからない未来の裏切り者です。



https://english.news.cn/20240531/7f24ba31030e49daba92af22da6ae92a/c.html


ヂャンの報道が見つからない一方で、マカオで行われていたバレーボールネーションズリーグ2024 女子予選ラウンドで、中国を大番狂せで破るなど大健闘した日本は絶賛されています。

開催地マカオはもちろん、北京や上海などでもキャプテン古賀紗理那はアイドルみたいな人気だそうです。

41歳の馬鹿でかい中年オヤジのヂャンに、女性ファンから黄色い声援が飛ぶというのも倒錯の光景ですが、もう少し盛り上がっても良いんじゃないでしょうか。

古賀は、政治・経済・国際面であれほど敵対、非難しまくってる日本人だというのに。

共産党にとって古賀は全く怖くないけど、ヂャンは怖いということでしょうか?

一番の不幸は中国にもいるだろう、多くのボクシングファンです。


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Queensberry vs Matchroom
Weights and Running Order
12 x 3 mins Heavyweight contest

7/5 8/11



PUNCHESWILDERZHANG
Total landed1633
Total thrown9573
Percent17%45%
Jabs landed54
Jabs thrown5316
Percent9%25%
Power landed1129
Power thrown4257
Percent26%51%


階級(体重)を無視してその強さを測るのがPFPだとしたら、現実に体重を無視して拳を振り回して巨人を倒し続けてきたデオンティ・ワイルダーこそがPFPキングに相応しいはずです。

これで、米国ヘビー級のまともな世界ランカーは、まだ何も試されていないジャレッド・アンダーソンだけになりました。

8月3日に予定されているサウジアラビアの総合エンターテインメント庁が米国で開催する初のイベントのメインを飾るはずだった「ワイルダーvsアンダーソン」は消滅しました。

もし、ワイルダーの代役で中国のビッグバンがロスアンゼルスのリングに上がるなら〝最後の一人〟アンダーソンも破壊されてしまうでしょう。

アルファベット団体のデタラメランキングは無視して、まともな世界10傑から米国人の名前が消えるとなると、近代ボクシング150年で史上初の事件になります。





ーーーどうでも良い話ですが、このイベントのテーマ「Queensberry vs Matchroom」のプロモーター決戦は、Queensberry の勝利で終わりました。


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Queensberry vs Matchroom
Weights and Running Order

12 x 3 mins Heavyweight contest
ZHILEI ZHANG (282.7lbs) VS DEONTAY WILDER (214.6lbs)

7/5 8/11

12 x 3 mins IBF Heavyweight Interim Title
DANIEL DUBOIS (245.8lbs) VS FILIP HRGOVIC (274.4lbs)

23/10 4/9

12 x 3 WBA & IBO World Light Heavyweight Titles
DMITRII BIVOL (175lbs) VS MALIK ZINAD (174.2lbs)

1/25  18/1

12 x 3 mins WBC Middleweight Silver Title & WBC Final Eliminator
HAMZAH SHEERAZ (159.6lbs) VS AUSTIN WILLIAMS (159.4lbs)
1/2   2/1

12 x 3 mins WBA World Featherweight Title
RAYMOND FORD (125.4lbs) VS NICK BALL (125.8lbs)

8/11  6/4

12 x 3 mins WBC Silver Light Heavyweight Title
WILLY HUTCHINSON (174lbs) VS CRAIG RICHARDS (174.2lbs)
13/8  4/6

Boxing Scene 5v5 Header


Queensberry vs Matchroom。

日本で例えると亀田vs帝拳でしょうか。日本では出来ません…。

普段は寝ないでおこうと思えば徹夜だって出来るのに、どういうわけだか22時過ぎから睡魔が…。酒を飲んだのがいけなかったか?いや、明け方まで酒飲むなんて普通なのに…。

これで「開始時間が遅れてます」なんてやめてくれよ…。

しっかり目覚ましかけて、仮眠取ろうか…いや、それがダメなんだ!

ワイルダーをリアルタイムで見届けなければ…。

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ルイス・ネリやガーボンタ・デービス、ライアン・ガルシアらの体重超過が可愛らしく見えてきます。




いや、これはヘビー級の試合ですからヂャン・ヂレイが体重超過したわけではありません。そもそも上限体重などない、No -Limit、それが無差別級です。

今年3月にジョセフ・パーカーにMDで惜敗したときが291.5lb(132.2kg)に次ぐ282.8lb(128.3kg)で計量、キャリア二番目の重さですが、パーカー戦から9lb(4.1kg)近くも絞ってきたのです。

一方のデオンティ・ワイルダーも直近の試合でパーカーに完敗、二人ともパーカーに負けた試合からの復帰戦です。

そのワイルダーは214.6lb(97.3kg)。タイソン・フューリーとの第2戦(231lb)、第3戦(238lb)と、巨体相手に体重差を縮めるウエイトデザインを見せていましたが、連敗。原点回帰でブリッジャー級を10lbも下回る超軽量で秤に乗りました。ワイルダーもまた、絞ってきました。

Big BangとThe Bronze Bomberの体重差は68.2lb(31.0kg)。ストロー級(105lb)からライトヘビー級(175lb)に達する体重スパンです。〝分母〟が違うとはいえ、重岡銀次朗がそのままの体重でアルツール・ベテルビエフに立ち向かうようなもの。

それにしても、不倶戴天の敵だったエディ・ハーンとフランク・ウォーレンにフェイス・オフの演技させるオイルマネー。今回のイベントも豪華絢爛。

ボクシングマニア熱望のライトヘビー級の頂上決戦は、ベテルビエフの怪我でWBA /IBF王者ドミトリー・ビボルの相手はマリク・ジナードに変更になりましたが、フィリップ・フルコビッチとダニエル・デュボアのIBF暫定王者決定戦(それにしてもIBFの石頭っぷりは喜劇です)、WBAフェザー級王者レイモンド・フォードvsニック・ボール、ハマザ・シェラーズとオースティン・ウィリアムスのミドル級無敗対決が盛り込まれました。

収支をにらみながらマッチメイクするラスベガスなど普通の興行とは違います。サウジアラビアにとってスポーツのメガイベントを招致・開催するのはビジネスではありません、採算は一切考えていません。

ファンが望むカード実現がプロモーターやプラットフォームの壁によって阻まれていたのもカネの問題でしたが、それを解決してくれたのもやはりカネ、それもビジネスの常識を超える金額で。

ボクシングファンにとって、好カードが惜しみなく実現してくれるのはありがたいのですが…。







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