カテゴリ: トレーナー/プロモーター/舞台裏の主役たち

世の中、おかしなことだらけです。

先月24日にルーベン・カスティージョが、白血球の中のリンパ球が癌化するホジキンリンパ腫で亡くなりました。享年68歳。

3月19日に葬儀、その前夜には通夜も執り行われました。

1975年にプロデビュー、1997年に引退したカスティージョを知る人はよほどのボクシングマニアです。

その余程のマニアは1980年1月にアレクシス・アルゲリョ(フェザー級)、同年4月にサルバドール・サンチェス(フェザー級)、1983年2月にファン・ラポルテ(フェザー級)、1985年4月にフリオ・セサール・チャベス(ジュニアライト級)のWBCタイトルに挑戦していずれも敗れた挑戦者の名前を記憶していたということになります。

タイトルに4度アタックしましたが、いずれも失敗に終わったWBCの元世界ランカーを記憶している人は普通はいません。

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リング誌の1976年アワードで ⬆︎Progress Award of the Year に輝いていますが…


“He may not have won his title fights, but Ruben was always recognized and respected by the WBC and his peers.”


しかし、ボクシング記者のミッシェル・チョンは「世界タイトルには届かなかったが、ルーベンはいつもWBCと仲間たちから評価され、尊敬されていた」そうです。

そして、このカスティージョの葬儀費用は、WBCが全額負担したというのです。

ただでさえ存在意義がわからない承認団体がランキングだけでなく、葬儀費用まで独自の解釈でデタラメに支出してるのって…まともな感覚なら、JBCはWBCの認可取り消しです。人からわけのわからない承認料を徴取して、勝手に何に使ってるんだということです。

もちろん、WBCが「今後はランキング経験のあるボクサー全員の葬儀費用を負担します」というなら話は別です。


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DAZNとトップランクが複数年契約の締結を発表しました。

昨年、ESPNから見放されたトップランクにようやく救いの手が延ばされた形です。

トップランクはモハメド・アリ、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ…米国史上最大のスターをプロモートし続けた歴史がありますが、メイウェザーもパッキャオにも見限られ、10年以上も〝脇役〟のファイターしか傘下に収めることができないままです。

ビジネスとして難しい井上尚弥や中谷潤人ら米国市場で全く人気がない超軽量級を中心にリストラを行いましたが、それでも現在のラインナップはキーショーン・デービス、ザンダー・ザヤス、アブドラ・メイソン、エマヌエル・ナバレッテ、レイモンド・ムラタラ、オシャーキー・フォスター、ブルース・カリントン…人気階級に届かないスター未満しか見当たりません。

財政難のトップランクを率いる94歳のボブ・アラムに、これから人気階級の大物獲得に本腰をいれる余力は残されていません。

DAZNがスターになる見込みのないライト級周辺の選手しか抱えていないトップランクを〝救済〟したのは、品揃えの一環です。

現在、マッチルームとクイーンズベリーの英国(世界)2大勢力に加えて、トップランクほどではないものの没落著しいゴールデンボーイ・プロモーションズとも提携しているDAZNはボクシング最大のプラットフォームになりました。

マッチルームやクイーンズベリーのヘビー級など人気階級のメガイベントの前座に、トップランクの軽量級をあてがう…そんな風景が見られるかもしれません。

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トップランクが2015年、それまでも良好な関係を続けてきたESPNと8年間の業務提携契約を結んだことに多くの人が驚きました。

スポーツ界最大のメディアが衰退一方のボクシング、それを象徴する没落プロモーターと長期契約を結んだのですから、ESPN内部からも「メジャースポーツやこれから発展するスポーツに投資すべき」という意見が噴出していたほど。

そして、ウエットな話ですがESPNは長年親交があったボブ・アラムが亡くなればトップランクを切るとみられていたからです。

当時、アラムは86歳。8年契約は、様々な意味で長すぎると見られていました。

その契約も昨年で終了、ESPNは当然のように更新せず。他のプラットフォームもトップランクに興味を示さないまま、年が変わってもう4月になろうとしているのです。

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どっこい生きてる?


半年以上、買い手のつかなかったトップランクに救いの手を差し伸べたのがDAZN。

DAZNは先日のエマヌエル・ナバレッテのイベントを配信したように、トップランクと契約交渉を進めていました。

明日のニューヨークでの正式発表では「DAZNが資金援助」「PPVを含めて年間10〜12試合」「契約年数」などが明らかになるでしょうが、どこからも救済の手があがらなかったトップランクが大幅な譲歩を強いられたのは間違いありません。

その意味での発表はされないでしょうが、DAZNのプロモーター部門として〝子会社化〟され、中期的には解体されるというのが契約の実態かもしれません。

その露頭に迷うトップランクが、真っ先に手放したのが井上尚弥や中谷潤人ら。ビジネスが縮小しているトップランクですら一定の儲けが期待できない…これもまた米国市場でのアジア軽量級の実情です。



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日本人だけでなく、人類の肉体が徐々に成長していることを踏まえると、100年以上も前にリミットを設定した現行の階級制が上方修正を迫られていると考えるのは自然なことかもしれません。

リカルド・ロペスのストロー級、具志堅用高のジュニアフライ級、渡辺二郎のジュニアバンタム級、井上尚弥のジュニアフェザー級…軽量級を愛するボクシングファンにとって水増し階級には単なる〝悪〟とは言い難い魅力がありました。

いつの日か、オリジナル8を除く9階級が廃止されてしまうと、彼らの実績は〝参考記録〟扱いになってしまうのでしょうか?

そして、それだけではありません。

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⬆︎ボクシングとUFCの体重リミット。右端の赤字は体重差。


もし、最軽量のフライ級をUFCの125ポンドにそのまま当てはまると、それは現行ボクシングのフェザー級よりも1ボンド軽いだけ。

そのフェザー級は145ポンド、ボクシングのウエルター級に2ポンド軽いだけ。

ボクシングに1団体8階級が復活すると、穴王者や雑魚挑戦者は激減するばかりか、最軽量で125ポンドは日本人にとって高いハードルになります。

しかし、サウジ側が1団体8階級への復古は本気にしても、UFCの規格をそのまんま当てはまるでしょうか?

同じ格闘技とはいえ競技の違いから、UFCとボクシングの階級リミットを同列に考えるべきではないという意見もあります。

ストロー級からジュニアフェザー級にわたる六つの超軽量級は、欧米からは死角のクラス、それゆえにアジア屈指の富裕国、日本が得意とするゾーンです。

この豊穣な漁場をみすみす逃すようなことをするでしょうか?

少なくとも、UFCでは日本人選手を優遇したいという意図がはっきり見て取れます。

米国市場で人気のない軽量級のイベントが大きく打てる日本は、UFCの世界戦略の意味からも非常に重要なマーケットと位置付けているのは間違いありません。

朝倉海が日本人初のUFCチャンピオンになっていたなら、この島国にもUFCのブームが起きていたかもしれません。

一方で、サウジアラビアは採算度外視でボクシング界に参入しています。

トゥルキ・アル=シャイフ長官と良好な関係を築いているダナ・ホワイトでも、彼らがハシゴを外す可能性をゼロとは考えていないはず。

8階級を明言していることから、リミットはある程度引き上げられるはずですが、それがどの程度になるのか?そして、そのタイミングはいつになるのか?


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1団体8階級の時代から、団体と階級がいたずらに増殖、いまや4団体17階級時代という、よほどのボクシングマニアでも王者が何人いるのか、正確に把握できません。

もうそれだけでもまともなスポーツとは呼べない状況が出来上がってしまいるのです。

4団体時代は、階級が「17」に増え、団体が「4」に、タイトルホルダーが68人に膨れ上がったというだけではありません。

一つの階級に4人の世界王者を名乗るだけでも狂乱ですが、同一団体の同一階級でも上位タイトルやらレギュラーやら暫定やら…。

さらに、スポーツとして重要なチャンピオンシップ制度を支えるランキングが、とにかくデタラメだということ。

認定料を稼ぎたい団体は、20世紀では考えられない数の地域タイトルを続々と作ります。そして、自分たちの地域タイトルに認定料を支払うファイターを優遇してランキングしています。

認定団体は、ファンやメディアの公平な目線から大きく逸脱したデタラメ(彼らにとって都合が良いという規格ではデタラメではありません)ランキングが、性懲りも無く毎月発表されているのです。

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オリジナル8の時代が〝清く正しい〟スポーツだったわけではありません。それでも、いまの惨状と比べると全くマシです。


これを「階級が細かいのは、それだけ階級の壁が大きいから」というアホな意見を聞くと、愕然としてしまいます。

サウジアラビア総合娯楽庁とダナ・ホワイトが掲げる「既存のボクシング界をぶっ壊す」という旗印は正論です。

ズッファボクシングを核とした彼らの野望は、どの程度まで進んでいるのでしょうか。

また、この野望はどういう状況をゴールとしているのでしょうか。

長い歴史に刻まれた偉大なファイターたちの記憶は、プロボクシングの大きな魅力の一つです。

彼らがほのめかす「UFCの規格」はオリジナル8に戻すだけでなく、ボクシングよりも現代にマッチした〝重い〟階級制に変革することまで含んでいるのでしょうか。

もし、そうなればフライ級は現在の112ポンドから125ポンドになり、ボクシングのジュニアフェザー級(122ポンド)よりも重くなります。

そんなの無茶苦茶…とも思えますが、20世紀初頭にオリジナル8が形成される過程において、ヘビー級を除く階級リミットは揺れていました。

プロボクシング発展のための100年に一度レベルの変革期だと考えると、歴史的な時代を目撃していると喜べますが、ボクシングが衰退して異業種に喰い散らかされている感も否めません。

ダナ・ホワイトは本気でしょうが、サウジアラビアはどこまで商売無視の散財を続けるつもりなのか、全く見えません

一つだけわかっていることは、サウジアラビアは赤字を撒き散らしながらプロボクシングにカネを注ぎ込んでいるということです。








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もう随分前から、ダナ・ホワイトはボクシング界再編への野望を隠そうとはしませんでした。

本格的にその欲望をあらわにしたのは2017年、フロイド・メイウェザーとコナー・マクレガーの茶番劇をプロモートしたときのことです。

ボクシング界を「腐敗したシステム」と呼び、デタラメランキングによるデタラメ王者が溢れている惨状を非難。

不要な階級を排除した正常なランキングに立脚したまともな王者を擁するチャンピオンシップを目指すその先には、プロモーターを超えた統括団体の設立まで見据えていることは明らかでした。

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しかし、ボクシング界はUFCの最高責任者に激しいアレルギー反応を見せ、彼の参入を妨害します。提携しているテレビ局や、会場となるMGMグループにも根を回してUFCの興行への嫌がらせをするようにもなります。

米国ボクシングが沈み込む沼の底は見えないまま、ボクシングは総合格闘技に続くプロ格闘技2位に転落。2位と言えば聞こえは良いものの、この二つがプロ格闘技の世界において、2位とは最下位のことでした。

しかし、ついに昨年、ホワイトはサウジアラビアの総合娯楽庁からのサポートを受けてTKOグループホールディングス(UFCの親会社)とセラ・スポーツ(サウジアラビアのエンタテイメント企業)が業務提携、Zuffa Boxing を立ち上げました。

UFCのプロモーションモデルをボクシングに適用したのが Zuffa Boxing です。 

リング誌のランキングを導入、大手メディアとも手を組み、パラマウント+での配信と一部注目試合はCBSでも同時放映する体制を構築しました。

ファンの熱望するカードはプロモーターやテレビ局の壁に阻まれて来ましたが、サウジアラビアのオイルマネーによって、続々と実現されています。

プロモーターが異なるスター選手同士の対決は収益の分配や、どちらのテレビ局で放映するのかが大きな問題となりますーーーしかし、全てはカネの問題。

サウジアラビアが提示する破格の収益を盛り込んだ契約書を見せると、不倶戴天の敵だったプロモーターは互いを抱きしめ、ファイターたちも対戦に積極的になりました。

サウジアラビアの気が変わらないうちに。


「腐敗を極めるボクシング界を刷新する」と現れたサウジアラビアとダナ・ホワイトはホワイト・ナイトなのでしょうか?


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オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ…彼らがボブ・アラムと決別したのはファイトマネーの20%前後も搾取されていたことに我慢できなかったからでした。

ファイトマネーは通常、15%がプロモーター(日本ならジム)、15%がトレーナー、3%前後がコミッションへの認定料、アルファベット団体のタイトルマッチなら3%が認定団体に割譲され、税金を差し引くとボクサーの手元には半分程度しか残りません…。



ナジーム・ハメドは12歳(本人の主張なら11歳)のとき、ブレンダン・イングルとトレーナー兼マネージャーの契約にサインしました。

その内容はハメドが一定のファイトマネーを稼ぐスター選手になったとき、その収入の25%をイングルが受け取るというもの。

トレーナーとマネージャーを兼ねる役割に25%。この割合が多いのか少ないのかは、誰にもわかりません。

少年はスター選手になるだけでなく、スター選手になるまでの時間で大人になります。

そのとき「25%」の意味が、4000万ポンド稼ぐと1000万ポンドを差し出す契約であることに気づきました。

映画の前段でこの契約シーンが映し出され、そのあとの約1時間30分は1人の男と1人の少年が2人で力を合わせて世界王者を目指し、少年が1人の男になる頃にはその関係が醜く破綻している惨状を目の当たりにします。

かつて献身的で従順だった少年は傲慢で利己的になり、彼が成長したのは自分が手ほどきしたからだと信じている男にとって、彼が軽蔑してくるのを我慢することは到底できませんでした。

ナジーム・ハメドがリングの王子様になりえたのは、シェフィールドの境界を改造したユニークなウィンコバンクジムでイングルの薫陶を受けたからでしたが、ハメドの独創的なスタイルはハメドが編み出したものだったことも事実でした。

ムスリムのハメドが「この成功はアッラーの贈り物」と、神に感謝しているのもイングルの神経を逆撫でします。

そして、ハメドは彼の業績をさも自分が作り上げたように勘違いするばかりか、法外なマネジメント料を抜き取るイングルが許せませんでした。

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シェフィールドで道を踏み外しそうになっているストリートチルドレンをウィンコバンクジムに招き、正しい生き方と規律を教えていたイングルが金銭目的で若い才能に食指を伸ばしていたというのは、俄かに信じがたいものの、どんな人間も一面だけで語ることはできません。

キャリアが軌道に乗り始めると、多くのスター選手はハメドと同じ思考回路になります。

マネージャーやトレーナーがファイターを搾取する。ファイターがマネージャーやトレーナーに反旗を翻す。ボクシングのことを少しでも知っている人にとって、それは全く珍しいことでも、驚くべきことでもありません。

“It’s happening again.”  
“Same story, different actors.”


〜また、いつものことだ。役者が変わっただけで、全く同じことが繰り返されている。


アルマはイングルとその教え子たちだけでなく、ボクシング界ではそれが当たり前だと身に染みて思い知らされてきました。

かつて、あんなに目をキラキラさせながらイングルと練習に励んでいた少年が、横柄な態度で罵声を撒き散らしながらジムを出てゆく…。



2001年4月7日。恩知らずで傲慢なハメドを許せなかったイングルは妻アルマと、ジョンとドミニクの2人の息子とシェフィールドの自宅で、テレビの前に座っていました。

テレビ画面には大西洋の向こう側、ラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナでナジーム・ハメドとマルコ・アントニオ・バレラのメガファイトが始まっていました。

初めて迎える本物の強豪にハメドは萎縮し、メキシカンの強打に怯むたびにジョンとドミニクは手を叩いて歓声をあげていました。

イングルは小さな声で呟くだけでした。「どうしたんだ…どうしてそんなに自信がなさそうにしてるんだ…何を怖がっているんだ…逃げるな…前に出て打ち合え…」。

無様に打たれ続けるかつての愛弟子を見るに堪えなくなったイングルはソファから立ち上がり、リビングから出ていきます。

彼を慰めるように、アルマが後ろから寄り添いました。

リビングから2人の息子がバレラの勝利を祝う声が響いてきた。

ブレンダンは、映画「ゴッドファーザー」で長男ソニーの惨殺死体を見たドン・コルレオーネのような表情をしていた。

「見ろよ。俺の子をこんなにしやがって」。


“It’s happening again.”  
“Same story, different actors.”


〜また、いつものことだ。役者が変わっただけで、全く同じことが繰り返されている。

また、同じことの繰り返し。

イングルとハメド、役者が変わっただけで、その後も同じことが何度も繰り返されています。






https://fushiananome.superknova.org/archives/9524016.html
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“It’s happening again.” Then, when she is asked to specify exactly what is happening again by her son, John, Alma responds: “Same story, different actors.”

「また、いつもの繰り返し」。アルマ・イングルが溜息をつくと、彼女の息子ジョンが聞いてきた。「どういうことなの?」。

「同じことの繰り返し。出てくる役者が違うだけで 、もう見飽きたわ」。




ボクシングにおけるトレーナーとファイターの関係は、どこまでもドライです。

ゲンナジー・ゴロフキンとアベル・サンチェス、マニー・パッキャオとフレディ・ローチ。鉄の結束と思われた関係が、呆気なく崩れ去る光景を私たちはいくつも見てきました。

たとえ肉親であっても、フロイド・メイウェザーやノニト・ドネアたち、最近ならブライアン・ノーマンJr.の父親との決別を見れば、この関係がいかに脆弱かおわかりでしょう。

「井上」や「亀田」だけを見ると、無意識下に儒教精神が底通している日本は特別に見えますが「井岡」のような例も珍しくはありません。

鉄の結束が豆腐のように崩れる原因は、3つだけしかありません。カネの取り分や重要な試合での敗北、あるいはその両方。


ブレンダン・イングルとナジーム・ハメドの関係が後戻りできない段階まで悪化した頃、ハメドが「偉そうに御託を並べてるアンタはリングの中で何か出来るのか?」と、嘲笑するシーンがあります。

イングルはロープをくぐって、ハメドの挑発に乗ってスパーリングに応じます。ハメドは情け容赦のないボディブローをトレーナーの腹に突き刺しました。

苦痛にうずまるイングルを見下ろして、ハメドは「ファイターとトレーナー、どっちが偉いと思ってるんだ?」と浴びせかけます。



ーーーイングルは、まだ12歳だったハメドとトレーナー兼マネージャーの契約を結びました。

ハメドは「12歳じゃない、まだ11歳だったんだ!」と否定しますが、その1歳の差がどれほどの重さを持つのかは、誰にも理解できません。おそらく、ハメド自身ですら…。

しかし、そのたった1歳の違いに噛み付くほど、イングルに対するハメドの憎悪が煮えたぎって、激しく渦を巻いていたのだろうことは、理解できます。


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リング誌2月号「FIGHT DOCTOR」に補足・修正。

A CUT ABOVE〜ワンランク上(のカットマンは何が違うのか)

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筆者はVADAのファウンダー、マーガレット・グッドマン博士。


ボクシングの試合でカットは付きものといっても良いが、試合を止めるほど危険な状態なのかを判断するのは難しい。

出血や腫れを抑える技術がカットマンによって大きな差があるのはご存知の通り。

コネチカット州の格闘技を統括するボクシング委員会で主任のリングドクターをつとめるマイケル・シュワルツ博士は30年近くもこの仕事に携わってきた。

「どこをどれだけカットしたのか?それは非常に重要だ。目の上をカットして出血してしまうと視界が妨げられ、適切な防御がとれない。カットが深すぎると、治癒してもまたカットしやすくなることもある。鼻の側面、内側をカットし大量出血した場合は、骨折の疑いがあり注意が必要だ。額や頭皮のカット(多くの場合はバッティングによって引き起こされる)は血管を傷つけていなければ、骨まで届く深いカットでない限り危険ではない。

リングドクターはカットがファイターの防御能力に影響しない限り、試合を止めるべきではないと考える。

試合中にコーナーが使用を許される化学物質は「ワセリン」と総称される、アドレナリン(エピネフリン)濃度1/1000、アビテン、トロンビンの三つだけ。

アドレナリンは血管を収縮させ出血を軽減する働きがある。コラーゲンで構成されるアビテンには、血小板を活性化させ、短い時間で血栓を作る。トロンビンは出血を遅らせる効果がある局所酵素。



今年、殿堂入りを果たすカットマンとして有名なトレーナー、ラス・アンバーはオレクサンデル・ウシクやワシル・ロマチェンコ、デオンティ・ワイルダー、ジャン・パスカル、チャド・ドーソンらのコーナーを守ってきた。

アンバーは語る。「カットマンには、60秒の時間しか与えられない。そこで何をするのが効果的かを冷静に、そして瞬時に判断しなければならないのだ。私が使うのはアドレナリン1/1000だけ。アビテンやトロンビンと使い分けるカットマンがいるが、選択肢が増えることは迷いにつながる」。

さらに、64歳のカナダ人のカットマンは綿棒を自分で作っている。小さな綿棒で何度も塗るのは時間のロスだけでなく、傷口をさらに痛めかねない。

「市販の綿棒は小さすぎる。大きな傷口にもフィット、より多くのアドレナリンを塗布できるように心がけている。傷口を乾燥させ、圧迫し、それから塗布する」。

「凝固効果は数分で現れるが、その間に対戦相手から追撃を受けると事態は変わってしまう。賢いファイターは、コーナーマンの意図を読み取ってくれるが『カットしたから止められる前に総攻撃を仕掛けなければならない』と打撃戦に突っ込んでいくファイターには困ってしまう」。

「十分な環境が用意されないクラブファイターはカットマンを雇う余裕がなく、コーナーは綿棒しか持っていない1人だけということもある。これは非常に危険な事態だ」。

「リヤドシーズンのイベントでは、使い捨てのアドレナリンボトルが用意されている。コストはかかるが入手しやすく、同じボトルを複数のファイターで使い回すことで引き起こされる感染リスクも回避できる。

使い捨てボトルはニューヨーク州アスレティック・コミッションなども義務付けており、資金力のある州から徐々に広がりを見せている。

カリフォルニア州アスレティック・コミッションの主任医師ポール・ウォレス博士は「1%ルール」を推奨。カットを1日あたり1%、100日計画で治癒するプログラムだ。

皮膚が治療に耐えられるだけの伸縮強度を取り戻してから施術を進めるのだ。

「止血」「炎症」「増殖(新しい組織で再構築される)」「成熟(裂傷箇所の組織が強化される)」という4つの段階を踏んで治療は完結する。

新しい血管が形成される時期は最も大切で、この時期に焦って練習をして再びカットしてしまうのは最悪の事態。いわゆる「カットが癖になる」皮膚のまま、完治しない危険を孕む。

もちろん「100日」というのは一つの目安に過ぎない。

カットの程度だけでなく、加齢に伴う皮膚の状態、遺伝や解剖学的な身体構造、過去のカット経験、高血圧や糖尿病などの既往症…様々な個体差を考慮、さらにそれぞれの段階での回復具合を見ながら慎重に進める必要がある。

また、一部で誤解されているが、アスピリンやモトリン、アリーブ、などの抗炎症薬は試合直前に服用すると出血を悪化させる危険がある。

禁止物質のアナボリックステロイドなどパフォーマンス向上薬、アルコールも出血や顔面の腫れを助長する。

そして、どんなことにも共通しているが、最も大事なことは予防だ。

健康的な食生活を普段から心がけること。十分な栄養を摂取すること。

過酷な減量で痩せ衰えた肉体で試合前日に秤に乗り、たった10時間ちょっとで一気に水分を取り戻す、それは目の前の試合への帳尻合わせでしかない。





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ジェームズ・ボンド、首相、トーマス・クラウン、ルイ14世…どんな役にもなりきってきたピアース・ブロスナンは感慨深く語る。

「ブレンダン・イングルを演じたことは喜び以外の何ものでもない」。

https://fushiananome.superknova.org/archives/39915811.html


ナジーム・ハメドは、シェフィールドのウィンコバンクにあるイングルが開いた伝説的なジムから生まれた最も有名なボクサーの1人だった。

イエメンをはじめ中東から破格のスポンサードを受けて米国にも進出したフェザー級チャンピオンは、イングルの自由と規律を両立させる離れ業で教える偉大なイングルの指導のもと、スターに登り詰めた。

しかし、2人の中は徐々に険悪になり、和解することなく、2018年にイングルは77歳で天国へと旅たってしまう。

2人の蜜月とその破綻は、この映画の核心。

ジョニー・ネルソンやケル・ブルックといった、後に世界チャンピオンとなったイングルの教え子たちについても触れられている。


しかし、90年代にイングルと短期間会ったことがあるにもかかわらず、ブロスナンはダブリン出身の彼がボクシング界に与えた影響については全く知りませんでした。

しかし、脚本を受け取った72歳のブロスナンは、同じアイルランド出身の彼に恋に落ちました。

「〝プリンス〟ナジーム・ハメドのことは知っていた」と、ロンドンのソーホーにあるホテルでブロスナンはリング誌のインタビューで話した。

「ニューヨークで彼がケビン・ケリーと対戦した時、私はリングサイドにいたんだよ。その後、彼に会ったんだ。当時は私がジェームズ・ボンドを演じていた頃で、ロッカールームにも入れてくれた」。

「あの夜、ブレンダンにも会ったが、実はそこまで印象に残っていなかった。この作品の脚本を読んで、彼がどんな人物なのかがわかったとき、神の啓示を受けたような美しい喜びに包まれた。恋に落ちた。この作品でブレンダンを演じる光栄に感動した」。





ブレンダン・イングルと同じアイルランド人のブロスナンにとって、これは血統の出会いでもあった。

さらに、ブロスナンのフルネームは、Pierce Brendan Brosnan。

そう、彼はまさしくブレンダンだった。

「どうすればブレンダン・イングルになりきれるのか?ボクシングファンや、映画館にきた人たちの目にも偉大なトレーナーを自然に演じることができるのか?を見せる信じられる人間にできるだろうか?彼の本質を見つけ出そうと必死になってインタビューを朝から晩まで聴いていた」。

「ジムで彼が座っているインタビューがある。何度も何度も繰り返し見たよ。脚本とキャラクターに惚れ込んでしまって、もう私がブレンダン・イングルになりきっていた」

2002年に引退、現在51歳のハメドを演じたのは、エジプト生まれのアミール・エル=マスリー。彼はこの役のためにわずか4週間で体を鍛え上げた。

「朝7時から夜7時まで、1日12時間ジムでトレーニングを続けた。そりゃきつかった。試合の場面では指を脱臼したこともあった」

「ハメドはずっと私のアイドルで、実は家には彼のサイン入りのチラシがあるんだ。彼を演じることができて本当に光栄だ」。


ハメドは映画の制作には関わっていないが、今週水曜日にロンドンで行われたプレミア上映に出席している。

「シェフィールドでウィンコバンクのジムに行った時のことを覚えています」とブロスナンは言います。「私、アミールにイングルの息子ドミニク、ジョン、みんなそこにいた。感動的な瞬間だ。あのジムはとてつもなく素晴らしい場所なんだ」。

「私たちの間には言葉にできないことがたくさんあった。私が彼らの父親を演じたこと、そして私が俳優としてやってきた仕事、そしてこの映画で築き上げられた新しいイメージ。イングルと彼を取り巻く人々は、とても幸せだったと思う」。

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