It's ON!?

Undisputed Junior-Feather weight
Championship

「3月までにやんねぇなら、もうやんね」(井上尚弥)



両者の対戦交渉は「東京開催で3月」に向け、大筋合意しているとされています。

そもそも、バムが熱望したこの試合。

まず、具体化に乗り出したのは、サウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アルラシク長官でした。ビッグファイトの障壁になるのは、結局はファイトマネー。サウジが乗り出した時点で、契約成立までトントン拍子で進むと思われましたが…。

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サウジアラビアがボクシング投資を大幅に見直し


しかし、これまで採算度外視でボクシングに投資してきた姿勢は「経済的にももちろん、国際的な反響やサウジのイメージなども含めてあまりにもメリットがなかった」と、緊縮に大きく方向転換してしまいます。

「ボクシングファンが見たいカードをPPVなどの追加課金なしで提供する」と、DAZNの参入時と同じお題目を唱えますが、これを可能とするのは商売度外視の出資が大前提。

今年5月の中谷潤人戦直後の長官は「リヤドではなく東京開催」と、大赤字になるリヤドを敬遠する発言をしていたものの前向きな姿勢を崩していませんでした。しかし、6月に入ると「サウジアラビア側が交渉のテーブルから離れた」(マッチルーム)ことで、交渉は完全に行き詰まります。

米国では大きな需要のない軽量級。バムがメインイベンターでは、1万人の観客も集めることができません。ましてや、バンタム級がメインのPPVなど誰も勝ってくれません。バムの報酬はほぼ全ての試合で100万ドル未満でしょう。

「開催地・東京」は当然です。

それでも、軽量級としては別格の存在感があるバムが敵地に赴いて危険な大勝負を希望するのは井上の高い世界評価と、キャリア最高の報酬を求めてのこと。

しかし、サウジの緊縮で「キャリア最高の報酬」が期待値から大きく引き下げられてしまうことになります。

Financial Difficulties in Saudi Boxing(サウジの緊縮)は、身の丈以上の報酬に浴した、あるいはこれから恩恵を受けられるかもしれないと期待していたボクサーにとって大激震です。

バム陣営も、サウジが最後に大盤振る舞いする12月11日のタイソン・フューリーvsアンソニー・ジョシュアの前座に滑り込めるよう努力を重ねてきましたが、「緊縮」と「米国以上に軽量級への関心が低い英国」では破格の報酬はありえません。

バンタム級といえば、日本で井上尚弥と戦い50万ドルの報酬を得たポール・バトラーが「私の戦い方を恥だと非難する奴がいるが、英国ではほとんど誰も見ていないのだから恥もクソもない。職業として成立しにくいバンタム級で私のような金額を手にした選手が1人でもいるなら教えてくれ」と開き直りました。

ジュニアバンタム級で活躍したカリド・ヤファイも「同じ職業のはずなのに格差が酷すぎる。私がミドル級なら住む家も乗る車も、何もかもが変わっていた」と嘆いていました。

米国だけでなく、英国でもライト(軽量)級未満の超軽量級の扱いは悲惨です。

サウジの後ろ盾が無くなれば、身の丈を超えた報酬も無し。ジュニアフェザー級の井上戦まで時間がないのに、わざわざバンタム級で時間を潰すのは無駄です。

一方で、軽量級でも大きな報酬が約束される日本人の井上にとって「12月にバンタム級で試合がしたいから(当初言われていた1月の激突は)ちょっと待って」「英国のメガイベントで一稼ぎしたら、そこからジュニアフェザー級に合わせてキャンプするから」なんて、「そっちの都合で何ゆうとんねん!」です。

現在26歳のバムにとってあと10年キャリアを積んでも「ファイトマネー」と「レガシー(評価)」の二つの意味で、井上戦はキャリア最高、一世一代の大チャンスです。

しかし、井上にとってはファイトマネーでは中谷戦以下は確実。唯一の動機付けであるレガシーでも中谷戦よりも少し上。

とはいえ、レガシーにこだわるなら井上にとってもバムは間違いなくキャリア最高の相手。この試合に勝利すると、来年のFighter Of The Yearの最有力候補。2023年に続くFOTY受賞は、現在でも「may be(おそらく)」という表現が使われることがある一発殿堂入りに、あらゆるメディアが「concrete(確実)」と太鼓判を捺すはず。

そして、レガシーという点で大きく劣るフェザー級のラファエル・エスピノサらは、リスクではバム以上かもしれませんから、様々な意味でバム戦は井上にとってもスキップしたくないはず。

今回の交渉で井上の代理人をつとめるジョン・ルイスの「バムとおなじように井上も対戦を求めている」という言葉がリング誌から伝えられているように、井上の〝待ってられない〟という言動は「やってやるから早くしろ」というポーズでしょう。