“It’s happening again.” Then, when she is asked to specify exactly what is happening again by her son, John, Alma responds: “Same story, different actors.”

「また、いつもの繰り返し」。アルマ・イングルが溜息をつくと、彼女の息子ジョンが聞いてきた。「どういうことなの?」。

「同じことの繰り返し。出てくる役者が違うだけで 、もう見飽きたわ」。




ボクシングにおけるトレーナーとファイターの関係は、どこまでもドライです。

ゲンナジー・ゴロフキンとアベル・サンチェス、マニー・パッキャオとフレディ・ローチ。鉄の結束と思われた関係が、呆気なく崩れ去る光景を私たちはいくつも見てきました。

たとえ肉親であっても、フロイド・メイウェザーやノニト・ドネアたち、最近ならブライアン・ノーマンJr.の父親との決別を見れば、この関係がいかに脆弱かおわかりでしょう。

「井上」や「亀田」だけを見ると、無意識下に儒教精神が底通している日本は特別に見えますが「井岡」のような例も珍しくはありません。

鉄の結束が豆腐のように崩れる原因は、3つだけしかありません。カネの取り分や重要な試合での敗北、あるいはその両方。


ブレンダン・イングルとナジーム・ハメドの関係が後戻りできない段階まで悪化した頃、ハメドが「偉そうに御託を並べてるアンタはリングの中で何か出来るのか?」と、嘲笑するシーンがあります。

イングルはロープをくぐって、ハメドの挑発に乗ってスパーリングに応じます。ハメドは情け容赦のないボディブローをトレーナーの腹に突き刺しました。

苦痛にうずまるイングルを見下ろして、ハメドは「ファイターとトレーナー、どっちが偉いと思ってるんだ?」と浴びせかけます。



ーーーイングルは、まだ12歳だったハメドとトレーナー兼マネージャーの契約を結びました。

ハメドは「12歳じゃない、まだ11歳だったんだ!」と否定しますが、その1歳の差がどれほどの重さを持つのかは、誰にも理解できません。おそらく、ハメド自身ですら…。

しかし、そのたった1歳の違いに噛み付くほど、イングルに対するハメドの憎悪が煮えたぎって、激しく渦を巻いていたのだろうことは、理解できます。