Breez is Nice!


IBF世界ジュニアライト級王者決定戦、リングはマンダレイ・ベイ・リゾート&カジノ。アバウト1−6のアンダードッグ、尾川がテビン・ファーマーをスプリットデジションで撃退、大番狂わせを起こしました。
 

攻勢のファイターが涙を飲む判定が定番のラスベガスでは珍しい、スッキリする判定でした。

次戦は、元王者のジャーボンテ・デービスがほぼ内定。大勝負です。デービス相手では、1−6どころのオッズじゃ済まないでしょうが、敵陣から秘蔵っ子に声援を送るフロイド・メイウェザーを沈黙させてやりましょう!
 

そして、今日はこの階級で傑出した存在のワシル・ロマチェンコが2階級下のギレルモ・リゴンドーを迎え撃ちました。
 

マジソンスクエアガーデンのシアターとはいえ、ファンは「ボクシング史上最高の技術戦」と、この日を待ち焦がれた垂涎のカードでしたが…。
 

当日朝の軽量でロマが137ポンド、リゴ130。試合開始のリング上では、その差はさらに広がっているのを確信できるような両者の体格差でしたが、試合を決したのはパワーではありませんでした。
 

縦横無尽のフットワークから繰り出される、多彩な角度からの細かく浅い、軽打。ロマチェンコの術中に、まさかあのリゴンドーまでもが、あそこまで簡単に絡みとられてしまうとは予想できませんでした。
 

それにしても、リゴンドーの棄権には幻滅させられました。技術戦はボクシングの最大の見どころの一つですが、プロボクサーに最も求められる売り物は、勇気です。

リゴンドーが米国で思うように人気が上がらないのはキューバ人だからではありません。 【「大ブーイングを浴びるリゴンドーを可哀想だ、と思う人はいないでしょう」(ESPN)。リゴンドーは、技術的には完璧なボクサーかもしれませんが、勇気を見せることが出来ないというただ一点において、欠陥ボクサーです。ボクシングファンが、心の底から彼に声援を送ることはありえません。】
 

ロベルト・デュランが誰からも尊敬されるのはシュガー・レイ・レナードに打ち勝ったからではありません、パナマ人である壁も、その勇気の剣で見事に突き破ったからです。
 

ニカラグアのアレクシス・アルゲリョに米国ファンが熱狂したのは、ハンサムでスタイリッシュだったからではありません、その勇敢な挑戦に感動したからです。
 

マニー・パッキャオがリングの上で繰り広げた勇気の見本市の前では、フィリピン人であることなど、もはやどうでもいいことになりました。
 

根深い人種差別の宿痾にもがく米国ですが、ボクシングファンは掛け値なしの勇気を披露するボクサーには、最大限の賞賛と評価を惜しみなく与えます。
 

確かに、ロマチェンコの真綿で締め付けるようなボクシングに為す術がない事はよく理解できます。ウクライナの冷徹なハイテクは、刺し違える覚悟の一発を打ち込むことすら許してくれません。
 

しかし、無条件降伏の屈辱を選ぶリゴンドーには、あらためて幻滅しました。

2ラウンドで痛めた拳が砕け散るまで、その拳を振るうべきでした。孤高のキューバ人には、ほんの少しは期待していました。
 

2階級ジャンプして、多くの専門家がPFP1位に推すロマチェンコに挑む、リングの外で決断したその勇気は称賛されてしかるべきです。

しかし、ボクサーが勇気を売る場所は四角いリングの中にしかありません。

リゴンドーがリングで見せたのは、高尚な勇気とは対極の、下劣な怯懦でした。 

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プロボクシングの魅力は、勝者と敗者のコントラストの鮮やかさです。

ビートたけしが語るように「勝者がロープに登って歓喜の雄叫びをあげている、その真下で血まみれになってキャンバスに転がされた敗者。こんなスポーツは他には無い」のです。

勝者と敗者のコントラストは、現実のリング上で起きる事象にとどまりません。勝者は敗者から強引に〝遺産相続〟までしてしまうのです。モハメド・アリはジョージ・フォアマンを倒すことで、文字通りのレガシーを強奪し、マニー・パッキャオはオスカー・デラホーヤを打ち負かして、そのレガシーを引き継ぎました。

「ボクシングで勝つということは、相手を踏みにじって上に行くこと。だから責任がともなう。これからは彼の分も戦う」(村田諒太)ことになるのです。

「私が喫した二つの黒星は、私のキャリアにとって深刻な挫折だったし、二つ目は私のキャリアを終わらせた。しかし、この二つの敗北こそが、私のキャリアの勲章だ」(ヘナロ・エルナンデス)。彼が40戦を数える戦績で、負けたのはデラホーヤとフロイド・メイウェザーJr.の2敗だけです。

ボクシングは「誰に勝ったか」が問われるスポーツですが、「誰に負けたのか」もまたコインの裏表なのです。ヘナロのボクシング人生は間違いなく幸せでした。

偉大な相手に負けることは、恥ずかしいことではなく、時間さえ経てば、敗者も納得出来る誇りに昇華します。寺尾新や千里馬哲虎がマニー・パッキャオを語るとき、それは誰の耳にも自慢話にしか聞こえません。

この残酷なスポーツにおける、勝者と敗者のコントラストは、それだけにとどまりません。誇りに昇華する敗北もあれば、そのボクサーにとって生涯の悪夢となる呪縛の1敗もあります。

サッカーや野球の世界での敗北は多くの場合、勝利によって帳消しになります。しかし、ボクシングにおける1敗は、ときとして取り返しがつきません。

ビッグイフですが、フォアマンがアリに負けていなければ、トーマス・ハーンズがシュガー・レイ・レナードとの初戦に勝利していたら、彼らのキャリア、評価、いいえその人生が全く違ったものになっていたでしょう。どんな勝利によっても、けして払拭できない、悪霊のような敗北に、彼らは一生付きまとわれるのです。

頂点を目指して対戦相手を踏みにじり続けてきたフォアマンやハーンズが喫した1敗が自慢話になることは、永遠にありません。けして癒えることがない生々しい宿痾として、いつまでも残るだけです。

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【「隣の芝生は青い」のかもしれませんが、フジテレビよりもESPNの放送の方が、テレビ画面も解説もクールです。】

フォアマンやハーンズですら挫折した峻厳な獣道に足を踏み入れたのが、村田諒太です。彼はすでに1敗はしていますが、幸いなことにこの1敗は、取り返しのつかない悪霊ではありません。

He won the fight and got absolutely robbed. (ESPN:勝ったのは村田、彼は絶対的に勝利を盗まれた)というのが、この1敗の世界的な認識です。

しかし、村田がこの獣道を突き進み、アリやレナードのように頂上に辿り着けるのか、となると楽観的な見方が出来るボクシングファンはいないでしょう。

現在、リング誌で6位、ESPNで9位と着実に世界評価を上げています。「ガードの固さと、右の一撃は階級最高」と評価される一方で、「そのアゴは一度も試されていない。右につなげる左のリードパンチがどこまでのレベルにあるのかもまだ見えない」と未知数の不安を指摘されています。また「これからの対戦相手は、村田の右が最も効果的な距離を潰しにかかるのは間違いない」「クロスレンジでパンチの回転がもとめられるインファイトはおそらく苦手だろう」とも。

ゲンナディ・ゴロフキン、カネロ・アルバレス、ダニエル・ジェイコブス、ジャーマル・チャーロ、セルゲイ・デレビャンチェンコの5人には分が悪いでしょう。

ゴロフキン、チャーロ、デレビャンチェンコは村田のプレッシャーをまともに受けて立つはずです。どちらの火力が上か、ものすごい試合になるでしょう。そして万一、村田が下がる展開を強いられたとき、日本の希望がプランBを披露することが出来るのか。

カネロとジェイコブスは正面衝突は避けて足を使うでしょう。エンダムよりもカネロはずっと速く、ジェイコブスは遥かに高い迎撃力を持っています。村田がカネロを捕まえられるのか、下がりながらも強打を放つジェイコブスを倒せるのか。

もはや、村田に世界10傑の実力が備わっていることに疑問の余地はありません。ボブ・アラムは「来年2月に日本で防衛戦をこなしてから、米国で大きな試合を」と目論んでいるようですが、次の試合がビッグネームとの決戦になったとしても大きな驚きはありません。

スポーツ中継で20%を超える視聴率を叩き出す国民的人気と、ジャパンマネーが背景にあることも考えると、日本に絶対に呼べないのはカネロだけでしょう。この人気者との対決ならT-Mobileアリーナでも、カウボーイズスタジアムでも、どっちでも望むところです。

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ゲンナディ・ゴロフキンの牙城に、当代きっての人気者カネロ・アルバレスが挑んだミドル級最強決定戦は、公式のジャッジでは引き分けに終わってしまいました。

来年5月のリマッチが内定と見られ、GGGの劣化待ちの引き延し工作を弄してきたカネロ陣営にとっては、さらなる時間稼ぎが出来ることになリ「カネロ勝利」を推す声が初戦以上に高まっています。

いずれにせよ、GGGvsカネロ再戦のボールは、Aサイドのカネロ陣営が握っています。GGG陣営は引き延し工作を嫌い、12月の再戦を希望していますが、カネロが受けるわけがありません。

今日になって、GGGとジャーマル・チャーロが、チャーロの地元ヒューストンで戦う可能性があると報じられました。

逃げ回るカネロを追いかけ回したGGGでしたが、チャーロは逃げないでしょう。ただ、カネロよりも速くて強打者のチャーロは、カザフスタン人のキャリア最大の脅威です。慎重なトム・ラフラーが、はるかに稼げるカネロ2が吹っ飛ぶかもしれない、危険すぎる橋を渡るわけが無いと思いますが…果たして?

そして、我が日本の村田諒太は、WBAのレギュラー王座を勝ち獲り、この頂上決戦の勝者(あるいは敗者?)との対戦につながる切符を手にしました。

GGGであろうがカネロであろうが、Undisputed Champion、「俺の他には誰も王者と名乗ることは許されない」、そんな議論する余地の無い王者になるには、村田を倒すことが必要条件になったのです。

もちろん、すでに、村田本人が口にしているように、現在の立ち位置はけして強固な地盤の上にはありません。ただでさえ、液状化しているアルファベット王座の中でも、WBAでスーパー王者が存在する場合、レギュラー王者をメディアは「secondary champion」と表現することが多々あります。そして、ミドル級では、現実にスーパー王者は 存在しているのです。GGGです。

村田諒太は、secondary championです。

英和辞典的に訳すと、よく言えば「第二の王者」、悪く言うと「副次的な王者」「従属的な王者」、意地悪な表現になりますがが「二流の王者」と訳しても間違いではありません。

現時点での世界王者は、WBAスーパー、WBC、IBF、IBOがゴロフキン、リング誌認定王者がカネロ、WBOがビリー・ジョー・サンダース。彼らと比べて、村田のベルトは明らかに軽く見られているのが事実です。

それでも、文句無しのミドル級最強を名乗るには、まだ一度も底を見せていないアジアの重戦車を無視することはできません。

村田を共同プロモートするトップランクは、2018年〜19年で村田が頂上決戦に挑むスケジュールもちらつかせています。「GGGが来年5月にカネロに勝てば、ファイトマネーが2億円前後(カネロ戦は例外なので除く)のカザフスタン人なら、東京ドームに呼べる」(ボブ・アラム)と踏んでいるようです。


【「スーパーファイトの仕掛け人」。これは、今なおミドル級史上傑出したスケールのメガファイトとなったシュガー・レイ・レナード対マーベラス・マービン・ハグラーの「THE SUPER FIGHT」の事です。】

東京ドームが現実的かどうかはさておき、村田が世界的なビッグファイトのリングに続く一本道の入り口に立っていることは間違いありません。

当たり前ですが、その一本道は絶対に平坦ではありません。とんでもない急坂の、獣道です。

しかし、このスポーツで最も険しく、過酷な坂道を、まさか日本人が突き進む姿を見ることが出来る、そんな日が来るなんて!

ありがとう、しか言葉にできません。

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【リング誌電子版】2012年五輪金メダリストが、初戦の奇妙な判定負けの復讐を果たした。今回の村田には、ジャッジは必要なかった。

【ESPN】初戦は村田がエンダムを何度もカンバスに送り込んだにもかかわらず、判定はエンダムだった。しかし、再戦ではエンダムには村田は強すぎた。

【ロイター】T議論を呼ぶスプリットデジションで敗北してから5ヶ月、31歳の日本人は判定など不要だと証明して見せた。


【フランス通信社でも「重たいパンチを何度も叩き込まれたフランス人王者は8ラウンド開始のゴングに答えることが出来なかった。2012年の五輪王者が、初戦の不可解な判定を払拭する明白なパフォーマンスを見せた」と完敗を認めています。】

タフなアッサン・エンダムがキャリア初のストップ負け。村田諒太の右はもちろん、左のジャブ、フックも効果的でした。村田のボディは、アマチュア世界一でしたが、プロでも大きな武器になることもあらためて証明されました。

普段は10kg近くリバウンドするエンダムですが、今回は5kg増の77kgでリングに上がりました。村田のプレッシャーと強打をスピードでかわす狙いだったのでしょうが、スタートから弱々しく、距離を潰すクリンチも中途半端でした。

エンダムは本調子でなかったのか、衰えが進んだのか、それとも村田の攻撃力に気圧されてしまったのか、いつもの野生が感じられませんでした。

それでも、ピーター・クイリンとデビッド・レミューの強打にも怯まず、諦めず、驚異の猛反撃を見せた不屈のライオンを圧倒し、力でネジ伏せたことは世界に向けて大きなアピールになったはずです。

初防衛戦は、ロンドン五輪決勝で退けたエスキバ・ファルカオになりそうです。対戦相手の質は相当低いとはいえ、18戦全勝12KO、さすが五輪銀メダリスト、綺麗に星を並べています。

五輪の決勝、世界選手権の準決勝で共に村田が勝っていますが、アマエリートのブラジル人は、宿敵へのリベンジに燃えているでしょう。

カネロ・アルバレス、ゲンナディ・ゴロフキンとの頂上決戦までには、2試合は挟まなければ辿り着けない状況ですが、世界的にはけして強豪と呼べないファルカオは問題なく沈めて、さらにアピールして欲しいですね。

兎にも角にも、素晴らしいタイトルマッチでした。

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スポーツ好きで、いろんな雑誌を定期購読していますが、その中で自宅に届けられるのが最も楽しみな一冊がリング誌です。

ボクシングの世界は、日本と米国が凋落一途ですが、米国は隣接するメキシコ、自治領プエルトリコがボクシング大国、歴史的・政治的につながりの深い英国でも空前の盛り上がりを見せており、その活況を皮膚感覚で伝えてくれるリング誌の記事は読み応え満点です。

2007年にゴールデンボーイプロモーション傘下になって(もう10年も経つのですね)、記事が偏向するという危惧もありましたが、その心配も杞憂なようです。

さらに、美しい全ページカラーというのもファンには嬉しいところです。福田直樹さんの素晴らしい写真も拝見できますし。

残念なのは、2年前から月間ではなく年9冊発行となり、総ページ数も98ページと薄くなってしまったことでしょうか。先週届いたのは、まさにその9冊目、今年最後の12月号でした。

それでも日本の「ボクシングマガジン」「ボクシングビート」と比べると、広告が圧倒的に少ないため、内容的には盛り沢山です。

価格的には、日本で年間購読するとなると$105、今は年9回発行ですから一冊あたりだと$11.66(¥1100)もしてしまいます。クリスマス期間などは年間購読で半額レベルに下がりますが、コストパフォーマンスでは自信を持ってお薦めできる雑誌ではなくなりました。

内容的にもアジア、日本の記事は突発的、思いつきで、そのボリュームも薄いです。


【デジタル版は¥480で手軽に購入できますが、クリスマス期間なら同じレベルの価格で雑誌が購読できます(デジタル版もサービスで付きます)。つい2年ほど前までは、年間12冊でもずっと安価な価格設定だったのですが。】

海外のメディアがリアルタイムでアジアのボクサーを見ることが出来るネット時代になって、ポンサクレック・ウォンジョンカムや山中慎介、井上尚弥がリング誌のPFPランキングにその名を連ねるようになったのは大歓迎ですが、さすがに自分の目で取材していない試合は大きく取り上げるわけにはいかず、アジアの強豪が自国で戦う姿をレポートする記事が大きく扱われることはありません。

日本人では、五輪金メダルという世界的に文句無しの実績を残している村田諒太の注目度が高いとはいえ、今回の「エンダム2」の扱いは、同じミドル級の中堅レベルのマッチアップ「ガブリエル・ロサドvsグレン・タピア」のノンタイトルにも大きく劣るのが現状です。

村田vsエンダム、中量級の本場、米国でやれば注目度は上がったでしょうが、興行的には日本開催の方がはるかにメリットがありますから、難しいところです。日本でベルトを獲ってから、本場に上陸という道筋は理にかなっています。

なにはともあれ、ミドル級です。

西岡利晃のように、軽量級にもかかわらず米国が本場だと無理やり西海岸で興行を打った残念な例とは、真逆のケースになります。

村田もまた、ある意味、無理やり、ミドル級の世界挑戦を2試合続けて、日本でやるわけです。まあ、こんなことは、2度とないでしょう。ミドル級の五輪金メダリストが、またこの国から輩出できるとしたら、それはまた別の話ですが。

日本の専門誌・メディアが、米国の試合を大きく取り上げているのは、中量級やヘビー級のメガファイトが桁外れに興行規模がデカいから仕方ない側面もあるのですが…。それでも、なんだか、片思い的で悔しいですね。

この12月号でも、WBA Jr.バンタム級王者、カリド・ヤファイが大きく特集されているのは、複雑な気分です。


10月28日に英国カーディフで石田匠を迎えて2度目の防衛戦のリングに上がるのですが、オッズは8倍と無敗の石田を負け犬扱い、「来年は米国のsuperfly2興行でローマン・ゴンザレスと戦う」とか勝手なことを言ってるんです。

石田、絶対に勝て!木村翔に続いて大番狂わせ起こしてくれー!!!というか、ヤファイは普通に苦戦するでしょう。

もちろん、イエメンの内戦で艱難辛苦を強いられた両親が英国に逃れて、そこで生まれたカリが過酷な環境から二つの拳で這い上がってきたことは、平和ボケ日本からは想像も出来ないことです。

しかし、スポーツの世界ではそんなもの全く関係ありません。

スポーツの世界は本来、そんなサイドストーリーなんて一番縁遠くて、全く関係がないはずなのに、まあ、みんな好きなんですよね、特にボクシングでは。

ファンベースが無いどころか、貧困で国を出るしか競技を続ける術がなかったアッサン・エンダム。国籍をフランスに移してプロ活動を続ける彼が、カメルーンの同胞を勇気づけられることが出来るとしたら、五輪の舞台しかありません。

日本のボクシングファンの目からは奇異に映った、昨年のリオ五輪挑戦は、エンダムの胸の中ではきわめて自然なロジックが成立していたのです。もし、カメルーン国籍での出場が許されなければ、エンダムが五輪に出ることはなかったでしょう。

一方で、衣食住に困ることなく、世界屈指の経済大国で複数の大企業から絶大な支援を受けて、母国の国旗を背負い、挑戦者の立場でありながらミドル級の世界戦を2度も自国に用意された村田。

もし、明日、エンダムが村田に勝ったとしても、母国カメルーンで世界戦を出来る日など、永遠に訪れないでしょう。

経済原理、と言ってしまえばその通りです。五輪もサッカーW杯も、開催国は経済原理で決まります。

そういう意味では、プロボクシングの世界はほとんど例外なく「日本で世界戦」が行われます。経済大国、万歳です。

ただ、軽量級とは一線を画す、中量級は例外、ミドル級の桧舞台は欧米、カネロが屹立する今は北米です。

村田諒太は、極めて近い将来、エンダム同様、敵地でしか戦えない、過酷な季節を迎えなければなりません。

軽量級は間違いなく、日本が本場です。トップファイターの平均的な報酬を見れば、それだけで明らかです。

しかし、ミドル級になると世界の報酬が極東の島国をはるかに凌駕してしまいます。そして、その世界的な注目度も。

村田諒太を応援せざるをえない理由は、日本人ではよほどの幸運が重ならない限り、アルファベットタイトルですら世界王者になるのは絶対不可能だと思われていたミドル級で、彼がモンソンやハグラーのように覇権を打ち立てる潜在能力があると期待するに値する才能の持ち主だからです。

軽量級ならいくらでも王者や挑戦者を引っ張って来ることが出来るこの経済大国をもってしても、ミドル級は別格です。

帝拳の本田会長が、村田vsエンダム初戦について「タイソンの試合を除けば、日本で開催した最も大きな興行」と言い放ったのは、けして大風呂敷ではありません。

今夜、両国で世界王者になる村田諒太が、再び日本で試合することはないかもしれません。

ミドル級の五輪金メダル。米国ならとんでもないセレブです。米国ほどではないにせよ、中量級の免疫が無い日本なりには、村田は十分に厚遇されてきました。もちろん、それに値する才能と人物です。

明日こそ村田諒太の旅立ちのリングになるでしょう。温室のビニールを打ち破る時が、ついにやって来ました。

これからは、明後日からは、そのテーマ曲のまま、パイレーツ・オブ・カリビアン、海賊になるしかありません。

威風堂々、太平洋を渡る倭寇になって下さい。

カネロ・アルバレスや、ゲンナディ・ゴロフキンらが抱えている金銀財宝を根こそぎ奪ってきて下さい。やつらのサポーターが吐き出す怒涛のブーイングを全身に浴びながら。

そして、そのときには、アジア軽視、日本軽視のリング誌も、日本を本気で振り返るはずです。

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