カテゴリ: 村田諒太

なんと、なんと、海外のオッズは、さらに村田寄りに傾いて5−1〜6−1まで広がっています。

ここまで開くと、エンダムが勝つと「大番狂わせ」のレベルです。

なんだか、逆に心配になってきますね…。

初戦も、村田有利のオッズを素直に受け入れられなくて、多くの海外メディアが戦前予想で「村田の右とガードは階級最高レベル、エンダムには守るのも攻めるのも難しい」とレポートしているのを見て安心したものでした。

エンダム戦までの対戦相手の質が低すぎて(天下の五輪金メダリストですから大事に育てられるのは当たり前なんですが)、村田がどれほど強いのか確信が持てなかったのですが、世界の眼はさすがです。

それでも、エンダム相手に6−1はどうなんでしょうか。ゴロフキンでも10−1は立たないでしょう。

ちなみに、比嘉大吾と拳四朗の初防衛戦も、それぞれ12−1、2−1で有利のオッズが立っています。比嘉に至っては、12−1ですよ!?

「アジア、日本は地元判定が酷い」というのは世界的な認識ですから、21戦して5KOしかマーク出来ていないトマ・マソンが、ゴリゴリのファイター比嘉に勝つ目は無いと見られているようですが…。

村田のケースはESPNが全米生中継するにあたって、トップランクのトッド・デュボフが「時差の関係でとんでもない時間(早朝7時)のオンエアになるが、ミドル級の五輪金メダリストはボクシングの世界では特別な存在。彼を全米に露出させ、その関係をキープすることは(帝拳との)共同プロモーターとして非常に有意義だと確信している」と、エンダム戦は通過点だといわんばかりの発言をしたことも、ブックメーカーの目からは「村田のバックにはいろんなパワーが働いている」と見えたかもしれません。

といっても、オッズや予想で支持されるのは心強いのですが、それはあくまで新聞紙面や、ネットのモニター画面上の〝仮想勝負〟ですからね。

どんなに新聞やネットで有利だと書かれても、勝負が決まるのは、現実のリングの上だけです。

明日の両国国技館。

現実のリングで、村田と比嘉、拳四朗がオッズの通りに躍動して、勝ち名乗りを受けることを信じています!

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SWITCHインタビュー 達人達(たち)「村田諒太×萱野稔人」。

以前、NHKのEテレで放送された村田諒太と、気鋭の哲学者の対談番組です。ご覧になった方も多いと思います。

一番印象に残ったのは、金メダリストがサンドバッグを叩く迫力に度肝を抜かれて何も言えなくなっている周囲に、「目的が何なのかって思うんですよね」と村田がポツリと漏らしたシーンですね。

何それ?そんなこと考えて、サンドバッグ打ってるのか!?まぁ、常人の感覚じゃないですね。もう全然、次元が違いすぎて、こんなこと書くのも恥ずかしいのですが、ずっと野球や陸上に加えて、大学時代は陸上と、準硬式野球、ボクシングも掛け持ちして(弱小大学とはいえ掛け持ちの風当たりは強かったですが)、スポーツがずっと身近であった私でも、その感覚は全く理解できません。

練習してる時は「どうしたら上手くなれるか」、それしか考えられませんから。そんな、哲学的なことに思い巡らせてたら、練習、絶対に身にならないと思いますから。そんな後輩がいたらぶっ飛ばすけど、村田なら逆にやられてしまいますね…。いや、しかし、次元が違う、考えられません。当たり前なんですが。

確かに、マスボクシングや、陸上競技のマック式(フォームの確認練習、効果がないとされて今ではまずやりませんね)、野球のマシン打撃をしてるときには「これって実戦でどこまで意味があるのか?」と考えることはありました。

現実の場面ではパターン通りにパンチを繰り出してくれる相手なんていません。フォームとは実際にスピードとリズムに乗って走っている時のメカニクスの結果であって、最初から決めるものではありません。同じスピード、同じタイミングでドラムから弾き出されるボールをいくらライナーで打ち返したところで、現実のピッチャーとバッターの間で起きることはタイミングを外すこと、緩急の勝負です。

しかし、私が練習で疑問に感じたそれらはあくまでも「実戦でどこまで効果があるのか?」という瑣末なことであって、村田の「目的が何なのか」はそういうのとは次元が違う深いところからの問いかけです。

村田は好きな言葉を聞かれて、オーストリアの精神科医・心理学者にして超一流の脳外科医でもあったヴィクトール・フランクルの「人生から何を期待できるかが問題なのではなく、むしろひたすら生きることが、私たちから何を期待しているのかが問題なのだ」という名言をあげていました。

「人生」「ひたすら生きること」を、「神」「運命」という言葉に置き換えてみます。

「『神(運命)』から何を期待できるかが問題なのではなく、『神(運命)』が私たちから何を期待しているのかが問題なのだ」。

この番組を思い出したとき、傲慢になっても仕方がない輝かしいキャリアを歩いて来たはずの青年が、あの土曜日の夜、あれほどまでの混乱と錯綜の渦中に立ちながらも、あんな振る舞いを自然とやってのけた理由が、ほんの少しだけわかった気がしました。

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【リング誌2016年5月号「私を変えた一冊〜バーナード・ホプキンス」/プレジデント2017年5月29日号「孫子入門」=写真。〝If you know the enemy and know yourself,you need not fear the result of a hundred battles〟「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」も英訳しちゃうと、なんだか身も蓋もなくなりますね。「孫子の兵法」も〝 THE ART OF WAR〟ですからね、まあ確かにそういうことなんですが。】

ボクシングミドル級の生きる伝説、バーナード・ホプキンスも、村田ほどではありませんが読書家として知られています。B−HOPの場合は、17歳のときに重犯罪で懲役18年の刑に服したグレイターフォード刑務所の中で読書とボクシングに出会ったのですが。

ホプキンスが、そこで最も感銘を受けたのが「孫子の兵法」。ホプキンスのキャリア、特に晩年の戦いぶりを見ると、めちゃくちゃ説得力がありますね。そうか、「孫子の兵法」だったのか、と。ホプキンスは語ります。「私が『孫子の兵法』が座右の銘だと言うと、誰もが私のボクシングだけにそれが反映されていると思うだろうが、そんなんじゃない。そんな浅いことじゃない、『孫子の兵法』は戦い方ではなく、人生の指南書なんだ」。

「私は若い頃に取り返しのつかない罪を犯した。生まれた時から自分なんて誰からも必要とされていないと感じていたし、刑務所に収監された時も世界を恨んだだけだった。生まれてこなければ良かった、と生まれてからずっとそう思って生きてきた。しかし、私は己も、敵(世界)も、全く知らなかった。勝手に自分がゴミクズだと、世界から無視されていると思い込んで、そういう生き方をしてきてしまった。しかし、グレイターフォードには、そんな私のことを、生きるに値するとはっきり言ってくれる人がいたんだ。これがどれほど素晴らしいことかわかるかい?俺は、生きていてもいいんだ、ここにいてもいいんだって思えることがどれだけ嬉しいか。そう言ってくれた教官が紹介してくれたのが『孫子の兵法』だったんだ」。

「私は、多くの挫折の中から、貴重なものを学んできた。懲役を宣告されたときは、真っ暗闇の谷底に突き落とされたとしか思えなかった。当たり前だろう、17歳で懲役18年だぞ、人生終わったと観念したさ(模範囚として5年で刑務所を出る)。しかし、もし、グレイターフォードに収監されなければ『孫子の兵法』と出会うこともなかったんだ。何が幸運で、何が不運かは、実は運命が決めるのではない、自分自身が決めるのだ。不運に見えることはほとんど例外なく幸運にひっくり返る。ただし、何もしなければ不運は、不運のままだ、何もしない奴はメソメソ泣くしかない。不運に見えることに直面した時に、どう行動するかが一番大切なんだ」。

四日前の有明の夜。「日本人がメガファイトの舞台に上がるはずの第一歩を台無しにしやがって!」と、日本のボクシングファンの積年の夢をぶち壊した、理解できない判定に心の底から腹が立ちました。

どうして、よりによってこんな不条理な判定が、日本のボクシング史で屈指の大切なリングで起きてしまったんだ!村田諒太はなんて運の悪い男なんだ!日本のボクシングファンがどうしてこんな忌々しい不運に見舞われなければならないんだ!…。

世界最大のスポーツメディアESPNも、ボクシング界で最も権威があるリング誌も「117−110で村田の勝ち」と、断じていることに「当たり前だ、あんなの無効試合にすべきだ」と思いました。

でも。あの試合を無効試合にしたら、いっとう最初に抗議の声を上げるのは村田諒太だということがわかった時には、もう、どうでもよくなりました。

サッカーやテニス、野球みたいに統括団体がしっかりコントロールした法治のスポーツではないことが、ボクシングを怪しいニッチのスポーツに追いやってしまっています。それでも、同じ階級に世界王者が何人もいるという欺瞞と捏造の真っ暗闇の中でも、本当に時々ですが、ふと差し込む、誠実や本物の光の眩しさが、ボクシングの最大の魅力です。

そして、あの蒸し暑い有明の、星も見えないくすんだ夜空からも、間違いなく誠実と本物の光が降りました。鈍感で頭の悪い私は、有明コロシアムにいた時には、その光が全く見えませんでした。恥ずかしい話です。

貧乏暇なし、忙しい中でも無理して見に行っただけの甲斐がありました。今まで見た数え切れないボクシングの試合、スポーツの試合の中でも、一番素晴らしい試合でした。

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暑いです。昼前で30度近くまで気温は上がりました。日中は間違いなく、真夏日になりそうです。WBA世界ミドル級タイトルマッチのゴングは、昼間の暑さが残る中で、打ち鳴らされることになりそうです。

プロでは謎のベールに包まれたままの村田の実力が測りきれず、海外のブッカーも正式のオッズを出すのに時間がかかりましたが、出揃いましたね。

最大手ウィリアム・ヒルも村田勝利が1.5倍、エンダム約2.6倍と、他のブッカー同様に明白に村田有利と打ち出しました。

「エンダムは誰もが認めるミドル級の強豪、村田はプロではそのレベルのボクサーとは一度も対戦していないが、それはマッチメイクの問題で、彼の実力とは関係はない。パワーとフィジカルで上回る村田が中盤以降にストップ勝ちか、中差〜大差判定勝ち」。

心配性な日本のファンを勇気付けてくれるようなオッズです。


【ロンドン五輪、決勝のリングに笑顔で向かう村田。今夜もリラックスして大物を釣り上げて下さい。=NHK:SWITCHインタビュー 達人達(たち)「村田諒太×萱野稔人」】

村田有利の根拠を整理すると「エンダムは前戦(アルフォンソ・ブランコ)こそ衝撃的なノックアウトを演出したが、決定力は持たない」「ジュニアミドル級で戦ってきたブランコと、強靭なミドル級の村田は同じ相手ではない」「強烈な右と左右のボディパンチを持っている村田の最も厄介な武器は、実は固いガードだ。防御に欠陥が指摘されていたピーター・クイリンやデビッド・レミューのように、エンダムが村田を捌けるとは思えない」「ヌジカムにとって、重くて強く身体能力も高い村田は最も相性が悪い相手」「分厚い装甲で固められた日本の重戦車が、パリからやって来たテクニカルなカメルーン人を徐々に消耗させ、終盤に轢き潰す」といったところです。

フィジカルで村田が有利、村田が身体能力でヌジカムを凌ぐ…日本人選手がパワーやフィジカルで海外の強豪、しかもアフリカーナを上回っているとか、日本のスポーツファンにとっては、あまりにも聞き慣れてないもんで、戸惑いしかないですね。

正直、簡単な試合にならないと思います。少なくとも序盤は思い通りに距離を潰せず、エンダムにボクシングを許すのではないでしょうか。それでも、村田の重圧とボディ攻撃はエンダムを削っていくでしょう。終盤に歓喜の瞬間が訪れるはずです。

この試合に勝てば、次はもう日本では出来ないでしょう。年内に防衛戦をこなして、来年にはゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスの勝者と、そういう青写真も描かれています。その試合こそが、日本のボクシングファン積年の夢が叶う瞬間です。

私たちは、PFP1位のエデル・ジョフレに唯一勝った、しかも2勝0敗、偉大なファイティング原田を授かりました。

しかし、メガファイトとは無縁でした。レナードやタイソン、メイウェザー、パッキャオ…彼らが繰り広げた絢爛で豪奢な戦いの絵巻は、ときに無粋で悪趣味で無意味だと思ったこともありましたが、それは羨望と歪んだ嫉妬を十分に混ぜ込んだ、無い物ねだりでした。


【今夜の勝利はラスベガスやニューヨークの巨大スタジアムにつながるばかりではありません。ここで、1988年3月21日以来30年ぶりのボクシング興行が開催される夢も膨らみます。=「これがビッグエッグだ。」〜タイソン来日に合わせたボクシングマガジン増刊号より】

もし、来年のゴロフキン(カネロ?)戦に勝てば、大きくサイドが変わります。そうです。村田がAサイドになるのです。もちろん、あの二人相手だと村田がオッズも予想もアンダードッグになるのは確実ですが、勝って相手の看板を取る大チャンスです。

Aサイドになって、凱旋試合があるとしたら、有明コロシアムでは明らかに小さ過ぎますね。

さあ、もう出かける時間です!

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あと四日に迫りました。

ボクシングは伝統的にメディアの囲い込みが顕著なスポーツです。しかし、今回の村田諒太の挑戦に関してはそんな垣根を越えて、異例の報道合戦が繰り広げられています。

ここまで高い注目を集める理由としては、多くの場合「ボクシングで最も層の厚いミドル級」に日本人が挑む、という背景が挙げられています。


【「ゴング・ワールド・ボクシング」1982年2月増刊号から〜伝統的に人気のあるミドル級のすぐ下のジュニアミドル級は、レナードやデュラン、ハーンズらスーパースターが進出する1980年頃までは完全日陰の階級で日本人や韓国人の王者も珍しくありませんでした。今のジュニアミドルは最激戦区ウェルターからミドル級へのパスポート階級として、一気にハードルが高くなっています。日本のファンにとってはジュニアミドルが身近な時代、たった一階級しか差がないのに、その壁の分厚さを嫌という程実感していたが故に、ミドル級へ畏敬の念をさらに強めたであろうことは想像に難くありません。】

「層が厚い」を、イコール「競技人口が多い」という単純な図式で考えるのは短絡的かもしれませんが、競技人口に当て込めると意外な結果に驚かされます。

プロボクサーの競技人口のカウント方法も、これは何が正しいか一筋縄ではいきません。世界各国のコミッションが発表している「有効なライセンスを持っているボクサーの人数」となると、引退状態のボクサー、それどころかデビューすらしていない(する気もない)いわゆる「ペーパープロ」までカウントしてしまいます。

ここではBoxRecのデータを活用させていただきます。このデータの欠点としては、すべてのボクサーを網羅しきれていないということですが、プロサッカーやプロ野球と違い精密に管理されていないボクシングでは完全無欠の「戸籍」はおそらく存在しません。

ということで、BoxRecから各階級の競技人口を割り出してみましょう。(5月16日現在・数字は男子ボクサーの数)

ミニマム級:292人/ライトフライ:456人/フライ:745人/スーパーフライ:683人/バンタム:981人/スーパーバンタム:1233人/フェザー:1540人/スーパーフェザー:1431人/ライト:1991人/スーパーライト:1859人/ウェルター:2238人/スーパーウェルター:1796人/ミドル:1539人/スーパーミドル:1359人/ライトヘビー:1084人/クルーザー:1252人/ヘビー:1288人

ボクシングファンなら「ミドル級が最も層が厚い」と聞いても「嘘つけ。ウェルターに決まってるだろ」と否定できるでしょうが、「ミドル級がニ番目に層が厚い」と言われると「まぁ、きっとそうだろうな」と認めちゃうんじゃないでしょうか。

確かに、BoxRecのデータでも、唯一の2000人超の競技人口を抱えるウェルター級の1位は不動です。しかし、しかし。意外なことにミドル級はまさかの6位なんです。

1984年という比較的新しい時代に各団体で導入されたスーパーミドル級の1359人を、ミドルとライトヘビーに割り振るとミドル級の競技人口は2000人レベルになり、ウェルターに迫るのですがこれはちょっと無理やりですかね。

ただ、「層が厚い」を「競技人口が多い」と考えたらミドル級は6番目というだけで、「層が厚い」を「競技レベルが高い、スピードとパワーが高次元で結晶している」と解釈すると、「ミドル級は最も層が厚い」というセンテンスに大きな矛盾はありません。


【リング誌2015年7月号から=近代ミドル級最強は誰か?シュガー・レイ・ロビンソン、カルロス・モンソン、マービン・ハグラー、ロイ・ジョーンズ、バーナード・ホプキンスら8人の伝説に、ゲンナディ・ゴロフキン(GGG)をワイルドカードに加えた9人を、トレーナーやメディア、マッチメイカー、歴史研究家が仮想トーナメントで戦わせて最強を決める企画です。優勝はもう言わなくてもお分かりですよね。全勝でロビンソンさんです。】

現在、ミドル級最強と考えられているGGGは、全階級を通じて最もボクシングファンを楽しませてくれるスターの一人です。

シュガー・レイ・レナードやオスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオらウェルター級の頂点を極めた彼らが放っていた華やかなオーラは、ミドル級のレジェンドには感じられないケースが多いのですが、その反面、リングの上で強さだけを語るという無骨で紛うことなき王者の風格を見せつけてきました。

GGGもまさにその血統を受け継いだミドル級の世界王者です。

現在のボクシング界で考えられる最も大きな試合が9月16日に行われます。GGG対カネロ・アルバレス。日程だけ決まっていて場所は未定。T-Mobileアリーナ(今やここがベガス最大の会場ですね)、AT&Tスタジアム(パッキャオが2試合戦っている元カウボーイズスタジアムです)の本命2会場の他にも、英国のウェンブリースタジアム、UAEのドバイも招致合戦に加わっているといいます。さらに先日、ドジャースタジアムもこのビッグファイトの招致に手を挙げました。

GGGとカネロの一戦は、ビリー・ジョー・サンダースが保持しているWBOを除いた全てのミドル級タイトルが賭けられる、と海外で報じられているのはちょっと心外ですね、日本のファンからしたら。

村田VSアッサン・エンダムの勝者がWBAのベルトを巻くじゃないか!

そう言いたいところなんですが、GGGはWBAのスーパー王者であるから、価値的にその下のWBAレギュラーのベルトは眼中に無いということでしょうか。

いずれにしても、ミドル級のタイトルが収斂されていくことは間違いありません。あと四日後に、村田が、笑顔の素敵なカメルーン人を倒したら、否が応でもこのミドル級ウォーズに巻き込まれるのです。否なわけ無いですね、こういうでっかい場所でビッグファイトを繰り広げるために、ヘッドギアを外して、プロのグローブをはめたのですから。

さあ、温室ではなく、檻から解き放たれる時が四日後に迫ってきました。

ずっと日本人とは無縁と諦めていたボクシングのメガファイト、その舞台の入り口に村田諒太が立とうとしているのです。有明のリングはAT&Tスタジアムにも、マジソン・スクエア・ガーデンにも、ドジャースタジアムにも、世界のどこにだってつながっていきます。

私たちには、応援することしかできません。

頑張れ!村田。見せてくれ!扉を開けてくれ!

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今日はオッズと予想の話です。

さぁ、村田諒太vsアッサン・エンダム。もう、今週末です!待った無しです!

bet-at-home.comのオッズはエンダム勝利が2.25倍、村田勝利が1.62倍。WOWOWなどでよく使われる日本風にアレンジすると、アバウト5-2で村田が大きく有利というところでしょうか。ドローが24.00倍とやや低い数字になっていることからも、試合は判定までもつれ込むと見られています。

村田有利のオッズが出ることは予想通りとはいえ、日本のファンから見ると「そんな簡単な相手じゃないだろう」というのが実感でしょう。嬉しいんだけど、本当にそう思ってくれてるの?ってところです。

五輪金メダルの威光と、電通―フジテレビ、トップランクー帝拳という圧倒的なバックアップ体制も加味されたオッズ、地元判定の匂いをはっきり嗅ぎ取った上での数字であることは十分に理解しているつもりですが、いざいろんなブッカーが「村田有利」と打ち出してくると戸惑いを隠せません。

これも、シュガー・レイ・レナードや、オスカー・デラホーヤを授かったことのない国のボクシングファンが初めて体験する心地良い動揺、戸惑いなのかもしれません。

当たり前ですが、世界中の専門家もファンも、ブッカーも、村田がプロでは何一つ証明しないまま、ミドル級屈指の強豪と激突することを知っています。

それでも、プロフェッショナルの賭け屋が「村田有利」とオッズを叩いているのです。


【シュガー・レイ・レナード。五輪の金メダリストからスターダムに駆け上がった典型です。「村田とレナードを比べるか?気は確かか?」。そう思うのが当然です。レナードもベニテスに勝つまでは「よくも『シュガー・レイ』なんて厚かましい名前を名乗って恥ずかしくないのか」、そう揶揄され続けました。】

レナードがウィルフレド・ベニテスのウェルター級王座に挑戦するとき、5−1でレナードを支持するオッズに専門家は首を傾げました。「人気はここまでオッズを動かすのか」と。実際に、一方的なオッズに反して専門家予想は真っ二つに割れました。

ベニテスのディフェンスをレナードが突き破ることが出来るわけがない…そう言われると、誰も反論できないほどの技術を、プエルトリコの天才は確かに持っていました。

金メダルを取ったプライドは過小評価され過ぎ、レナードは相手が強ければ強いほどその真価を発揮する…モントリオールの輝きを目の当たりにしたファンにはレナードが躓くなんて想像も出来なかったでしょう。

金メダリストが必ずプロでも通用するとは限りません。しかし、本物の野獣にとって「温室」は「檻」とイコールです。何も知らないメディアやファンの凡庸な目には「温室」に見えたそれは、実は猛獣を解き放つまでの刹那のゲートなのかもしれないのです。

エンダムにとっては、相手は五輪の金メダリスト。しかも、その金メダリストの地元に引っ張り込まれたのです。昨年のリオ五輪にも出場したエンダムの、五輪への憧憬は私たちの想像をはるかに上回るものでしょう。そのメダルの価値、重みは、もしかしたらアフリカ大陸の辺境からやって来た天衣無縫のエンダムこそが、最もよく理解しているのかもしれません。

エンダムの立場からすると「倒さなければ勝てない」と考えるのが自然です。前戦でESPNの年間最高KO賞に輝く22秒の秒殺劇を演出したものの、決してエンジンのかかりが早い方ではないエンダムですが、1ラウンドから一気に攻め込んでくることも考えられます。

エンダムが広いリングの要求を通したのは、村田のプレッシャーをさばく空間を少しでも大きくしたいという思いであることは間違いありません。しかし、プロ入り以来、ずっと世界基準から大きく劣ったボクサーとしか対峙してこなかった村田にとって、最も注意しなければならないのは序盤でしょう。

エンダムのスピード、コンビネーションの滑らかさ、フェイントの狡猾さ。世界トップレベルのエンダムのパフォーマンスが、村田を最も困惑させるのは序盤です。五輪で金メダルを取ったボクサーの順応力が並外れていることは、カメルーン人もよく理解しているでしょう。エンダムにとって序盤は大きなチャンスです。

1ラウンドで攻勢をかけて、そこで村田にダメージを与えることが出来るのがベスト。そこで効果的なパンチを入れることが出来ずに、村田が得意の前進を始めたら、広いリングを目一杯使ってボクシングする。引き出しの多いエンダムは2段構え、3段構えで臨んでくるでしょう。

村田が様子見に時間を費やすであろう序盤はまだしも、賢明なエンダムは強烈な右を持っている日本人との正面衝突は徹底的に避けて、距離を作りたがるでしょう。デビッド・レミュー戦でもそうだったように。

しかし、もう皆さんよくご存知のように、このアフリカーナ、器用に見えて結構不用意にパンチを食うんです。えーー?っていうくらいに。倒せるときに倒すのは当然なんですが、何回倒しても安心できないという、わけのわからない吸収力を持っているのもこの漆黒のボクサー最大の恐るべき特徴なんですね。

ミドル級、それもピーター・クイリンやレミューのパンチなんて不用意にもらったら、普通なら命取りなはずなのに…なんで?。


【ボクシングマガジンも「距離を潰すこと」が勝利の鍵を握ると見ています。】

オッズは5−2。しかし、試合予想はもつれると思います。もちろん、圧倒して勝って欲しいですが。

もうあっちこっちのメディアで散々書き尽くされていることを、ここでも書いてしまうのは躊躇してしまいますが、5月20日、村田諒太が試されます。

海風の吹く初夏の有明コロシアムで、村田諒太が何者であるのかが、ついにわかるのです。

リング誌もESPNも凡戦の末に村田が小差判定で勝つ、そう見ています。現時点では、ゲンナディ・ゴロフキンやカネロ・アルバレスの脅威になるとは考えられていません。

夏祭りにはちょっと早いですが、ドドン!と打ち上げましょう。北米からもはっきり見える、どでかい花火を。

あのタフ過ぎるカメルーン人を相手にしたら、誰だって普通はぐずぐずの試合にしかなりません。

普通じゃないことを見せてやりましょう。

9月16日にゴロフキンかカネロ、勝った方がミドル級最強の称号を得るはずなんですが、そのメガファイトがミドル級最強決定戦じゃなく、準決勝になっちゃうってことを、この週末に東京から世界に知らしめましょう。

「ゴロフキン、カネロ!どっちが勝ってもいいけど、首を洗って待ってろよ!」
(贅沢言わせてもらうとカネロに勝って欲しいですね…カネロー!東京ドームを開けて待ってるぞ!)

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あと一週間を切りました。

今日は、日本のボクシング、村田諒太が、世界からどう見られているのか?

村田がプロ転向を表明、2013年のデビュー戦を圧巻の内容で勝利したことは、ネットはもちろん世界中のボクシングメディアで大きく報じられました。「金メダリスト、東洋太平洋王者を全く寄せ付けず」。もちろん、多くの記事で「ミドル級の東洋太平洋王者の実力は世界基準から大きく劣る」という事実もきっちり伝えられていましたが。

2014年2月にリング誌が村田を6ページに渡って特集しました。ざざっと超訳させていただきます。

【村田諒太は「あしたのジョー」ではない。】

『村田諒太:待ち受けるのは輝ける〝あした〟か?=五輪金メダリストは変わったルートを辿ってスターダムを目指す=』

日本のボクシング界は、非常に興味深いファンタジーに彩られてきた。

なんとそれは、パルプフィクション、〝マンガ〟だ。マンガがクール・ジャパンの代名詞であることは誰でも知っているが、クール・ジャパンと日本のボクシングはどうしても結びつかないだろう。しかし、これは事実なのだ。嘘だと思うなら、日本の友人に聞いてみるがいい。彼(彼女)は日本の世界王者の名前は一人も知らないだろうが、「あしたのジョー」は必ず知っているから。

矢吹丈〜1968年にコミック初版が出されてからTVアニメや映画、ビデオゲーム、あらゆるメディアで人気を博した「あしたのジョー」の主人公の名前だ。1990年には辰吉丈一郎というイミテーションまで登場、日本のリングで最大のスターとなった。

貧しい一匹狼のジョーが生きて行く場所は、リングの中にしか無かった。英国だろうが日本だろうが、フィラデルフィアから東京まで、世界中どこでもいつでも、ボクシングのテーマは変わらない。「ロッキー」がそうであるように「あしたのジョー」もまた、ボクシングの世界の共通言語なのだ。

どん底から這い上がった若者が、エリートの王者を叩きのめす。

そして、日本における矢吹丈の地位は、米国のロッキー・バルボアをはるかに凌駕する。日本に存在する「バンタム級への憧憬」は、ファイティング原田に起源すると思い込みがちだが、それは大きな勘違いだ。バンタムは矢吹丈の階級だから、日本人にとっては特別なのだ。

しかし、村田は「あしたのジョー」ではない。彼はどん底や、バンタム級とは対極に立っている人間だ。

ロンドン五輪で金メダル、それもミドル級で獲得した村田は、薄汚れた河川敷の粗末なバラック小屋のジムで練習などしない。彼のプロモートは世界最高(トップランク)と日本最高(帝拳)が共同で行っている。

ボブ・アラムは「村田はスーパースターの有力候補だ」と断言する。アラムに虚言癖があることは誰でも知っているが、それは彼の仕事の一部でもある。しかし、村田に関しては、いつもの大げさな言動だと片付けられない。トップランクの世界戦略において、村田が重要なプレイヤーであることは疑う余地もない。

ワシル・ロマチェンコやゾウ・シミン、アラムは多くの五輪の金メダリストを青田買いしているが、ボクシングの歴史とインフラが整った日本の金メダリストは他のメダリストとは商業的な可能性が全く違うのだ。

トップランクが最も魅力を感じている国は、経済界同様にもちろん、中国。しかし、この共産主義国は、毛沢東がボクシングを禁止した時代からまだ40年しか経っていない。

中国市場を開拓するのは、ゼロからのスタート。プールの無い国で、次代のマイケル・フェルプスを探すようなものだ。


【リング誌が日本人ボクサーの特集に何ページも割くことはありません。もちろん、村田が注目されるのは日本人だからではなく、「ミドル級の金メダリスト」だからですが。〜アマチュアとプロは違う。しかし、ただ一つ言えることは村田の右はすでにプロの世界レベルに達している。〜】

テキサスレンジャースのダルビッシュ有、ニューヨークヤンキース(当時)の鈴木一朗は、選手として貢献するだけでなく、無視できない額のジャパンマネーをチームにもたらしている。日本には野球のインフラが米国では信じられないほどに整っているからこそ、の現象だ。

ボクシングに関しても、野球ほどではないにしろ、インフラは十分に整っている。日本のスポーツファンは〝心の準備〟が出来ているのだ。村田がラスベガスのビッグファイトのリングに上がる時、日本の大企業が何社も広告を出し、惜しみない支援することは疑いようがない。

また、日本の歌謡曲やアイドルがアジアで圧倒的な人気を集めているように、村田の試合はアジアの大都市でもスムースに歓迎される可能性まである。

日本国内では村田はすでに、最高のスポーツセレブの一人だ。最も強力なTV局の一つ(フジテレビ)と、最も影響力のある広告代理店(電通)が村田が乗った神輿を担いでいるのだから、当然といえば当然だが、世界王者にもなっていないボクサーとしてはかつてなかった現象だ。

「村田以前」のボクサーは、ジムとの契約に縛られ、日本ボクシングコミッションは、自分たちの管理からはなれて海外で試合を行うことを好まない。世界で3番目の経済大国、日本はあらゆるビジネスで国内市場だけで完結できる。それはボクシングも同じで、日本人ボクサーは海外に出なくとも十分な報酬を受け取って来た。

アメリカで危険を冒して戦うよりも、東京のリングに上がる方が大きな報酬を受け取れるのだから当たり前の話である。どこの世界にハイリスク・ローリターンを選択する人間が存在するだろうか。このこともまた、この国のボクサーが海を渡らない大きな理由になっている。

日本で唯一(最も価値のある「モダン部門」)の殿堂入りボクサーで、あのエデル・ジョフレを倒したただ一人の男、ファイティング原田ですら海外で戦ったのはバンコクとロスアンゼルス、シドニーのわずか3度だけ。もし、偉大なジョフレが日本に行くことを拒んでいたら、原田の存在感はここまで大きなものではなかっただろう。

もし、ゲンナディ・ゴロフキンが日本人の軽量級選手なら、ベルトをクローゼットに隠して、世界的には無名のままだったはずだ。しかし、ゴロフキンは日本人ではなかった。軽量級だったとしても、ボクシングのインフラが整っていないカザフスタンにとどまる選択肢はなかった。ミドル級のカザフスタン人がボクシングを職業に選んだ時、もはや選択肢は一つしか無い。国境の外で戦うしか、生きる術は無いのだ。

【日本の中だけで戦うつもりはない。この階級で本物と認められるためには、世界の舞台で勝つしかないのは十分わかっている。】

村田は経済大国、日本に金メダルをもたらしたボクサーだが、信じられないことに、日本のコミッションはライトヘビー級のランクすら持っていない。ほとんど全てのボクサーは、軽量級なのだ。

どうしてそんな環境でミドル級の金メダリストが生まれたのか?その問いには誰も答えることは出来ない。「アジアでは時として神秘的なことが起きる」のだ。

つまり、日本人のスター選手としては考えられないことだが、村田は海を渡らなければその実力を証明することが出来ない。ミドル級の世界王者になって日本で試合が組めるとしたら、全く無名の挑戦者を呼ぶか、電通とフジテレビがスポンサーから今以上の金をかき集める以外に方法は無い。

村田はカザフスタン人ではない。最も恵まれた国の一つ、日本のプロボクサーだ。しかし、彼がミドル級であること、たったそれだけの事実でも、やはり選択肢は一つしか無い。国境を、海を越えて戦うしか、その職業を全うする手段が無いのだ。

村田がリングに向かう時、その背中には「パイレーツ・オブ・カリビアン」のテーマが流れる。その意図は明らかだ。〝自分の国〟を持たない村田は、海を越えて、敵国で富を略奪するしか無いのだ。

海外で戦うということは、日本の軽量級のスター選手が恩恵を授かる地元判定も期待できないということだ。海賊から自国選手を守るために、その逆の洗礼は受けるだろうが。

それでも、村田には軽量級選手では絶対に手にすることが出来ない、巨大で残酷なハイリスク・ハイリターンが待っている。

我々(米国)も海賊の侵略をやすやすと許すつもりなど毛頭無い。海賊は叩き返す。

ただし、海賊ではなく覇王であるなら話は別だ。ボクシングの世界は常に覇王の誕生を心待ちにしている。村田がマニー・パッキャオに次ぐ太平洋を越えてきた二人目の覇王なのか、それとも波打ち際で門前払いできるつまらない蛮族なのか。

…村田諒太の「明日はどっちだ?」。

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ボクシングには、ミニマム級からヘビー級まで、17も階級があります。17まで細分化する必要などあるわけもなく、世界戦を量産することで承認料を稼ぎたい下劣なアルファベット団体と、一人でも多くの世界王者を作りたい興行側の歪んだ思惑が暴走し続けた結末です。

当然の帰結として、世界王者の地位は失墜、ボクシングそのものもニッチなスポーツに転落してしまいました。日本を見ても、世界王者の認知度の低さは悲惨なまでです。純粋想起で井上尚弥を認知している人は20%もいないでしょう。

ここ数年で、最も認知度の高かったボクサーは亀田兄弟が傑出していますが、彼らもボクシングのパフォーマンスが評価・注目されたわけではありません。厳しい言い方になりますがチンドン屋的な注目です。これがチンドン屋なら、人の耳目を引くことが仕事ですから、超一流、本当に素晴らしかったのですが、彼らはチンドン屋でなかったことが返す返す残念でなりません。


【ヘクター・カマチョはボクサーとしてはもちろん、人の耳目を引きつけることに関しても超一流でした。】

もちろん、ボクサーとしてもチンドン屋としてもお粗末な世界王者もいますから、彼らだけを糾弾するのは不公平です。先日も長兄は、その才能を遺憾なく発揮してくれました。ただし、それはあくまでもチンドン屋の才能を発揮しただけで、彼の言う「ボクシングの素晴らしさ」がどこまで伝わったかは疑問です。

リング誌のPFPランキングに日本人として初めて入った山中慎介と井上ですら、ボクシングの魅力を、一般のスポーツファンにも十分伝えることが出来ているか、となると極めて怪しいものがあります。ボクシングの世界王者っていうのはこれくらい凄い存在で、世界的な評価も高くて、報酬もサッカーや野球のようなメジャースポーツと比べても遜色がない…そいうことがわかってもらえると良いのですが、スーパーフライ級やバンタム級では世界的な注目度は低く、日本のリングが世界最大のマーケットというのが現実です。

井上がロマゴン戦の観戦で渡米した時、リングサイドでファンからサインを求められ驚いたというエピソードがありますが、そういうレベルです。

ボクシング全体が今やマニアのスポーツですが、中でも軽量級はマニアの中のマニアでないとまずニーズの無い階級です。

かつて、長谷川穂積が「尊敬するパッキャオのようにベガスに進出して一攫千金」と意気込んでいましたが、あれは本当に可哀想な妄想です。

確かにパッキャオはフェザー級で100万ドルファイターとスターの座を掴み取りました。それは不人気階級にもかかわらず、当時のフェザーには超弩級のスター選手3人も存在、覇権争いを繰り広げていたリングに、かませ犬として割って入り、3人とも撃破しちゃったからです。軽量級なのにスターが居並んでいたという奇跡の偶然と、そんな怪物たちを木っ端微塵にしてしまう異次元の実力がなければ、アメリカの土地で、軽量級のスター誕生なんて笑い話でしかありえません。

もし、長谷川vsフェルナンド・モンティエルが日本ではなく、ベガスで開催されていたら興行規模は惨めなものになっていたでしょう。あの試合も日本でやったからこそ、ビッグファイトたりえたのです。

また、西岡利晃のMGMメインイベントも極めて恥ずかしい虚飾でした。ラファエル・マルケスは一発殿堂もありうる軽量級屈指のスターでしたが、そのピークはとっくの昔に過ぎ去ったロートル。それでも、浜田剛史らは「今度は文句無しの強豪。西岡もさすがに不利予想を立てられるでしょうな」と語っていましたが、海外では圧倒的有利の予想で、周囲の引退勧告を振り切ってリングに上がるラファエルの健康を気遣う記事も少なくありませんでした。

そして「タイソンやデラホーヤ、メイウェザー、パッキャオが戦ったMGMのリングに西岡が立つ」という報道は正確ではありません。

西岡が立ったのは、同じカジノリゾートホテル内にある宴会場にこしらえたリングです。あの試合は「日本人初のMGMでメイン」という願望がまずありきで、それをなりふり構わず仕立て上げた下劣な虚構でした。さすがに、今ではWOWOWもMGMグランドアリーナの試合を放送するときに「ここは西岡さんも立ったあのMGMです」とは言わなくなりましたが。

大昔、福田健吾という、やはり亀田さん寄りのボクサーがいました。アイドル並みの人気で映画にも主演しました。「ウェルター」というタイトルの。そういう意味では、彼もまたボクシングの真実を図らずも伝えてくれました。「俺はフェザーだけど、一番かっこいいのはウェルター」ということを。

軽量級でラスベガスやアメリカの大舞台にメインイベンターとして立って100万ドルレベルの報酬を得られるのは、飛び抜けて人気のあるヒスパニックか、そのライバルを張れる英国人くらいです。日本のボクシング界も偽りのベガス妄想はもうそろそろ終わりにして、いかに日本で軽量級の大きな試合を継続可能な形で根付かせるかに注力するときです。その方が、軽量級には実体のないベガス妄想よりも、はるかにずっと夢があります。

もっと言えば、ベガスを始め欧米で強力なマーケットが確立されている中量級以上の階級よりも、「日本を真の意味でメッカにする」という道筋を模索できる軽量級の方が、興行的にははあるかに夢があるとも映ります。

村田諒太がよく語っている「ミドル級は美味しい階級。軽量級だとラスベガスで戦っても日本よりもファイトマネーが少ない」というのが真実です。あのパッキャオですら、1000万ドルを超える報酬を受け取り、ボクシング界の頂上を征服したのはウェルター級でした。

「日本人ボクサーにはベガスの夢は無い」のではなく、「日本人軽量級ボクサーにはベガスに夢はまず無い」のです。どうしてもベガスで目立ちたいのであれば、ライト級以上で超強豪をことごとく打ち負かすしか無いのです。

しかし、長谷川や西岡が妄想を膨らませてしまうのも無理はない魅力がラスベガスを始め、アメリカのメガファイトにふんだんに詰まっているのも、また事実です。

そして、その舞台は主にウェルター級とミドル級の選手によって彩られてきました。

そんなミドル級に、日本人が、自国の試合とはいえ、軽量級選手のようにAサイドで(暫定)王者を迎えるのです。

ボクシングの階級には、残念ながら貴賎があります。競技人口、注目度、報酬。メディアでも世界最大のESPNの階級ランキング10傑は、軽量級になるとベスト5までしか発表されません。

反論覚悟で言わせてもらうなら「日本が軽量級のメッカ」というのは、「ドブさらい」ということです。人気のない階級のメッカ、軽量級の人気選手は日本に関心がない。この現状を悔しいと思うなら、日本でメガファイトを、継続可能な形で根付かせることです。それができれば、これ以上に素晴らしいことはないでしょう。

話は逸れました。来週、村田が勝てば、長谷川らが勘違いするほどに煌びやかな中量級のリングに、日本人が上がる可能性があるのです。

ボクシングファンとしては興奮を抑えることなど、出来るわけがありません。

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いよいよあと10日を切ってきました。

WBA世界ミドル級タイトルマッチ。アッサン・エンダムvs村田諒太。

今朝、銀座駅を降りると電飾の柱広告がズラリ。試合までの一週間あまりで、フジテレビだけでなくNHKや、他の東京キー局でも村田の特集番組を放映するというのですから、ボクシングの試合としては異例中の異例です。

今から22年前、竹原慎二が1995年にやはりWBAミドル級に挑戦した時は事前の特集番組はおろか、実際の試合もテレビ東京が深夜に録画放送するというひっそりとしたものでした。不公平感は否めませんが、これが五輪金メダリストと無名の叩き上げとの差なのでしょう。


【銀座駅構内の柱広告が目立ってました。竹原が見たら「ワシの時と何でここまで扱いが違うんかいのぅ!」と怒りそうですが…】

現在の世界ミドル級勢力図を見渡すと、WBAスーパー/WBC/IBFのベルトを巻くゲンナディ・ゴロフキン(GGG)が実力No.1、その対抗馬がリング誌公認王者のカネロ・アルバレス。3番手はGGGの連続KOをストップさせたダニエル・ジェイコブス。トップ3がこの3人ということには、多くのファンも異論はないと思います。

9月16日にGGGの3つのベルトと、カネロのリング誌ベルトを合わせた4本のベルトを、この二人のどちらかが独占することになります。そして、英国の人気者ビリー・ジョー・サンダースも自らのWBOベルトを賭けてこの勝者との対戦を熱望するでしょう。

5番手以降は混戦状態です。トップ戦線で戦う実力のある「元王者」グループにはデビッド・レミューに、アンディ・リー。階級屈指の強打者レミューと、妙な勝負強さを発揮するリーは不気味な存在です。また、このグループにはアッサン・エンダムも控えていることを忘れてはなりません。トップ5には入らないかもしれませんが、エンダムをトップ10に入れない人もいないでしょう。スピード、パワー、テクニックはもちろん、信じられないほどの回復力も持つタフなカメルーン人です。

これからタイトルを狙うグループは充実しています。先月22日に英国の無敗ホープ、トミー・ラングフォードを5ラウンドで葬ったアブタンディル・クルティゼは、7月8日にサンダースのWBO王座に挑戦します。勢いに乗るジョージア人がラングフォードに続き、英国人を敵地で撃破するようなことがあると、ミドル級戦線は一層混沌としてきます。

このクルティゼ、2010年にエンダムに完敗してるんです。7年前とはいえ、エンダムの実力は疑う余地のない本物です。エンダムが敗れたのは2012年にピーター・クイリン、2015年にレミューの2度だけ。当時のクイリンは無敗のWBO王者でGGGにとって最大の脅威と考えられていましたし、レミューとの一戦もGGGへの挑戦者決定戦でした。そして、クイリンに6度、レミューには4度も倒されながらも判定に持ち込んだだけでなく「ダウンがなければ勝っていた」というメディアもいるほどの脅威の粘りを見せたのです。

「エンダムをノックアウトすることは至難の技(というか今まで誰一人それを成し遂げたボクサーはいません)。しかし、倒さないと(ダウンでポイントを稼がないと)勝てない」。誰が戦うにしても、どうにもこうにも厄介な相手です。


【昨年12月12日に強豪アルフォンソ・ブランコを、わずか1ラウンド22秒で失神させたエンダムを世界10傑に数えないメディアはありません。】

勢いといえば、セルゲイ・デレフヤンチェンコ。ウクライナ生まれのニューヨーカーはまだ10戦しか戦っていませんが、ESPN、リング誌ともにミドル級10位と高い評価を得ています。元王者サム・ソリマンを2ラウンド、無敗の快進撃を続けていたケマール・ラッセルを5ラウンドで粉砕、次戦はトレアノ・ジョンソンとGGGのIBFタイトル挑戦権をかけて戦うことが決まっています。村田がエンダムに勝てば13戦目での王座奪取で、ミドル級史上最短記録となりますが、デレフヤンチェンコがジョンソンに勝って、GGG(カネロ?)から番狂わせで王座も奪うと12戦目となり、村田の記録は短命で終わってしまいます。

さらに、イマニュエル・アリームも17戦全勝無敗。WBAとWBCでランキング10位内に突入、世界挑戦の時が迫っています。魑魅魍魎が跋扈するボクシング界でも異彩を放つ怪人プロモーター、アル・ヘイモンがどこでこのカードを切ってくるのか、注目です。また、2世ボクサー、クリス・ユーバンクJr.もゴロフキン戦のキャンセルなどマイナスイメージが先行していますが、スピード、パワーともに備えた実力者です。リーに足元をすくわれたマット・コロボフもパンチ力と技術は一級品。

最後に、村田です。承認料目当ての多くのアルファベット団体は上位にランク、リング誌でもミドル級10位に滑り込んでいますが、ESPNでは10位圏外。当たり前の話ですがメディアのランキングが正常な評価でしょう。わずか12戦のキャリアは、、デレフヤンチェンコの10戦よりは多いとはいえ内容が違い過ぎます。ウクライナ人は過酷な露地栽培を逞しく生き残ってきましたが、村田は負けるわけがない12人を選んでここまで来た過剰なまでの温室育ちです。

リング誌やESPNなど海外メディアは「村田は栄誉ある金メダリストだが、プロでは何一つ試されていない」と切り捨てています。

ただし、経済大国の金メダリストからプロに転向するエリートは、ほとんど例外なく温室で育てられます。最近ではアンソニー・ジョシュアもそうでした。オスカー・デラホーヤは世界王者になってからも叩かれていました。古くはシュガー・レイ・レナードも、ジョージ・フォアマンも。

もちろん、金メダルの温室栽培が全て花を咲かせたわけではありません。米国史上最強と謳われた1984年ロス五輪チームのエースでスーパーヘビー級金メダルを獲得したタイレル・ビッグス、英国の夢だ未来だと嘱望されたシドニー金のオードリー・ハリソンは、温室の中で朽ち果てました。

とはいえ、温室育ちが全て脆弱なわけじゃありません。認めたくない気持ちもありますが、スーパースターの多くは、温室から生まれます。ロベルト・デュランは温室に入ったこともない豪傑、実力ではトップに立ったものの、人気の面では最高のバイプレイヤーが限界でした。数少ない例外はマニー・パッキャオと、J・C・チャベスくらいでしょう。

【ボクシング界のスーパースターで、過保護な温室栽培を経験しない例はまずありません。数少ない例外が、アジアの誇りマニー・パッキャオです。彼の場合は〝逆温室栽培〟とでも呼べるイバラのマッチメイクを突き付けられ、そして自らも選んできました(今はその反動で、晩年になって温室にこもるという異色のキャリアを紡いでいますが)。〜タイム誌の表紙を飾ったボクサーは偉大なアリら数えるほど、この30年間ではパックマンだけです。そして「世界に最も影響を与える100人」に選ばれた現役ボクサーは往年のアリとパッキャオだけ。】

温室育ちは、メディアやファンの風当たりが強いのは当たり前です。これはもう、有名税ですね。結構高くつく税ですが。

それでも。それでも、本物なら、温室を出されてからその実力を煌めかせます。

厳寒の風雪や、荒れ狂う暴風雨の中でこそ大輪の花を咲かせるのです。その花の大きさに、メディアもファンも、気持ち良く、その手の平を返すわけです。

さて。村田諒太は、どっちなのか。

スピード、パワー、テクニック、経験、そして恐るべきタフネス…全てを世界基準で備えたカメルーン人は、これ以上ない最高の試験問題になるでしょう。

満点回答して下さい!…と言いたいところですが、とにかく、何が何でも勝って欲しいですね。勝てば、日本のボクシングファンが今まで見たことがない、日本人が関わることなど絶対に無いと諦めていた、大きな大きな大きな夢が繋がります。

ケッパレ!!!村田!!!!!

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