カテゴリ: FIGHT SONG

プロデビュー前から大きな期待をかけられたホープに、過酷なマッチメイクを組むプロモーターは存在しません。

ワシル・ロマチェンコは全く例外中の例外です。そもそも、ウクライナのハイテクは米国マーケットにとって完全外国人。優しく扱ってもらえるホープ(希望)などではなく、トップランクにとって「パッキャオみたいな無茶が効くの?」と、アラモドームでメキシカンとのタイトルマッチが織り込み済みだった商品でした。

ロマチェンコの3戦目までは、デビューがWBCインター王者のホセ・ラミレス。2戦目でWBOフェザー級王者オルランド・サリド(2.25ポンドオーバーの体重超過)、3戦目がゲイリー・ラッセルJr.とのWBO王者決定戦。

さすがにロマは放っておいて、天心とデビュー戦から騒がれた4人のホープ、彼ら5人の「デビュー3戦目」までのマッチメイクを比較してみましょう。


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▶︎「強い相手としか戦わない」という、どういう基準なのか意味不明の内容を契約に盛り込んだ井上尚弥のデビュー戦は、知念勇樹に完敗したばかりのクリソン・オマヤオ。

2戦目はやはり直前の試合で敗北、直近4試合で3敗している35歳のガオプラチャン・チュワタナ。3戦目はジュニアフライ級日本1位の佐野友樹でした。

この3人が「強い相手」という基準がよくわかりません。

那須川天心のデビュー3試合と何が違うのかは、もっとよくわかりません。



▶︎辰吉丈一郎
の初戦は、5連敗中の元韓国ランカーの崔相勉(5勝2KO8敗1分)。よく目にする「現役の韓国ランカー」というのは間違いです。

2戦目はマイク・タイソンが大番狂せに沈んだ東京ドーム。元タイのバンタム級王者チューチャード・エアウサンパン。左肩と右拳を痛めていたとはいえ、初回にダウンを喫してしまいます。

3戦目はWBCインターナショナル王者サムエル・デュラン。この試合でも世界基準値一歩手前のフィリピン人に反撃を許して、ひやっとする場面も。

天心のデビュー3試合と何が違うのか、よくわかりません。

デビュー4戦目で評価の高かった岡部繁を破壊。やはり、4戦目で今なおキャリア最高の相手とも考えられる田口良一を圧倒した井上と比べると、この時点では辰吉がややリードしていたかもしれません。つまり、井上のキャリア立ち上がりは決して過酷なマッチメイクではありませんでした。


▶︎亀田興毅は、過保護揃いのホープの中でも他を寄せ付けません。

全くの別格、別物です。

タイから出前を取るようにデンナロン・シスソバ(1ラウンドKO負けのデビュー戦から2年のブランク、これがプロ2戦目)、プラカルン・ツインズジム(デビューから破竹の4連敗全KO負け中)、サミン・ツインジ(同じくデビューから4戦全敗全KO負け)を呼び寄せ、3人とも初回で撃破。

このタイからの出前路線は、なんと8戦目まで続きます。

みなさま気になってるでしょうから、興毅にKOされるという希少な体験をしたこの3人のその後のキャリアは…。

シスソバは2戦2敗2KO負けで引退。プラカルンも13戦全敗13KO負けで引退。サミンも9戦全敗9KO負けで引退。なんと!3人ともに全戦全敗全KO負けの〝逆〟パーフェクトレコード達成者なのです。

興毅は「亀田とKOはセットや!」と雄叫びをあげますが、いやいや、この3人こそがKO負けと絶対セット。興毅だけでなく、誰と戦っても生涯KO負けしか知らない恐るべき逆パーフェクトレコーダーなのです。

4戦目のダオチャイ・KTジムも7戦全敗でキャリアを終えますが、亀田戦時で5戦5敗ながらKO負けは3つだけ。しかもあろうことか、このダオチャイを興毅は10ラウンド判定までもつれさせてしまいました。

そして、興毅が勝利経験のある相手と戦うのは、7戦目まで待たなければならないのでした。

ここまで来ると、もはや帝拳セレクションや大橋ジムの補助輪路線が過酷極まるマッチメイクに見えてきます。

真面目な話、嫌味や皮肉を超えて、亀田は凄い。帝拳や大橋とやってることの方向性は全く同じでも、徹底さが違います。その清々しいまでの貫徹さ、対戦相手に変な虚飾も一切しない(できない?)潔さには拍手喝采です。

まさに、これぞ逆ロマチェンコ。



▶︎天心と比較されるキックからの転身で一足早く世界を掴んだ武居由樹のデビュー戦の相手、高井一憲は引き分けを挟んで5連敗中。2戦目の竹田梓は4戦全勝の4回戦ボーイ。3戦目は2勝1分、キャリア3戦の今村和寛。3戦目は2連敗中ながら地域タイトル挑戦経験がある河村真吾。

誰がどう見ても、天心より遥かに下。

武居は帝拳セレクションもビックリ!の「いつ補助輪を外すの?」というプロテクト路線でした。世界挑戦も井上信者以外からは評価の低いジェイソン・モロニー。オッズも五分。

天心との対決は面白い試合になるでしょう。





▶︎那須川天心は日本バンタム級4位の与那覇勇気に完勝してボクシングデビュー。

2戦目はメキシコのバンタム級王者ルイス・グスマンにフルマークの完勝。3戦目はWBA14位という摩訶不思議な世界ランカー、ルイス・ロブレスを圧倒、3ラウンド終了TKO。

取り立てて騒ぐような過保護なマッチメイクではありませんが、井上と同じように「強い相手としかやらない」なんて言っちゃってるからツッコミどころが出てしまいます。

やってることは武居以上・井上と同じなのですが、この二人とはデビュー3戦目までの注目度の次元が違います。そこが、ボクシングをあまり見たことがないライトファンにやんややんや言われる最大の原因でしょう。

天心が井上のようにオマヤオレベルの選手を選んでたら、何を言われてたことか。

昨日の会見では「結構、強気のマッチメイクをずっとしているつもりですが、まだ納得したくない奴らがたくさんいるんだなって。世間をギャフンと言わせようというのもあります」とコメント。気持ちはわかりますが、完全劣化バージョンのカリド・ヤファイに勝った大金星しかアピールポイントのないジョナサン・ロドリゲスをどう圧倒しても世間をギャフンと言わせるのは無理です。

最初の勝負は、来年ですかね。

応援しています!







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この数日、世界のスポーツメディアを最も沸かせたのは大谷翔平でも今永昇太でもありません。

そのパワー同様に圧倒的に大坂なおみでした。

テニスの全仏オープン第4日は29日、パリのローランギャロスで行われ、シングルス2回戦で女子の元世界ランキング1位の大坂なおみが大会3連覇を狙う現世界1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)に6―7、6―1、5―7で競り負けました。

世界No.1評価を受けるシフィオンテクは「勝てる気がしなかった」と本音を漏らし、フランスのレキップ紙は「元女王は勝利だけを逃した」と大坂のパフォーマンスを絶賛。

ESPNも「大坂は完全に戻っている」。

当の本人は「ベスト5に戻れるかも」と手応えを語りましたが、戻る場所は「5」でも「4」でも「3」でも「2」でもありません。



女王様、おかえりなさいませ。



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【デイリースポーツ:5月31日】「ボクシング・Live Boxing 9」(7月20日、両国国技館)

中谷潤人にビンセント・アストロラビオが挑戦するWBC世界バンタム級タイトルマッチ、田中恒成にジョナタン・ロドリゲスが挑戦するWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ、加納陸とアンソニー・オラスクアガによるWBO世界フライ級王座決定戦の三大タイトルマッチと、那須川天心が初の10回戦に臨むジョナサン・ロドリゲス戦が行われることが31日、都内で発表された。

米国で合宿中の中谷は、盟友オラスクアガとともにリモートで記者会見に参加。アストロラビオについて「すごくキャリアがあり、戦績を見ても分かる通りパンチがある選手だと思っています。そこら辺に集中して戦わないといけない」と話し、その相手に「自分の距離を徹底」することで、自分のボクシングができるとした。

この試合のテーマとしては「統一戦がしっかりできるようないいパフォーマンスをしていきたい。統一戦は意識していきたい」と述べた。バンタム級は世界王者が全員日本人で、世界ランク入りしてきた那須川がこの日、「全部取るつもりでいるので全員意識している」と発言したことについては「もちろんそうあるべきだと思っている」としつつ、「僕は自分のやるべきことをやろうと思っている」と、それ以上は深入りしなかった。

大会の模様はアマゾンプライムビデオで独占生配信される。



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天心は初の10回戦で、キャリア最軽量の120ポンド(約54.43kg)契約。「来年にも」という世界戦が118ポンド(バンタム級)であることは、今更ながら確定です。

ボクシングは、なんでも通るとにかくメチャクチャな世界。

よりフィットした122ポンドでも世界ランキングに入るのは簡単だったでしょうから、個人的にはいきなりの大勝負も5%くらいは期待していましたが、順番を踏むということですか。それでも、まだ2%くらい希望を残していますが。

さて、天心の相手に抜擢されたジョナサン・ロドリゲスは17戦7KO2敗1分の25歳。直近の試合はアントニオ・バルガスに7ラウンドTKO負け。この試合を含めた二つの敗北はいずれもKO負け。さすが帝拳セレクション、何重にも保険を効かせています。

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このロドリゲスは、去年11月に日本でもお馴染みの元WBAジュニアバンタム級王者カリド・ヤファイを2度ダウンさせて初回でストップする大番狂せを演じて、空位のWBAインターコンチネンタル・バンタム級タイトルを獲得しています。

しかし、初回KO劇を見ても伝わってくるのは34歳になったヤファイの衰えばかり。決定力は、エマヌエル・ロドリゲス以下のロドリゲスです。

120ポンドでどんな動きになるのか?目利きの帝拳がセレクションした相手を注文通りに料理できるのか?

注目の一戦です。

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Saturday 1, June 2024

Kingdom Arena, Riyadh, Saudi Arabia
commission British Boxing Board of Control
promoter:Bob Arum (Top Rank),
           Eddie Hearn (Matchroom Boxing),
               Frank Warren (Queensberry Promotions)
matchmaker:Steve Furness
doctor:Neil Scott

 media:DAZN, USA ESPN+


オイルマネーはエディもフランクも買えちゃう。



6月1日、土曜日(日本時間2日の日曜日)。

ヘビー級のタイトルを失った二人が戦う試合は、ファンやメディアにとって最も注目される種類のものではありません。

しかし、当の二人のキャリアにとっては最も重要な試合になります。

ましてや、デオンティ・ワイルダーは38歳で、ヂャン・ヂレイは41歳。ヘビー級としても、決して若くはありません。

元WBC王者でヘビー級最強候補だったワイルダーは直近4試合で1勝3敗。この4試合は2020年からの4年間で行われたもので、38歳のファイターを錆び付かせるのには絶好の試合間隔です。

そして、3敗のうち二つはタイソン・フューリーに痛烈にストップされた、約40ポンド差の〝ハンディキャップマッチ〟。激しい乱打戦を好む華奢な肉体の内部で、消耗と劣化が進行しているのは間違いありません。

フューリー以上に大きな中国人に勝利すると、8月3日にWBA全米王者ジャレット・アンダーソンとの試合がセットされています。ヂャン戦はワイルダーがアンダードッグ。わずか2ヶ月後に無敗の24歳と拳を交えるThe Battle Of Ageに漕ぎ着けることが出来るかどうかは、極めて不透明です。

ウォリアム・ヒルの見立てはヂャンの勝利が8/11(1.73倍)、ワイルダー6/5(2.2倍)。オッズは接近しているとはいえ、稀代のビッグパンチャーへの〝ファン投票〟が数字に反映されています。

The Ringがアップした20人の専門家予想は12−8でヂャン。ヂャンを支持した12人のうち11人がKO決着。

フューリー戦並みのハンディキャップ・マッチになることが確実。いかにワイルダーとはいえ、いまだKO負けのないヂャンをノックアウトするのは難しい、むしろ劣化バージョンのThe Bronze Bomberが中国人の重い拳に撃ち落とされるという見方です。

アジア人として無差別級で大健闘しているヂャンへの思い入れはあるものの、ワイルダーにはこれまでどれほど楽しませてもらったことか…どちらを応援するかとなるとワイルダーです。

8月3日のアンダーソン戦の会場はロスアンゼルスですが、サウジアラビアの総合エンターテインメント庁が米国で開催する初のイベントになります。

ここまでお膳立てするほど、ヂャンは簡単な相手ではないと思いますが、フューリーでも簡単に転がしてみせる破格のビッグパンチャーです。




そして、良きタイミングで遅いお昼ご飯が到着。

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カツカレー、ほうれん草のせ。もちろん、ビールも欠かせない。

いただきます。



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時代の変遷とともに、ボクシングの産業構造は変質してきました。

ボクシング市場が縮小する中で、ジムの数も激減、淘汰が進みました。

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笹崎、リキ、極東、中村、三迫、ヨネクラ、角海老宝石、新日本木村、国際、熊谷、協栄、(大阪)帝拳…かつて「大手」と呼ばれるジムが世界タイトルマッチを手掛け、地理的には東京一局集中でしたが、その数と独立性は〝地方的〟で現在と比較すべくもありません。

そう考えると、ボクシング界もまた、日本の縮図に見えてきます。

地方ジムから乾坤一擲、世界タイトルを掴み獲る。

それは、好き勝手なランキングを作る4団体が17階級も抱える現代でもmission impossible、moon shotです。

地方ジムで花咲く才能があったとしても、あたたかい風は、いつも都会の大手ジムから吹いてきます。

西岡利晃を「故郷を捨てた」と、誰が責められるでしょうか。

地方のジムから世界を目指す。プロボクシングもビジネスの世界です。そんな要領の悪い話はあってはいけないとも言えるでしょう。

要領が悪い…回りくどい表現のオブラートを引き剥がすと、頭が悪い、つまりはバカ、ということです。

それはまさしく、シャッター街の錆びたシャッターをもう一度一斉に引き上げようとする、そんなバカな行いです。

さて。

バカを紹介する時間が来たようです。

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タイトルに美観地区を持ち出したのだから、一人目はユーリ阿久井政悟しかありません。

さあ、開店ガラガラ!


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岡山県倉敷市で生まれ、中学2年で倉敷守安ボクシングジムの門をくぐり、そこから世界チャンピオンになった阿久井政悟は生粋の〝岡山人〟〝倉敷人〟と言えます。

「岡山県出身の世界王者」というくくりで見ると、渡辺二郎と辰吉丈一郎に次いで3人目になりますが、大阪帝拳カラーを濃厚に発散させていた渡辺と辰吉に岡山の色を見つけるのは至難の業。

そんな生粋の岡山人である阿久井でも、帝拳の引力とは無縁でいることは出来ません。

誤解を排除するために、最初に守安竜也会長の言葉をご紹介します。

「(帝拳には)本当に感謝しかないです」。

阿久井の世界奪取の試合は


岡山で農協職員として働く兼業ボクサー守安は元日本ジュニアウエルター級王者のタイトルを3度守った、日本重量級の強豪。WBAランキングも3位まで名前を刻みました。

当時の140ポンドは世界的にはライト級とウエルター級の間に陥没した〝水増し階級〟で、日本人にもチャンスはありましたが、守安は4度目の防衛戦に失敗。夢は潰えてしまいます。

守安からタイトルを奪ったのは亀田昭雄。

そうです、当時のWBA王者はアーロン・プライアー。伝説の怪物です。「プライアーを日本に呼ぶには当時でも億単位のカネが必要。地方ジムが呼べる相手ではない」(守安会長)。

守安は1984年で引退。「岡山から世界」の夢は、教え子たちに託されることになります。

ジムを開設した守安は1992年から自主興行「桃太郎ファイト」を立ち上げますが、覚悟の上の赤字は予想以上に重くのしかかり、休止を何度も強いられます。

それでも、2016年。「桃太郎ファイト」は10年ぶりに復活を果たします。

損得勘定ができない森保の往生際の悪い性格だけが原因ではありませんでした。

ジムの経営はどんどん悪化、トレーナーも雇えず、守安会長もミットを持つのもままならない年齢に差し掛かっていたのですから、常識的にはいつも赤字の桃太郎ファイトを復活させるなんてあり得ない話でしたが…。

岡山から世界へ。

守安会長が、確信できたからです。鬼ヶ島に挑んで勝てる桃太郎をついに手に入れたと、確信できたからでした。




もし、阿久井政悟が倉敷を出て、帝拳の門を叩いていたなら…。

世界挑戦の機会はもっと早く訪れていたはずです。そして、より可能性が高い階級と王者を選別していたのではないでしょうか。


もちろん、倉敷守安事務の先輩がフライ級の強豪王者に「似ている」と思い付けられたユーリ阿久井政悟は誕生していませんでした。

そして、世界王者になっても大手ジムの興行に組み込まれるBサイドの立場を「なめるなよ」と楽しめる反骨のプライドが心の奥底に根を張ることもなかったでしょう。



このまま防衛のテープを伸ばせば、自主興行の「桃太郎ファイト」で世界戦をぶち上げる「岡山から世界へ」ならぬ「岡山で世界!」も夢ではありません。






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いつものように思いついたまま、酔うがままに一気に書き殴った「【OLD SCHOOL 8】世界王者100人をPFP査定する!」にも忘れ物がいくつもあるのは承知の上である。

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人生とは忘れ物を残す旅である。

そして、その忘れ物を拾いに旅の道を引き返すのもまた、人生である。

朝からまだ酔っ払ってるかのように、吟遊詩人のような訳のわからないことを書き散らしながら、またまた新シリーズの開幕でやんす。

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プロボクシングは世界も日本も、Aサイドの思惑が整ってから試合開始ゴングが鳴らされる非スポーツ的な世界です。

例外は、まず、ありえません。

日本人ボクサーは環境に恵まれていますが、大橋ジムなども包含する帝拳グループや亀田プロモーションなど大手ジムから外れた地方ジムが徒手空拳で世界チャンピオンを生み出すことは不可能です。

ここでは、そんな都会から離れた〝Bサイドの美観地区〟から徒手空拳で世界タイトルをもぎ獲るmission impossibleを成し遂げた、都会の絵の具に染まらなかった男たちへの祭りの歌を謳います。

…日本のジムから世界王者になった100人。その中で、この痛快な祭りの主人公はわずか3人しかいません。

「3人しか」というのは正しくありません。

mission impossible、不可能を可能にしたのですから「3人もいるのです」が正解です。
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小さな幸せ。

それが良いのです。

5月から英国ボクシングニューズ誌がマイナーチェンジ。

表紙のデザインがシンプルになり、チラシみたいな貧弱な紙質がほんの少し改善されました。

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ボクシングニューズ誌は、週刊誌。

左(カネロ・アルバレスのモノクロスナップ)が5月2日号。そして右(ルイス・ネリに痛烈な左カウンターでお見舞いする井上尚弥)が5月9日号。

そして4月まで46ページだったマガジンは50ページに!素晴らしい。

しかも値段は据え置き!

米国では、リング誌が1980年代から経営難に喘ぎ、月刊体制の崩壊や大幅なページ減、ついに2022年に廃刊に追い込まれてしまいましたが、英国は元気です。

そういえば、リング誌は年12回発行から9回になって、購読量が一部返金されました。寂しい思い出です。


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Action pack!信じられないかもしれないが、日本ではジュニアフェザー級以下の階級だけで大きなイベントが開催されるのだ。


英国ボクシングニューズ誌はエラいッ!!!

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ヘビー級のUndisputed championshipがステイクされたメガファイト「オレクサンデル・ウシクvsタイソン・フューリー」をメインにした10試合がパックされた巨大イベントですから、時間割通りに進行しないのは理解できますが、それにしても…。

前日夜中まで色々忙しくて、まさかの寝落ちという失態をやらかして、やっと見終わりました…。

1999年のレノックス・ルイス以来、25年ぶりにUndisputed championが誕生しました。

その舞台は、25年前は誰も想像できなかった、ラスベガスでもニューヨークでもないサウジアラビアの首都リヤド。

そして、ボクシング最高位のUndisputed titleを争ったのは、英国とウクライナの白人同士。これも四半世紀前には誰も予想できませんでした。

PUNCHESFURYUSYK
Total landed157170
Total thrown496407
Percent32%42%
Jabs landed6248
Jabs thrown286147
Percent22%33%
Power landed95122
Power thrown210260
Percent45%47%

全てのバイアスを廃して見ると、小さなウクライナ人を応援したくなるのは当然です。

しかし、現実のボクシング界では「フューリーvsアンソニー・ジョシュア」の二人の英国人Forbes Fighterによるメガファイトが渇望されており、この空気感が試合の判定を左右する可能性も懸念されていました。

個人的には115−112。

ウシクが第9ラウンドにレフェリーストップでも差し支えない猛攻でダウンを奪わなくても、115−113で37歳のウクライナの技巧はサウスポーが、35歳のジプシーキングを攻略したとみました。

オフィシャルの115−112/114−113/113−114のスプリットデジションも、納得できるスコアでした。良い試合でした。

あの第9ラウンド。レフにはスタンディングダウンを取って欲しくなかった。デオンティ・ワイルダーの一撃にはすぐに回復して立ち上がったフューリーですが、あの14連打では完全に効かされてました。

次のラウンドで完全に回復していたフューリーはさすがですが。



ウクライナ人であるが故に大きな業績を残しても人気が出ないウシクは、昨日発表されたフォーブス誌のアスリート長者番付でも圏外。

そんな37歳は「大きなチャンスをものにした。私にとって、私の家族にとって、私の母国にとって、ボクシングの歴史にとって」と、男泣き。噛み締めるように喜びを語りました。

キャリア9度目のダウン、初黒星も喫したフューリーは「勝ったと思ったが、ここで座って泣いて言い訳をする気はさらさらない」と悔しさを滲ませ「再戦条項を行使する。すぐにリングに戻ってくる」と宣言。

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Undisputed ベルトを掲げるウシク。

再戦は10月12日、やはりリヤドで開催される予定。この日は元々、フューリーの勝利を前提にジョシュアとの超弩級のメガファイトが設定されていましたが、今回の敗北で消滅。ウシクが4針縫った右目上のカットの深さ次第でしょうが、10月12日でなくても年内には再戦が行われる見通しです。






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個人的にはオレクサンデル・ウシクが220ポンド以下に仕上げて、タイソン・フューリーがいつも通りに280ポンド近くまで膨張して前日計量の秤に乗れば面白いと思っていましたが…。

ウシクはヘビー級転向後の最重量233.5ポンド(直近の試合は221ポンド)、フューリーは262ポンド(同277ポンド3/4)と絞って来ました。

60ポンド以上もある可能性も予想されていたその差は〝わずか〟28.5ポンド、12.93kg。井上尚弥(122)とテレンス・クロフォード(147)程度の差です。

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より弱い相手を求めて自分も弱体化する=相対的な強さを求める減量階級と、自分が最も強い体重に整える=絶対的な強さを求める無差別級の違いです。

ヘビー級の計量シーンでは、脱水状態で足元がふらついたりするのはもちろん、カサカサの肌に頬がこけたファイターも見ることは出来ません。

2人が「この相手に自分のベスト体重は?」を考え抜いて、ウシクは増やし、フューリーは減らしたのです。

ウシクがパワーでフューリーをねじ伏せるとは考えられませんし、フューリーがスピードとテクニックでウシクを完封する展開も想像出来ませんが、面白い試合になりそうです!

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モハメド・アリの引退によるボクシング人気の低迷と、シュガー・レイ・レナードから始まる中量級の時代。

オリジナル8の形が整った1920年代から1980年までの60年間は「ヘビー級が動くが如くボクシングは動く」といわれた60年間でした。

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80年代から現在までの40年余りもヘビー級は特別な階級であり続けましたが、ヘビー級並みの大きな興行がウエルター級やミドル級で頻発するようになり「ヘビー級が動くが如く…」という表現は、このスポーツの実体を表すとは言えなくなりました。

私は、まさにそんな節目のタイミングで米国ボクシングに惹き込まれたのです。

リング誌はもちろん、総合スポーツ誌のスポーツ・イラストレイテッドでもボクシングはメジャースポーツに踏みとどまっているように、私の目には見えました。

もちろん、それは米国ボクシングを見始めたばかりの私の視点であり、70年代以前の米国ボクシングを知る人の目とは大きなギャップがあるのは当たり前です。

そんなわけで、私は全盛期のアリがどれほどの存在だったのかを、肌感覚では知りません。

…いいえ、実は知っています。つい最近の生々しい記憶として、まざまざまざと思い知らされています。

アリが亡くなった2016年6月にそれを、これでもかと、思い知らされました。

CNNをはじめ米国のテレビが葬儀の様子やアリの足跡を2日以上にわたってロングランで中継、他のニュースを報じるときでも小窓でアリのさよならパレードの様子などを映し続けていました。

大統領が亡くなってもここまではしないという、見たこともない報道に溢れていたのです。

不謹慎な言い方になりますが、マイク・タイソンやフロイド・メイウェザーが天寿を全うしたとしても、アリのような報じられ方をすることはありえません。

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2016年、あれからもう8年も経ったなんて。

モハメド・アリの時代と現代…何もかもが変わってしまったように思えますが、人種差別の醜い炎は鎮まる気配を見せず、反吐の出る独裁者も絶滅していません。

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そして、今週末。

モブツやマルコスが、モハメド・アリを〝招致〟したように、サウジアラビアがオレクサンデル・ウシクとタイソン・フューリーの対決を引っ張り込んだのです。

彼らの狙いは国威発揚でした。

モブツとマルコスは人民が貧困でああいでいるというのに、自らの権威を国の内外に見せつけるために、ヘビー級のメガファイトを呼びました。

この2人の本心は、五輪を招致したかったのかもしれませんが、そんなもん、国際世論から許されるわけもなく、五輪よりもわかりやすい、つまりカネでなんとでもなる世界ヘビー級チャンピオンを招き入れたのでした。

いや…当時の五輪は今よりもはるかにアマチュア色が強く、商業色もほとんどありませんでした。つまり、地味だったのです。

彼らは、五輪よりもカラフルな世界最強の男を自国に招き入れたかったのかもしれません。

アリの試合がアフリカとフィリピンに与えたインパクトは、アフリカきら優秀な黒人ボクサーが何人も生まれていること、フィリピンでボクシングが国技のように尊敬されていることからも簡単に想像ができます。

黒い肌でも偉大であること、ボクシングで頂点に立てば世界中から尊敬されることを、アリは二つの拳で伝導したのです。

しかし、サウジアラビアは裕福な国で、そもそもスポーツ観戦に熱心な国民性ではありません。まして、ハングリースポーツの代表であるボクシングなど(もちろんムスリムのアリは有名で尊敬されています)。

サウジは国際社会に対して、人権を疎かにするというマイナスイメージを、文字通り洗い流すこと、スポーツ・ウォッシングを目的に、カネを糸目をつけないやり方で、欧米スポーツを招致しているのです。

ボクシングというブラックホールは、モブツもマルコスもサウジも飲み込みます。ブラックホールはあっちの方かもしれませんし、どっちもブラックホールかもしれませんが。

このスポーツ(スポーツと呼べるのならば)はたびたび「清濁併せ呑む」といわれることがあります。

とんでもない誤解です。

清濁では「清」もあるような表現になってしまうじゃありませんか。

ボクシングの世界は〝濁濁〟併せ呑む世界です。


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アリは日本を含めた世界でも問答無用に有名でした。

「モハメド・アリ」とは、ボクシングを知らない人にとっても「とにかくすごい人」だったのです。

モブツとマルコスは、そんな虎の威を借りたかったのです。

ひるがえって現在。米国はもちろん、日本でもウシクとフューリーを知っている人がどれほどいるでしょうか…?

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