カテゴリ: 世界最強の男

IMG_1250

圧倒的大多数のメディアで、オールタイムPFP1位に推され続けているのはご存知、シュガー・レイ・ロビンソンです。

ジョー小泉をして「生まれ変われるならロビンソンの時代で彼のボクシングを体感したかった」と言わしめた、元祖シュガー・レイ。

そして、PFPの概念をボクシングファンに広く知らしめたグレート。

しかし、ロビンソンはライトヘビー級王者ジョーイ・マキシムの前に体力の差を見せつけられ、13ラウンド終了TKOに散りました。

当時はオリジナル8、ウエルター級とミドル級で歴史的な強さを見せつけ、ライトヘビー級に挑戦した拳聖は3階級制覇に失敗してしまったのです。

このとき両者の体重は、マキシムがリミットを2ポンド下回る173ポンド、ロビンソンは157ポンド1/2、ミドル級にも満たない〝軽量〟でした。

ロビンソンはミドル級の体重でライトヘビー級に挑み、15ポンドの壁に跳ね返されてしまったのでした。

専門家やコアなファンは「ロビンソンがもう少し大きな体格なら、マキシムにはもちろん、ロッキー・マルシアノにも勝てるのに」という思いを表出させたのがPFPでした。

さらに遡って、アクロバティックな複数階級で同時代のヘビー級王者ジョー・ルイスに〝挑戦〟したヘンリー・アームストロングは4階級制覇を狙ったミドル級の王者セフェリノ・ガルシアに僅差判定で敗れてしまいました。

このときのウエイトは、アームストロングが142ポンド、ガルシアが153ポンド1/2(当時のミドル級リミットは11ストーン=154ポンド)。ナチュラルウエイトで10ポンド以上も重いガルシアに立ち向かったのでした。

多くの格闘技で階級制を採用している理由は「ウエイトが重い方が強い」からです。

GettyImages-2153604923
PFPを楽しむボクシングファンに不条理な現実を突きつけたウクライナの英雄



A good big 'un always beats a good little 'un.


「優れたライトヘビー級は鈍重なヘビー級に駆逐される」「ライトヘビー級王者はヘビー級王者になれない」…長い間、ボクシング界に横たわってきた常識はマイケル・スピンクスが打ち砕き、クルーザー級からはイベンダー・ホリフィールドとオレクサンデル・ウシクが無差別級へのランディングに成功しました。

それでも、劣化バージョンのラリー・ホームズを攻略したスピンクスは、より重い生粋のヘビー級マイク・タイソンに90秒で破壊され、ホリフィールドもリディック・ボウやレノックス・ルイスだけでなく鈍重なジョン・ルイスにまで不覚をとってしまうのでした。

A good big 'un always beats a good little 'un.

一番強いヘビー級ばかりが注目されているが「減量階級も素晴らしい」という理屈をこねなければ、小さなファイターは浮かばれないーーーその(屁)理屈こそがPFPなのです。

手も足も速く、滑らかなフットワークも使ってコンビネーションを叩き込むーーー重いヘビー級では見ることのできない〝軽量〟の美学。

そこにフォーカスして、ヘビー級をピンボケさせる妄想を見せてくれるレンズの名前がPFPです。

井上尚弥は論外、カネロ・アルバレスやテレンス・クロフォードでも、現実のリングではウシクに無惨に敗れ去るでしょう。

しかし、PFPレンズを通すなら「ウシクは現役PFPファイターに勝利したことがない」という事実に突き当たります。

そんなウシクに対して、クロフォードはPFP5位以内に評価れていたエロール・スペンスJr.に圧勝しています。

カネロ・アルバレスは元PFPキングのシェーン・モズリー、長年PFP上位にランクされていたミゲール・コット、PFP2位評価を受けたこともあるセルゲイ・コバレフに完勝。

対戦相手の質が低いと揶揄される井上でも元PFP3位のノニト・ドネアを2度撃破しています。

スクリーンショット 2025-07-27 17.02.29
 階級のレベル・人気格差を無視する支配度だけならNo.1?


さらに、ESPNやリング誌で認められたまともな世界ランカーに対して、ウシクはクロスゲームを繰り広げているのに対して、クロフォードとカネロ、井上は圧倒的な力量差を見せつけています。

どんな発想でも自由なPFPですが、その大前提は「階級(体重差)を無視して全ての階級を平等に見ること」。つまり、PFPで最も重視すべき要素は階級支配度です。

そう考えたとき、PFPという妄想ルールの中でウシクの満場一致の1位というのは如何なものでしょうか?

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

◉読者

良ければ管理人さんの考えるPFPを聞いてみたいです。


ウシクもあまり評価されていないようですが、現代ボクサーはタイトルが1つしかなかった時代と比べて評価に値しない感じでしょうか?

4団体統一してはじめて本物の王者で、それからどのようなレガシーを築くのかでやっと議論できるレベルとお考えですか?

スクリーンショット 2025-02-23 12.31.50

オレクサンデル・ウシクを評価してないとすると、私がウシクを「時代を代表するファイター」と見ているからでしょうか?

ウシクは2020年代、いや21世紀でも傑出したファイターです。

そして、お遊びとはいえ「ヘビー級は強いけど技術的にも素晴らしいとは限らない」という、階級を無視してボクサーを評価するPFPは非常に面白いMythical ranking 、妄想の序列です。

「誰が一番強いか?そんなんタイソン・フューリーに決まってるでしょう」(村田諒太)なんてことを言い出すと、お遊びも妄想も出来ません。

そもそも、強さだけならヘビー級が一番なんて誰でもわかっています。

PFPは現実の強さではなく、pound-for-pound 、つまりは階級を無視して、同じ体重だとする妄想上での強さです。

マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーは、明らかに適正階級よりも重いウエルター級に乗り込み、技術の差を見せつけたから高い評価を得ましたが、彼らはフライ級やジュニアライト級の体重のままで、つまり体重ハンデを背負って戦ったわけではありません。

しかし、ウシクの場合は違います。

112ポンドから154ポンドまでの42ポンドを増量したパッキャオに対して、ウシクは230ポンド前後の体重のまま、数10ポンド、ときには50ポンド以上も重い相手と互角以上に戦い勝利を収めてきたのです。

体重同一時=pound-for-pound どころか、驚くほどの体重ハンデを背負いながら勝利を重ねているのです。

もちろん、タイトルマッチで最も大きな体重ハンデを跳ね返したのはデビッド・ヘイ(ニコライ・ワルーエフ戦)です。

また、160ポンドのミドル級からヘビー級のストラップをつまんだロイ・ジョーンズJr.もメイウェザーはもちろん、パッキャオよりも大幅な増量の旅を成功させました。

それなのに、ヘイやロイがパッキャオやメイウェザーよりも評価が低いのは、勝った相手がワルーエフとジョン・ルイスだったという一点に尽きます。

彼らは戦前のオッズも予想も明白に有利な中で、ヘビー級の穴王者を狙い通りに攻略しただけでした。

ヘビー級のトップ選手に競り勝ってきたウシクは、ヘイやロイとは明らかに違います。

その一方で、テレンス・クロフォードや井上尚弥と比べると階級支配度は脆弱です。

ーーー「いや、待て。それを言うとパッキャオやメイウェザーも圧倒的な力量差を見せてウエルター級に君臨したわけではなく、スペクタクルに乏しい退屈な試合がほとんどだったじゃないか」と思われるかもしれません。


となると、ウシクはパッキャオやメイウェザーよりも優れたボクサーなのでしょうか?

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

現代ヘビー級の最強は、オレクサンデル・ウシクです。

先日更新されたESPNのPFPでは、17人の専門家全員が38歳のウクライナ人を1位に推す満票でした。

満票はフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオ以来の〝快挙〟。

PFPは十人十色の妄想ランキングであるはずですが、誰もが同じ妄想を描いているとしたら、それは妄想ではなく実像なのかもしれません。

IMG_3143


とはいえ、ウシクが戦ったヘビー級タイトルマッチ6試合は、アンソニー・ジョシュアとタイソン・フューリー、ダニエル・デュボアとそれぞれ2試合という〝英国が好き勝手〟している状況で、圧勝したのは直近のデュボアとの再戦だけ。

ジョシュアとフューリーに対する各2勝のうち一つはスプリットデジションで、どちらに転んでもおかしくない内容でした。

となると、フューリーやジョシュアもPFPの俎上に乗せて良い気もしますが、そうはならないのが矛盾だらけのPFP。所詮は妄想なので仕方がありません。

レベルの低い現代ヘビー級でもけして傑出した存在とはいえないウシクですが、2メートル前後の巨人が居並ぶトップ戦線で戦勝191㎝の小さな体で、常に自分よりも遥かに重い相手と互角以上に戦っていることがPFP1位評価につながっています。

クルーザー級の残像も評価にプラス作用しているのも、よくよく考えるとおかしな話ですが、これもPFPが妄想である限り、どんな評価をしようと間違いではありません。

デュボアとの再戦でも専門家予想ではウシクの敗北、苦戦を予想する声も少なくありませんでした。井上尚弥や中谷潤人、バム・ロドリゲスの戦前予想ではそんなの考えられません。



ーーー階級支配度が脆弱なウシクが、歴史上の偉大なヘビー級と戦うとどうなるのか?

英国ボクシングニューズ誌から〜。





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

カムイの「変移抜刀霞斬り」。

星飛雄馬の「消える魔球」。

水戸黄門の「印籠」。

矢吹丈の「トリプルクロスカウンター」。

退屈な現実に飽きた私たちに、必殺技はいつだって破滅的なまでの恍惚をもたらしてくれます。

沢村忠の「真空飛び膝蹴り」には虚構と現実の間を明滅するエロチズムまで溢れていました。

file_180059_2_ARCHIVE_ftizsimmons_blacksmith

そして、現実の世界にだって魅惑的な必殺技が披露されてきました。そんな必殺技を操るボクサーは簡単にヒーローに変身することが出来たのです。

ボブ・フィッツモンズの「ソーラー・プレキサス・ブロー」。

ジャック・デンプシーの「デンプシーロール」。

モハメド・アリの「ファントム・パンチ」「ロープ・ア・ドープ」。

ーーーそして昨日、またまた〝番狂せ〟を起こしたマニー・パッキャオの「マニラ・アイス(バニラアイスにひっかけた右フック)」(定着しませんでしたが)。


「ロープ・ア・ドープ」については、民主党のジェームス・カービルがトランプ大統領の自国民にも大きなブーメランとなって帰ってくるであろう関税政策に対して「ジタバタせずに打たせるだけ打たせて相手が消耗するのを待つ」という意味で「rope-a-dope戦略で良い」とニューヨークタイムズに記事を寄せました。

さすがに、ほとんどの読者はrope-a-dopeを知らないはずですから、記事を読んで少し混乱したんじゃないかと思いましたが、反骨の塊のようなアリはカービルだけでなくトランプにもオバマにも米国の政治家・大統領を常にインスパイアし続けている偉大な存在であり続けているということです。



そして、蠱惑的にもほどがある必殺技名簿に新しい銘柄が加わります。


オレクサンデル・ウシクがダニエル・デュボアを仕留めた左フックを、ウシク本人が名前も教えてくれて、解説しました。

その名も「THE IVAN(イワンの拳)」。


 Usyk dropped his head, closed his eyes and sent a huge Ivan left hook directly into Dubois’ chin.ウシクは頭を下げて目を閉じ、イワンの拳をデュボアの顎に直撃させた。

ジ・エンド。

チーム・ウシクのメンバーたちも「When you put your head down and swing for the hills with a shot like that it's known as 'The Ivan' .(サウスポーが頭を下げて丘の上に向かって弧を描くように吹き上げて振る左フック、それがイワンの拳だ)」と、口を揃えて語りました。

デュボアにとってはパンチの出所は完全に死角、大きな弧を描くことで破壊力を増幅させるだけでなく、悪魔の間を生み出す、まさに最悪のショットです。


Usyk always has it in his locker for whenever he needs it.

'The Ivan' はクルーザー級時代のウシクが2018年に米国でキャンプを張っていたときに完成させたパンチで、そのとき命名したそうです。

そして、それ以来ずっと、いつか使う瞬間が訪れるはずだとロッカーの中にしまっていました。

サウスポーが頭を下げて丘の上に向かって弧を描くように吹き上げて振る左フック、The Ivan(イワンの拳)。

〝イワンの拳〟は、セルヒオ・マルチネス(2010年11月20日:vsポール・ウィリアムス)や中谷潤人(2023年5月20日:vsアンドリュー・マロニー)も見事なマスター(使い手)で、この教科書に載せてはいけないパンチをウシクよりもわかりやすく(教科書的に)披露していました。

体重同一時(人気階級も不人気階級も平等に扱う)として広く知られるPFPですが、実は明確な評価基準はありません。

それでも…。


ヘビー級と単純比較されると「シュガー・レイ・ロビンソンは弱い」で話は終わってしまいますが、ロビンソンが弱いと思うのは体重差があるから、それだけのことで体重同一時なら人気絶頂のロッキー・マルシアノよりもはるかに優れているーーーロビンソンの優秀さをわかりやすく伝えるために広まったPFPの考え方は「トップレベルでは体重が重い方が強い」という絶対真理の上に成り立っていました。

ウシクが階級支配度が低いにも関わらず、PFPキングに推される理由は「トップレベルで体重が軽いけど重いやつよりも強い」ということ、つまりPFPの根幹を破壊することを、多くの人の目の前で証明してしまったからです。


もはや〝逆ハンデキャップ〟〝逆体重同一時〟をウシクに課す段階かもしれません。

つまり、ウシクがもっと大きくて重い状態を妄想、そうなると動きも俊敏さも確実に鈍化します。

つまり、ウシクは軽量ですばしっこくて、サウスポーだから強く見えるだけなのです。重くなったら遅くなる、弱くなるはず。

もし、ウシクをフューリーのように体重280ポンドまで膨張させ、オーソドックスに逆コンバートさせたら、絶対に弱くなっているはずです。

逆に(もうなんの逆やらわかりませんが)、フューリーはあんなに大きくて重い肉体をひきずりながら軽快でスピードと機動力抜群でサウスポーのウシクと互角に戦ったのですから、もっと高く評価しなければならないのではありませんか?


ーーーウシクがコンバーテッド・オーソドックスになって、280ポンドに増量しても、スピードと機動力はそのまま、パワーだけが異常に増強された、なんてことになっても、もう私は知りませんが…。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

多くのメディアでPFP1位評価を集めているオレクサンデル・ウシク。

リング誌のベスト10を「当該階級の支配度」という尺度で見ると、ウシクはど誰がどう見ても、どうしようもない最下位です。


スクリーンショット 2025-07-20 21.52.43


Pound For Pound(体重同一時=全ての階級を差別なく平等に見る)では、階級支配度が評価の基準であるはずですが、ウシクの場合は1人だけ「体重同一ではない試合」を現実に繰り広げて勝ち抜けているのです。

3〜4ポンド上げるのにも慎重な井上尚弥ら減量階級のファイターを横目に笑いながら、ウシクは50ポンド以上も重いタイソン・フューリーらをコントロールしてきました。

PFPは妄想だから自由。階級支配度を完全無視して「本当に強のはヘビー級だから10人全員ヘビー級」でも差し支えありませんし「ウエルター級はレベルが高いから10人全員ウエルター級」でも間違いではありません。


スクリーンショット 2024-12-12 23.11.48



********* 現生人類の新種が発見された。

それが、Homosapien athleticus(運動能力に極めて優れた人類)だ。

まだ、その個体は一体しか存在を確認されていないが、彼は He says he wants to train a world champion one day.(いつかウクライナから世界チャンピオンを育てたい)と、夢見ている。

ウクライナで生まれたHomosapien athleticus。

そう、彼とは、Undisputed heavyweight champion of the world(議論する余地のない世界ヘビー級チャンピオン)オレクサンデル・ウシクのことだ。

彼の所属チームはReady to Fight(RTF)。チームのスローガンは「Never enough(十分なんてありえない)」。常に貪欲に最高を希求して、ゴールは無い。

だからこそ、オレクサンダー・ウシクは「ゼロ」の異名で語られているのだ。

オリンピックの金メダル、世界選手権の金メダル、プロでも視界に入る全てのベルトをコレクションした。ウクライナの国民的英雄で、数えきれない名声と富も手に入れた。

しかし、彼は全く満足していない。

Never enough

まるで何一つとして手に入れていないかのように、飢えたままだ。



スペインの東海岸にガンディアという小さな港町がある。母国が戦火に焼かれている状況で、ホームで試合も練習もできない彼はダニエル・デュボアとの再戦に備えた練習拠点としてこの静かな町を選んだ。

黒海に突き出たクリミア半島のシンフェロポリで生まれたウシクは、やはり海の近くが一番落ち着くのかもしれない…いや、ここではシンフェロポリを「Homosapien athleticusが発見された土地」と書くべきだったか。

世界最強の男のベースキャンプは、古いレンタカー店を改装したもので豪奢な建物ではない。

しかし、ここにはウシクが必要とするものが全て用意されている。

2階にはリングにサンドバッグ、パンチングボールにバイク、ウエイトトレーニングの設備も一通り揃っている。

1階に降りると、空の青と麦の黄色をあしらったウクライナ国旗に試合のポスター、白いコンクリートの壁にはチームのメンバーが落書きを寄せている。

i-2

「猫」はウシクのニックネーム。ヘビー級なのに猫のようにすばしっこいのだから、そりゃあ誰も勝てないのも頷ける。

「2018MOSCOW」は、2018年7月21日にモスクワでムラト・ガシエフに完勝、クルーザー級のUndisputed championになったこと。

「2024年SAUDI」は2024年5月18日にサウジアラビア・リヤドでタイソン・フューリーを翻弄、ヘビー級のUndisputed championになったこと。

そして「2025LONDON」は、もちろん7月20日にどういう経緯かダニエル・デュボアに渡ったIBFのストラップを取り戻し、再びヘビー級のUndisputed championになることを先取りして書いたもの。

壁一面には「UNDISPUTED」のネオンサインが輝いている。

大きなテレビモニターにはデュボアの試合映像がループで再生されている。もちろん、ウシクがKOした初戦の動画も。

ストレングス&トレーニングコーチのヤクブ・チッキの指導は科学的なデータが全てだ。そこには感情が入り込む余地はない。心拍数や酸素摂取量、血中ヘモグロビン濃度…トレーニングではお馴染みだが、チッキはスパーリング中の脳波もモニタリング、ウシクの心理面までデータとして蓄積している。

そこには感情や根性は存在しないはずだが、ハイペースのサーキットトレーニング、巨大なメディシンボールを壁に投げながらの腹筋運動、見ているだけで顔をしかめたくなるようなメニューに励むウシクは「この練習が好きか嫌いか?嫌いに決まってるだろ!」と感情を露わにし、「それでもこれをこなせば強くなれるのがわかってるんだ」と、根性をむき出しにする。

「ヘビー級に転向してからパワーへの対応、適応は完成しつつある。デュボアも私を研究して再戦のロープをくぐるだろうが、彼が直面するのは初戦とは全く違うオレクサンデル・ウシクだ」。

「ジョシュア、フューリー、デュボア、英国のスーパースターを倒すのは仕事だから、それだけさ。英国にはなんの恨みもない。恨みのある国はどこかって?それは今は関係ないから話すつもしはないし、あんたの想像に任せるさ」。

またしても敵地で戦うウクライナのファイターは「全く気にしていない。私は元サッカー選手だからね。あのウィンブリー・スタジアムで戦えるなんて最高の気分さ。みんなデュボアを応援するんだろうから、先に謝っておく。ガッカリさせて申し訳ない」。


IMG_2073



********** 階級支配度だけに焦点を当てると、ウシクは井上尚弥や中谷潤人はもちろん、寺地拳四朗も大きく下回ります。

ヘビー級以外の現実の体重差を乗り越えた例として、マニー・パッキャオ(144ポンド1/2)とアントニオ・マルガリート(150ポンド)の「5ポンド1/2(2.49kg)」などがありますが、〝たかだか〟2.5kgです。

そもそも、PFPは弱者の言い訳です。ヘビー級を冷遇することが基本中の基本でした。

Pound For Pound(体重差を無視して)というから、現実に巨大な体重差を跳ね返しているウシクが無視できないだけで、今後はPFPという用語を廃止してMeasure of Divisional Dominance(MDD:階級支配度)など別の表現でウシク的な侵略者を排除すべきかもしれません。





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

オレクサンデル・ウシクがボクシング史上最高報酬のメガファイトでダニエル・デュボアを返り討ち。

され、ここで引退でも2020年代最高ファイターはウシクで決定?

オールタイムのヘビー級マップは更新されるか?

ウシクを歴代PFPでどう語るか?




このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

Praying into my fists

i

ボクシングファンならハリウッドと聞いて真っ先に思いつくのは、華やかな映画スタジオではなく、汗臭いワイルド・カード・ボクシング・クラブだろう。

そして、ちょっと熱心なボクシングファンなら、すぐ近くにあるショッピングモールにナット・タイ・フードというタイ料理のレストランのこともよく知っているはずだ。

そこで待っていると、練習を終えた彼らのアイドルが大勢の仲間を引き連れて食事に現れることを知っているからだ。

生きる伝説は食事を待つ間、気さくにサインや会話に応じてくれる。

そして、ときには集まったファンの分まで会計を済ませてくれることまであった。



Praying into my fists

スクリーンショット 2021-05-01 10.08.46

しかし、大勢のファンが楽しみにしていたそんな習慣はもう、4年も途絶えていた。

46歳にもなった伝説が、4年もの長きブランクを経てリングに戻るーーーそれがどういうことなのか、ボクシングファンである彼らが一番よく知っていた。

メディアの批判的な報道に異論も反論もなかったが、彼らはまたこの店に、性懲りも無く集まっていた。

ある者はサイン用の台紙を持って、ある者はやはりサイン用のボクシンググローブを持って、あるいはある者はその両方やポスターや、ゴーストライターが書いたかもしれない彼の著作も抱えて。



Praying into my fists

IMG_2991

米国のボクシングファンである彼らにとって、アジアは暗黒エリア、軽量級は誰からも意識されない関心を持たれない空気のような階級だったが、四半世紀も前からのボクシングファンにとって、マニー・パッキャオは無視できない存在だった。

マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスは軽量級にも関わらず、西海岸のボクシングファンはよく知っていた。



「もう22年も前の話だ」。

誰かがシンハーの瓶ビールをラッパ飲みしながら、2003年11月15日のアラモ・ドームの話を大声で始めていた。

軽量級では考えられない人気を集めていたマルコ・アントニオ・バレラにとって、無名のフィリピン人は踏み石、ステッピング・ストーンに過ぎなかった。

要は噛ませ犬だった。



Praying into my fists

IMG_1999

初回にダウンしたパッキャオは、主審に抗議の視線を送ったが、360度完全アウエーの大観衆は「まだ倒れるな、早すぎる。もう少し頑張れ」と嘲笑った。

あのナジーム・ハメドすら飲み込んだバレラのオーラに全く無名のフィリピン人が耐えられるわけがない、そう考えたメキシコのファンたちは何も間違ってはいなかった。

HBOのボクシング番組 World Championship Boxing の解説者も「ゴールデンボーイ・プロモーションズと大型契約した初戦、ボーナスファイトだ」と楽勝ムードだったのだから。

しかし、インタバルにダウンシーンのスロービデオがオーロラビジョンに映し出されると、会場に少しだけ気まずい空気が流れた。

パッキャオはバレラに足をかけられて倒れたのであって、ダウンではなかったのだ。

「ダウンかどうかは重要ではない。どうせバレラがKOするんだから。ただ、強く抗議しなかったパッキャオの潔さには申し訳ない気分になった」。

「パッキャオにとっては初回のダウン、いきなり8-10のビハインドを背負うことになったが、コーナーでの表情は冷静に見えた」。

「フレディ・ローチの言葉に、パッキャオはうんうんと頷いていた。ローチは『見ろよ、こんなアウエーは私でも見たことがない、ここまで来るともはや壮観だな。どうせ判定では勝てないんだから、ダウンは気にするな』、そんなことを言ってたんじゃないか?」。

「ローチとパッキャオはあのバレラを相手に堂々と戦って勝った。彼らは完全アウエーの異様な雰囲気に『すぐにロッカールームで着替えて裏口から逃げるぞ』と焦ってたようだが、俺たちは卑怯者じゃない」。

花道を慌てて引き上げるパッキャオには罵声も浴びせられたが、拍手も聞こえていた。

「初回のダウンは間違いだった!すまなかった!」という、メキシカンにしては珍しい(失礼)謝罪の声もあがっていた。

バレラよりもメキシカンらしく戦い抜いたフィリピン人に、たったの1試合でも彼らは強烈なシンパシーを覚えていたのだ。

これまでにも、パッキャオはメキシコ人と戦ってきたが、アントニオ・マルコ・バレラはそれほどまでに特別だった。



Praying into my fists

IMG_2112
IMG_2111

メキセキューショナー(メキシコ人死刑執行人)。そんな渾名を持ったパッキャオにも関わらず、彼が訪れるとメキシコシティは地鳴りのような大歓声で迎える。

敵地どころか、凱旋と表現すべきほどの狂騒だ。

常識的には間違った表現だが、パッキャオのメキシコ凱旋と言い切って差し支えはない。

パッキャオ本人は自らをメキセキューショナーと呼ぶことは一度もなかったことを、メキシコ人たちがみんな知っていたからだけではない。

メキシコのボクシングファンにとって、圧倒的不利といわれた冒険マッチをメキシカンスタイルで勝ち抜いたパッキャオは、賞賛の対象にしかならないのだ。

我らがヒーローを倒した、憎いはずのファイターを大歓声で受け入れるメキシコのボクシングファン。



日本のボクシングファンに、彼らほどのボクシング愛があるだろうか?


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

マニー・パッキャオ…レガシーの通信簿

【S】全盛期の一発殿堂入りクラス
【A】全盛期の殿堂入りクラス
【B】現役PFPファイター
【C】Lineal (またはリング誌)王者
【D】リング誌(またはESPNなど公正な)トップ10選手


IMG_2562

【C】チャチャイ・ダッチボーイジム

1998年12月4日、タイ・バンコク郊外プタモントン、トンスク大学の構内に設営された屋外リング。

チャチャイは、当時PFP10傑に数えられたユーリ・アルバチャコフを下してWBCフライ級のLineal titleを獲得、PFPには数えられなかったものの、タイ人の評価はさらに高騰していました。

IMG_3091

リング誌のBEST FIGHTER POLL(年間PFP)でベスト10に数えられたユーリ。1980年から始まった年間PFPに日本のジム所属の選手がランキングされたのは史上初。格が下がる月刊PFP(1990年スタート)では最高位6位、インターネット以前という時代背景を考慮すると、まさしく快挙でした。。


3度目の防衛戦、地元に迎えたのは「グラスジョー」「ペーパーストマック」「ディフェンスに大きな欠点がある」というレッテルが貼られた生け贄のフィリピン人、マニー・パッキャオでした。

大方の予想通りに試合は後半戦に入ります。第7ラウンドまでのスコアは1人のジャッジが70-64でフルマーク、残る2人も大差で王者を支持していました。

王者にとって、残りの五つのラウンドを全て失っても、防衛という安全圏に入っていたのですが…。

予想通りでなかったのは、試合をコントロールしているように見えた王者がラウンドの深まりにつれて消耗と疲労の表情を隠せなくなり、フィリピン人のプレッシャーにまっすぐ下がり出したこと。

IMG_3090

そして、第8ラウンド。

一見唐突に見えて、実は当然の帰結だったスペクタクルなフィナーレが訪れるのでした。



世界タイトルマッチとはいえ「東南アジアで行われたアジア人同士の軽量級の試合」。欧米のアンテナでは捉えることが出来るわけもありませんでした。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

1980年代に繰り広げられた個性際立つ4キングスによるラウンドロビン(総当たり戦)を知って米国ボクシングの魅力に惹き込まれた人は多いでしょう。

シュガー・レイ・レナードがAサイドなら何をやっても良いという悪しき前例を作ったことに幻滅、熱が冷めた時期もありました。

再び、米国ボクシングへの熱量が上がったのは社会人になってからのことでした。

社会人になって自由に使えるお金が増えたり、米国出張の帰りにラスベガスのシーザースパレスを初めて訪れたり…そんな体験が活字と画像とビデオテープでしか知らなかった米国ボクシングへの興味を甦らせたわけではありません。


20200402

たった1人のファイターがだった二つの拳だけで、完全Bサイド、しかも欧米人では歯牙にもかけられないアジアの軽量級から人気階級に土足で上がり込み、ついにAサイドまで登り詰めたマニー・パッキャオを見てしまったからでした。

パッキャオは西岡利晃や井上尚弥的な欺瞞から一線を画す、本物の人気と本物の強さだけを証明したのでした。

それまでも、完全Bサイドがボクシング界を揺るがす大番狂せを起こしたことはありましたが、それを繰り返すことは出来ませんでしたが、そもそも番狂せとはそういうものです。

相性も含めた奇跡的な勝利だからこそ、大番狂せであり、対戦相手が別の超強豪に変わったとしても大番狂せををやってのけるなら、もうそれは大番狂せなどではなく、専門家やファンの目がフシ穴だったというだけのことです。

日本時間の次の日曜日。パッキャオは4年ぶりのリングに明白なアンダードッグとして、舞い戻ります。

2008年12月6日のオスカー・デラホーヤ戦で明白に不利と見られて以来、パックマンがアンダードッグと見下されるのは、2015年5月2日のフロイド・メイウェザー戦以来初めて。

*キース・サーマン戦では多くのメディアが「現実的ではない」と驚きながらも、試合当日までにパッキャオがフェイバリットになっていました。


もしかしたら、これが最後の試合、最後のアンダードッグかもしれません。

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2009年、イタリア・ミラノで開催されたボクシング世界選手権ヘビー級準決勝。

ロシアのイゴール・メコンチェフは14−10で勝利、決勝でもキューバのオスメイ・アコスタを下して金メダルを獲得しました。

メコンチェフは「最後の勝者」として記憶されています。。

勘の良いボクシングファンなら、もうおわかりでしょう。

この世界選手権でメコンチェフが準決勝で勝利したのは、オレクサンデル・ウシク。

そう、イゴール・メコンチェフはオレクサンデル・ウシクに勝利した最後のボクサーなのです。

IMG_2073


K2プロモーションズのアレックス・クラシュクが、2013年のプロ転向から継続していたウシクとの契約を終了させたと発表しました。

PFPキングのウクライナ人は、来月19日に敵地英国のウィンブリー・スタジアムでダニエル・デュボアとの再戦がセットされています。

試合まで1ヶ月を切った段階での発表です。

現時点では、2018年からK2と共同プロモートとしているマッチルームが単独でプロモートする形です。

ウクライナを拠点とするK2との訣別が何を意味しているのか、さまざまな推測が飛んでいますが現時点では全く分かりません。

しかし、この訣別がウシクにプラスに働くとは思えません。試合に集中することを妨げるマイナスでしょう。

さて、そのウシクは同じウクライナ人のヤロスラフ・アモソフ(元ベラトール・ウエルター級=170ポンド王者)もスパーリングパートナーに加えてデュボア戦に備えています。






話は変わりますが、ウシクの逞しさの要因には、色んな意味でのクロスオーバーの取り組みもあるでしょう。

日本では、JBCの規定でクロスオーバーは厳禁。こんなアホ鎖国状態をいつまでつづけるつもりでしょうか?


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ