Breez is Nice!

日本、米国ではすっかりマイナースポーツに凋落してしまったボクシングですが、この両国ですら「ボクシングは稼げる」と信じる人たちが数多く存在します。

「金と華やかな世界」は、プロの世界王者よりもはるかに尊敬される五輪金メダリストでありながら、村田諒太がプロ転向した最大の動機の一つでしょう。「パッキャオやメイウェザーみたいに何百億円とは言わないまでも、一晩で2億、3億稼ぐビッグファイトがしたい」。

パッキャオやメイウェザーを特殊な例外としても、ボクシング全体を見たとき「ボクシングは稼げる」とは、果たして事実なのでしょうか?


【マニー・パッキャオ。スポーツイラストレイテッド誌の表紙を飾った史上初のアジア人ボクサー…というより今後、この総合スポーツ誌のカバーに登場するボクサーが現れるかどうかも不安です。それほどボクシングの凋落傾向は深刻です。】

先日、2016年度版のForbes The World’s Highest-Paid Athletes(フォーブス誌スポーツ長者番付)が発表されました。

1位はクリスティアーナ・ロナウドでSalary/Winnings(試合報酬・契約金など本業での収入)が5800万ドル(1ドル110円換算で約66億円)、Endorsements(スポンサー収入)が3500万ドル(約39億円)で合計9300万ドル(約105億円)を荒稼ぎしました。

我らが錦織圭は、サラリー390万ドル(4億3000万円)、エンドースメント3000万ドル(33億円)、併せて3390万ドル(37億4000万円)で26位に顔を出しているのは誇らしいですね。エンドースメントが本業の10倍近いという、プロゴルファー並みなのは気がかりですが、経済大国日本の恩恵ではなく、プロフェッショナルの証明と受け取りましょう。これからは本業でもビッグタイトルを取って、もっと上に駆け上がって欲しいものです。

ボクシングではカネロ・アルバレス(2700万ドル+150万ドル=2850万ドル:31億円)の43位が最高で、89位にアンソニー・ジョシュア(1850万ドル+350万ドル=2200万ドル:24億2000万円)が入り、ウラジミール・クリチコ(1700万ドル+400万ドル=2100万ドル:23億1000万円)が98位に滑り込みましたが、トップ100に入ったのはこの3人だけです。

このランキングを見ると、ボクシングは決して儲かるスポーツではなく、最も稼げるのはアメリカで野球をすることですね。間違いありません。トップ100に22人を送り込んでいる現役時代の高報酬はもちろん、選手寿命や引退後の生活が保障される選手会・保険関係まで考慮すると、これは、もう明らかです。

しかし、一方で本当に数えるほどのボクサーが大金を手にすることも、また事実です。

前年(2015年度版)のランキングはメイウェザーで2億8500万ドル(310億円)+1500万ドル(16億5000万円)=326億5000万円)の史上最高額でトップ。2位がパッキャオで1億4800万ドル(165億円)+1200万ドル(13億2000万円)=178億2000万円と、フォーブスのランキングをボクサーがワンツーフィニッシュで飾っていました。

全体として見ると、ボクシングは稼げません。年間100万ドル稼ぐボクサーも、全体ではほんの一握り、20人程度でしょう。

しかし、ときとして、莫大なスポンサー収入に支えられるゴルファーや、サッカーや野球、バスケットボール選手らを一気に引き離して、ほとんどリングの上だけで稼いだ金で、彼らを大きく上回るボクサーが出現します。

それは、なぜなのか?

まず、ペイパービューのような囲い込んだファンから高額の視聴料をかき集めるシステムです。モハメド・アリ時代に始まったクローズドサーキットから続く、信者からの〝お布施徴収〟ですね。これは、ボクサーの高収入を支える一方で、一般ファンを遠ざける諸刃の剣です。

そして、いくら凋落したと言ってもボクシングへの関心は熾火のように米国でも日本でも消えずに残っています。マイク・タイソンやパッキャオのような激しく燃え上がる火種さえあれば、マーケットが爆発、拡大する可能性はいつも秘められています。

そして、もう一つは、本来ならスポーツの本質から外れることですが、「頂上決戦」を焦らす(意図的、意図的じゃないに関わらず)というマーケッティングが、この30年で明らかに存在、定着してしていることです。

厳然とした統括団体が管理するほとんど全てのスポーツでは、毎年年間王者が決められます。MLBでワールドシリーズが争われないなんてありえません。テニスの4大大会が準決勝で突如大会が止められるなんてことは、起き得ません。そんなファンを無視した愚行に走れば、そのスポーツは滅亡します。

そんなことを長い間続けてきたにも関わらず、ボクシングは衰退の一途ですが、まだ滅亡していません。本当は、どこかで一度滅亡した方が良かったのかもしれませんが。

しかし、頂上決戦が焦らされれば、焦らされるほど、ファンの欲求は高まり、商業的にはより大きな興行が期待できます。

最初のサンプルは、1987年にまさかの実現となったシュガー・レイ・レナードとマービン・ハグラー。日本から見てると「階級も違うしレナードは引退してたし、焦らすというのは違う」と思うかもしれません。しかし、米国のファンはハグラーが憎たらしいほどの強さを見せるたびに「レナードがいたら」と夢想していました。実際に、レナードがハーンズに勝ってウェルター級王座を統一した時、米国はもちろん日本の専門誌でも「レナードはハグラーに勝てるか」と特集を組んでいます。

そして、その1年後、1988年のマイク・タイソンとマイケル・スピンクス。「ヘビー級統一トーナメント」の決勝で、この二人は対決するはずでしたが、スピンクスが離脱。「タイソンから逃げた」と多くのファンはスピンクスを非難しましたが、スピンクス陣営は明らかにビジネスを考えていました。そして、その意味ではスピンクスは間違いなく勝者でした。

【当時、史上最大のメガファイトは91秒であっけなく終わります。両膝を故障していたスピンクスが、タイソンの爆発的な攻撃から1ラウンドも逃れることは出来ませんでした。しかし、タイソン戦を引き延ばした〝執行猶予期間〟で、人気者ジェリー・クーニーとの大興行で大金を手にし、タイソン戦と自らの商品価値を目一杯あげることに成功しました。】

そして、2015年、もう焦らしまくりの末に実現したメイウェザー対パッキャオ。もし、ファンが望む2009〜2010年にこの試合が実現していたら、その興行規模は半分だったという試算もあります。まぁ、半分でも腰が抜けるほどのメガファイトですが。

この3つのメガファイトを振り返ってみたいと思います。

村田諒太は、この世界の玄関に入りました。亀海喜寛は、この世界に最接近した経験のある伝説との戦いに挑みます。日本人がメガファイトの舞台に立つことも、決して大それた夢と諦めることはない、そんな希望的な状況が出来上がりつつあります。

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日本では、その階級で穴王者と見られる名ばかり世界王者や、マニアでもよく知らない挑戦者を連れてきて安易な世界タイトルマッチが繰り返されています。

階級最強と見られる王者や、ボクシングファンが認める強豪選手は、せっかく育てたジムの秘蔵っ子と戦わすには危険すぎます。ボクシングの場合、惨敗したら「いい経験をした」では済みません。心身ともにキャリアに重大な影響を与える可能性もあります。

仕方がありません。そういう部分は大いにあります。自分が大手ジムの経営者で「有望なホープを階級最強王者に挑戦させるか?」と聞かれて、「ファンのためにそうする!」と言い切れる人は、もしいるとしたら大嘘つきです。

そして何より、有名選手はおいそれと日本には来てくれません。

長谷川穂積と統一戦を戦ったフェルナンド・モンティエルは当時、誰もが認める階級最弱王者でしたが(過小評価されていた部分は大きく、逆に過大評価の長谷川は大きなツケを払わされてしまいます)、それでも交渉は難航、そんなモンティエルの条件ですら、どんどん釣り上げられていきました。

軽量級でも日本人がビッグネームと戦うのはレアケースなのに、中量級となるともう夢の世界です。

8月26日に亀海喜寛が拳を交えるミゲール・コットなんて、フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオ、昔ならシュガー・レイ・レナードやトーマス・ハーンズと同じ世界の住人です。日本人が戦うなんて妄想するのもおこがましい存在でした。

昨年の暮れあたりからコットの対戦相手として名前が浮上していましたが、いやぁ、まさかまさかの展開です。

今夜はミゲール・コットについてです。

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私自身は、いつも無表情でトラッシュトークも控えめで、リング外ではファンサービスのかけらも見せない無愛想なコットは今ひとつ好きになれなかったのですが、ファンの方も多いと思います。

ファンになる気持ちもよーくわかる、今時珍しい、本当にプロボクサーらしいプロボクサーなんです…あれ?好きなのかもしれません、私も。

1980年10月29日生まれですから、36歳。いつキャリアの幕を引いてもおかしくない年齢です。

2学年上のパッキャオとは真逆で、キャリア後半になってから激闘型になったことからもダメージは相当蓄積されているはずです。

【素晴らしいキャリアを走り続けているコットですが、トレーナーに恵まれているとは言えません。現在、コーナーについているのはフレディ・ローチ。「攻撃偏重」と言われ、コットにとっては良くないと見る専門家も少なくありません。今の所、メイウェザーとカネロに判定負けした以外は結果が出てるとはいえ…。=リング誌2015年12月号から】

ボクシングを始めたのは11歳のとき。アマチュアでは125勝23敗と優秀な成績を収めていますが、世界的なタイトルは取れてないんです。1993年(当時13歳)にあのイバン・カルデロンに負けてるのは有名ですね。

2000年にはプエルトリコ代表としてシドニー五輪に挑みましたが、無念の1回戦負け。このときの相手がウズベキスタンのムハンマド・アブデュラエフで、勝ち上がって金メダルを獲得しました。

このアブデュラエフとは、コットがWBOジュニアウェルター級王者として三度目の防衛戦で〝再戦〟、9ラウンドTKOで退けています。アマチュア実績には目を見張るものがなかったものの、若い頃からコットは「プロ向き」と言われていましたが、それを証明した一戦でした。

WBOジュニアウェルター級のタイトルは6度防衛、ランドール・ベイリー、デマーカス・コーリー、ポール・マリナッジといった強豪を明白に打ち倒して、中量級スターウォーズの惑星の一つになります。

2006年にWBAのウェルター級王者になってからの約2年間が、プエルトリコが生んだ最大のスターの全盛期でした。サブ・ジュダー、シェーン・モズリーというビッグネームからも勝利をもぎ取り、最もレベルの高いウェルター級で最強と言われるようになります。

コットとの対戦を煽るメディアやファンに「コットと戦ってもビジネスにならない」とメイウェザーが言い訳した一方、コットはメイウェザーを挑発することもなく「与えられた相手を倒すだけ」とプロフェッショナルの姿勢を貫きました。

そう、対戦相手を選ばないことも、この寡黙なプエルトリカンが絶大な人気者になった大きな理由です。

しかし、その男気が、この好漢のキャリアにとって仇になってしまうのです。

やはり、メイウェザーやオスカー・デラホーヤが対戦を回避した、当時日の出の勢いでウェルター級を席巻していたアントニオ・マルガリートを、2008年7月26日、5度目の防衛戦の相手に選んでしまいます。

しかも、場所はアウェーのラスベガス、MGMグランドガーデンアリーナ。Aサイドのコットなら、熱狂的なサポーターが詰めかけるホームのニューヨークを選択することもできたはずですが…。

デラホーヤやメイウェザーと戦うとなればコットといえどもBサイド、彼らの拠点、西海岸のリングに上がることになります。

しかし、その予行演習にしてはティファナの竜巻はあまりにも強過ぎました。

しかも、直後のモズリーとの試合でマルガリートは拳を石膏のようなもので固めていた〝ハンドラップ〟事件が発覚、このコット戦でも異物を仕込んでいた可能性が十分あるのですが、もはや確かめようはありません。

11ラウンドで、マルガリートの軍門に下ってしまいます。

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 ここで、強豪ばかりと激闘を繰り広げてきたにもかかわらず、無敗の快進撃を続けてきた眩しすぎるキャリアは、無念、ストップしてしまいます。


【マルガリートとは2011年に再戦、9ラウンドTKOで雪辱しましたが、コットがキャッチウェイトを突きつけた試合で、何よりも、パッキャオ戦で破壊されたマルガリートの眼窩底は完治していませんでした。そういえばコットの右耳後ろには「未月来」と漢字三文字の刺青が彫られていますが、これは「ミゲール」の当て字なんでしょうか?日本人がアルファベットを格好いいと感じるように、欧米からは漢字がすごくクールに見えるようですが、なんだかなぁな感じはありますね。=リング誌2012年3月号から】

マルガリート第1戦で、コットは致命的なダメージを負ってしまったように見えます。

また、この頃は、折り悪くもトレーナーである叔父のイバンゲリスタ・コットとの関係が悪化、チームとして機能していませんでした。

叔父との確執は、2009年4月に乱闘事件まで発展し、警察が出動する騒ぎまで起こしてしまいます。

そして、サブトレーナーのホセ・サンティアゴが〝昇格〟するのですが、こいつが近年稀に見る暗愚なトレーナーでした。

2009年にWBOバージョンで世界ウェルター級王座を奪還したコットには、一世一代の大勝負が迫っていました。

遥か下のフライ級王者からフィクションのようにスター選手を蹴散らしながら、ウェルター級まで駆け上がってきたアジアの奇跡との決戦です。

しかし、そんな大事な試合の前哨戦でも、コットには難敵が用意されます。やはり、多くの選手が対戦を回避していたガーナのグランド・マスター(巨匠)、ジョシュア・クロッティです。2009年6月13日、今度はホーム、マジソン・スクエア・ガーデン。

フルハウスに膨れ上がったガーデンが最も盛り上がったのは、試合前のセレモニーの途中、リング頭上の巨大ビジョンにマニー・パッキャオが映し出され、万雷の拍手に応えてフィリピン人が席を立って手を振った時でした。

コットは第1ラウンドにジャブのカウンターを決めて美しいダウンを奪います。しかし、その後はタフなガーナ人の反撃にあい、コーナーのサンティアゴは無策のまま。何とかスプリットデジションで逃げ切りましたが、プライムタイムを迎えているパックマンに対抗するにはその姿はあまりにも弱々しいものでした。

そして、2009年11月14日、MGMグランドアリーナ。運命の日が訪れてしまいます。

コットの持つWBO世界ウェルター級王座をパッキャオが奪取すると、史上初の7階級制覇が達成されます。

1年前はジュニアライト級で戦っていたフィリピン人が、わずか2年足らずの期間で全階級を通じて最もレベルが高いライト、ジュニアウェルター、ウェルターの3階級を、一気に食い尽くそうとしているのです。

その言葉はスポーツの世界では安易に使われがちですが、マニー・パッキャオ、この時の彼は、まさに「怪物」でした。

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【アジアの誇りパッキャオの人気は日本でも絶大です。日本のメディアだけが「6階級制覇」としているのは笑えますが。パッキャオが獲得した最も価値がある王座はフェザー級とジュニアウェルター級と言われているのに「4団体」に固執して、この2階級を無視するのですから理解に苦しみます。=ボクシングマガジン2010年1月号から】

このメガファイトは最初からパッキャオのために用意されたものでした。王者コットは145ポンドのキャッチウェイトを「147だからウェルター。145ならウェルター級じゃないからタイトルは賭けない」と主張していましたが、何の関係もないWBCがしゃしゃり出て「ウェルター級のダイアモンド王者決定戦にします」といつものようにわけのわからないことを言い出します。

これが、なんの定義も根拠もない、WBCが単に高いベルトを売りつけたいというダイアモンドベルトの始まりでした。

この珍妙なベルトをWBCは5万ドルで売ろうとしますが、これには寛容なパッキャオも「5万ドルも払うなら要らない」と拒否、立場のないWBCは結局無償で渡したといわれています。

恥知らずのWBCは、先日のカネロvsチャベスJr.戦でも「メキシコベルト」なるものを作成して売りつけようとしましたが、関係が悪化しているカネロに「WBCのベルトなんて無料でも要らないし、そんな汚らしいベルトはリングにも上げるな」と唾棄されてしまい、あの美しいベルトは日の目を見ないまま。今はどこにあるのでしょうか?

両者の最低保障の報酬はパッキャオが2200万ドル、コットが1200万ドル。オッズは3−1〜4−1でパッキャオ。試合は素晴らしい立ち上がりを見せます。第1ラウンドからジャブの応酬。

探り合いというにはあまりにも鋭利なジャブの差し合い、次の強打がいつ炸裂するかわからない緊張感。

最初の3分間が終わった時に、大観衆は名勝負になるに違いない予感に我慢ができず、スタンディングオベーションが自然発生、その光景は壮観でした。

ボクシングの試合でスタンディングオベーションは、非常に珍しいことです。

パッキャオのガードを綺麗に弾くコットのジャブ!クロッティを倒した、鋭く伸びるあの美しいジャブです。第1ラウンドはコットが取りました。コットの勝機がジャブの差し合いから距離をとることであるのは素人でもわかっていましたが、わかってない愚鈍な男が一人だけいました。そうです。サンティアゴです。よりによって、コットのコーナーにいたのです。

第2ラウンドもジャブの差し合いが続きますが、この展開を打開すべくパッキャオは波状攻撃を仕掛けるタイミングを計り、距離を潰そうとしてきます。

第2ラウンドが終わってインタバル、「距離が近づいている。パッキャオのフェイントがわからない」と相談するコットに、サンティアゴはあろうことか「打ち合え、ロープに詰めろ」と指示します。接近戦でパッキャオと打ち合っていいのは、ロベルト・デュランくらいなものです、まさに自殺行為です。

第3ラウンドからは一方的な展開になります。リングサイドで応援していたコットの美しい奥さんは9ラウンドで、目の前で父親が切り刻まれる光景に泣きじゃくる子供の視線を覆いながら席を立ちます。

11ラウンド終了のインタバルでコットは「パッキャオは本当に強い、過去最強の相手だ。俺の負けだ」と棄権を相談しますが、サンティアゴはどこまでも愚かです。「ウェルター級のパンチが一発当たればパッキャオなんて簡単に沈む。諦めるな」。12ラウンド、もはや一滴のエネルギーも残っていないコットを救ったのはサンティアゴではなく、レフェリーのケニー・ベイレスでした。

この試合でコットはサンティアゴを見限り、あのエマヌエル・スチュワードに師事します。

しかし、身長、リーチを生かすクロンクのスタイルは、短躯のコットには合わず、キューバのペドロ・ルイス・ディアスの門を叩きますが、ギレルモ・リゴンドーやホルヘ・カサマヨルらを教えた名伯楽の言葉も響きませんでした。

そして、ミドル級に進出した2013年からはフレディ・ローチとタッグを組んでいます。

現時点のコットの評価は、「2009年のクロッティ戦を最後に旬の強豪には勝っていない」「ジュニアミドルからミドル級で勝ったのはマルガリートやリカルド・マヨルガといった終わったボクサーと、ユーリ・フォアマンやセルヒオ・マルチネスら膝に重傷を抱えてリングに上がったボクサーしかいない」「5年前にオースティン・トラウトに完封されている事実(今は更に劣化している)」…非常に厳しいものがあります。

だからこそ、石橋を叩いて、今回選んだのが亀海です。しかし、コットにとっては簡単な試合にはならないでしょう。身長、リーチで大きく上回る激闘型の亀海は、コットにとって厄介な相手です。マルガリートをスケールダウンしたイメージでしょうか。

一方でトップレベルで戦った経験差は如何とも埋めがたいものがあります。亀海のテクニック、スピード、パワー、打たれ強さ、何一つとしてコットを驚かせるものはありえません。

コットは、遥かに凄まじい経験を、怒涛の修羅場を数えきれないほど、かいくぐっって来ました。もし、コットに驚くことがあるとしたら、凡庸な亀海のボクシングに、思うように反応できない自らの衰えた肉体に対してでしょうか。

そして、そうなる可能性は十二分にあります。

「ゴールデン・ボーイ・プロモーションと大型契約を結んだ選手は、最初の一歩で躓く」。マルコ・アントニオ・バレラやホルヘ・リナレスらが絡め取られた〝GBPの呪い〟もまた、コットには気になるところです。

大きな、大きな、とてつもない大きなチャンスが亀海喜寛と日本のボクシング界に巡ってきました。

亀海は「勝ってリング誌の年間最大番狂わせ賞を狙う」と語っていましたが、オッズの上からはおそらく「大番狂わせ(Big Upset)」にはならないでしょう。

オッズはまだ見当たりませんが、3〜4−1でコットというレベルと思われます。いわゆる「Mild Upset」の範囲です。それほど、コットは衰えてると考えられています。

しかし、コットが無名のアジア人に敗れる、そのニュースは世界中のボクシングファンは大きな衝撃をもって受け止めるしかありません。ミゲール・コットは、それほどのビッグネームなのです。

そんなグレートと、日本人が真剣勝負で相見えるのです!これは、もう、日本のボクシングファンなら、MUST SEE、何があっても見なけりゃいけません!

コットに勝てば、次の試合はビッグネームから引く手数多です。

日本人でウェルター級だった亀海には、ずっと「かわいそうに」という思いがありました。

米国に戦場を移してからも、世界の最前線から離れたポジションで一進一退を繰り返す姿に「日本人でウェルター級なんて逆立ちしたって報われない」と、やはり同情しながら応援してました。

申し訳ありませんでした。私の不徳の致すところです。

ウェルター級で戦っている限り、どこにどんなチャンスが転がっているかわからないものです。

まさか、ミゲール・コットなんて!

亀海のおかげで、これから日本人がパッキャオと戦おうが、メイウェザーと戦おうが、うろたえるほどには、もう驚きません。

とんでもなく、すごいことです。あのコットと同じリングに上がるなんて。

でも、それだけで終わりにするには、あまりにも惜しい、どデカ過ぎるチャンスです。カリフォルニアの一夜限りの夢で終わらせてはなりません、絶対に。

何が何でも、勝ちましょう。勝ちましょう、勝ちましょう、絶対に勝ちましょう!

頑張れ、亀海!偉大な伝説のキャリアに、ピリオドを打つのだ!
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村田諒太が世界のミドル級でトップクラスの実力があることを証明、亀海喜寛はあのミゲール・コットと世界戦を戦うことが内定と、日本のファンがずっと憧れてきた中量級の夢舞台世界が現実のものとなっています。

長らく世界をリードしてきた米国でボクシングの地位は長期凋落傾向の中、リング誌をはじめ米国メディアは日本、軽量級寄りの傾向をはっきり打ち出してきています。1980年から現在の形で発表されているリング誌PFP10傑は、日本人への門戸を固く閉ざしていましたが、この2年で山中慎介、井上尚弥が揃ってベスト10に名を連ねました(ファイティング原田の時代にこの制度があれば間違いなく3位以内に入ってたでしょうが…その時の序列は1位:原田、2位:エデル・ジョフレ、3位:モハメド・アリかもしれません、想像するとちょっとシビれますね)。


【日本の年間表彰式の模様が、リング誌3月号でレポートされました。日本でもボクシング人気は低落傾向ですが、米国ではもっと深刻、日本を中心としたアジアのボクサーの露出度は増しています。かつて頓挫したリング誌日本版が再創刊される日も近い?】

今夜は、夢ではなく現実として目の前にあるであろう日本人ボクサーの可能性を探ります。

まずは、亀海と村田です。世界のミドル級は9月16日で大きく変わるかもしれません。オッズはゲンナディ・ゴロフキン勝利が1.57倍、カネロ・アルバレスが2.38倍と、アバウト3−1で予想通りゴロフキン有利ですが、番狂わせの可能性は十分あります。カザフスタンの英雄には失礼ですが、予想通りの結果だとミドル級には何の波風も立ちません。

しかし、カネロがオッズをひっくり返すと、これは日本のボクシングファンにとっても非常に面白い、本当に非常に面白い展開が期待できます。カネロが勝てば、年内にもう1試合やると言われています。その相手は先日、ゴールデン・ボーイ・プロモーションと複数試合契約を締結したコットとのリマッチになることが濃厚です。

実際に、カネロの名前は出ませんでしたが、亀海戦の発表会見では「コットは12月にも戦う。相手は誰になるかはお楽しみ」とオスカー・デラホーヤが語っています。亀海を完全に無視した発言でムカつきますが、逆に考えるとコットを倒せば、亀海はカネロとのビッグマッチに駒を進める可能性が高いのです。

その時、亀海はWBO世界ジュニアミドル級王者、ゴロフキンに勝ったカネロは〝議論する余地の無い〟世界ミドル級王者。亀海はジュニアミドル、ミドルの2階級制覇が懸かるリングに上がるわけです。夢のような話ですが、現在のコットの実力が全盛期からは程遠いのは間違いありませんし、しかも長いブランク明けです。

亀海の実力評価は世界トップレベルとはお世辞にも言えませんが、海外メディアでも「亀海のモチベーションの高さと、引退の儀式を考えている今のコットでは、デラホーヤの台本通りに物語は進まない」という見方も少なくありません。

そして、村田です。こちらもゴロフキン、カネロとの絡みが期待出来るばかりか、亀海には申し訳ないですが、村田は世界基準の実力があります。トップ戦線にとどまる可能性が高いのです。

アッサン・エンダムとの再戦か、それとも他団体の王者との決戦か、次の試合はわかりませんが、勝ち進む実力は十分あると思います。ファンの夢を語らせてもらうなら、メガファイトに勝ってミドル級最強王者となって、ウェルター級の精鋭の侵略もねじ伏せる、カルロス・モンソンやマービン・ハグラーのような、ミドルの歴史になって欲しいですね。とりあえずは、まず、次の試合です!

そして、そして、やはり日本の屋台骨は軽量級が背負っているのです。ノニト・ドネアが挫折、ローマン・ゴンザレスまでが急停車した現在の軽量級の世界地図は、もしかしたら日本人にとっては非常に難しいものになっているのかもしれません。

つまり、日本人のタレントが揃うジュニアフェザー級以下でのビッグネームが見当たらず、いるのは誰もが敬遠する純粋に強いだけのギレルモ・リゴンドーだけ。フェザーにはレオ・サンタクルスとカール・フランプトンの100万ドルファイターがいますが、井上尚弥にとってはフェザーは遠く、山中慎介は残念ながら誰もいないバンタムで骨を埋める腹でしょう。レオやカールも、この階級にいつまでいるかもわかりません。

そう考えると、井上vs山中というカードか、井上vsリゴンドーなんです。今のリゴンドーは天笠尚戦でも隙を見せたように、パーフェクトなボクサーではありません。ましてや天笠戦でも2年半も前です。ビッグネームからは敬遠され、試合間隔も空いています。

欧米のファンも、リゴンドーは評価はしても嫌いです。「誰でもいいから、あの上手いだけのキューバ人を叩きのめして欲しい」。そう願っているボクシングファンは少なくありません。

【リゴンドーとワシル・ロマチェンコは、実質的なPFP1、2位と言われています。この難攻不落のアマエリート、ある意味小賢しいテクニックの亡者を、プロの剛腕でぶっ倒すボクサーが現れたら…スター誕生です。シュガー・レイ・ロビンソン賞(最も名誉ある年間最高選手賞)確定です。井上尚弥にそれを期待するのは過重でしょうか?】

日本人の世界王者でも白黒はっきりつけて欲しいですね。田中恒成と田口良一は、絶対やらねばなりません。井岡一翔も「唯一無二の存在」に本気でなりたいなら、もう回り道してる時間はありません。井上だって同じです。

「世界王者」が、しかも近隣階級で10人レベルまで増殖してる現状を「ボクシング黄金時代」と捉えることがどれほど異常な思考か、それがわからない、わかろうとしないのはいただけません。メディアが一番悪いのですが。

エースの井上は雑魚を相手にして、弱小ジムの村中優は英国の強豪と戦う…これが長い間続いている、日本ボクシング界の腐敗の構図です。もちろん、井上は不利な条件を飲んで英国まで行く必要はありませんし、プロテクトされていない村中は呼ばれたらチャンスです。仕方がないのですが…これがずっと繰返されて、井上も内山高志のようにナマクラばかりを切り続けた挙句に、ナマクラにブッタ斬られておしまい…とかは悲しすぎます。

村田vsエンダム戦は、5億円興行、日本史上最大の規模だったと言います。もし、サンタクルスを呼べば5億じゃ済まないです。西海岸で戦えば1億円以上もらえるのですから、彼の報酬だけで2億以上積まないと、危険な日本には来るわけがないでしょう。

しかし、そういう興行が成り立つようにメディアも、ファンも盛り上げなければなりません。

井上や井岡の報酬は推定で5000万円レベルです。これは、彼らが米国で試合して支払われるわけもないとんでもない金額なんです。

西岡利晃はラファエル・マルケス戦で100万ドルの報酬を受け取ったと言いますが、それが事実だとしたらそのお金はあの興行からは絶対に出ていません。はるかに大きな興行だった、ドネア戦での報酬は日本のスポンサー収入も加味されて10万ドルです、西岡が日本で弱い相手に防衛戦をしてる方が何倍ももらえてるのです。もちろん、西岡が悪いのではなく、責任はむしろ別のところにあります。とにかく、こんな恥さらしは二度としてはいけませんし、日本のボクシングファンは忘れてはいけません。

ただ、西岡が日本で弱い相手に戦うよりも、報酬は3分の1以下でも、ただ名誉だけを求めてドネアをリングに引っ張り上げたことは忘れてはなりません。

井上、井岡に戻ると、日本で弱い挑戦者相手に5000万円もらえるのに、敵地で強豪相手に1000万円ももらえないなんて、そんなもん、ビジネスとして成立しません!井上がカリド・ヤファイと戦い、英国の大観衆にその実力を見せ付けてくれたら、日本のファンは大喜びですが…。

そうなると、英国では当たり前の同国人対決です。これは間違いなく盛り上がります。あるいは、世界中のビッグネームが敬遠するリゴンドーです。

【リング誌2016年PFP100傑から。リゴンドー6位、山中9位、井上11位、パッキャオ12位、井岡も22位につけています。】

とにかく強い相手と戦いましょう。聞いたことがないのといたずらに防衛戦を重ねるのは、安上がりなのはわかりますが、もういいです。ちゃんと世界を見せましょう。

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「国際ボクシング名誉の殿堂」の投票システムは、2015年から規格が変更されました。

モダーン・カテゴリーは、ラストファイトが1989年以降のボクサーに限定。一方、オールドタイマー・カテゴリーは、前期(ラストファイトが1883〜1942年)と、後期(1943〜1988年)に二分化。

最も注目されるモダーンのノミネート数は45人から30人に圧縮、投票上限は最大10名から5名になりました。モダーンを絞り込むことで、これまで評価から漏れていたボクサーにも殿堂入りのチャンスが生まれるというメリットが期待され、長らく無視され続けたナジーム・ハメドが2015年に早速殿堂入りしました。

ハメドはフェザー級ながらも米国東海岸でも爆発的な人気を博したばかりか、実質4団体を統一しましたが「旬の強豪に勝っていない」「勝てる相手を選んでいる」という批判が常につきまとっていました。特に、ファン・マヌエル・マルケスとの対戦はあからさまに回避、やはり逃げていたマルコ・アントニオ・バレラとついに戦って完敗したことも悪い印象を助長してしまいました。

私はマルケスやバレラと戦ってもチャンスはあると思っていましたが、「やったら負ける、だから逃げる」というハメドの野生の勘の正確さに驚かされました。

それでもダリウス・ミハルチェフスキやウィルフレド・バスケスSr.、ヘンリー・マスケ、ヘナロ・エルナンデスといった名選手がまだ殿堂入りしていません。

【帝拳ジムに所属し、日本のファンにも馴染み深いヘナロは、その高潔なフェアプレー精神から世界中のファンから尊敬されています。敗れたのはオスカー・デラホーヤとフロイド・メイウェザーの2敗だけ。1998年10月3日ラスベガスのヒルトンホテルで行われたWBC世界スーパーフェザー級戦でヘナロは4度目の防衛に失敗、メイウェザーに王座を明け渡しました。「スピード、テクニック、パンチ力、全ての面で過去最強だった。君は間違いなく、明日のスーパースターになる」と元王者から言葉をかけられたメイウェザーは「ものすごく自信になった」と感謝。のちに、難病に冒されたヘナロを助けるために、高額な治療代を負担するなど、二人の友情はずっと続きました。ヘナロの予言通りの道をメイウェザーは疾走することになりますが、この時の報酬はたったの13万7000ドル(1850万円)でした、まさかその1000倍以上を稼ぐことになるとは、ヘナロですら予想もできなかったでしょう。】

殿堂は、米国偏重という如何ともしがたい問題を抱えていますが、他にも「投票数の多い上位3人が選ばれる」というシステムも今後改善しなければならないでしょう。

引退から5年で殿堂入りの資格が発生しますが、例えば今年、マニー・パッキャオ、ロイ・ジョーンズJr.、マルケス、ミゲール・コットの4人が引退したとすると、(おそらく)コットが5年後に一発殿堂から漏れることになります。他の年なら文句無しで一発殿堂なのに、これでは不公平です。

また、得票率が低くても上位3人に入れば殿堂入り、というのもおかしいです。メジャーリーグの殿堂は、投票記者の75%以上の票を集めなければ殿堂入りできないルールですが、このパーセンテージでボクシングの殿堂入りも決めるべきですね。

パーセンテージで決めるデメリットは、誰一人75%に達せず「該当者なし」の年が発生してしまうことです。そうなると、その年の式典は実に寂しいものになってしまいます。しかし、殿堂の権威を守るためにもパーセンテージ制は、可及的速やかに導入すべきでしょう。

いろいろ問題点のあるボクシングの殿堂ですが、悔しいけど世界基準=米国基準なんです。相手の土俵に上がって、きっちり殿堂入りして、日本のファンをスカッとさせてくれる名選手が早く出てきてほしいものです。

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「日本のボクサーも数字ではなく殿堂を目指せ!」なんて言ってしまいましたが、本音では、米国至上主義の国際殿堂には嫌悪感もあります。

ただ、あまりにも数字にばかりに執着する日本のボクシング界はやはりおかしいと思うからです。「最短世界王者」「最短二階級制覇」「連続防衛記録」「複数階級制覇」…そんなの世界王者が乱立する今ならいくらでもやり放題です。

ワシル・ロマチェンコを語るとき、そのスピード出世は、卓越した技術という圧倒的な存在感の〝主語〟から見たら、瑣末な〝修飾語〟でしかありません。マニー・パッキャオは世界唯一の8階級制覇(日本では6階級制覇)を達成したから偉大なのではなく、強豪をことごとく打ち倒したからです。

手抜きしたラーメン屋は流行りません。いいえ、流行らせてはいけないのです。手抜きのラーメンを食べさせられて、またその店に行くなんてありえないでしょう。防衛記録やら、最短やら、ナン階級制覇やら、素っ頓狂な具材のトッピングに、いつまでも騙されてはいけません。

【「誰に勝ったか」。それ以外は評価されないと言い切っていいでしょう。5階級制覇したレオ・ガメスは、強豪でしたが、殿堂にはお呼びじゃありません。38連続防衛したサムソン・ダッチボーイジムがネタ扱いされるのはマイナー団体だったからじゃありません、誰にも勝っていないからです。この「誰に勝ったか」という最強のモノサシの恩恵を最大限に授かっているのは、間違いなくファイティング原田です。】

もちろん、今のパッキャオは手抜きのインスタントラーメンしか出しません。だから、お客さんは一気に離れました。今もパッキャオのチケットを買う人は、「昔は信じられないほど美味しかった」という郷愁からです、それだけです。ただ、パッキャオはかつて、間違いなく、世界中のボクシングファンをメロメロにしてしまうパフォーマンスを立て続けに魅せました。

その遺産が、昨日発表された「ESPN World Fame 100 」(ESPNが発表した世界で最も有名なアスリート100人)です。パッキャオは、今がプライムタイムのカネロ・アルバレス(89位)を引き離して59位(去年35位)に顔を出しています。

しかし、MMAファイターのロンダ・ラウジー(16位)とコナー・マクレガー(25位)が、カネロはもちろんパッキャオまで凌いでいるのは、ボクシングファンとしては複雑ですね…。

残念ながらボクサーはこの二人だけです。

しかし!カネロは、我らが村田諒太といつ対戦しても、もはや驚くことじゃないです。

亀海喜寛も8月のコット戦で勝てば、ジュニアミドルという階級的にもパッキャオとカネロ、どちらからオファーが来ても、これまた誰も驚かないポジションに立てるのです。もー、絶対勝たねばなりません!

日本から唯一ランクインしたのは、錦織圭の20位!さすがです、素晴らしいです。しかし、世界タイトルを一度も取ったことがない錦織が20位に入った一方で、「世界王者を12度も防衛している」山中慎介も、「天才」井上尚弥も100位に入ってないばかりか、もしこれが1000位まであってもランクインしたかどうかは怪しいでしょう。

もちろん、こんなランキングはまともに受け止めてはいけません。米国基準に著しく偏向した、超独善人気ランキングです。

1億人の日本市場を勘案したらおそらく、「亀田興毅」「稀勢の里」なんかは100位圏内に入ってもおかしくありません(もちろん、特に亀田は今回のESPN World Fame 100の〝計測期間〟〝対象条件〟から外れているでしょうが)。

英国のボクシングファンは「アンソニー・ジョシュアが100位にも入っていないなんて、さすが米国、トランプの国」「ウッズ?英国で同じランキングしたらゴルフをしない(交通事故を起こす)ゴルファーは入らない」と、早速盛り上がってます。日本もその態度じゃないとダメなんです。

国際殿堂を目指せ!そのためには何度防衛するとか(これが評価されるなら38連続防衛のサムソンは殿堂入り)、最短で世界王者になるとか(これが評価されるならウィラポンはとっくの昔に殿堂入り)、敵地で勝つ(これが評価されるならパッキャオは永遠不滅のPFP1位ですね)とか、瑣末なことは、修飾語に止めるべきなんです。

もちろん、瑣末なことを主語にすることのメリットはあります。商業的なメリットはいくらでもあります。

「対戦相手が逃げている」と妄言を吐き続けて、防衛戦を重ねていく。それをそのまま報道するメディア…これも最低です。「対戦相手が逃げてしまって」という世界王者は井上が最初じゃありません。最近では長谷川穂積ら、綿々と続く日本のお家芸です。

メジャーな相手は、普通の条件では来るわけがないのです。

フェルナンド・モンティエルですら、日本に呼ぶのは譲歩に譲歩を尽くして超難航したのです。逆を考えれば当たり前です。井上がカリド・ヤファイと戦うのに英国に行くか?行っちゃダメです。KOしないと勝てません。じゃあ、普通に呼んでヤファイが来るか?同じ理由で絶対来ません。そういうことです。

どちらかが大幅に譲歩して敵地に乗り込むか、あるいは相手が納得する法外な報酬を用意することです。普通なら、どっちもできませんが、長谷川陣営は後者を選んでビッグファイトを行いました。長谷川vsモンティエルをメインでラスベガス開催したら、悲しいほどしょぼい興行にしかなりません。血を流して、日本でやったから、あれだけ注目され、緊張感のあるビッグファイトになったのです。「昔の世界戦のようだ」と感慨に耽っていたオールドファンが多かったのには苦笑しましたが。

かつて、アブナル・マレスは長谷川の防衛戦の相手としてピックアップされましたが、条件が折り合わず流れました(当たり前です。普通の防衛相手と同じ条件でGBPの秘蔵っ子が日本に来るわけがありません)。これで「マレスは逃げた」となるわけです。

私は、井上尚弥は、間違いなく名刀だと思います。

しかし、今までこの〝推定〟名刀が斬ったのは、全盛期ですらPFPにお呼びじゃなかったオマール・ナルバエスだけです。

彼の相手で、日本人がとりわけ健闘しているように見えるのは、対戦相手が意地を見せたからだけじゃないでしょう。海外から呼んでる選手の品質が劣悪なのがその最大の理由です。

これは、最近の世界王者によく見られる傾向です。普通に考えたら、世界に出た方が苦戦するはずです。


【井上尚弥は「ジュニアフェザー」にも関心があるといいます。ロマゴン陥落のいま、軽量級で井上の射程距離にいる〝誰もが認める強い奴〟は全盛期のノニト・ドネアにボクシングのレッスンを施したキューバ人しかいません(フェザーまで上げたら別ですが)。
そして、彼は間違いなく日本に呼べます。実際に来ましたし。このマッチアップが実現したら、オッズは1−3レベルで、井上のキャリアで初めての不利でしょう。しかし、層の薄い軽量級でこのチャンスを逃したら、もうまともな相手はいません。=写真はドネアを翻弄したギレルモ・リゴンドー。「素晴らしいテクニック、しかし退屈すぎる〜ドネアがダウンを奪ったシーンでももはや両者の力量差は明らかで結果が目に見えてしまっていた〜」】

どんな名刀でも、ナマクラばっかり斬ってれば、当たり前の話、サビつきます。

井上の刃だって、まともな獲物を与えてあげないと、必ずサビつきます。

パッキャオが稀代の名刀たりえたのは、旬の時期に斬るに値するグレートを斬り倒しまくったからです。

誰に勝ったか。それが全てなのです。

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