Breez is Nice!

関西外では、BSフジでしか視聴出来なかったWBAジュニアフェザー級タイトルマッチ、久保隼vsダニエル・ローマン。

試合結果は確認しないで、録画放送で観戦しましたが、厳しい。厳しいです。

本当に、厳しい内容と、結果でした。

タイトルを奪ったネオマル・セルメニョ戦も、到底世界レベルと認められない内容でしたが、今回も酷い試合でした。4団体時代の今日は、こういう試合がこれからも、どんどん「世界戦」として行われていくのでしょう。久保には一片の責任もありませんが、おぞましい話です。

多くの批判、非難が戴冠の瞬間から、久保の耳にも届いているでしょうから、この悔しさをバネに頑張って欲しいところですが…。

ダニエル・ローマンは22勝2敗と戦績は立派ですが、内容的には今夕の試合同様、見るべきもののない凡庸なボクサーです。2敗のうち1敗は、4回戦時代とはいえ、岡田隆志に喫したもので、パワー、テクニック、スピード、全ての要素で世界基準に達していません。そんな選手が圧勝で王者になることが珍しくないのが、4団体がひしめき、王者が乱造される今の時代です。

さあ、来週は、いよいよ井上尚弥が全米デビューです。

WBCが命じた1週間前計量では、ローマン・ゴンザレスが119.8ポンド、シーサケット・ソールンビサイは119ポンド。この勝者との激突が内定のカルロス・クアドラスと、ファン・フランシスコ・エストラーダは共に119.9ポンドで、契約の121ポンドリミットを4人ともクリアしました。

ちなみに、WBO王者の井上は、この「121ポンド」契約には縛られていません。

最近は、中量級のスターが、わがまま放題の契約違反の体重で秤に乗ることが珍しくない中で、法令遵守の軽量級選手には、あらためて尊敬と称賛の気持ちです。



ラスベガス、米国がボクシングの本場とするなら、軽量級は全く無視された存在です。試合直前のリング誌で、「スーパーフライ」を伝えるのは、この小さなスペースのみ。ゴロフキンvsカネロには37ページもの特集が組まれているにもかかわらず、井上尚弥についてはマッチアップのみの表記にとどまる、わずか4行、最低限の扱いです。

そもそも、メキシコとプエルトリコ、米国、英国の超人気選手が絡まない、軽量級の特集は組まれません。

ロマゴン、シーサケット、クアドラス、エストラーダ、そして井上が揃い踏みする、このスーパーフライの祭典は、軽量級への造詣が深い日本のファンにはその価値が理解出来るものの、かの国では「マニアの中のマニアが注目する興行」でしかありません。

米国で、一番人気の中量級ですら、先日のコット戦で亀海喜寛が受け取ったのは19万ドル、約2000万円です。亀海のキャリアで、コットに次ぐビッグネームのロバート・ゲレーロ戦では7万5000ドル、約900万円だったことを考えると、ビッグマネー、「10万ドル稼いだら一流」と言われる米国では、間違いなく合格点なんですが…。

9月9日のスーパーフライ興行も、ただでさえ注目度の低い軽量級なのに、メイウェザーvsマクレガーと、ゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスに挟まれてしまって、厳しい結果は目に見えています。今回の結果で、報酬の源泉であるHBOの軽量級に対する評価が、ますます厳しくなるのは確実です。

西岡利晃のキャリア最大のビッグマッチ、ノニト・ドネア戦も、米国ではなく、日本でやっていたら10万ドル、約1000万円なんて、夢のない報酬ではありえませんでした。

そんなことを、こんな場所でいくら吠えても、世間では「ラスベガスが本場」「米国では報酬は桁違い」なんて勘違いが横行してるから、どうしようもないのですが。あのコットと戦った亀海がいくらもらったか、HBOの番組でコットvs亀海より下の番組に編成されている「スーパーフライ」で、亀海の倍以上の40万ドルの報酬を井上が受け取る背景にジャパンマネーがあるのは誰にでもわかっています。

だったら、もう無理矢理なことはやめましょう。「野球は米国」「サッカーは欧州」、でも軽量級ボクシングの本場は日本です。レオ・サンタクルスやアブナル・マレスといった絶対日本に呼べない、一握りの人気メキシカンや、米国に強固なファンベースを持つ英国、アイリッシュのスター選手は、軽量級の例外です。

パッキャオのように、最も人気のあるウェルター級まで怒涛の侵略をする気構えがあるなら別ですが、日本人の軽量級選手にとって米国は本場なんかではありえません。

西岡が、その身をもって良くも悪くも、しっかり現実を証明してくれました。

軽量級をしっかり評価できるファンの前で、妥当な報酬を受け取って、ボクシング再興に最短距離で貢献して欲しいものです。

この9月9日のスーパーフライみたいな興行は、本当は日本が、日本の関係者がやるべきことなのですが…。

さて、現地のオッズは、井上勝利が1/14(1.066倍)、アントニオ・ニエベスが10/1(10倍)。超の付く、圧倒的有利予想です。

とにかく、この数字通りの内容で、「マニアの中のマニア」の度肝を抜いて欲しいものです。

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

亀海喜寛が、カリフォルニア屈指の複合スポーツ施設の特設リングで「日本ボクシング史上最大の戦い」に敗れた日、世界中が注目したのはギャンブルとサーカスの街、ラスベガスで挙行された世紀の見世物でした。

フロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガー。

互いがリスクを負いながら、王座やプライドを賭けながら、専門的に磨き抜いた技術を交錯させるのがプロスポーツだとしたら、確かにこの二人が昨日見せたものはプロスポーツではありえませんでした。

しかし、昨日の二人はプロスポーツ選手ではありませんでしたが、紛う事なきプロフェッショナルでした。

In a city known for circuses and illusions, two men exchanged blows for less than 30 minutes. Nothing mattered; nothing was at stake.〜サーカスとイリュージョンの街で、二人の男が30分足らずの間、パンチを交換した。その試合には金以外の何の価値もなかった。二人は何のリスクも冒さなかった。

〜この見世物を、最も辛辣に批判したのはニューヨーク・タイムスでしたが、この二人は最初からアスリートとして最高技術の激突を見せようなんてことは、露ほども考えていなかったのは明らかです。

ニューヨーク・タイムスの記事は、少し論点がズレているように思えます。

「スポーツじゃない」という立場からの批判ならわかりますが、「観客席がフルハウスにならなかった」「グッズが売れ残っていた」…そんなやっかみは、「ラスベガスのスポーツブックで史上最高の掛け金が投じられた」「多額のPPV収入歩合で、報酬はメイウェザー200億円、マクレガー100億円を超える」という興行として収めた大成功を前にしては、虚しく響くだけです。

興行としては、誰が見ても歴史的な大成功でした。


【FLEECE OF THE CENTURY〜ニューヨーク・タイムスは「世紀の詐欺」と報じましたが、最初は「下劣な見世物」と思っていた私でも、全体を通して見ると実に上質な詐欺だったと思います。二人は、映画「スティング」のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのように、この壮大な詐欺を演じ切ったのです。And, when it was over, they hugged and laughed, a pair of business partners who had just pulled off the score of the century.(サーカスが終わると、まんまと世界を出し抜いた二人のペテン師は、笑って肩を抱き合った)なんて、この名画のラストシーンそのものでした。試合終了のゴングと同時に二人のボクサーが互いの健闘を讃え合う光景は感動的なものですが、この二人のハグを見た瞬間は「やられた!」って感じでしたね…。】

二人が演じたのはスポーツではなく、大見得を斬り合う歌舞伎じみたプロモーショナルツアーから始まった、大掛かりな見世物だったのです。

「ネバダ州が公認した純粋なボクシングの試合」と見てしまうと、「プロボクシングデビュー戦の相手に勝ってロッキー・マルシアノの49連勝無敗を更新したのは認められない」と憤慨してしまいますが、その角度からは見てはいけないイベントだったのです。

メイウェザーが「マクレガーは最高のダンスパートナーだった」と称賛したように、純粋なスポーツとしては見る事は出来ないこのイベントを「競技」に焦点を当てることなく、カラフルな「サーカス」に仕上げていったメイウェザーとマクレガーのダンスは、本当に素晴らしかったと思います。

もちろん、ボクシングという競技の健全な発展のためにはメイウェザーはゲンナディ・ゴロフキンとカネロ・アルバレスの勝者と戦うべきです。MMAに対するマクレガーの立場にも、同じ事が言えます。

メイウェザーが引退、マニー・パッキャオが衰退という二つの太陽が沈む時期に「ボクシング界を邪魔するようなことをするな」というオスカー・デラホーヤやボブ・アラムのような意見が多いのは事実ですが、今回は「ボクシングの試合」を装った大サーカスだったのですから、競技とは切り離して考えるべきです。

とはいえ、こんなサーカスが定期公演されるようでは困りものです。1回きりだから許されます。

今回、メイウェザーが「私にはパッキャオ戦で、ファンに対する負い目があった」と、この〝試合〟への動機付けを殊勝に語っていましたが、そんな優等生発言は誰も信用してくれません。

約25億円の税金を滞納し、米国国税庁IRSから「資産の差し押さえ」を通達されたことで、「アンドレ・ベルトが最後の相手だ。絶対にリングには戻らない」と宣誓していたメイウェザーが、金の工面に困って2年のブランクから復帰したのです。

2007年のリッキー・ハットン戦後に「リングに戻ることは永遠に無い」と涙まで流しましたが、やはり2年後にIRSから約7億円の税金滞納で資産差し押さえを迫られて、「(ファン・マヌエル・マルケス戦で受け取る)ファイトマネーで払うから、試合が終わるまで待ってくれ」と、今回と対戦相手が違うだけで、全く同じセリフを吐いてカムバック。

そして、度重なる税金滞納に懲りた彼が、今回稼いだ200億円以上の報酬を基に堅実な人生設計を描いて、残りの人生を地に足つけて生きて行く…なんてことがマネーに出来るはずがありません。

もちろん、また2年後に同じ事をやるとなると、二匹目のドジョウは今回よりもずっと小さなドジョウになるでしょうが、数十億円の滞納税金の支払いくらいは出来そうです。「ま、50億円くらいの税金滞納なら何とかなるわ」くらいに軽く考えていそうです。

さらに心配なのは、メイウェザーだけでなく他のボクサーやMMAファイターまでが、二匹目のドジョウすくいに迷走してしまう事です。


【「メイウェザーに反則攻撃を仕掛けて失格負けする気じゃないか」とも噂されていたマクレガーでしたが、10ラウンドまで立ち続けました。このアイリッシュの傑出したキャラクターが無ければ、このサーカスがここまで大きな成功を収める事はなかったでしょう。とはいえ、メイウェザーが「9.5ラウンド以内に試合が終わる」に賭けていたことが、試合後に判明しました。10ラウンド、彼には珍しく、焦って強打をつないだのは、そういうことだったのかと、尊敬も込めて呆れてしまいました。主審には9ラウンド1分30秒が過ぎるまで、ストップを待って欲しかったですね…。それにしても、フレディ・ローチも度々、パッキャオ勝利に賭けてたりしてましたが、関係者が賭けてもいいんですよね、米国って。しかし、何でもありですな。】

今回の大サーカスを巨大な成功に導いたのは、メイウェザーとマクレガーという稀代のキャラクターが噛み合ったが故ですが、二番煎じを試みる暗愚なボクサー、格闘家が現れないとは限りません。

サーカスはあの一夜限りにしていただいて、ボクシングもMMAも、競技としてよりレベルの高い試合をどんどん提供して、発展していってもらいたいものです。

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

337対152。

ミゲール・コットと亀海喜寛、二人が相手に着弾させたパンチの数です。パンチの数はもちろん、その質も大きく差をつけられ、錆び付いてもコットの凄みを見せつけられた一戦になってしまいました。

「犬のように追いかけて、ゴリラのように殴りまくる」。第1ラウンドは、その公約通り、上々のスタート。

「中盤KOもありうる」。WOWOW解説陣の言葉も、けして誇大に聞こえませんでした。

このまま押しまくって、コットを消耗させることができれば…。

しかし、亀海の攻撃は早くも2ラウンドで見切られてしまいます。亀海のコットに対する作戦は、プランAしかありません。相手は、あのコットです、当然です。

犬のように追いかけて、ゴリラのように殴るしか無いのです。亀海でなくとも、器用な戦い方なんてコットに対して出来るわけがありません。

2ラウンド以降は、手の内が読まれた攻撃は易々とかわされ、コットのバリエーションに富んだ攻撃に晒されてしまいます。ラウンドが進むにつれて消耗してきたのは亀海の方でした。

コットは、試合後に「前半で試合を楽に終わらせるつもりだったのに出来なかった?」と聞かれて、「一つのパターンで試合に臨むことはない。亀海は本当にタフで5〜6ラウンドでKO出来ないと切り替えた。」というように、プランB、C…を用意して、2ラウンド以降は見事な完封劇を見せました。

試合終了のゴングが鳴って、コーナーに帰るコットに、「ミゲール!」とTVでも聞こえる大きな声をかけて駆け寄った亀海。おそらく、憧れのアイドルに「俺を選んでくれてありがとう」と感謝を伝えたのでしょう。

亀海は泣いているようにも見えましたが、コットと12ラウンド戦い抜いた感動の涙だとしたら、もしかしたらグローブを吊るしてしまうのかもしれません。

確かに、亀海の今後のキャリアで、今日のコットを上回るほど、モチベーションの炎を燃やせる相手が出現してくれる可能性はかなり低いように思えます。

現状、コット以上の〝格〟となると、マニー・パッキャオ、(現役にカウントするとしたら)フロイド・メイウェザー、カネロ・アルバレスの3人だけしか見当たりません。

その決断は、亀海に委ねるしかありませんが、今日の試合で鋼鉄のハートはもちろん、ロバート・ゲレーロだけでなく、あのコットをも驚かせた世界トップレベルの鋼鉄のアゴも証明してくれました。

あの涙が、アイドルと戦えた充実と感動でこぼれたものでないのなら……

もし、あの涙が悔し涙であるのなら、またリングに上がって、鋼鉄のハートを見せて下さい。

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

9月16日にゲンナディ・ゴロフキンとカネロ・アルバレスがついに激突。ダニエル・ジェイコブス相手にキャリア最大の苦戦を強いられたゴロフキンに、ジュニアミドル級ではチャーロ兄弟との対戦を徹底的に回避、ミドル級では155ポンドのキャッチウェイトでしか戦ったことのない過保護のカネロの対決が「ミドル級最強決定戦」と呼べるかどうかはともかく、リング誌とESPNでPFP2位に付けるゴロフキンと、当代きっての人気者カネロの対決は見ものです。

さかのぼって9月9日には井上尚弥が、THE SUPERFLY興行でついに米国デビューを果たします。ローマン・ゴンザレスに土がついたことで、井上が PFP1位に挑むビッグファイトは夢散してしまいましたが、バンタム級進出も見据えてた夢列車はまだまだ突っ走ります。

そして、とりあえずは明日ですね。亀海喜寛があのミゲール・コットとタイトルマッチを争う、日本ボクシング史上最大の戦いのゴングが、もうあと約12時間で打ち鳴らされます。亀海が番狂わせを起こせば、次の試合もビッグネームと絡む可能性が濃厚です。「コットが簡単に勝利する」と予想しているメディアやファンに、一泡吹かせてやりましょう!

今回の報酬はどの程度になるのかわかりませんが、2014年に同じスタハブセンターで行われたロバート・ゲレーロvs亀海のファイトマネーが、100万ドル(約1億1000万円)、7万5000ドル(約850万円)でした。おそらく、この数字に少し色が付く感じでしょうか。

報酬というと、やはり明日行われるコナー・マクレガーvsフロイド・メイウェザーです。ボクシングの試合経験の無いド素人と、かつてのPFP1位とはいえ2年のブランクがある40歳が繰り広げる「世紀の大サーカス」。

メイウェザーの最低保障が1億ドル、マクレガーは3000万ドルですが、予想通りに膨らんだ興行規模によって、最終的にはメイウェザーが2億ドル(約220億円)、マクレガーも1億ドル(約110億円)を手にする模様です。

前座のリングに上がる、IBFジュニアライト級王者、ジャーボンタ・デービスは60万ドル(約6600万円)、挑戦者フランシスコ・フォンセラは3万5000ドル(約380万円)。デービスは体重超過でタイトルは空位に、デービスの報酬の数割がペナルティとして没収され、フォンセラに上乗せされます。

まあ、それにしてもメイウェザー、さすがマネーです。とはいえ、今回はマクレガーを誉めるべきでしょうね。オスカー・デラホーヤをはじめ、ボクシング関係者は「このスポーツに対する侮辱的行為だ」とメイウェザーを非難していますが、MMA界では「業界全体には大きなプラスは無い」という意見もある中で、「マクレガーよくやった」と釣り上げた魚の大きさを称賛する声が圧倒的です。


【WBCがメイウェザーに贈った「マネーベルト」。この茶番劇に唯一色めきだったボクシング関係者が、マウリシオ・スライマンWBC会長です。3360個のダイヤモンド、600個のサファイア、300個のエメラルドを、1.5kgの24金の下地に散りばめ、ベルト部分はイタリア製の緑色に染めた高級ワニ革で作られています。】

今回もWBCは、特別ベルトを誂えてメイウェザーに献上しました。「次の試合もWBCでよろしく」と媚を売っているのは明らかです。真面目に承認料を支払ってるボクサーからしたら、こんな高価なベルトを勝手に作られて、けして面白い話じゃないですね。WBCは、また倒産危機に瀕して、頭冷やしたほうがいいです。

それにしても〝陸のシーシェパード〟と揶揄される、悪名高いエコテロリスト団体PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)が「ワニ皮を使うのは残酷な動物虐待だ!」と、WBCに対して激しい非難声明を出したことには、笑っちゃいました。試合自体にはスポーツとしての価値はありませんが、試合に至るまでのプロモーション、PETAの登場までをひっくるめて、下品なサーカスとして見ると、これは十分面白いです。

こうなったら、試合後の会見で鯨肉パーティでも開いて、シーシェパードも呼んじゃいましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

ショッキングなニュースが飛び込んできました。

山中慎介をTKOして、新王者に就いたルイス・ネリが、VADA(ボランティア・アンチ・ドーピング協会)が行ったドーピング検査で陽性反応を示したというのです。

検出された違反薬物は、家畜の肉質を良くするジルバテコルで、脂肪を落とし筋肉を付ける効果がある薬物、筋肉増強剤の一つです。ネリ陣営は「故意ではない。食事で摂った牛肉の中に成分が含まれていたようだ」と主張していますが、ドーピングは故意かどうかの問題ではありません。

「故意じゃなかった」「違反物質だとは知らなかった」なんて言い訳は、ドーピング問題に関しては一切通じません。タイトル剥奪はもちろん、1年以上のライセンス停止など厳格なペナルティを速やかに課さなければなりません。


WBC-clean-boxing

【「YOU USE YOU LOSE」(ドーピングをした時点で、あなたは敗者でしかない)。ドーピング検査をVADAに委託してWBCは「クリーン・ボクシング・プログラム」を展開しています。今回の事件は、このプログラムが正常に作動するのかどうかのリトマス紙です。】

今月、ロンドンで開催された世界陸上100mで優勝したジャスティン・ガトリンは、かつてドーピング検査で陽性反応を示したことで4年間(当初は8年間!)の出場停止処分を受け、当時持っていた9秒77の世界タイ記録も抹消されました。ドーピングは、ファンとライバルを欺く、スポーツの世界で最も侮蔑すべき犯罪行為ですから当然の処分です。

ところが、ボクシングの世界は、この問題でも狂っています。ビッグファイトではシェーン・モズリーが、オスカー・デラホーヤとのリマッチで、ステロイドを使用してリングに上がったことを認めましたが、この試合はモズリー勝利のまま抹消されていません。

粟生隆寛に圧勝したレイムンド・ベルトランは、体重超過だけでなく、血液検査でスタノロゾールが検出。報酬の30%の罰金、試合は無効となりましたが、出場停止は、わずか9ヶ月、ありえない大甘処分でした。

今年になって、2008年北京五輪の陸上男子400mリレーで見事に銅メダルを獲得した日本チームは、ジャマイカチームのドーピングにより銀メダルに繰上げられました。しかし、アンカーを走った朝原宣治は「あのときの感動はそのままの形(3位銅メダル)で残っている。今更、繰上げで評価されても違和感しかない。悲しい」とコメントしています。

タイトルを失ったデラホーヤ、粟生も、そして山中も同じ気持ちでしょう。

今更、どんな処罰がくだされても、リングの上で敗れた事実は変わりません。

どうして、正々堂々戦ってくれなかったのか…。そこを踏み外してしまうなら、もはやそれはスポーツとは呼べません。

一方で、スポーツに限らず、欧米には「セカンドチャンスは与えるべき」という考え方が、根強くあります。多くのメジャースポーツを巻き込んだ、世界最大のドーピング事件「バルコ・スキャンダル」の張本人、ビクター・コンテは司法取引がなされたという背景があったにせよ、あろうことかわずか懲役4ヶ月で放免されました。そして、ノニト・ドネアら有名選手の栄養アドバイザーを務めています。

日本なら事実上の永久追放、有名選手はそんな栄養アドバイザーには近寄りもしないでしょう。

もちろん、日本でもセカンドチャンスは与えなければなりません。例えば、永久追放の感のある清原和博にも、しかるべき禊が済めば、それは当然与えられるべきです。

そして、ボクシングにおけるドーピングは、陸上競技や野球と違い、ファンとライバルを欺く卑怯な犯罪行為というだけでは済まない、ということも忘れてはなりません。

この過酷で危険なスポーツにおけるドーピングは、相手に致命的なダメージを不当に与える、重大で凶悪な犯罪です。それなのに、体重超過に筋肉増強した卑劣なメキシコ人に傷つけられた粟生は泣き寝入りするしかないなんて、正気の沙汰ではありません、そんなのスポーツではありません。

ドーピング同様、アントニオ・マルガリートらグローブに異物を混入させる危険な行為も、重大な犯罪です。あんな危険で卑劣なことをした選手でも、その出場停止処分はわずか1年でした。しかも、その1年の処分明けにはマニー・パッキャオとのメガファイトが用意されるという、セカンドチャンスにしては、あまりにも不当に華美すぎる舞台が与えられるのです。

IMG_0423
【マルガリートは、乾くと固まる石膏のような物質をバンテージに染み込ませていました。「全てはトレーナーが仕込んだこと。私は何も知らなかった」と弁明したマルガリートでしたが、「セカンドチャンスは与えるべき」と擁護したパッキャオでも「バンテージが硬く固まる感触がわからないボクサーは絶対にいない」。ミゲール・コットとの一戦でも、マルガリートはハンドラップしていたと考えるのが普通ですが、この試合も無効試合にはなっていません。】

今回のネリの件も、愚直に誠実にリングで戦った山中を、卑劣な手段で危険に晒し、タイトルを掠め取ったのですから、罰金、試合の無効、長期の出場停止、厳重な処罰が絶対に必要です。

もし、今回も「勝ちは勝ち」という、大甘の処分で試合が無効にならないとしたら、このスポーツはやはり死んでいます。

世界的な統括団体が無くて、階級は17まで膨れ上がり、我田引水しか考えない承認団体が大手だけで4つも乱立して、同じ階級で王者を増殖させて、インチキランキングを堂々と発表する…私が嘆いてきたそんな問題はドーピングに比べたら、もうどうでもいいほど瑣末で、軽微なものです。

本来なら、競技の性質上、ボクシングはドーピングに最も厳しいスポーツであるべきなのに、あろうことか陸上競技や野球よりもはるかに緩いのです。

バリー・ボンズや、マーク・マグワイア、サミー・ソーサは、あれだけの実績を残しても殿堂入りは阻まれています。しかし、先日引退発表したモズリーは、資格発生の5年後に一発殿堂入りを果たすことが確実視されています。

陽性反応を示したボクサーには、陸上選手が驚くほどの厳罰が下されるべきです。ドーピングは絶対に、絶対に、絶対に許してはいけません。

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ