Breez is Nice!

ゲンナディ・ゴロフキン、カネロ・アルバレス、共にリミット一杯の160ポンドで前日計量をクリア。

試合開始のゴングまで、次に注目すべきは、当日計量です。今回、賭けられているWBAスーパー、WBC、IBF、IBO(ゴロフキン)と、リング誌(カネロ)の6つの団体とメディアで、当日計量で規定(前日から10ポンド以上の増量を禁止)を設けているのはIBFだけです。

GGGはいつものように10ポンドラインのギリギリまで戻して来るでしょう。問題は、カネロです。

GGGを避け続けてきたカネロ陣営が、この待望の一戦に応じた大きな理由の一つが、3月のダニエル・ジェイコブス戦で35歳のカザフスタン人に明らかな劣化の兆候と、弱点を見出したからです。

特に、当日計量で180ポンド(81.6kg)を超えてリングに上がったジェイコブスに、体格負けしたGGGの姿は印象的でした。ミドル級の戦いですが、現実のリング上で繰り広げられていたのは、スーパーミドル級のGGGと、クルーザー級のジェイコブスというハンディキャップマッチでした。

18連続KO防衛の世界記録更新が期待されたGGGでも、〝仮想・階級の壁〟には阻まれてしまった格好です。

この試合でもIBFタイトルが賭けられていましたが、ジェイコブスは意図的に当日計量をパスします。この時点でIBFのベルトはGGG勝利なら防衛、ジェイコブス勝利なら空位となりました。

さて、カネロもIBFタイトルを無視して、このジェイコブス戦法を使うかどうか、です。


二人は、リミット一杯(160ポンド)で計量を終えましたが、身長では179㎝のGGGが4㎝ライバルを上回る一方、骨格、体格はカネロが勝っていました。両者の筋肉のライン、肌の枯れと絞り具合からも、カネロの方が減量幅が大きかったように思えます。

カネロもアルファベットタイトルには全く興味は無いでしょうから、ジェイコブス戦法を選ぶかどうかは、明日の戦術プランのよるでしょう。ミドル級にめぼしい相手がいなくなっても、この階級にこだわったGGG陣営は、階級の壁を恐れているから、とも言われ続けていました。

GGGでなくても、明らかに体格の違う相手と戦うストレスは相当なものです。先週、ローマン・ゴンザレスをKOしたシーサケット・ソールンビサイも、リング上では3階級近く上のボクサーに見えました。

相手の嫌がることをする、それを優先するなら、世界で最も保護されてきたメキシカンは、10ポンド以上増量するアドバンテージを選ぶでしょう。

しかし、自分のベストを発揮することを選ぶなら、スピードが殺される増量は避けるはずです。

階級制の根本にあるのは公平・平等ですが、ボクサーの健康を最優先して生まれた前日計量が、胃袋が強く増量に適応できる体質のボクサーを有利にし、もう一方のボクサーの健康を危険に晒すという皮肉な結果をもたらしている現状は、もっと憂慮、避難されるべきです。

ボクシングは胃袋の強さや、リバウンドを争う競技ではありません。カネロには、10ポンド以内の増量に抑えてリングインして欲しいところです。

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毎週末に注目ファイトが用意され、ボクシングファンの夏はまだまだ終わりません。

明後日は今年最大のメガファイト、ゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスが、ついに激突します。

セルヒオ・マルチネスからリネラル王者の座を奪ったミゲール・コットに勝ったカネロが、リング誌王座も保持、アルファベットタイトルを丹念にコレクションしたゴロフキンよりも価値のあるベルトを巻いているとはいえ、どちらが世界ミドル級チャンピオンで、どちらが挑戦者なのかについて、誰に聞いても意見が分かれることは無いでしょう。

オッズは、GGG勝利が4/6(1.66倍)、カネロ勝利が5/4(2.25倍)と試合が近づくにつれ接近していますが、それでもミドル級で18度も防衛を重ねているカザフスタンの英雄に、本当のミドル級(160ポンド)で戦った経験が一度も無いメキシコの人気者が挑む、という構図は揺るぎません。

とはいえ、このメガファイト、カネロが圧倒的なAサイドであることも揺るぎありません。両者の報酬は共に1500万ドルで同じですが、PPV歩合の取り分はカネロのLION’s Share、現代最高の人気者が殆どを持って行きます。

さらに、カネロが負けた場合は、再戦要求の権利がありますが、GGGが負けても再戦条項は付帯しない契約です。つまり、カネロにだけ勝ち逃げが用意されているのです。

仕方ありません。人気商売です。PPVで100万世帯を売りあげるカネロに対して、15万世帯前後で低空飛行のカザフスタン人はPPVの分け前について何も言えません。

それでも、GGGはついにメガファイトの舞台に辿り着きました。


「A TOUR DE FORCE IN ANY LANGUAGE」(ファンベースを持たないために、世界中を旅してKOを量産するゴロフキンは、どこにだって行くし、そこで相手をぶっ倒す)。

五輪メダリストの高等技術と、危険極まりない左右のパンチを併せ持つGGGはミドル級のビッグネームから避けられ続けました。

セルヒオ・マルチネスは「ゴロフキンは強いよ。強いけど人気が無い。リスクとリターンが見合わない相手だ。コット戦を優先させることを恥ずかしいとは思わない」(マネージャーのルー・ディベラ)と明白に避け、そのマルチネスに勝ったコットはゴロフキンを完全に無視。

そのコットに勝ったカネロも「誰からも逃げない!」と威勢がいいのは口先だけで、対戦は具体的な進展を見せません。

実績のあるマルチネスや、人気のあるコット、カネロにとっては、逃げるというよりも「こっちの人気に便乗するな」くらいの気持ちだったのかもしれません。

いずれにしても、多くのファン、メディアが「階級最強」と評価するゴロフキンが、リネラル王者になれないというネジレの時間が続きます。

リング誌も、誌面で批判するだけじゃなく、160ポンドで戦わないカネロからベルトを剥奪する超法規処置を下しても良かったと思います。

しかし、何はともあれ、ついに実現しました。

人気だけなら現代最強のカネロが、ミドル級統一に動き出したことで、この人気階級はもちろん、ウェルター級やジュニアミドル級など、やはり層の厚い周辺階級の実力者たちも「GGGとカネロの勝者と戦いたい」と前のめりになっています。

カネロと戦いたいというのはもちろん、GGGがカネロに勝てば、この不遇のカザフスタン人も、ようやく陽の目を見ることが出来ます。

現在、ESPNでもリング誌でもPFP2位につけているGGGと、6位と7位のカネロの勝負の結果は、1位のアンドレ・ウォードが「あと1戦で引退」と言われている中では、PFP1位に直結します。

ゴロフキンがカネロに勝てば、強くて危険なだけだったボクサーが、戦う価値が十分にある金看板を背負うことになるのです。

やはり、9月16日にウィリー・モンローJrと防衛戦を行うWBO王者、ビリー・ジョー・サンダースも、これまでゴロフキンとの対戦を回避しまくっていたのに「勝者と戦う。逃げていたんじゃ無い、このタイミングを待っていたんだ」と、強気の詭弁を語っています。

そして、それは我らが村田諒太も同じです。「アッサン・エンダムをしっかり倒して、勝者と戦いたい」。

また、「ゴロフキンを倒すためにミドル級に上がった」というジャーマル・チャーロ、ウクライナの凶弾セルゲイ・デレビャンチェンコも控えていますが、村田がエンダムに勝って王者のピースを拾いあげれば、 GGGとカネロの勝者に対峙する、サンダースに次ぐ候補に浮上します。

もちろん、サンダースがモンローに勝つのが前提ですから、もし負ければ、村田が一番手でしょう。

日本ボクシング界が、いまだ垣間見ることも無かった、怒涛の栄光へ。

10月22日、エンダムに勝てば、次はメガファイトという扉が、あっけなく開くかもしれません。

来年、ラスベガスの新しい中心地、T-モバイルアリーナのリングに村田諒太が上がっているかもしれないのです。

その、対角線のコーナーに立っているのはカザフスタン人か、メキシコ人か。

いやぁ、ゴロフキンvsカネロだけでも心躍るメガファイトだというのに、ここに日本人が絡むなんて、もう嬉しくて、嬉しくて、クラクラしてしまいます。

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いよいよ今週末、9月16日にカネロ・アルバレスとゲンナディ・ゴロフキンが雌雄を決します。

しかし、カネロがゴロフキンに挑戦する図式なのに、どうしてカネロが先に来るのでしょうか?カネロがAサイドだからというのが理由でしょうけど、釈然としません。

なにはともあれ、リング誌王者のカネロと、WBAスーパー、WBC、IBF、IBOのアルファベット王者のゴロフキンが5つのベルトを賭けて戦います。もしかしたら、WBCのメキシコベルトもお目見えするかもしれませんから、6つのベルトが賭けられる可能性もあります。


WBCは性懲りも無く、また「メキシコベルト」を作成しました。画像上がカネロvsチャベス戦のために作ったものの、カネロは「汚らわしいWBCベルトをリングにあげるのは許さない」と激昂、お蔵入りとなったメキシコベルト。

画像下は、WBCが必死の土下座外交でカネロのご機嫌とりで作った9月16日バージョンのメキシコベルト、腐臭漂うWBCはカネロに許してもらえるのでしょうか?当日、リング上にこのベルトが上がれば、許しを得たことになります。

世界ミドル級には、もう一つのピースがあります。ビリー・ジョー・サンダースが腰に巻くWBOベルトです。サンダースは、同じく9月16日、エリザベス女王五輪公園内にあるカッパーボックスアリーナで、ウィリー・モンロー・ジュニアの挑戦を受けます。

3−1のオッズの通りにサンダースが勝てば、カネロと GGGの勝者との対決を希望しています。

また、アッサン・エンダムがレギュラーのWBAタイトルを持ってはいますが、こちらはスーパーの下の「second title」扱いですので、カネロvsGGGの勝者と、サンダースが戦って最後に勝ったボクサーが、Undisputed Middle weight Champion of the World、議論する余地のない世界ミドル級王者となります。

もちろん、存在感の薄いWBAレギュラーとはいえ、世界王者のピースに変わりはありません。10月22日、村田諒太がエンダムとの再戦で奪取を目指すこのピースは、ミドル級統一戦線への参戦パスポートです。

GGG、カネロ、サンダースが揃い踏みする9月16日で、ミドル級の勢力図が大きく変わる可能性がありますが、とりあえず現在のマップを広げてみましょう。

ESPNのミドル級ランキングでは、1位ゴロフキン、2位はカネロ、以下、ダニエル・ジェイコブス、デビッド・レミュー、ビリー・ジョー・サンダース、セルゲイ・デレビャンチェンコ、アンディ・リー、ジャーマル・チャーロ、村田、エンダムと続きます。

直接対決で勝ったエンダムが10位、負けた村田が9位というのは、世界があの試合をどう判定したかという証左ですね。

そして、そのタイトルマッチを戦った村田とエンダムを差し置いて、8位に付けているのがミドル級ではテストマッチ1試合しか経験していないジャーマル。このランキングから、このスピードとパワーを高次元で結晶させた黒人アスリートの評価が伺えます。WBCの指名挑戦権を獲得していますが、ゴロフキンサイドも「カネロに勝ったら、次はジャーマルとは限らない」と二の足を踏んで、早くも敬遠しています。

ジュニアミドル級時代にチャーロ兄弟をアレルギー症状のように避け続けたカネロにも、「WBCに険悪な態度を取る本当の理由はジャーマルが怖いから」という意地悪な意見も少なくありません。


【リング誌11月号ではカネロvsGGGを37ページにわたって大特集。「アマチュア実績がほぼゼロのカネロと、五輪銀のアマエリートのGGG。メキシカンであるがゆえに温室栽培のカネロと、ファンベースを待たないがゆえに故郷を離れてドイツやパナマ、モナコ、英国などの国々を流浪、米国上陸後も西海岸と東海岸を行き来しているGGG。ボクシングマジョリティ、メキシカンであるがゆえにスペイン語しか話そうとしないカネロと、ロシア語、ドイツ語、英語を流暢に操るGGG。二人の間に共通点と呼べるものは、職業がプロボクサーという以外、一切無いのだ」。】

村田のプロ13戦を下回る、わずか11戦(全勝9KO)で6位にランクされているデレビャンチェンコも、この階級の台風の目です。豊富なアマチュア経験を持ちながらビッグタイトルには無縁。プロ転向後は、元王者サム・ソリマン、タフで知られるトルエノ・ジョンソンを一蹴、アマエリートにもかかわらず、厳しいマッチメイクをことごとくクリアしてきました。

経済大国日本の金メダリスト、文字どおり金看板を背負って保護された線路を走ってきた村田とは、180度対照的なウクライナ人なのです。

さらに、ウェルター級最強の呼び声高いエロール・スペンスJr.も「カネロとGGGの勝者と戦いたい」とブチあげるなど、さすがミドル級、カラフルなタレントには事欠きません。

10月22日、村田は、エンダムを倒した瞬間から、ライバルに事欠かない、極めて豊饒で荒れ狂う海に、その船を漕ぎ出すことになります。

メガファイトでの勝利を重ねた先には、目的の港があります。これは、間違いなく日本ボクシング史上最大の挑戦です。

エンダムから奪い取るのは、WBAレギュラーという、か細く頼りないワラシベです。そこから、ミドル級王座のピースを全て集めていくのです。途轍もなく過酷な大航海です。

鉄壁のガードと、階級最強の右、五輪金の洗練を感じさせない、攻防分離のスタイルは不器用にも見えますが、対戦相手はやりにくいでしょう。村田は、ミドル級のエデル・ジョフレです。

メイウェザー引退、パッキャオの黄昏で、最も絢爛豪華であるはずのウェルター級が色褪せている現状、ミドル級が最も熱いクラスと言い切って差し支えないでしょう。この統一戦線を生き残れば、ミリオネア(100万ドルファイター)どころか、ビリオネア(1000万ドルファイター)の仲間入りは確実です。

そして、その激しく、過酷な戦いの果てに、ビリオネアの港に接岸するのは、村田諒太です。

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BOXING NEWS 24が「もしローマン・ゴンザレスという名前がなければミスマッチだったといえる内容だった」と報じたように、ロマゴンにとって115ポンドは重すぎました。

シーサケット・ソールンビサイは確かに強かった、認めざるをえません。八重樫東にノックアウトされたデビュー戦はもちろん、カルロス・クアドラスに負傷判定で敗れた、あのときとは別人です。HBOの解説席で「マニー・パッキャオの再来かもしれない」と騒いでいたのは、階級の壁にぶち当たったロマゴンを圧倒したに過ぎない30歳のタイ人には、明らかな過大評価ですが。

リング誌も、He should be considered one of the best pound-for-pound boxers on the planet.(シーサケットは、PFPトップ10ボクサーとして考えるべき存在かもしれない)と評価していますが、ジュニアバンタムのロマゴンがフライ級までと同じボクサーでないことは誰の目にも明らかです。

それにしても、今回のトリプルヘッダーは非常に面白い内容でした。

ファン・エストラーダvsクアドラスは、ロマゴンを追い込んだ強豪同士が、そのロマゴンへの再戦の権利を争うエリミネーション・バウト。互いの持ち味を存分に発揮しあった36分間でした。

残念だったのは、マイケル・バッファーが採点を読み間違えたことです。糠喜びさせられたクアドラスが可哀想でした。114−113、3者ともに1点差の、ユナニマスと呼ぶにはあまりにも僅差のスコアカード、10ラウンドのダウンが勝敗を決した形となりました。

今回、パンチ統計では、的中率で偶然の一致がありました。ロマゴンvsシーサケットは共に27%、エストラーダvsクアドラスはやはり共に29%。

シーサケットはロマゴンの212発に対して291発を放っての27%ですから、的中率は同じでも着弾は80発(ロマゴン58発)で、パワーショットでも上回りました。4ラウンドKOが納得出来る統計数字です。

一方で、エストラーダは773発中221発を着弾させての29%、クアドラスは886発中260発を命中させての29%、こちらはクアドラスが手数で上回りました。結果は、この数字を反映しませんでしたが、(見た目の)クリーンヒット、ダメージパンチで上回ったエストラーダ勝利もまた、納得出来るものでした。


【トリプルヘッダー2試合は、パンチスタッツで両者が全く同じ着弾率をマークしました。井上vsニエベスのスタッツは言わずもがな、わざわざ取り上げる意味はありません。】

1週間後にゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスのビッグファイトを控え、HBOも「PPVを買って」と、選手コールのたびに宣伝文句を挟むのは耳障りでしたが、仕方がないところですね、ビジネスです。

さて、井上尚弥です。

「すっきりしない勝ち方だった。勝つ気がない相手だと、試合が枯れてしまう。白熱した試合がしたかった」。

まあ、その通りです。ガードを固めて、逃げるだけの相手を綺麗に倒すのは至難の技です。

それでも、米国初見参、披露宴としては合格です。今日の3試合で、シーサケットと井上がその強さを、見せつけました。この結果を受けて「SUPERFLY2は、シーサケットvs井上で」というマニアのリクエストも多いようですが、ロマゴン陥落はSUPERFLY2に暗雲を垂れ込めさせてもいます。

メキシコの人気者、エストラーダと、軽量級に一時代を築いたロマゴンの激突が期待されていただけに、けして人気者と言えないシーサケットと、マニアの星、井上の興行にHBOがどこまで予算を割くか、未知数です。今回の視聴者数が伸び悩んでいると、さらに心配な事態になりそうです。

井上サイドも、今回並みの20万ドルレベルの報酬でも、次のオファーを受けるのか、難しい決断です。

井上の描くアメリカンドリームの着地点が、どこにあるのかにもよります。バンタムやジュニアフェザーまでしか視野に入れていないとしたら、よほどのビッグネームに恵まれない限り、100万ドルファイターもおぼつかないでしょう。

現実には、ジュニアフェザーまで見渡しても、そんなビッグネームは見当たりません。フェザーまで見上げて、レオ・サンタクルス、カール・フランプトン、アブナル・マレスと、ようやく100万ドルファイト経験者が現れます。

リング上で、アメリカンドリームを具現化したアジア人は、歴史上たった一人しかいません。

熱狂的な井上信者でも「そこまでは期待してない」と言うでしょうし、ここでその足跡と井上を重ね合わせることは、冗談が過ぎると失笑を買われるのが関の山ですが、あえてその偉大過ぎる名前と並べます。

マニー・パッキャオ。

井上よりも1歳若い23歳で米国初上陸。オスカー・デラホーヤがハビエル・カスティリェホに史上3人目の5階級制覇を賭けて挑んだメガファイトのセミファイナルで、当時ジュニアフェザー最強と目され、フェザー級の覇者マルコ・アントニオ・バレラに勝てる可能性があるとまで評価されていたレーノホロノ・レドワバを圧倒、6回KOで屠ります。

この時、MGMグランドのスポーツ&カジノでは「あまりのミスマッチ」とオッズが立たない異常事態。パッキャオが手にした報酬はわずか4万ドルでした。

そのパッキャオ、彼は何が何でもアメリカを目指していたわけではありません。

10万ドルのファイトマネーも夢ではない、アジア人ボクサーの誰もが憧れる日本で「非常に危険な選手」と認知されていたパッキャオは我が国への門戸が閉ざされていましたから、もはや生きる場所は米国しかなかったのです。

もし、日本で受け入れられて、ジョー小泉に嫌われなければ「マニー小泉」として日本のリングに上がっていたでしょう。しかし、日本には拒絶されてしまうのです。

その時は不運としか思えなかった日本に拒絶されたことが、アジアのスポーツ史上を揺るがし、世界中のボクシングファンにとんでもない幸運と、愉悦の時間をもたらすことになるとは、パッキャオ本人はもちろん、誰にも想像すら出来ませんでした。

そして、日本が拒んだフィリピン人を、ボクシングの神様は、とことん寵愛するのです。

パッキャオが鮮烈にジュニアフェザー最強をぶっ倒した後のメインイベントで、デラホーヤは退屈な試合でブーイングを浴び、実況席では「何という名前だっけ?あのアジア人の試合こそが今夜のメインディッシュだった」とコメント、軽量級のキープレーヤーとなりました。


【早朝からいくつもの建設現場で重労働をしたあとジムでボクシングの練習に励む…マニー・パッキャオのような環境は日本にはありえません。しかし、栄光への渇望でもフィリピン人に負けてはなりません。】

現在、井上は当時のパッキャオとほぼ同じ年齢ですが、米国に与えた衝撃には大きな差があります。

井上が勝っているのは、リング誌のPFPで10位(4位ロマゴン惨敗でランクアウト、繰上げ9位になる見込み)、パッキャオは圏外だったことくらいです。

そして、これが一番大切な要素ですが、パッキャオの時代にはジュニアフェザー、フェザーに、サンタクルスやマレスとは次元の違うメキシコが輩出した歴史的なグレートが3人も揃っていたのです。これほどの僥倖、運としか言いようがありません。

2003年、パッキャオ25歳。「金に目が眩んだフィリピン人が公開処刑される」と冷ややかな目で見られながら、PFP3位のバレラが持つリング誌フェザー級タイトルに挑みます。

このアラモドームの決闘で、HBOのメインを張り、100万ドルファイターの仲間入り。そして、メキシコの3強が核をなして繰り広げていたはずのフェザー級ウォーズの主役に、一気に躍り出たのです。

本気でアメリカンドリームを掴むなら、急がなくてはなりません。

パッキャオ同様、メキシコ人でもプエルトリカンでもない井上は、急がなければなりません。

サンタクルスらが井上に興味を示しても、屈辱的な報酬の分配を要求してくるでしょう。井上は初めてBサイド、本物のアウエーを経験することになります。しかし、そこで勝たなければ米国は認めてくれません。

今日の井上は素晴らしかった。そのことに、間違いありません。

しかし、今日の井上はご馳走を用意してくれた米国に招かれた、ゲストに過ぎません。

これからやらねばならないことは、招待状を受け取ることではありません。

道場破りです。

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115ポンドに上げた2試合では平凡なファイターになってしまったローマン・ゴンザレス。

シーサケット・ソールンビサイとの初戦は、勝利を盗まれたと言っても良い内容でしたが、タイ人の体格を持て余し、階級の壁にもがいているのは明らかでした。

今回は、ロマゴン復権のために、異例の7日前計量で121ポンドのリミットを課すなど、階級の壁への対策、小細工もリング外では仕込まれていたのですが…。

試合開始からバッティングを気にして慎重に距離を取るロマゴン、しかし前回苦戦したのはバッティングが最大の原因ではありません。階級の壁です。

「121ポンド」の縛りも虚しく、リングに上がったシーサケットはこの日もロマゴンよりひと回り大きく見えました。

ジリジリと距離を詰めて、クロスレンジでのパンチ交換で優位に立って、詰将棋に持ち込むのがニカラグアが生んだ最高傑作の勝利の方程式でした。フライ級までは、後ろに下がる時間は非常に短かったロマゴンでしたが、今日はバックペダルを踏み続け、バッティングを警戒したとはいえ、自分の距離、クロスレンジからは程遠い戦いになってしまいました。

そして、その距離は、体格で上回り、射程距離でも優位に立つタイ人にとっては、まさにオーダーメイドの空間でした。


【完全にノックアウトされてキャンバスに堕ちたロマゴン。階級の壁に苦しんでいたとはいえ、かつてのPFP1位が痛烈に倒されたシーンは、衝撃的でした。まさかの結末に、恋人のソフィアさんが友人と手を握って、観客席から走り去ったシーンは、一見コミカルにも映りましたが、勝利を信じきっていたロマゴンが崩れ落ちる姿にパニックになり、行くあてもなく席を離れてしまったのでしょう。リング上で横たわるロマゴン以上に、悲痛さが伝わりました。ボクシングは、本当に残酷なスポーツです。】

ソールンビサイは「今回は4ヶ月も準備期間があった。2ヶ月しかなかった前回でも、体力では勝っているという手ごたえがあった。今日は間違いなくKO出来ると確信していた」と、衝撃的なKOにも落ち着いてコメントしていました。

もしかしたら、ロマゴン側は「前回苦戦したのはバッティングだけが原因」とでも思ってたかのような、無策な戦いぶりに見えました。もちろん、結果論です。私もロマゴンの僅差判定勝ちを予想していましたし。

「全力でパンチを交換して、彼の方が少しだけ強かった。チャンピオンを祝福したい」と語ったロマゴンは階級の壁を越えるためのモデルチェンジが出来きませんでした。

裏を返すと、スタイルを変えずに、強豪相手に3階級も制覇したのです。彼のスタイルがあまりにも完成していたが故に、モデルチェンジの必要がなかったとも言えるかもしれません。

K2プロモーションのトム・ラフラーは「相性が最悪の相手だった。それでもチョコラティテは、今なお115ポンドでソールンビサイを除けば最強だ」と意地を張りましたが、その言葉は虚しく響くだけです。

もちろん、シーサケットは強い、強いです。体格とパワーでロマゴンを圧倒し、スピードでも互角以上に渡り合いました。

SUPERFLY2は、シーサケットとファン・エストラーダの激突になる見通しですが、タイ人有利は揺るぎません。カルロス・クアドラスに負けたときから、相当な戦力アップを果たしているシーサケットは今や、井上と並ぶ階級最強候補です。

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