337対152。

ミゲール・コットと亀海喜寛、二人が相手に着弾させたパンチの数です。パンチの数はもちろん、その質も大きく差をつけられ、錆び付いてもコットの凄みを見せつけられた一戦になってしまいました。

「犬のように追いかけて、ゴリラのように殴りまくる」。第1ラウンドは、その公約通り、上々のスタート。

「中盤KOもありうる」。WOWOW解説陣の言葉も、けして誇大に聞こえませんでした。

このまま押しまくって、コットを消耗させることができれば…。

しかし、亀海の攻撃は早くも2ラウンドで見切られてしまいます。亀海のコットに対する作戦は、プランAしかありません。相手は、あのコットです、当然です。

犬のように追いかけて、ゴリラのように殴るしか無いのです。亀海でなくとも、器用な戦い方なんてコットに対して出来るわけがありません。

2ラウンド以降は、手の内が読まれた攻撃は易々とかわされ、コットのバリエーションに富んだ攻撃に晒されてしまいます。ラウンドが進むにつれて消耗してきたのは亀海の方でした。

コットは、試合後に「前半で試合を楽に終わらせるつもりだったのに出来なかった?」と聞かれて、「一つのパターンで試合に臨むことはない。亀海は本当にタフで5〜6ラウンドでKO出来ないと切り替えた。」というように、プランB、C…を用意して、2ラウンド以降は見事な完封劇を見せました。

試合終了のゴングが鳴って、コーナーに帰るコットに、「ミゲール!」とTVでも聞こえる大きな声をかけて駆け寄った亀海。おそらく、憧れのアイドルに「俺を選んでくれてありがとう」と感謝を伝えたのでしょう。

亀海は泣いているようにも見えましたが、コットと12ラウンド戦い抜いた感動の涙だとしたら、もしかしたらグローブを吊るしてしまうのかもしれません。

確かに、亀海の今後のキャリアで、今日のコットを上回るほど、モチベーションの炎を燃やせる相手が出現してくれる可能性はかなり低いように思えます。

現状、コット以上の〝格〟となると、マニー・パッキャオ、(現役にカウントするとしたら)フロイド・メイウェザー、カネロ・アルバレスの3人だけしか見当たりません。

その決断は、亀海に委ねるしかありませんが、今日の試合で鋼鉄のハートはもちろん、ロバート・ゲレーロだけでなく、あのコットをも驚かせた世界トップレベルの鋼鉄のアゴも証明してくれました。

あの涙が、アイドルと戦えた充実と感動でこぼれたものでないのなら……

もし、あの涙が悔し涙であるのなら、またリングに上がって、鋼鉄のハートを見せて下さい。