カテゴリ: 減量とは何なのか?

DANNY O’CONNOR HOSPITALIZED WITH DEHYDRATION, FIGHT WITH JOSE RAMIREZ CALLED OFF. 
WBCジュニアウェルター級王者ホセ・ラミレスの初防衛戦は、挑戦者ダニー・オコナーが脱水症状で入院したことで中止になった。〜7月7日リング誌電子版

健康回復の時間が長く与えられる前日計量は、ボクサーの健康・安全を目的として当日計量に代わって導入されたシステムでした。

しかし、その目的は完全に破綻していると言って良いでしょう。 

健康回復の時間が長いことは、多くのボクサーに当日計量では考えられなより過酷な減量に利用されてしまいます。 

日本時間の今日行われる予定だった世界戦の前日計量。王者ラミレスは139.4ポンドでクリアしましたが、挑戦者オコナーは極度の脱水症状で体調が悪化、病院に運び込まれて治療に当たりましたが「緊急入院の必要がある。ボクシングの試合なんて出来る状態じゃない」という医師の強い指示に従いました。

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140ポンドのリミットをクリアしたラミレスでしたが、対戦相手は秤に乗ることなく、計量場に姿すら現しませんでした。あまりにも虚しい計量シーンです。


木曜夜の最後の記者会見では血色も良く、健康状態に問題があるようには見えなかったオコナーですが、金曜朝の計量時に体調は一変します。

「水抜きをしてサウナにこもったがあと2パウンドがどうしても落ちなかった」。(オコナーをプロモートするホセ・デガルディア)

リングに上がったかどうかの違いはありますが、やはり最後の会見では体調良好に見えたものの、ヤツれ果てた姿で前日計量に登場したジェイミー・マクドネルのケースと良く似ています。

今や、前日計量がボクサーの肉体により大きな負担をかけ、より深刻な健康被害につながるケースが多いことは明らかです。

ボクサーの健康面はもちろん、前日計量を利用したリバウンドが、階級制スポーツの大前提を侵犯してしまうことに危機感をおぼえて当日計量に戻したレスリングの例もあります。

現行の前日計量を見越して減量してきたボクサーにとって、当日に変更されると慣れ親しんだ減量スケジュールや練習方法、階級までも変更する必要も出てくるでしょう。

それでも、前日計量の弊害がここまで噴出、階級スポーツの根幹を揺るがし、その存在意味であった健康・安全面までも危うくしている現状では、当日への再移行や、前日+当日の二回計量の義務化は必至だと感じています。
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階級制のスポーツに、減量にまつわる事件はつきものです。

今年2月、柔道グランドスラムのデュッセルドルフ大会で57キロ級にエントリーした山本杏が前日計量はクリアしたものの、当日計量の「5%ルール」を超え、失格してしまいました。

ボクシングでも、唯一IBFが前日計量から10ポンドオーバーで失格とルールで定めていますが、47.6キロのストロー級から90キロ超えのクルーザー級まで一律の「10ポンドルール」というのは、あまりにも杜撰です。

柔道のような「%ルール」でないと意味がありません。

何のルールもない他団体よりは遥かにマシとはいえ、IBFにはまともな思考回路があるのでしょうか? 

現在、多くの階級制スポーツで取り入れられている「前日計量」は、減量のダメージから十分な回復時間を与える、選手の健康への配慮から始まりました。

しかし、前日計量はリバウンド特性のある選手に有利に働く、階級制に大きく矛盾する不公平を生み出してしまいました。

この矛盾を解消するために、今年から当日計量に戻す決断を下したのが、世界レスリング連盟です。「リバウンドの不公平」をなくすだけでなく、「回復時間を見込んだより過激な減量」も防止できると期待しています。

確かに、ここまで前日計量の歪みが噴出してくると、当日計量の方が 選手の健康面ですら優れていたのかもしれません。

先日のジェイミー・マクドネルも、当日計量ならあそこまで過酷に追い込んだ減量を決行しなかったはずです。

「水抜き」というと簡単そうですが、運動やサウナでもリミットまで絞りきれない場合は、強制的に体内から「水分」を抜くことも出来ます。マクドネルがやったかどうかはわかりませんが、「血抜き」です。あの血圧の異常値と一気に老化したような萎み方は、それを疑ってしまうほどでした。

計量後に再び輸血するなら、マラソン選手などが手を染める血液ドーピングの一種ですね。今回、マクドネルがやっていたとしたら目的は持久力アップではなく、減量ですが。

1988年からWADAは血液ドーピングを禁止していますが、これは再輸血によって体内の血液が異常値を示すことなどから発覚します。しかし、減量目的の血抜きは自らを弱体化する行為、〝逆ドーピング〟です。「血液濃度が異様に低いから失格」はありえません。

現状の前日計量による「回復時間とリバウンドを見越した減量」は当該選手の健康を蝕み、対戦相手も危険に晒す可能性も高めてしまいます。

日本ボクシングコミッション(JBC)は1995年から前日計量に変更しましたが、世界的な潮流と同じく回復時間とリバウンドを有効に使おうと、より過酷で過激な減量の横行を招いてしまいます。

JBCでは97年から、あからさまな増量をチェックするために当日計量も行い、現在ではリバウンドを8%以内に収めるよう推奨しています。

しかし、これは柔道の「5%ルール」やIBFの「10ポンドルール」とは異なり、罰則はありません。つまり「ルール」ではありません。

「8%を超えた選手には階級を上げるよう薦める」だけです。警告ではない、もちろん注意ですらないわけです。

ちなみに、井上尚弥の増量は6キロ、JBC推奨の8%(バンタムなら4.28キロ)を大きくオーバーしていましたが、「階級を上げるよう薦める」なんてことはしていないでしょう、100%間違いなく。つまり、転級を薦めることすらしないわけです。

JBCの「8%」には、本当に何の意味もないのです。「JBCが推奨してるから増量幅は8%以内に収めよう」と減量に励んでいるボクサーなんて、ただの一人もいないのではないでしょうか?

やればいいと思います。「8%ルール」。こうしたルールが整備されることで、胃袋の消化能力や栄養の吸収速度が求められるリバウンドによる不公平を相当な程度解消し、純粋なボクシング技術だけの勝負を楽しむことが出来ます。

「回復時間を見越した過酷な減量」と「急激なリバウンド」は2点セットです。「8%ルール」を施行することで、この2点が一気に改善されます。

でも、JBCは絶対にやりません。統括団体ですから出来るはずですが、やりません。断言できます。このルールの実施が、有名人気選手を含めた多くの日本人ボクサーにとって戦力ダウンにつながると信じているからです。
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対戦相手の質や内容から様々な疑問符がつくとはいえ「10年無敗」のジェイミー・マクドネルを112秒で粉砕した井上尚弥。

あの試合を見た全ての人が、井上の圧倒的なパワーを認めたでしょう。

明らかな調整失敗から病人状態の英国人はただでさえ遅鈍なパンチが、さらに遅くなっていました。打ち込みの遅さはもちろん、引きは更に遅く中途半端とあっては惨敗は当然の帰結だったとはいえ。

しかし、井上のテクニックについてはどうでしょうか?やつれた重病人をタコ殴りしただけ、には見えませんでしたか?

もちろん、階級制の格闘技とは、そういうことです。そういう危険と常に隣り合わせです。階級制、計量のある格闘技は「いかにして健康状態を保ちながら減量するか」も勝負を決する大きな要素です。

それにしても前日計量から12キロ、23%近い増量はありえない数字です。前日計量時の、血圧が上で89というの危険すぎる脱水症状の証拠です。ふらつきや、膝の震え、おそらくひどいめまいに襲われていたはずです。そして、一人で上着をつかむことも着ることができないほど力が入らない…エディー・ハーンは「あんな減量に耐えられたのはマクドネルだからだ」と自慢しましたがそんな問題ではありません。

リング誌電子版の名物コーナー「DOUGIE’S FRIDAY MAILBAG 」からの拙訳です。

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【読者投稿】5フィート10インチの長身ボクサーが118ポンドまで減量できるものなのですか?

 
*DOUGIE’S answer*とにかく慎重に、じっくり時間をかけてなら可能かもしれない。計量時のマクドネルの頬のこけ方、体のやつれ方は異常だった。

ただ、過酷で急激な減量はボクシングの世界では珍しいことではない。 IBFライト級王者時代のシェーン・モズリーが135ポンドのライト級である時間は、公開計量の前後わずか数時間だけだ。

モズリーは、普段の150ポンドから3週間で15ポンドを絞っていく。そして計量をクリアしたら147〜155ポンド、つまりミドル級の重さでリングに上がることもあった。

衰弱している時間をなるべく短くするのが、計量のポイントなのだ。


マクドネルがモズリーのように効果的にリバウンドできるかが注目だ。

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モズリーも井上同様に圧倒的なスピードとテクニックも評価されたPFPランカーでしたが、最高評価を受けたライト級時代の彼は明らかにパワーボクサーであり、テクニックもスピードも付随的なものでした。

これは、今の井上に酷似しています。井上のボクシングもまた、典型的なパワーボクシングで、ワシル・ロマチェンコやフロイド・メイウェザーから匂い立つようなテクニックの香りはほとんどありません。 

パワーボクシングを否定しているのではありません。どんなスポーツでもパワープレイヤーのパフォーマンスは絶対的な魅力を放ちます。

ただ、野球のパワーピッチャーらと違い、ボクシングの場合はそのパワーの源泉が現状の計量システムからもたらされているのだとしたら…?
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 ⬆︎最近の世界戦での「リバウンド結果」(読売新聞5月4日朝刊)です。

井上尚弥の名前はありませんが、減量に苦しんでいたジュニアバンタム級時代後半は今回の6キロを超える増量だったであろうことは想像に難くありません。

日本人王者で傑出した世界評価を得ていた井上(マクドネル戦11.3%)と井岡一翔(ノックノイ・シップラサート戦11.42%)が「効果的な増量幅といわれる12%前後」 にきっちり合わせてきているのは、あらためて流石です。

一方で、村田諒太の増加率6.34%というのは目を引く数字です。「健康的な減量」のお手本です。それでいながら、リングに上がればパワーボクシングを展開するのですから、 彼のスタイルは本物です。

話は飛躍しますが、マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーがキャッチウェイトを要求してきても、深刻な犠牲や負担をかけずに対応出来るのではないでしょうか。

理想はパッキャオやメイウェザーのように実質的な増量をも視野に入れた体重コントロールですが、それは世界のトップレベルからもさらに遊離した次元の技術を持っていた彼らだからこそ出来る離れ業です。

現状では「前日計量システムで生じるリバウンドのアドバンテージ」を利用しない手はありません。現在のボクサーの優劣を分けるのは「減量と増量(リバウンド)をいかに適切にこなしてリングに上がるか」が大きなポイントになっているのです。

あのロマチェンコですら階級の壁、体格差には苦戦を免れない事実を突きつけられた昨今。ベストウェイトから増量して世界のトップを荒らし回ったパッキャオとメイウェザー、彼らのような異次元からやって来た遊離体をまた見たいという欲求もムラムラと湧き上がってくる今日この頃です。 
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当日軽量と前日計量。

「当日」は試合までの回復時間が短い、「前日」は回復時間が長いがゆえにより苛酷な減量に走りがちで、リバウンド体質が有利…どちらも一長一短です。 

IBFのように二つを組み合わせと、当日の超過リミット10ポンドを設けることで、リバウンドによる不公平を一定範囲内に抑えることが出来ます。

現在一律の10ポンド超過リミットも階級によって、差別化するなど改定の必要もありますが。

2回計量によって、体重超過のリスクも倍になるという意見もありますが、これは杞憂でしょう。当日計量はリバウンドした状態で、万一超過しても落としやすい状態なはずですから、リスクは2倍以下の筈です。

2回計量と当日のリバウンド制限によって、アーツロ・ガッティやブランドン・リオス、ダニエル・ジェイコブスのような、あまりに不公平な体重差でリングに上がる〝リバウンドチャンピオン〟を排除することが出来ますが、それはまた2回計量に適した体質のボクサーが有利になるという新たなジレンマも生み出してしまいます。

公平性だけを追求するなら、当日計量が最も正しいことになります。 

現在、ほぼ全てのプロボクシングの試合で前日計量が採用されていますが、ペンシルバニア州は世界戦を除いてIBF方式を採用しています。

ペンシルバニア州体育協会の元管理責任者グレグ・ サーブは「もっと管理を徹底して7日前、前日、当日の3回計量にすることによって公平性と安全性の両方がよりプロテクトされる。もっと言えば階級を減らすべきだ」と3回軽量と、階級の削減を提案しています。

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ネバダ州体育協会の医療責任者でリングドクターを務め、反ドーピングの任意団体VADAを創設したマーガレット・グッドマンは「減量したほぼ全てのボクサーが陥る脱水症状は、実は脳への直接的なダメージは考えられているほど重大ではない。ただし、反射やバランスは極端に悪化、それが普通なら受けないパンチを食らってしまうのが問題なのだ」と、減量とイコールで結びつく脱水症状の危険性を指摘しています。

さらに、グッドマンは「栄養や水分を遮断、利尿剤など薬物まで使われた肉体は一気に脆弱化、全ての機能が落ちてしまう。それでも〝減量によってより弱い相手と戦える〟という誤った信念が、ボクサーを理不尽な減量に駆り立てている。八階級制覇したマニー・パッキャオが特別なボクサーであることは間違いないが、彼のベスト階級が過剰な減量を必要としないライト級前後であることについては、あらためて考目を向けるべきだ。大きな減量を強いられないのがベスト階級という理屈は、彼にだけ特別なことではない。多くのボクサーが自分のベスト階級を間違って認識してしまっていることにこそ、問題の根源があるのだ」と、盲目的な〝減量信仰〟を非難しています。

計量についてグッドマンは「ペンシルバニアが提案している3回方式が理想だが、減量信仰がまかり通っている限り、どんな計量でも危険は伴う。州によってまちまちの計量も問題がある。一本化しないといけない」と統一ルールの必要性を訴えています。

一方で、ネバダ州体育協会の管理責任者キース・カイザーは、当日のリング上での体重差は「現実的には大きな問題ではない」と注目すべき発言もしています。

ネバダ州の統計では1990年代から、体重で有利なボクサーの勝率は約50%だというのです。

これは、おそらく体重超過の不平等マッチだけでなく、通常の試合での両者の体重の重軽も入れた数字でしょう。

メガファイト、ビッグファイトを引き寄せて、多くのギャンブルマネーと税金をかき集めたいネバダ州のロジックです。

カイザーは「154ポンドのボクサーが147ポンドのスター選手からのオファーを断ることはありえない。魅力的なイベントに何かしらの歪みは付き物」と本音も漏らしています。

表層的な魅力に浮き足立つファンの責任もあります。

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パキャオの前人未到の八階級制覇、その最後の八階級目はジュニアミドル(154ポンド)でしたが、相手はアントニオ・マルガリート。154ではパッキャオ同様に何の実績もありません。

そればかりか、この二人は空位のWBC154ポンド級のタイトルを150ポンドのキャッチウェイトで争ったのです。正規のリミットから4ポンドも軽く、ウェルターの147ポンドにより近い数字です。

そして、計量ではマルガリートが150ポンドのリミット一杯でパス、パッキャオの秤は驚くなかれ144ポンド1/2とウェルターでさえ大きく下回ったのです。

この矛盾に満ちたジュニアミドル級タイトルマッチは、興行としては大きな成功を収めましたが、もしこのスポーツに世界を統轄する団体があれば、こんな試合は許さなかったでしょう。

プロボクシングでは、スーパースターが一番偉いのです。もし、パッキャオが145ポンドを突きつけたとしてもマルガリートは喜んで干からびて衰弱した肉体でリングに上がったでしょう。

世界的な統轄団体が誕生して、どのボクサーにも公平な階級・計量システムを樹立するべきですが、腐敗承認団体が跋扈し、米国ではネバダ州やカリフォルニア州が統轄団体として莫大な既得権益を獲得している現状では、世界的な統轄団体など望めません。

では、絶対公平な計量システムは?

考えられるとしたら、やはり前日と当日の2回計量です。そして、そのボクサーが得意とする当日のリバウンドでも階級を付けるのです。

リバウンドの大きいボクサーは「前日118ポンド(バンタム級)、当日135ポンド(ライト級)」級、増量幅が小さなボクサーは「前日118ポンド、当日122ポンド」級、といった具合です。

現在の17階級だと、理屈では「前日105ポンド(ストロー級)、当日ヘビー級(200ポンド超)」の組み合わせもあるので、17×17=289階級にまで細分化されることになります。

この「バンタムライト級タイトルマッチ」の考え方なら、自分のリバウンドの幅に合わせて公平な階級を289階級×4団体=1156の中から選ぶことができます。実際にはリング誌、暫定、スーパー、ダイアモンド、休養などの王者も存在しますから、5000人以上のチャンピオンが生まれるかもしれません。

そうなると、5000人の王者の名前を諳んじることが出来る記憶力の天才の方が、世界チャンピオンよりもはるかに貴重な存在になりますね。


コメントいただきありがとうございます

山田さん、tanutaさんがいう「サッカー選手」については、アスリートとしてほぼ1年通して節制する姿は理想だと思います。テニス選手も同じですが、過酷なシーズンが長いということだと思います。

シュガー・レイ・ロビンソンら1950年代頃まではスター選手でも、年間10試合前後をこなしていましたから、常にビルドアップ、シェイプアップした状態だったはずです。

〝比嘉大吾〟にしても「前戦から2ヶ月という間隔が短すぎた」とみられていますが、ダメージが残っていないのに試合間隔が短いと減量に都合が悪い、というのは、どれほど無理やりな減量をしていたのかということです。

試合が終われば暴飲暴食する傾向のあるボクサーは、なんだかなぁです。減量のストレスが半端じゃないことは理解できますが、やはり「そこまで肉体を弱体化させてまで、弱い相手、階級を求めるか?」という幻滅に行き着いてしまいます。

もちろん、Undisputed Championになった村田に、メイウェザーが「155ポンドのキャッチウェイト」を突きつけて衝撃復帰、統一タイトルマッチを要求してきたら、これはもう過酷な減量に向き合って欲しいですが、こういう考え方がもうダメなんですね…。

「水抜き」については、今月号の「ボクシングビート」でも検証されていましたが、減量の基本は「カロリーの収支を赤字にすること」、つまり「摂取カロリー(食事)を消費カロリー(運動)が上回る」ことです。

荒川仁人が語っているように「食べるものに気を付けて、しっかりトレーニングしていけば体重は自然と落ちていくもの」です。

試合の直前に水分を一気に抜く減量は、決して新しいものではありません。「脱水症状の時間を短くする」という利点がある反面、「急激に脱水症状に陥る」ことや、ルイス・ネリのように「思うように汗が出ないため減量失敗」という危険もあります。

さらにビート誌で指摘されているように、間違った理解の水抜きも横行しているようです。

昔ながらの食事も水も遮断して、衰弱してほとんど運動もできない状態で、体重を落としていくのは自殺行為です。

偉大なレジェンドの中にもファイティング原田や、ロベルト・デュランのような、こと減量に関しては尊敬できないエピソードが多いボクサーも散見されますが、〝荒川流〟からさらに無理やり筋肉や骨を削るような減量は格好悪いし、何より危険です。

減量は、それによって鋭利に研ぎ澄まされて強くなるのが理想です。減量によって弱体化したボクサーの戦いなど、誰が見たいでしょうか。
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2017年/4月:マーロン・タパレス(vs大森将平)、5月:ファン・エルナンデス(vs比嘉大吾)。

2018年/3月:ルイス・ネリ(vs山中慎介)、4月:比嘉大吾(vsクリストファー・ロサレス)。

この国で、たった1年という短い期間で、なんと4度も体重超過による理不尽な世界戦が強行されてしまいました。その原因は、多くの日本のメディアが指摘している「世界戦がいたずらに乱発されていること」により「世界王者の価値が暴落していること」が、最も大きな原因ではありません。

最大の原因は、前日計量によって階級制が、危険に溶解していることです。

そもそも前日計量は、ボクサーの健康に配慮して始まりました。…そのはずでした。

「より弱い相手を求めて、自分の肉体も衰弱させる」減量のダメージは、当日計量と前日計量ではリカバリーの時間が全く違います。確かに、この一点では前日計量の方が健康的で安全に見えます。

しかし、もっと重大な二つの点で前日計量はとんでもない危険を孕んでいます。

最初に、より長いリカバリーの時間で個々のボクサーの体質によって、ときに巨大なリバウンドの不公平が生じることです。 前日昼の計量では同じウェイトだったのに、中重量級では30時間後の翌日夜のゴング時には10kg前後の体重差が生じることも珍しくありません。

リバウンド幅の大きいボクサーが体重的に有利という、本来の階級制に逆行する状況が現実のリングで起きているのです。 

次に、 前日計量によって与えられる長いリカバリーを見越して、当日計量ならありえない無理な減量を強行してしまうことも、今回の比嘉大吾や井上尚弥らに普通に見ることができます。

もし、今も当日計量なら比嘉のフライや井上のライトフライはありえなかったかもしれません。
 
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When to weigh:Day-before vs. Same-day  前日計量と当日計量。どちらが最善なのか? 2010年9月22日12:53amリング誌電子版より。


昨年3月のゲンナディ・ゴロフキンvsダニエル・ジェイコブス。前日計量では160ポンドのミドル級リミットに合わせた二人でしたが、当日はGGGがIBF規定の10ポンド以内を遵守して170ポンド以内でリングイン、ジェイコブスはIBFが義務付けた当日計量を拒否、180ポンド近い体重でゴングを聞きました。

この試合は世界ミドル級タイトルマッチでしたが、二人とも160ポンドを大きくオーバー、現実には「スーパーミドル級vsクルーザー級」の対決でした。

こんなことが常態化してしまっているのが、前日計量の現実です。正気の沙汰じゃありません。

二つの意味で絶対におかしいですよね。

「それってそもそもミドル級じゃない」という事実。

「ボクシングの技術と関係のない30時間で大きくリバウンド出来る体質が有利って、もはやスポーツじゃない」という不公平。

日本には、亀田一家以外のボクサーへの批判はしない提灯メディアしかありません。本当に残念です。

比嘉大吾も井上尚弥も、かつての長谷川穂積も素晴らしいボクサーです。それは誰もが認めますが、その強さの最大の要因がどこにあるのかをきちんと指摘すべきなんです。

その階級ではありえないパワーを発揮しているのは、彼らがウィルフレド・ゴメスと同じ純粋な素質を持っているからではないのは誰にでもわかることなのに。

彼らを批判しているのではありません。その時代のルールを利用するのは、アスリートにとって当たり前に大切なことです。前日計量の時代に、リカバリー時間を考えずに、当日でも試合ができる体重コントロールをするなんてありえません。

ダーウィンではありませんが、適応力があるヤツが生き残るのです。

もちろん、ダーウィンを否定して、チンケな適応力を嘲笑って「適応するヤツが強いんじゃなくて、強いヤツが強いのさ」と、自分の好きなように体重をデザインしてリングに上がるパッキャオやメイウェザーの魅力は抑えがたいものがありますが。

今回は、パックメイという例外中の例外の話ではありません。


計量はどうあるべきなのか。です。

より無謀な減量に走りがちで、リバウンダー有利の前日計量が、本当にボクサーの健康を守っているのか?

結論の出ない、正解のない迷宮に、是非、ご一緒に切り込んで下さい。
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フライ級リミットの112ポンドを約2ポンド、900gオーバーで体重計の上で王座剥奪された比嘉大吾。

今朝8時の軽量で、JBCは「規定の10ポンドオーバー以内をクリア」したと、試合は予定通りに行われることになりました。

「10ポンドオーバー」は約4.5kg、 なんと超過した900gの5倍です。おかしな話があるものですね。体重超過したボクサーにも、当日軽量のオーバールールをそのまま当てはめるのは、どう考えてもおかしい。

実際の比嘉は300g落として、600gオーバーの51.4kgで、当日軽量を“クリア”。122ポンド(ジュニアフェザー級)の約55.3kgオーバーまで許されているので、増量しても良かったことになります。

比嘉を擁護する気はさらさらありませんが、この300gは彼の良心なのでしょう。

何度も繰り返しますが、ルールがあるからスポーツです。ルールを破った時点で、その選手は退場です。

ボクシングの場合は、他のスポーツ以上に厳格なルール実施が求められます。ルールを破れば、それはスポーツでなくなるばかりか、殺し合いになりかねないからです。

ボクシングにおけるドーピングや、グローブに仕込みを入れる行為は、木製バットにコルクを潜ませて飛距離を伸ばしたり、ゴルフの打数を過少申告するのとは訳が違います。後者は卑劣な行為ですが、前者は殺人未遂です。

ルールを守って減量したボクサーの健康が最優先されるのは言うまでもありません。そして、加害者といえども、彼の健康も無視すべきではありません。

スポーツにおけるルールは、絶対的に優先されなければなりません。しかし、人間が社会生活を送る中で最も優先されるべきは人の命です。先日の相撲興行での「女人禁制事件」等、これを踏み外すことなど許されません。スポーツのルール以前の、人間が社会生活を送る中で最も基本的な問題です。

今回の比嘉大吾。一週間前の予備検診から、昨日の正式計量まで、脱水症状と栄養失調による健康被害が誰の目にも明らかでした。

まともに話せない、ずっと横になっているしかないほど体力を消耗した状態から、今朝、たった300グラムしか体重は増えていません。状態は変わっていないでしょう。

今からでも遅くはありません。試合は中止にすべきです。試合中止なら、最大の被害者クリストファー・ロサレスへの真摯な謝罪と、報酬の確保や比嘉が保持しているであろう世界戦のオプション譲渡まで含めた誠実なフォローで許してもらえれば、スポーツに起きた悲劇で済みます。誠意やお金で解決できる問題です。

取り返しのつかない事故が起きる可能性が高い道を選んではいけません。

22歳の肉体は試合ゴングまでに驚異的に回復し、連続KO記録を更新するかもしれませんが、問題はそんな、もはやどうでもいい、瑣末なことをとっくに超えてしまっています。

これは、ボクシングやスポーツの問題ではありません。人の命の問題です。
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〝黄金時代〟を迎えて、世界王者に溢れる日本ボクシング界。

村田諒太を除くと、一般ファンに顔も名前も知られたスター不在という、イビツなメッキの黄金時代。比嘉大吾もそんな黄金時代に誕生した数多の世界王者の一人です。

しかし、金太郎飴のごとく画一的な現代の若者の中で、比嘉大吾は異彩を放っていました。南海の風がそのままリングに吹き荒れるようなファイトスタイルに、やはり沖縄の純朴が滲み出る人柄、その表情までもが、全戦全勝全KOというレコードと同じくらいに、いえ、それ以上の魅力を放っていました。

そしてその魅力の根底には、とくにこのスポーツで強く求められる野生の匂いがむんむん充満していました…だからといってルール無用の無頼が許されるわけがありません。

スポーツにおける野生の魅力の正体は、規範の中で暴れる美しさに他なりません。

規範を外れた暴走は、ただの凶悪です。リング上や会見で相手に噛み付くタイソンからは1ミリの強さも感じることはできません。そこには哀れで無様で卑屈な弱さしかありません。

比嘉大吾がリング上ではなく、スケールの上でタイトルを失いました。世界王者にとって最も無様なことは、挑戦者に惨敗することではありません。

先月の両国国技館で敗れ去った山中慎介を格好悪いと感じた人がいるとしたら、その人にはスポーツを見る資格がありません。

しかし、今日の比嘉大吾は本当に無様でした。

ヘビー級以外の16階級では、リングに上がる前に勝たなければならない敵がいます。自分との戦い、減量です。この戦いに負けたボクサーがリングに上がる資格がないのは、全く当然です。

この戦いを拒否するのであれば、ヘビー級で戦うか、マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーのように減量なんか無視して、名誉とカネだけを求めて、自分で自分の体重をデザインしながら戦えばいいのです。
IMG_0445 (1)パッキャオの適正階級はライト級か、せいぜいジュニアウェルター級です。しかし、名誉とカネのためにリミットを大きく下回りながらもウェルター級のリングに上がり、ときにはジュニアミドルでも戦うのです(キャッチウェイトですが)。=リング誌2011年12月号「体を削るな、最も強い肉体でリングに上がれ」より。パッキャオやメイウェザーが際立って高い評価を得ていたのは、その超高等技術だけが理由ではありません。体重管理の取り組み姿勢、考え方が、他のボクサーとは全く違うのです。「より弱い相手を求める」体重コントロールではなく、「名誉とカネを求める」体重コントロールだったのです。この二人以上に冷徹なプロフェッショナルを私は知りません。

ボクサーは、より強く戦える階級で戦うべきである。より弱い相手と戦うために、自分も弱くなる減量をして自分の肉体を破壊するなんて馬鹿げている。(VADAの創始者、マーガレット・グッドマン女史の言葉です)

 

それができないから、「自分の肉と骨を削ってでも、より弱い相手と戦いたい」というのが、ほとんど全ての減量の動機なのです。パッキャオやメイウェザーらほんの一部のボクサーを例外にして、ほぼすべてのボクサーにとって、減量とは「より弱い相手と戦うための手段」なのです。
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2015年、ブランドン・リオスとの第3戦で減量に失敗。脱水状態で会見に挑むマイク・アルバラード(上)。思考まで鈍り、質問にも弱々しく答えるだけでした。減量で脆弱したボクサーの戦いなど、誰が見たいでしょうか。健康なアルバラード(下)、別人です。

「井上尚弥はフェザー級の世界ランカーとスパーで互角以上に渡り合った」。いやぁ、結構な話です。だったら、どうしてより注目度の高いフェザーで戦わないで、ジュニアフライやジュニアバンタムで「減量が限界」といつも泣き言を重ねるのでしょうか?

「より弱い相手と戦うための減量」。この減量には、絶対に負けてはいけません。それは恥です。「より弱い相手と戦うための減量」に負けるなんて…どこまで弱いんだ、お前は!という話です。 

思い入れのある選手、応援している選手が、負けてしまうのは残念ですが、それがスポーツです。悔しくても、勝った選手に拍手を送るだけです。

でも、減量に負けた比嘉大吾に勝った相手はいません。

私には、比嘉に勝った相手に「お前は比嘉に勝ったんだからこれからも頑張れよ!」と送る拍手や賞賛が出来ないのです。ただ、ただ悲しいだけです。

具志堅用高の管理責任を指摘する声もあるようですが、そんなもの全くありません。

比嘉は何歳ですか?保護者が必要な年齢ですか?比嘉は何者ですか?全ての責任を自分が負うのに、疑問の余地など無い肩書きの持ち主でしょうが!

カネロ・アルバレスが、陣営に隠されて知らないうちにドーピングをしていたのだとしたら、彼は被害者ですか?絶対に違います。

パッキャオが同じ過ちを犯したら、フレディ・ローチやボブ・アラムを批判しますか?

具志堅を批判するのは的外れも甚だしいし、比嘉をある意味、馬鹿にしています。

比嘉大吾は、22歳の世界フライ級チャンピオンです。22歳の世界チャンピオンが、スケールの上でベルトを剥奪されるというボクサーとして最も恥ずかしい姿を晒してしまったのです。

これから比嘉大吾が、この失態の谷底からどやって這い上がっていくのか、それはわかりません。ただ、這い上がれない谷底では無いことは、偉大な先人が証明しています。

かつて「より弱い相手と戦うための減量」に身を削り、ついにはその卑屈な階段から足を踏み外してスケールの上でタイトルを剥奪されながらも、天衣無縫の野生を解き放って、減量苦とは無縁の快進撃の末に前人未到の世界唯一の八階級制覇を成し遂げた、正真正銘の生きる伝説。

今から19年前の1999年、未来のアジアの誇りが、秤の上で無様に剥奪されました。そのタイトルもまた、今日の比嘉大吾と同じく、奇しくもWBC世界フライ級の緑のベルトでした。

こっぴどい敗北が、武勇伝や笑い話になる未来は、ありえます。しかし、この比嘉の失態が、そうなることは永遠にありません。彼のキャリアを彼本人が汚してしまった、けして消すことのできない汚点です。

醜く深い谷底を消すことは出来ません。しかし、そこから這い上がることは、出来るのです。

今日、九段下のホテルグランドパレス、計量会場で起きた失態には、本当に幻滅しました。

じゃあ、もう応援するのをやめるか?ファンになる、応援するって、そんなもんじゃないから、だから、悲しいのです。

この取り返しのつかない大きな汚点が、小さく見えるような、今回、一番迷惑をかけてしまったクリストファー・ロサレスが「俺はあの比嘉と戦ったんだぜ」と将来子供や孫に自慢できるような、そんなキャリアをこれから築いてもらいたいです……そう思うのもファンの身勝手ですね…本当にロサレスには申し訳ない。

遠いニカラグアから、命がけで何ヶ月も練習して、厳しい減量にも打ち勝って、100%の比嘉大吾と戦えると、ローマン・ゴンザレスから「素晴らしい国だ」と聞かされ憧れていた国に、一世一代の大勝負に乗り込んで来たというのに。
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マディソンスクエアガーデンで大番狂わせが続きました。

まずはアマ・プロ通じて敗北を知らないローマン・ゴンザレス(ニカラグア)が、伏兵シーサケット・ソールビンサイ(タイ)にまさかの判定負け。パウンドフォーパウンド(PFP:階級を無視した仮想対決で最強を決める脳内ランキング)でリング誌やESPNなど主要メディアがこぞってNo.1に推していたロマゴンの陥落は、その対決を熱望していた井上尚弥が最もショックを受けたかもしれません。

WOWOWの放送では、ゲスト解説の井上にジョー小泉が「シーサケットがカルロス・クアドラスと防衛戦を行い、その勝者にロマゴンが挑戦してタイトル奪回、そして井上選手と。少し対決時期がずれてしまうけど」と慰めていましたが、その通りに進んでもそのリングに上がるロマゴンはもはや昨日までのPFP1位の世界最高ボクサーではありません。微妙な判定とはいえ、この敗北でその評価が暴落してしまうことは避けられません。

井上が目指していたのは世界最高の評価を受けるボクサーであって、それがロマゴンだったということですから。その金看板を下ろしたロマゴンと戦う意味は、今や半減どころじゃ済みません。

日本人がPFP1位のボクサーと戦うのは、まだこの概念が定着していなかった時代にファイティング原田が破ったエデル・ジョフレ以来でしょうから返す返すも残念です。ちなみにジョフレはリング誌の1960年代PFPで、あのモハメド・アリを抑えてPFP1位に輝いた猛者です。


【1960年代PFP:ジョフレが1位、アリ2位というランキングに原田の名前が5位にプリントされています】

さらにメインイベントで登場した文句無しのミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキンが接戦の末にダニエル・ジェイコブスに小差判定勝ち。専門家もメディアもファンも確実視していたウィルフレド・ゴメスの持つ連続KO防衛記録17の更新にまさかの〝失敗〟。ゴロフキンが「過去最強の相手」と警戒していた通りの内容になりました。

この試合、IBFが課す当日計量をジェイコブスがパス。IBFタイトルはゴロフキンが勝ったら防衛、ジェイコブスが勝ったら空位ということになります。この当日計量の目的はボクサーの「安全」管理です。前日計量の主な目的が急激な減量で体調を大きく崩したままリングに上がらないための「健康管理」である一方、当日計量は前日計量から大幅に体重を増やして有利な体重で戦う不公平、対戦相手が明らかに体重の重い相手と戦う危険を避けるための「安全管理」です。

これをパスするということは「10ポンド以上のリバウンドを禁じる」というIBFルールに抵触していたからに他なりません。ジェイコブスは当日朝の計量時間で少なくとも170ポンドはあったはずです。だから秤に乗らなかったわけです。それ以外の理由は考えられません。

MLBをはじめ、世界のメジャースポーツの世界を巻き込んだドーピングスキャンダルの張本人、元バルコ社のビクター・コンテがジェイブスの練習をサポートしていました。ドーピングを知り尽くしたコンテ博士は「ダニーは朝8時の段階で176ポンドあった。リングには178〜180(81.6キロ)で上がるだろう」と認めています。ジェイコブスはトレーニングの最後の4週間をコンテの施設で過ごしたそうです。

ミドル級の160ポンド(72.6キロ)から10キロ近い増量、2階級上のライトヘビーでも175ポンド(79.38キロ)が上限ですから、3階級上のクルーザー級の体重でミドル級の試合に臨んだことになります。もちろん、IBF以外の団体ではルール違反ではありませんし、前日計量の盲点を突いたリバウンドはフリオ・セサール・チャベスJrやカネロ・アルバレス、日本ではバンタム級時代の長谷川穂積らも常套手段としていた立派な戦略ですが、IBFの安全管理の考え方が正しいように感じます。

悪名高いコンテにしても今は「栄養・サプリメントの専門コンサルタント」として更生してるようですから、ジェイコブスには非はありません。

ただ、私たちが見ている「ミドル級」の試合が、実際には「ミドル級VSクルーザー級」だとしたら、やはり現在のシステムには深刻な問題が潜んでいるように見えます。「前日軽量からどれだけリバウンドできるかもボクサーとしての資質の一つ」として捉えるか、「体重階級制のスポーツなのだから(脱水状態から回復しないままリングに上がるとしても)当日軽量に戻すのが公平」なのか。

やはり、脱水状態でリングに上がることがないよう健康に配慮した「前日」と、体重格差の不公平と安全を鑑みた「当日」の2段階の軽量が理想的だと思います。

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