2017年/4月:マーロン・タパレス(vs大森将平)、5月:ファン・エルナンデス(vs比嘉大吾)。

2018年/3月:ルイス・ネリ(vs山中慎介)、4月:比嘉大吾(vsクリストファー・ロサレス)。

この国で、たった1年という短い期間で、なんと4度も体重超過による理不尽な世界戦が強行されてしまいました。その原因は、多くの日本のメディアが指摘している「世界戦がいたずらに乱発されていること」により「世界王者の価値が暴落していること」が、最も大きな原因ではありません。

最大の原因は、前日計量によって階級制が、危険に溶解していることです。

そもそも前日計量は、ボクサーの健康に配慮して始まりました。…そのはずでした。

「より弱い相手を求めて、自分の肉体も衰弱させる」減量のダメージは、当日計量と前日計量ではリカバリーの時間が全く違います。確かに、この一点では前日計量の方が健康的で安全に見えます。

しかし、もっと重大な二つの点で前日計量はとんでもない危険を孕んでいます。

最初に、より長いリカバリーの時間で個々のボクサーの体質によって、ときに巨大なリバウンドの不公平が生じることです。 前日昼の計量では同じウェイトだったのに、中重量級では30時間後の翌日夜のゴング時には10kg前後の体重差が生じることも珍しくありません。

リバウンド幅の大きいボクサーが体重的に有利という、本来の階級制に逆行する状況が現実のリングで起きているのです。 

次に、 前日計量によって与えられる長いリカバリーを見越して、当日計量ならありえない無理な減量を強行してしまうことも、今回の比嘉大吾や井上尚弥らに普通に見ることができます。

もし、今も当日計量なら比嘉のフライや井上のライトフライはありえなかったかもしれません。
 
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When to weigh:Day-before vs. Same-day  前日計量と当日計量。どちらが最善なのか? 2010年9月22日12:53amリング誌電子版より。


昨年3月のゲンナディ・ゴロフキンvsダニエル・ジェイコブス。前日計量では160ポンドのミドル級リミットに合わせた二人でしたが、当日はGGGがIBF規定の10ポンド以内を遵守して170ポンド以内でリングイン、ジェイコブスはIBFが義務付けた当日計量を拒否、180ポンド近い体重でゴングを聞きました。

この試合は世界ミドル級タイトルマッチでしたが、二人とも160ポンドを大きくオーバー、現実には「スーパーミドル級vsクルーザー級」の対決でした。

こんなことが常態化してしまっているのが、前日計量の現実です。正気の沙汰じゃありません。

二つの意味で絶対におかしいですよね。

「それってそもそもミドル級じゃない」という事実。

「ボクシングの技術と関係のない30時間で大きくリバウンド出来る体質が有利って、もはやスポーツじゃない」という不公平。

日本には、亀田一家以外のボクサーへの批判はしない提灯メディアしかありません。本当に残念です。

比嘉大吾も井上尚弥も、かつての長谷川穂積も素晴らしいボクサーです。それは誰もが認めますが、その強さの最大の要因がどこにあるのかをきちんと指摘すべきなんです。

その階級ではありえないパワーを発揮しているのは、彼らがウィルフレド・ゴメスと同じ純粋な素質を持っているからではないのは誰にでもわかることなのに。

彼らを批判しているのではありません。その時代のルールを利用するのは、アスリートにとって当たり前に大切なことです。前日計量の時代に、リカバリー時間を考えずに、当日でも試合ができる体重コントロールをするなんてありえません。

ダーウィンではありませんが、適応力があるヤツが生き残るのです。

もちろん、ダーウィンを否定して、チンケな適応力を嘲笑って「適応するヤツが強いんじゃなくて、強いヤツが強いのさ」と、自分の好きなように体重をデザインしてリングに上がるパッキャオやメイウェザーの魅力は抑えがたいものがありますが。

今回は、パックメイという例外中の例外の話ではありません。


計量はどうあるべきなのか。です。

より無謀な減量に走りがちで、リバウンダー有利の前日計量が、本当にボクサーの健康を守っているのか?

結論の出ない、正解のない迷宮に、是非、ご一緒に切り込んで下さい。