Breez is Nice!

日本では一蓮托生のイメージがまだ濃いボクサーとトレーナーの関係ですが、海外の有名選手で生涯変わらなかったのはマービン・ハグラーらほんの一握り。

トレーナーを変えるのは、多くの場合でカネか敗北、あるいはその両方がきっかけです。

父親との二人三脚でキャリアを積み重ねてきたブランドン〝The Heartbreaker〟フィゲロアのケースは、格下と見られたスティーブン・フルトンに2連敗したことが引き金になりました。

「負けるはずのない相手に2度も負けたショックは深刻だった」。

フィゲロアが父親と袂を分かち、門を叩いたのがマニー・ロブレス。

全米アマチュアチームを指導、プロでもオスカー・バルデスマイケル・コンランを指導、アンディ・ルイスJr.にアンソニー・ジョシュアを破壊させる大番狂せを起こしたことでその名を世界に轟かせた名伯楽です。

アンダードッグが大番狂せを起こすのは、並大抵のことではありません。「圧倒的有利と見られるファイターは採点でも追い風を受ける。ひっくり返すには明白な勝利が必要だ」。

「我々は奇跡やラッキーパンチを期待しない。世界にあんたたちの評価は間違っているよと教えてあげるための準備をするだけだ」。

しかし、アンディ・ルイスJr.がジョシュアとのダウン応酬の激闘を制し、メキシコ大統領府に招かれる国民的英雄になっても「一発で試合が決まるヘビー級ではよくあること」とロブレスの手腕を過小評価するメディアやファンも少なくありませんでした。

ところが、彼は2年とちょっとの時間で、わずか126ポンド「羽毛」と呼称されるフェザー級で2度、人気階級のスーパーミドル級でも1度、大番狂せをやってのけました。



最初は、現在の階級最強と目されるWBOフェザー級王者ラファエル・エスピノサ。2023年12月、キューバ人コミュニティを抱えるフロリダのリングは完全アウエー、アンダードッグでした。

相手は五輪2大会金メダルのロベイシ・ラミレス。第5ラウンド終了間際に痛烈なダウンを喫しましたが、そこから逆襲。最終回にダウンを奪い返して、2−0のクロスゲームをものにしました。1年後の12月7日の再戦でもオッズは不利でしたが、6ラウンドでエリートアマの俊才をTKOに下してその実力を認めさせます。

「精密機械のようなラミレスがゴリ押しファイターに弱いことはわかっていた。長身で手足が長いラファの重圧を全面に出すのは当たり前の解答だった」。

そして、昨年5月のラスベガス、ミケロブ・ウルトラアリーナで、WBAスーパーミドル級暫定王者のケイレブ・プラントはアルマンド・レセンディスにまさかの大苦戦、SDで大番狂せに沈みました。このとき、レセンディスのコーナーを守っていたのも、マニー・ロブレスでした。

「きれいなスタイルにこだわるプラントを泥試合に引き摺り込むのが作戦だった。プラントが嫌がり、相手コーナーが大声をあげて焦る光景は壮観だったよ」。

そして、今年2月にはやはり完全敵地のリバプールに乗り込み、WBAフェザー級王者ニック・ボールを最終回でストップしたブランドン・フィゲロアもまた完全アンダードッグ。ハートブレイカーを「この回で終わらせろ」と送り出したのが、やはりマニー・ロブレス。

初めての海外遠征、咬ませ犬扱いのフィゲロアでしたが、文句なしのKO劇に敵地は静まり返りました。

The sport’s most trusted Architects of Underdog Victories〜ボクシング界最高の番狂せ請負人。

マニー・パッキャオがリングの中の番狂せファイターなら、もう一人のマニー、ロブレスはコーナーに陣取る番狂せ請負人です。

しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。

2007年に優秀なトレーナーだったシニアが急逝してしまい、後を継ごうと考えていたトレーナー業の道が塞がれてしまいます。

それでも「父親から教えられた貴重な知見を後世に残すのは私の義務」と、日中は大工として働き詰め、夜はボランティア同然のトレーナーに没頭します。

無名のトレーナーの元に集まるのは無名の選手だけでしたが、最も身近な存在である妻サンドラはその才能に気づきます。

「マニーが指導すると負けに慣れた選手たちの目がはっきりと輝くことに気づくのに大した時間はかからなかったわ」。

注目度の低い試合で大きな番狂わせを繰り返す中で、ロブレスの手腕は選手やトレーナーたちの間で徐々に評価を高めゆきます。



そして、ヘビー級のスーパースターで当時無敵のアンソニー・ジョシュアの米国デビュー。対戦相手ジャレル・ミラーのリザーブにアンディ・ルイスJr.が選ばれると、ロブレスは周到な準備を始めました。

テクニック、スピード、パワー、経験…あらゆる要素で劣っていたルイスでしたが、短い両手を利したパンチの回転力だけが上回っていました。「答えは極めて簡単だった。距離をつぶすしてクロスレンジの打撃戦に持ち込めばアンディが圧倒できる」。

マディソン・スクエア・ガーデンを番狂せの館に変えた夜、ロブレスの能力はもはや隠しきれないものになり、エスピノサ、レセンディス、フィゲロアと短期間で大番狂せを引き起こし、その手腕を証明しました。



⬆︎晝田瑞希のミットを持つのはマニー・ロブレス3世、ロブレスの息子です。コーナーで晝田のWBOベルトを手に見守っているのがロブレスです。



フィゲロアは「ロブレスのジムは私を歓迎してくれた。ミズキもそうだが、彼らは番狂せを狙うファイターが大好きで、それを起こすのが楽しくて仕方がないんだ」と、すっかり馴染んでいます。

10月17日、ラスベガス・コスモポリタンで初防衛戦に迎えるのは世界的には全く怖さのない〝女子ボクサーのようにパンチの軽い〟亀田和毅。

しかし、油断と戦略ミスで連敗したフルトンと亀田は「世界基準では決定力ゼロでもペチペチでペースをつかむ」点で近似しています。

さらに、舞台はホームリングで、フルトン戦以上にオッズも予想もフィゲロアに偏っています。

亀田和毅がロブレスに大番狂せを突き付けるーーーそんなシーンを可能性ゼロとは言い切れません。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

1. あ

2026年09月26日 21:27

海外でも軽量級興行でお金は動いていることは分かるのですが
最近はこの国からの認定料で軽量級というものが成り立ち存続してるのではないかとも思えてきます

仮にそうだとすると、世界のボクシングシーンから日本が消えた世界というものはどうなるのでしょうか
例えそうなってもボクシングの本場である欧米のファンや関係者とってはどうでもいいんでしょうけど、世界の軽量級関係者にとっては由々しき事態になりそうです

風が吹けば桶屋が儲かるじゃないですが
日本人王者がいないと日本人ファンはいなくなるし、ファンがいないならこの国からボクシングはなくなるし、それだと大きな献金元がいなくなるのと一緒だし

なら団体が日本人王者を優遇して作りたがる当然というか
何かひとつ欠けても上手く行かなくなる意味では、王者も噛ませもaサイドもbサイドもファンも関係者もみんな一蓮托生なんですかね


スクリーンショット 2023-06-03 9.38.08
 
世界的には…

古くから「ヘビー級が動くが如くボクシングは動く」と語られてきたように、ボクシング=ヘビー級でした。

モハメド・アリという特別すぎる存在を含めると1970年代まで、世界ヘビー級チャンピオンはあらゆるスポーツの中で最も有名なアスリートでした。

しかし、この70年代初めにWBAからWBCの分離独立が決定的になると「世界チャンピオンが二人いる」というあってはいけない倒錯の時代に突入してしまいます。

さらに、70年代から80年代にかけてIBFとWBOもWBAに反旗を翻す形で分離独立、無意味な新設階級も続々と作られてしまいます。

他のスポーツでは存在しない、ただでさえ怪しい認定団体が分裂と階級の細分化がタイトルの価値を暴落させ、ボクシングの社会的ステイタスを貶めたのは当然すぎる結果でした。

「一つの団体、8つの階級」が「4つの団体、17の階級」にまで膨張してしまったという単純な事象だけなら4(団体数)×約2倍(階級の数)=「8」の計算式で、タイトルの価値は8分の1に暴落したと言えそうですが、現実はそんな楽観的なものではありません。

WBCの分裂当初は、WBAもWBCも現在のリング誌などのメディアに近い対立団体の王者もランキングするまだ公正さ、良心のカケラを残していましたが、21世紀になると各団体は自らが管轄する地域タイトルホルダーや人気選手をあからさまに優遇するデタラメランキングをこねくり回すようになります。

地域タイトルホルダーは認定料の支払ってくれる団体への貢献実績があり、人気選手は認定料に正比例するファイトマネーの金額が高いのですから、スポーツライクな実力ランキングよりも団体の経営を安定・成長させるデタラメランキングが優先されるのは仕方がありません。

認定団体という存在そのものが、スポーツから乖離していく性質を宿命的に孕んでいるのです。

地球上に8つのタイトルしか存在しなかった8クラシックの時代は、ほとんど全てのケースでヘビー級以外のタイトルマッチでもメインイベントでした。

ライト(軽量)級未満のフライ級、バンタム級、フェザー級でも相応の尊敬と注目度が保証されていた時代です。那須川天心が現役の世界王者をスパーリングパートナーに呼ぶ現代では信じられないかもしれませんが、1960年代まで世界チャンピオンを日本に呼ぶのは、五輪招致ほどではないもののコストもコネクションも求められる途轍もない難事業だったのです。

さらに、モハメド・アリの引退でボクシングの没落が決定的になった1980年代になるとリング誌が年間表彰にFighter Of The Yearの他に、現在のPFPに通じるBest Fighter 部門を創設(リング誌の経営悪化・販売不振で2017年で廃止)、ヘビー級のスター選手争奪戦でドン・キングに敗れたボブ・アラムらが「スピードとパワーが高次元で結晶するミドル級やウエルター級の方がヘビー級よりも見応えがある」という詭弁を弄して、中量級ウォーズを現出させました。

「アリの後継者はシュガー・レイ・レナード」という、本来ならありえないはずのスパースターのリレーはロベルト・デュラン、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラーという本物のファイターたちとの総当たり戦で魅力的な叙事詩を紡いでいきました。

8クラシック、ヘビー級こそがボクシングというファンはボクシングから離れてしまいますが「PFP的にはヘビー級よりも中量級の方が優れている」「かつてヘビー級だけが得ていた最高報酬もレナードが更新している」というロジックは、ヘビー級に小さな光すら見出せない日本のファンも共鳴させました。

ドン・カリーとヘクター・カマチョに挟まれたジュニアウェルター級の浜田剛史や、エドウィン・ロサリオを初回で破壊した平仲明信に、大きな夢を抱いたのも当然でした。

一方で、米国市場における軽量級の地位は沈降を強いられます。ただでさえ認知されにくい軽量級は団体のと階級の増殖で、その存在感はどこまでも希薄化。タイトルマッチでも人気階級のビッグファイトの前座が指定席になり「フェザー級以下の階級は一つか二つで十分」「女子レフェリーよりもずっと小さなボクサーは見苦しいだけ」(ダナ・ホワイト)という主張は、多くのボクシングファンからも支持されます。

一方で、プロモーターにとって軽量級は「報酬が低い」点で負担が少なく「PFP評価が高い」という点で「興味のない軽量級のタイトルマッチよりも人気階級のホープ対決が見たい」と希求するファンへの詭弁的説得材料にもなる便利な存在として重宝されます。

ローマン・ゴンサレスがPFPキングに駆け上がったとき、カネロ・アルバレスはPFPの末席にも数えられていませんでしたが、チョコラティトの数百倍もの報酬を得るスーパースターでした。

「井上尚弥はPFPに入ったからもう日本では見られない」という、信者たちの幻覚がいかに馬鹿げていたのかがよくわかるでしょう。


スクリーンショット 2026-04-14 10.46.15


日本的には…

日本では軽量級が人気があるーーーというのも、「ないものねだりはしない」という奥ゆかしいファンの、ある意味で幻覚です。

どこまでもおバカな信者でも「井上尚弥がウエルター級で同じことをやっていたら世界評価は根本から全く違っている」という現実は理解しているでしょう。

軽量級の王者たちが格安航空のエコノミークラスを乗り継いで1週間前に来日するのがデフォルトなのに、ゲンナジー・ゴロフキンが何に乗っていつ日本にやって来たか、離日する前にスポーツ庁の室伏広治長官に招かれたことが何を意味しているのかも明らかです。

日本でライト級以上の階級でタイトルを獲ることが、それがアルファベット団体の1つのタイトルであっても「とんでもない偉業」であるのが、単なるレアだからでないのも、日本のファンはよく理解しています。

もし、日本初のウエルター級王者が誕生したら一般メディアも巻き込むセンセーショナルな〝事件〟になるはずです。

一方で「レア」という点では9月27日現在、米国で3人しかいないストロー級で王者が誕生したとしても、米国で「とんでもない偉業」と騒ぐ人はほとんどいないでしょう。リカルド・ロペスですら全く無名で、小さな会場でもメインを張ることが許されず、女子ボクサーの前座に甘んじていたのが米国です。

もし、ズッファ・ボクシングの正論が罷り通ってしまうと、最軽量級はバンタム級。井岡一翔も田中恒成も4階級制覇どころか1つのタイトルも獲っていないことになり、井上尚弥もUndisputed championという意味は大きいもののバンタム級だけ。

後世、彼らは「*井岡一翔は現在は存在しないストロー、ジュニアフライ、フライ、ジュニアバンタムの4階級でアルファベット団体のタイトルホルダーだった」と、*(注釈:アスタリスク)付きで紹介されているかもしれません。

リカルド・ロペスや井上尚弥らが優れたファイターであることに、議論の余地はありません。しかし、ボクシングが最も華やかに迎えられているラスベガスやロンドンなどを最高峰と認めるなら、そこで評価されている人気階級でそこに乗り込むしかありません。

間違っても「ジュニアフェザー級でMGM(西岡利晃)、T−モバイルアリーナ(井上尚弥)」のような、憧れ料を支払う摩訶不思議な土下座興行、ファンを欺くような行為は許されるべきではありません。







このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

トランプ政権は習近平国家主席の国賓訪問にあわせて行われた米中首脳会談で、両首脳がAI=人工知能について、「スーパーインテリジェンス」、略して「SI」という呼称を使うことで合意したと発表しました。

SIもスポーツ・イラストレイテッド誌の略だからな!勝手に使うな!
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

スクリーンショット 2026-09-24 18.50.50

井上拓真vs那須川天心2。

この試合で特別気合が入っているのは、当事者の二人だけではありません。

世界ボクシング評議会、WBCです。

WBCは公式HPで「WBC SPECIAL PREVIEW: TAKUMA INOUE VS TENSHIN NASUKAWA」と、人気階級並みの大はしゃぎ。

WBCバンタム級歴代最高王者トップ10も作成して①カルロス・サラテ、②エデル・ジョフレ、③ルーベン・オリバレス、④ウィラポン・ナコンルアンプロモーション、⑤山中慎介、⑥辰吉丈一郎、⑦長谷川穂積、⑧ルペ・ピントール、⑨ラファエル・エレラ、⑩薬師寺保栄。

日本人が4人もランクイン。WBCがWBAから分離独立した「1966年以降のWBC王者」に限定したバンタム級PFPと思いきや、1965年にファイティング原田に敗れてタイトルを手放したジョフレは2位にランクイン。

ジョフレを入れないバンタム級ランキングは説得力がないと思ったのかどうかわかりませんが、だったら原田はどうした?ノニト・ドネアや井上尚弥は団体統一王者でWBC色が薄いから外したのか?それとも複数階級制覇のイメージが強いからか?

ジェフ・チャンドラーや1990年に始まったリング誌PFPで10傑入りのオルランド・カニサレス、ラファエル・マルケスらは非WBCタイトルホルダーだったので納得も、非常に評価の高かったWBC王者ミゲール〝ハッピー〟ロラは忘れちゃったか?

WBCが伝統的に日本人贔屓なのは高額の認定料が期待できるのはもちろんですが、WBCの提案にJBCもファンも従順なこともあるでしょう。

米国や英国で「試合の興味を削ぐ最悪のシステム」と酷評され、ほとんど採用されることのない公開採点が日本では当たり前に受け入れられているのはその最たる例です。

この試合の勝者に贈られるWBC記念リングも用意、こちらは拓真と天心の名前が刻まれたものを一つずつ製作したということです。そういえば、井上尚弥vs中谷潤人でも勝者へのリングが作られましたが、二人に贈られました。

今回も「勝者」だけではなく両者に贈られることになりそうです。

初戦で用意されたサムライベルトのような特別ベルトは今回は無いのでしょうか?

いずれにしても、リングもベルトもその製作費は、間違いなく認定料の中からあてがわれています。

別途買取制のダイアモンドベルトと同じなら、選手側が負担することになります。




このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

アジア大会、あまり盛り上がってないかな?

今朝は男女のマラソンが行われ、男子で山下一貴が優勝!

女子では矢田みくにが銅メダル。途中転倒のアクシデントを跳ね返し一時はトップ集団を引っ張るも、1998年バンコク大会の高橋尚子以来の優勝は叶いませんでした。しかし、力尽きるまでまで勝負にしがみついた素晴らしいレースでした。



28年前、灼熱のバンコクで高橋がスタート直後から飛び出して一人旅。後続の見えない、沿道にも誰もいない荒野をひた走る姿は神々しさを通り越して、シュールですらありました。

ゴール時気温は32度、湿度90%という劣悪な環境で世界記録に1分と迫る2時間21分47秒の驚異的なタイムで優勝。アジア大会を間接的に統括している国際陸連が当初、記録を認めなかったのはワンウェイコースだったからというよりも、記録があまりにも異次元だったからです。

あのときの高橋は、まさに怪物でした。



明日の夜、9時過ぎからはいよいよ現代の怪物、北口榛花が瑞穂公園陸上競技場に大放物線を描きます。

ライバルは中国の嚴子怡。今年5月のダイヤモンドリーグで世界歴代2位となる71m74の投擲を見せた、まだ18歳のもう一人の怪物です。

アジア大会ですが、世界最強の二人の激突。楽しみですねえ。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ