Breez is Nice!

PFPは個人の妄想ですから、自分なりの基準さえあれば好き勝手にランキングして構いません。

ここでPFPの一般的な基準を整理すると
①誰に勝ったのか?強い相手にどういう勝ち方をしたのか?(強い相手に明白な勝ち方をしたアリやパッキャオ)②その階級・時代の支配度・傑出度はどうだったか?(対戦相手をことごとくねじ伏せたタイソン)③その強さは一時的な刹那、もっと言ってしまうと「勢いで勝ってた」虚構ではないか?(時間をかけてその実力に疑いようがないことを証明したジョー・ルイス、アリ、フォアマン、ホプキンス)
という三点になります。

さらにPFPでは補正も加えなければいけません。ローマン・ゴンザレスとウラディミール・クリチコをPFPで戦わせる場合、やってはいけないのが俊敏なロマゴンをそのままヘビー級に拡大する想像です。約2mのクリチコの動きを縮小することもNGです。動きは体格と体重に制限されます。

さらにパンチの速さの印象(あくまで印象です、現実のスピードではありません)もリーチ2mと1m60cmでは後者の方がはるかに速く、その回転も当然速くなります。

この補正のフィルターを通さなければ、PFPは軽量級が圧倒的に有利になってしまいます。


【リング誌の1960年代、10年間の区切りでのPFPでファイティング原田は5位。日本人ボクサーの世界的評価としては異次元です。あのアリを凌いで、このディケイドの1位エデル・ジョフレの偉大さが説明されるとき「その栄光のキャリアで負けたのは、同じく一発殿堂のグレート、ファイティング原田に負けた2回だけ」というフレーズがデフォルトです。日本人が読むと、ジョフレの偉大さよりも「原田ガチですげぇな」となるのは至って自然です】

もちろん、この補正を考慮しなくてもPFP最高位に満点で推されていたメイウェザーやパッキャオは変態中の変態ですね。まぁ、ウエルター級が最も速く、最もスムースに動ける(ように見える)から、この階級が最もレベルが高く、それは階級の競技人口も多いことからも裏付けられているのですが。

ウエルター級にもタレントが乏しい時代はありましたが、それはウエルター級の歴史の中でのことであって、他の階級とはそのレベル、層の厚さは別格であり続けました。ミドル級と並んで人気階級の双璧ですが、個人的にはいつかウエルター級で誰もが認める日本人世界王者が誕生して欲しいですね。

現時点ではウエルター級の日本人アルファベット王者は、歴史上一人もいません。尾崎富士雄があと一歩に迫り、今もこの名誉階級で亀海喜寛が素晴らしい戦いぶりを披露してくれていますが、尾崎はこの常夏の階級では珍しい冬の時代の不人気王者とたまたま相性が良かっただけ、運が良かっただけでした(結局王者になれなかったので幸運とは言えませんが)。亀海も西海岸の舞台で配役されてるとはいえその役柄はゲートキーパーです。

厳しい言い方ですみません。もし村田がヌジカムに負けて、復帰戦でもドタバタするようなら、彼もまた最前線からは遠ざけられゲートキーパーの役回りが突きつけられるでしょう。その立場まで落ちる前にグローブを吊るすような気もしますが、そうはなって欲しくないです。

話が脇道に逸れてすみません。日本の歴代PFPの話です。

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パウンド・フォー・パウンド(PFP)、時空や階級を超えた仮想対決で誰が最強か?

「PFPは大嫌い」「正解のないPFPはナンセンス」というボクシングファンですら、いざその議論が始まるとのめり込まざるをえない、〝嫌い嫌いも好きなうち〟なmythical ranking(妄想ランキング)のお時間です。

今回は日本のオールタイム最高選手は誰か?を考えてみたいと思います。

もし村田諒太が来月、ハッサン・ヌダム・ヌジカムに勝った勢いでゲンナディ・ゴロフキン(GGG)にも勝ったなら?世界の現役PFPでも1位になる可能性も秘めていますが、日本歴代ではどうなるか?

こういうタラレバが大好きなボクシングファンが聖書と崇めるリング誌はPFP企画が大好きですが、日本の歴代PFPは妄想でも難しいようで、私は目にしたことがありません。

その理由は①(海外の専門家・ファンから見て)ファイティング原田という全員一致の不動の1位が存在する、②軽量級に大きく偏る体格のため階級による難易度が大きい、③経済大国ゆえに国内で大きな試合も完結、世界のメディアが直接目撃することが出来ない…などなど色々考えられます。


【欧米が認める世界最高選手を2度破ったことがファイティング原田を日本ボクシング史上でも特別な存在たらしめています〜ボクシングマガジン平成18年6月号付録「拳雄たちの記憶」から】

ボクサーを独自のポイント制でランキングしているBoxRec(ボクレコ)は、PFP日本歴代ランキングもきちんと発表しています。

独自のポイント制であるがゆえに「世界戦で勝てば加点」する一方、「弱い相手と防衛戦を重ねても加点」「熱望される対戦相手からあからさまに逃げても減点なし」などいろいろ問題もありますが。

実際にBoxRecのオールタイムPFPはシュガー・レイ・ロビンソンではなく、フロイド・メイウェザーJrです。現役のPFPはカネロ・アルバレス、2位はマニー・パッキャオです。これでは誰も納得できませんね。

では、BoxRecの日本歴代10傑はというと、1位から原田、辰吉丈一郎、渡辺二郎、山中慎介、西岡利晃、小林弘、大熊正二、海老原博幸、大場政夫、高山勝成です。BoxRecですら原田が1位ということには驚かせられますが、2位以下は「えーーー??」という順番ですね。

8階級時代に王者になった白井義男は11位、日本のメディアが編集したら間違いなくトップを争う具志堅用高は31位までに降下しなければその名前を見つけることは出来ません。

階級難易度という視点からは、最も高いハードルをクリアしたはずの竹原慎二は50位とミドル級を制した偉業は全く評価されていないありさまです。BoxRecのモノサシで測ると、村田がヌジカムに勝ってミドル級王者になったとしても50位前後が関の山です。

階級に貴賎はない!と言いたいところですが、現実は違いますからねぇ…。

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現在のミドル級の世界地図を俯瞰すると、世界王者はアルファベット主要4団体でWBAスーパー(ゲンナディ・ゴロフキン= GGG)、WBA正規(空位)、WBC(GGG)、IBF(GGG)、WBO(ビリー・ジョー・サンダース)、そしてリング誌認定の世界王者はカネロ・アルバレス(メキシコ)となっています。

村田諒太は現在空位のWBA王座をかけて、5月20日有明コロシアムで暫定王者ハッサン・ヌダム・ヌジカム(フランス)と拳を交えるわけです。

この人気階級のタイトルを狙うボクサーは GGGを苦しめて負けて株を上げたダニエル・ジェイコブス(米国)にデビッド・レミュー(カナダ)、アンディ・リー(英国)といった返り咲きを狙う元王者のグループが第一集団を形成、さらには今月22日にWBO暫定王座をかけて無敗のトミー・ラングフォード(英国)と戦う実力者アブタンディル・クルティゼ(ジョージア)、やはり無敗の村田、マチェック・スレッキ(ポーランド)、世界戦線再浮上を伺うマット・コロボフ(ロシア)、ウィリー・モンローJr(米国)と多士済済です。

ここに人気階級のお約束、下の階級から強豪王者がタイトル簒奪を狙って侵略してきます。すでにジャーモル・チャーロ(米国)がIBFスーパーウエルター級王座を返上して、ミドル級戦線に乱入、スター選手がアレルギー症状を起こすWBAスーパーのスーパーミドル級王者エリスランディ・ララ(キューバ)もGGGとの対戦を熱望しています。

階級最強がGGGであることに異論を唱える人はいないでしょうが、どうしてカネロが、承認料目当てのアルファベット団体と一線を画して、最も権威があるリング誌王者なのか。
諸悪の根源はミゲール・コット(プエルトリコ)とカネロいうヒスパニックのまさに東西横綱、超純正Aサイドの二人です。


【コットとカネロ、ヒスパニックの人気トップの二人がミドル級の正義をぶち壊してきました。どちらがAサイドなのかわからない人気者対決にリング誌はダブルの表紙で特集を組みました】

21世紀のミドル級は4団体統一を果たしたバーナード・ホプキンスが完全なる支配を続けていましたが、2005年ジャーメイン・テーラー(アメリカ)を相手に微妙な判定を落としてしまいます。

テーラーはシドニー五輪ミドル級で銅メダルを獲得、ホプキンスとは対極のキャリアを歩んできたホープでした。ホプキンスは「判定を盗まれた。ホープに勝たせたいのはわかるがリング上では実力だけが勝敗を決めるはずだ。多数決で決められたらやってられない」と嘆きましたが、後の祭りです。最初から分かっていたはずです。倒さなければいけなかったのです。

これは村田も同じです。ヌジカムは東京に呼べましたが、もしカネロと戦うとなると100%敵地でしか試合は組んでもらえません。カネロへの熱狂的な大声援にも押されて戦う村田に微妙な判定勝ちの目はありません。Bサイドに回ったら、明白にAサイドを叩きのめすしか勝ち目はないのです。

テーラーがホプキンスから掠め取ったミドル級のバトンをしっかり持ち続けることができれば良かったのですが、彼にはその握力はありませんでした。2007年9月29日、ケリー・パブリックとの無敗対決にまさかの逆転KO負け。その後、スーパーミドル級の画期的なトーナメント「 SUPER6」に参戦しますが、グラスジョーのテーラーが強打者揃いのこのグループに飛び込んだのは、まさに自殺行為でした。

次世代の王者であるはずのテーラーがあっけなくバトンを落としてしまったものの、ミドル級の未来はまだ楽観的に見ることができました。強打を振り回して相手をなぎ倒すオハイオ州ヤングスタウン出身の白人は、絵に描いたようなホワイトホープだったのですから。PFP10傑にもその名を刻み、黒人からヒスパニックに変遷したアメリカボクシングの人気の波を、懐古郷愁の白人の手に引き戻す、そんなまさか、まさかの期待までが膨らみました。

しかし、パブリックもまたバブルな王者でした。テーラーからタイトルを奪ってからわずか1年後の2008年10月18日。43歳のホプキンスに引導を渡すべく用意された試合では12ラウンドにわたって弄ばれ、老雄の引き立て役に甘んじてしまいます。この敗北で唯一の救いはノンタイトル戦だったことですが、その世界王座も2010年4月17日にセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)に大番狂わせを起こされ、失ってしまいました。

この試合は大番狂わせと報じられた他にも、「This win was first new middleweight title for an Argentinian fighter in over 40 years since Carlos Monzon, who they remembered. Martinez stated in the press conference his pride at bringing the title to Argentina again.(名王者カルロス・モンソン以来、ミドル級タイトルを40年ぶりに母国に取り戻した歴史的な勝利だと、記者会見でマルチネスは胸を張って語った)」と、40年ぶりにアルゼンチンにベルトが帰ったことも世界中に伝えられました。

ここで、日本のボクシングファンは「あれ?」と思うはずです。「竹原が1996年にタイトルを奪ったホルヘ・カストロもアルゼンチン人だったじゃないか!40年ぶりは間違いで14年ぶりだろう!」と。

カストロは分裂した王座のピースを持っていただけで、「正統な最強王者(Lineal Champion)」とは認められていないのです。ホプキンスから継承した正統王者の本物の玉座はテーラーからパブリック、そしてマルチネスへと受け継がれたのです。

「最強王者に勝たなければ正統な王者ではない」「王者に勝った者が王者」という考え方が欧米では根強く残っています。ただのアルファベット王者は「a champion(王者の一人)」と軽い表現をされ、暫定王者至っては王者にカウントされません。日本では5階級制覇と認められるノニト・ドネアが、暫定のスーパーフライ級を数えられずに4階級制覇とされているのはそのためです。

そしてLineal Championという考え方ならドネアはフライ(倒した相手はビック・ダルチニアン)、バンタム(フェルナンド・モンティエル)の2階級制覇となります。

日本と海外の考え方が大きく違う典型的なサンプルがマニー・パッキャオです。日本ではメジャー4団体の王者になれば相手が誰でもカウントする一方で、それ以外の王者は一切認めませんから、パッキャオはフライ、スーパーフライ、スーパーフェザー、ライト、ウエルター、スーパーウエルターの6階級制覇となります。しかし海外では、ここにフェザーとスーパーライトの2階級(いずれもリング誌タイトル)が加わり8階級制覇と広く認められています。

そのパッキャオも正統な最強王者を倒さなければならないLineal Championの縛りではフライ(チャチャイ・ダッチボーイジム)、フェザー(マルコ・アントニオ・バレラ)、スーパーフェザー(ファン・マニュエル・マルケス)、スーパーライト(リッキー・ハットン)の4階級制覇となります。

日本では「4団体じゃないから」という理由で認めていないフェザーとスーパーライトが、パッキャオの王座の中でも特に価値のあるものだと世界では認められているというのが興味深いですね。

【AサイドのカネロがGGGの衰えを慎重に観察しながら待つ…プロボクシングの醜悪な慣行が今も繰り返されています】

そして、「王者を倒した王者が正統」と「誰もが認める最強」というLineal Championの曖昧な二重基準が、今このミドル級にねじれを起こしてしまっています。

マルチネスに勝ったコットに勝ったカネロが「正統」のLineal Championです。そして「誰もが認める最強王者」がGGGです。リング誌はカネロが1年間ミドル級で戦わないか、転級を正式発表するか、引退表明するか、その場合でしか王座を剥奪できません。

もちろん、この有様でカネロがLineal Championなのはあくまで系譜上の話であって、GGGこそがその冠にふさわしいことは誰もが認めています。ほとんど全てのスポーツが最強を決める試合が必ずセットされます。当たり前です。その当たり前が通用しないのがプロボクシングの世界です。プロボクシングの深い闇が、ここにも垣間見えているのです。

村田が来月掴み取るのは残念ながらLineal Championではなく、「a Champion」です。まぁ、始まりはAからでいいんです。アルファベットもAから始まるんですし。どう始まるかなんて全く問題ではありません。問題はどこにたどり着くのか、ただそれだけなのですから。とりあえず、最初のピースをしっかりコレクションしましょう。

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アメリカ人なのに、人気階級のミドル級を圧倒的な強さで君臨したのに、フェリックス・トリニダードに勝つまでのバーナード・ホプキンスは不遇の時代を過ごしてきました。

その理由は
①五輪メダリストのようなエリートではない叩き上げ選手のため遠回りのキャリアを余儀なくされた、②デビューも黒星スタート、強力なプロモートと縁が無かった、③ヒスパニックの時代が深まりアメリカ人であることのアドバンテージは希薄になっていた、というところでしょうか。

もし、ホプキンスが金メダリストなら違うキャリアが用意されていたでしょうし、叩き上げでもデビューから破竹のKO勝ちを重ねていたらもっともっと注目されたはずです。もし、メキシコかプエルトリコの血を引いていたらヒールを演じる必要もなく、トリニダードやデラホーヤとのメガファイトはさらに大きな興行になっていたことも疑う余地はありません。



【リング誌2017年3月号は「ホプキンス引退特集」。通常号の裏表紙は一面広告ですが、この号は表も裏もホプキンス!】

ホプキンスは過小評価されることに苛立ちながらも、その理由も、自分がスターダムにのし上がるために何をすべきかも、よく理解していました。「スターになるにはスターを潰さなければならない」。

ただし、スーパースター選手とそのプロモーターは、十分な実力を持つ危険な相手との対戦には当然慎重になります。ましてや、その相手が大きな興行につながる人気を持っていないとなると、慎重になるどころか敬遠します。当たり前すぎる話です。

中量級黄金時代の80年代にマイク・マッカラムが、超人気の4人(レナード、ハグラー、デュラン、ハーンズ)の誰とも一度も絡めなかったのは、その強さが敬遠されたことよりも、その人気の無さこそが最大の要因でした。

危険な実力を持っていても、スター選手が対戦を選ぶ場合もあります。スター陣営が「間違いなく勝てる」と踏んだ時です。デラホーヤとの大一番に勝ち、ミドル級でも無敵の快進撃を続けて自らに酔っていたトリニダードには、衰えが指摘される36歳のホプキンスの実力を正確に見抜くことは難しかったでしょう。

トリニダード戦を成立させるために、ホプキンスは契約条件で大きく譲歩します。ミドル級王者同士の対決にもかかわらず二人の報酬はトリニダード900万ドルに対して、ホプキンスは250万ドルと3分の1以下。人気の差を認めただけではなく、ホプキンスにはスーパースター、トリニダードに勝つことで、もっと大きな獲物、ボクシング界最大のスターが食いついてくることがわかっていたのです。

トリニダードとの「1000年に一度の戦い」に敗れたデラホーヤは、黄金のキャリアを汚すこの黒星を何としても精算しなければなりませんでした。本物のスーパースターは敗北の負債を必ず精算しなければなりません。トリニダードに圧勝したホプキンスは、勝てば負債がチャラになるどころか大きなお釣りも戻って来る、格好の相手でした。

デラホーヤにとっての問題は「いつ戦うか」に尽きました。ホプキンスがまだまだ危険な相手であることはわかっていますが、一方で40歳の大台を目前に大きな衰えを露呈していつ誰に負けてもおかしくない状況です。自分と戦う前にホプキンスが負けてしまっては元も子もありません。

ホプキンスがトリニダードを粉砕してから3年後の2004年9月18日、デラホーヤは精算のリングに上がります。ホプキンスの衰えを3年も待っただけでなく、157ポンドのキャッチウェイトというAサイドのエゴ剥き出しの保険までかけました。ホプキンスはここがゴールであることをわかっていましたから、デラホーヤからの要求を全て飲みます。

報酬はデラホーヤが3000万ドル、ホプキンスが1000万ドル。無名の叩き上げボクサーが、ついにビリオネアのステージに辿り着き、スーパースターの仲間入りをした瞬間でした。もはやホプキンスの実力を見誤る専門家もブッカーもいません。オッズは2−1でホプキンス。

9ラウンド、ホプキンスが放った痛烈な左ボディにデラホーヤが苦悶に沈みのたうつ光景は、このスポーツの残酷さと恍惚を同時に見せてくれました。

「ボクシングファンは俺のことをみんな認めてくれていたが、この試合で俺はボクシングを超えたスポーツファンに知られる存在になった。長い間、自分はこうあるべきだと信じていた存在に、今ようやくなることができたんだ。俺はたどり着いたぞ!」。

村田諒太もミドル級であるがゆえに、勝ち続ければメガファイトの舞台が確実に待っています。しかし、そのリングにはホプキンスと同じBサイドで上がる可能性大です。Bサイドには用意された台本はありませんし、レールも敷かれていません。

それでも、Aサイドが周到に書き込んだ台本を破り捨て、栄光のゴールへ延伸するはずのレールをひん曲げることが出来るのはBサイドの特権です。PFP1位のゴロフキンの進路を阻み、世界一の人気者カネロの台本を踏みにじるようなことになれば、あのプライドの高いマネーがまたリングに舞い戻るはずです。「村田と戦う。東京ドームでやってもいい」と。

メイウェザー戦なんて今はまだまだ妄想の域を出ませんが、マネーも含めてミドル級には巨大な獲物が何匹も回遊していることは事実です。

まずは、最初に有明コロシアムでカメルーンの大魚を釣り上げましょう!

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プロボクシングほどアンフェアなスポーツはありません。平等な環境で行われる試合は、まずありえません。

オリンピック、サッカーW杯、プロ野球、プロテニス、どのスポーツでも地元選手に応援は偏り、判定競技の場合は審判にも影響を与えることが珍しくありません。しかし、あからさまに一方の選手に有利な環境が用意されることはありえません。

ボクシングではそれがありえます。日本人ボクサーは挑戦者であっても、米国の人気階級を例外にして、ほとんど全てのケースで世界戦を自国で開催できます。「世界王者」の看板を掲げながらも、一度も世界に出ることなく、日本だけで世界戦を行いキャリアを終えることも至って普通のことです。

これは別に恥ずべきことではありません。マイク・タイソンが日本で試合をしたのは顔見世興行に過ぎませんでしたし、フロイド・メイウェザーもアメリカを出て戦うことはありませんでした。その必要がないからです。カネロ・アルバレスも自分の庭から出ることはないでしょう。

カネロと並ぶAサイドの典型、マニー・パッキャオは対戦相手を自分の意思で選び、自分の都合の良い日程で試合を行うことが出来ます。カネロはリング誌認定の世界ミドル級王者ですが、完全なる〝自己都合〟で160ポンドのミドル級で戦ったことは1試合もありません。

ロジャー・フェデラーが、アンツーカーに強いラファエル・ナダルと戦う時に、自分に有利になるようフレンチオープンのコートに芝を敷くような狂気が、当たり前にまかり通るのがボクシングの世界です。

30周年を迎えるレナードvsハグラーは今も熱い議論が飛び交い、ファンを楽しませてくれていますが、このファイトの本質は非常に単純なことです。

“If there had been any other boxer in that ring that night, other than Ray Leonard, and that fight went the way it did, they would have raised Marvin Hagler’s hand at the end. Do you think if that had been John Mugabi, they would have raised Mugabi’s hand? Marvin felt – and I think most boxing people would agree with this – that you have to take the championship from the champion. He’s defending it, the challenger has to take it.”(リング誌5月号 HAGLER-LEONARD: THE DEBATE RAGES ON(ハグラー対レナード:議論は荒れてまだまだ終わらない)

「もしあのリングでハグラーが戦った相手がレナード以外のボクサーだったら?全く同じ試合展開でも、ハグラーが勝利を収めていただろう。レナードではなくジョン・ムガビだっら、ムガビが勝つなんてことがあっただろうか?ほとんどの人がこの考えに異論はないだろう。王者は守ればいいい、しかし挑戦者は奪い取らなきゃいけない、つまり勝たなければいけないはずなのに」


【ボクシングの不公平な構造に挑み続け、ことごとく勝利を収めたのはマニー・パッキャオだけではありません。B−HOPもまたBサイドのブルースを聴きながらスターダムにのし上がりました〜リング誌2011年9月号「時間を止める男、ホプキンス」〜】

リングにはAサイドとBサイドが存在します。メキシコやプエルトリコで絶大な人気を獲得できるヒスパニックはその典型です。メキシコ人でも人気のないほとんどのボクサーは世界王者でも日本で防衛戦を行うのが普通です。

村田諒太は日本では紛うことなきAサイドですが、ラスベガスやニューヨークのリングに立てばBサイドです。ミドル級最強王者のゴロフキンですら、アメリカにファンベースのないカザフスタン人であるため、拠点を構える西海岸で人気が思うように伸びず、東海岸での興行に活路を見出しているのが現状です。

五輪でメダルを獲ったアメリカ人か、ヒスパニックでなければ、究極のアメリカンドリームを手に入れることは出来ないのか?

その答えは残念ながらYESです。あのロベルト・デュランですら、実力、人気がNo.1だった時期はありません。

長いアメリカのボクシングの歴史でアメリカ、メキシコ、プエルトリコの血脈を持たないにもかかわらず、人気・評価の頂点に立ったのはマニー・パッキャオただ一人しかいません。メキシコとプエルトリコのスター選手を次々に撃破し、五輪金メダリストを滅多打ちの末にTKOする、そこまでやらないと無理なんです。

村田の前にはカネロという金看板は燦然と輝いていますが、たった一枚きりの看板です。他にはヒスパニックの人気選手も金メダリストも見当たりません。万一、カネロとゴロフキンを粉砕したとしても、次のステージは見当たりません。

5月20日の有明は日本にリングを引っ張り込めましたが、ハッサン・ヌダム・ヌジカムあってこそです。カネロは論外にしても、ボクシング人気が沸騰している英国のビリー・ジョー・サンダースを日本に呼び込むのも困難です。

ビッグネーム(サンダースをビッグネームと呼ぶのはどうかと思いますが)との試合は、Bサイド、敵地になるのは避けられません。

しかし、Bサイドに立ち続けながら、ついにアメリカンドリームを掴んだ先達がミドル級にはいます。正確には「つい最近までいました」、過去形ですね。

そう、その名もB−HOP。バーナード・ホプキンスです。

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