カテゴリ: 英国ボクシングニューズ誌

井岡一翔が父親・一法と袂を分かった大きな理由が消極的なマッチメイクだったことは明らかです。

プロ16年、35試合のリングに上がり31勝16KO3敗1分と、黒星は3つだけ。

それでも、このグランドマスターのキャリアに「comeback」という言葉がしっくり感じるのは、2017年の「引退騒動」も含めて、リングに戻るたびに力強さを増してきた、そんなしぶとさを見せつけてきたからでしょう。

KAZUTO IOKA is no stranger comebacks.〜井岡一翔は挫折をを乗り越えることに慣れている。

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今夜は英国ボクシングニューズ(BN)誌の2024年12月19日号=恒例のクリスマス・ホリデー大増ページ特集号から、井岡一翔を4ページにわたってフォーカスした「ANOTHER CHANCE(もう一丁!)」。

リング誌のFight Of The Yearにノミネートされたように、日本のボクシングファンが「完敗」と考えているフェルナンド・マルティネス戦は、海外では「激闘」の扱いです。

BN誌でも「非常に競った内容だった」という見方を示し、120−108とスコアしたエドワード・エルナンデスを避難しています。

個人的にはあの試合は完敗に映りました。マルティネスのパンチに効かされた場面はなかったものの、被弾の見映えが悪すぎました。

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マルティネス戦でこのワンショット⬆︎を選ぶのは、好戦的なアルゼンチン人が可哀想な気がします。試合を見てない人が写真を見て記事を読むと「井岡は判定を盗まれた」と思い込むかもしれません。


「被弾の見映え」を重視するのは素人の見方、と言われればそれまでですが、エルナンデスの「120−108」のようにメチャクチャなスコアをするプロのジャッジもあちこちにいます。



BN誌が選んだ「KAZUTO IOKA FIVE OF THE BEST」をサラッとご紹介。


◉八重樫東:2012年6月20日

WBC王者の井岡と、WBA王者の激闘王との激突。

史上初の日本人同士の団体統一戦を制したのは井岡。

海外のコアなマニアはこの試合をライブで見ることが出来ず、日本では無料テレビで視聴できることに歯噛みしました。

ボディメーカー・コロシアムで生観戦した日本のボクシングファンを羨みました。



◉ドニー・ニエテス(第2戦):2022年7月13日

2018年に喫した議論を呼ぶ敗北(SD)のリベンジを鮮やかに飾った井岡らしさ満載の12ラウンド。

この勝利で井岡は多くのメディアでPFP10傑に再突入。



◉田中恒成:2020年12月31日

海外のブックメーカーやメディアでは「恒成有利」の声も多かった大一番。

井岡の巧さと、恒成の純情、染谷路明レフの抜群のタイミングでのストップが際立った名勝負でした。

試合前は「メリットがない」と発言していた井岡でしたが、この試合でPFP10傑入り。「キャリア最高の試合」と評価しても差し支えない相手、内容でした。



◉ジョシュア・フランコ(第2戦):2023年6月24日

初戦の引き分けからのリベンジマッチ。

フランコは精神的な問題などから前日計量で6ポンド以上(3.1kg)もオーバー。

井岡の正確なパンチがポイントを積み重ねて、明白な勝利を掴み取りました。



◉オーレイドン・シスサマーチャイ:2011年2月11日

井岡が最初の世界タイトル獲得。

評価の高かったWBC王者を5ラウンドで屠った井岡は「PFPのウエイティングサークルに入った」と言われましたが、リング誌やESPNのPFPにランクされるのは9年待たねばなりませんでした。

オーレイドンは生涯69勝29KO2敗1分でグローブを吊るしますが、全盛期に敗れたのは井岡だけでした。



++++++ no stranger comebacks.な井岡ですが、そのキャリアが最終盤を迎えています。

もし、バム・ロドリゲスとの対戦が実現すると、そんな黄昏時に飛び抜けてキャリア最強の相手と戦うことになります。

それでも、大勝負、見たいですね。      




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週刊 英国ボクシングニューズ誌、10月24日号です。

もう11月7日。ロンドンから極東の島国に住む酔っ払いんちのポストに辿り着くまで、2週間近くかかるのです。

もちろん、デジタル版では10月24日に読めますが、紙バージョンは2週間後。

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今夜は「やっぱり紙はええなぁ〜」という、老兵の泣き言ではなく、この表紙です。

英国ボクシングが大好きというマニアではなく、ボクシングファンとしてこの2人のファイターが誰なのかをすぐにわかった人は、かなりのボクシングマニアです。

https://fushiananome.superknova.org/archives/cat_376282.html


ボクシング最大の魅力は、二つの拳、それもナックルパートのみで戦うことが許された、武器面積が世界一狭くて小さい格闘技にもかかわらず、途轍もなく繊細で複雑で高等で、ありえないことですが、ときには上品さすら見せてくれるスペクタクルです。

そして、そんな競技の側面だけでなく、長い歴史や、その土地で育まれた文化、「テロワール」とも呼ぶべき遺伝子の躍動です。

この表紙のファイター2人は、英国以外の国で大きく取り上げられることはありえませんが、ムスリムと黒人の英国人ファイターには物語を避けては通れません。

話は飛んで、さまざまなスタイルで戦う日本人ボクサーのテロワールは、フォームでもメカニクスでもなく大和魂でしょう。

堤聖也のような火の玉ファイターはもちろん、那須川天心のような転校生ですら、誰から受け継がれたものでもなく、その遺伝子をしっかり持っているのです。

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英国ボクシングニューズ誌から、The Greatest Achievements in Boxing History。




Wilfred Benitez – World Champion at 17 Years Old

22歳で3階級制覇を達成したウィルフレド・ベニテスほど過小評価されているボクサーはいない。

15歳でプロデビューすることは、メキシコやプエルトリコではけして珍しいことではない。カネロ・アルバレスのプロデビューも、同じく15歳だった。

しかし、17歳で世界タイトルを獲得するのは前代未聞のこと。ましてやその相手が当時、ジュニアウエルター級史上最強と謳われたアントニオ・セルバンテスなら、なおさらだ。

世界タイトルが大量生産される4−Belt Eraでは、ベニテスの最年少記録が更新される日がいつか訪れるかもしれないが、それは全く価値の違うくだらないゴミでしかないだろう。



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Manny Pacquiao– Eight Division World Champion 

マニー・パッキャオの8階級制覇も、4−Belt Eraではいつ破られても何の不思議もない。

現代では、弱い相手を選べば簡単に世界王者になれる。階級もタイトルもよりどりみどりだが、誰の記憶にも、もちろん歴史にも残らない。

しかし、未来の一発殿堂入り選手やPFPファイターを蹴散らしながら、10階級のスパンで8階級を制し、そのうち5階級でLineal championというパッキャオのクオリティーは更新不可能だ。







Sam Langford’s resume from Lightweight to Heavyweight 

パッキャオは8つの階級で世界王者になったが、サム・ラングフォードは一度もタイトルに辿り着くことができなかった。

しかし、ライト級でジョー・ガンズ、ウエルター級でジョー・ウォルコットとピーター・ジャクソン、ミドル級からライトヘビー級でスタンリー・ケッチェル、タイガー・フワワーズ、フィラデルフィア・ジャック・オブライネンを撃破。

さらに、ヘビー級でも強豪を倒したラングフォードは2人のジャック(ジョンソンとデンプシー)が対戦を回避したことでも有名だ。

もし、当時が4団体17階級時代というメチャクチャな時代なら、いくつの階級で世界王者になっていたことか。


▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ 歴史上のグレートと比べたらダメなのかもしれませんが…井上信者の人に聞いてみたい。「強い相手としか戦わない」って、ちょっとふざけてみただけなんでしょうか???



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英国ボクシングニューズ誌から、

The Greatest Chins in Boxing – Part One

最も打たれ強いファイターは誰だ?

最近の日本人では亀海喜寛や村田諒太、井岡一翔もなかなか膝を揺らしません。

さてさて。世界、それも歴史上のザ・ベスト20となると…。



【第20位】カネロ・アルバレス

【第19位】クリス・ユーバンク

【第18位】フリオ・セサール・チャベス

【第17位】デビッド・トゥア

【第16位】ジェームス・トニー

【第15位】ジョージ・フォアマン

【第14位】ミッキー・ウォード



ここまで、現役からランクインしたのはカネロだけ。そうなりますかね。カネロが打たれ強さを証明したGGGも相当だと思います。

ノニト・ドネアも井上尚弥とニコラス・ウォータースにはまともに喰らってしまいましたが、打たれ強い。

ベスト20となると、入り込めるのはカネロが精一杯というのは仕方がないか。


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リング誌が廃刊してしまった今、英語圏で定期発行されているボクシング専門誌は英国の「BOXING NEWS(BN)誌」だけになってしまいました。

BN誌がスペシャルなのは「記事が面白い」だけでなく「1909年創刊」という、リング誌はもちろん、スポーツ専門誌として世界最古という圧倒的な歴史!そして「週刊」であること!そして21世紀になってどんどんページ数が減って過去の焼き直し記事が目立つようになったリング誌とは逆に「ページ数が増えて」充実している!などなどを挙げることができます。

手元にある最新号は8月29日号で「JAPANESE BOXING SPECIAL EDITION」(日本ボクシング特集)。

井上尚弥を表紙に「怪物」のネオンサイン。

そして、いつもは「The world’s best fight magazine Est,1909」と書かれている、このカバーページの右上には「世界最高の格闘技雑誌 1909年創刊」と日本語の文字が!神は細部に宿るのだ!!!

      わかりにくいか?⬇︎

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井上尚弥が漫画風のフキダシで「こんにちは」。ラッシャー木村かと思ったぜ!

井上信者には残念ながら中身は薄く、那須川天心も「日本のスーパースター」。

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そして、リング誌もそうであったようにこの手の「日本特集」はいつも内容が薄い、薄い。

しかし!面白くしっかりまとめられたええ記事もありました。

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「God’s plan(神の計らい)」。

9月3日、有明アリーナに上がったファイターで、このBN誌で最も大きく取り上げられたのは、英国の読者にとって身近な階級ではない井上尚弥でも那須川天心であるはずもなく…。

久しぶりに訳しがいのある記事です。

週末にはお届けしますね。

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こんばんわ。
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PFPが階級を無視する評価であるのなら、階級を無視して重くて大きな相手と実際に戦い勝利しているファイターこそがPFPキングではないか?

このブログでも繰り返し書いてきましたが、クルーザー級のUndisputed champion オレクサンデル・ウシクはヘビー転向後、タイトロープを渡るようなギリギリの戦いが目立つにもかかわらず、多くのメディアでPFPの1位評価を受けているのはまさに「階級を無視して重くて大きな相手と実際に戦っている」からです。

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もし、ウシクがジュニアフェザー級で同じ内容の試合をしていたなら、歯牙にもかけられていないでしょう。

さらに、ウシクがクルーザー級を経由せずに最初からヘビー級で戦い〝あのザマ〟だったなら、やはりPFP論議の俎上に上がるはずもなく、それどころか穴王者の烙印を推されているかもしれません。

現実に、ウシクよりも明白な内容でヘビー級に君臨していた無敗時代のアンソニー・ジョシュアやタイソン・フューリー、デオンティ・ワイルダーをPFPに数えていたメディアは少数派でした。

ジョシュアやフューリーはヘビー級でも体格に恵まれていましたが、ワイルダーは身長こそ見劣りしないものの体重はブリッジャー級にも満たないことが当たり前の〝超軽量級〟でした。

もし、かつて語っていたように「クルーザー級に落とすのは簡単」というワイルダーがクルーザー級王者を経由してからヘビー級に進出、あの破竹のKO劇を繰り広げていたなら、間違いなくPFP1位評価に浴していました。

もちろん、PFPの矛盾点を指摘しても仕方がありません。そもそもが矛盾と倒錯の妄想から立ち上がり、4団体17階級時代になって多くのメディアが定期的にランキングされるようになったものです。

例えば、最も早くからPFPを定期発表していたリング誌が毎月更新していたのは1990年から。廃刊によって、現在はデジタルバージョンのみになっていますが、これは2010年から。

井上尚弥を「日本ボクシング史上初のPFP1位」という表現が、大きな誤解を招くことがお分かりでしょう。

「2010年から始まったリング誌PFPで初めて1位になった」が正確です。

さて「ウシクこそが本物のPFP」と、多くのメディアが評価するウクライナ人の評価は正しいのでしょうか?

そもそもが幻覚の妄想でしかないPFPに正しいも間違っているもないのですが…。

そもそも、ヘビー級人気の陰に隠れたシュガー・レイ・ロビンソンを賞賛するツールとして知られるようになったPFPは「弱者の言い訳」という性格が色濃い考え方です。

強者(ヘビー級)は現実世界で、弱者は妄想世界(PFP)で評価するという、一定の棲み分けがなされていました。

海外で多く聞かれる「軽量級に贔屓しすぎ」という批判は的外れです。弱者の言い訳なのですから、ヘビー級に冷たく、軽量級に甘いのは当然です。



さて、本題です。




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カネロ・アルバレスはボクシングの興行史上ベスト5に出場経験のある唯一の現役ボクサーだ。

フロイド・メイウェザーとのメガファイトでPPV売り上げ1億5000万ドル、ゲート収入2000万ドルを記録した。

カネロは現在34歳。引退についてはまだ何も口にしていないが、彼のキャリアがカウントダウンに入っているのは間違いない。

マニー・パッキャオとフロイド・メイウェザーが引退してしまい、米国市場で巨額のイベントを作ることができるファイターはカネロだけ。そして、カネロの引退で、その系譜はついに途切れてしまうかもしれない。


それでも。かつての威厳は失っているものの、ヘビー級は今なお大きな興行を立ち上げ続けている。

I often find my friends who usually pay no attention to boxing know the names of the top heavyweights yet have never heard of most of the fighters on the top 10 pound-for-pound list.

ボクシングに興味のない友人でもヘビー級選手の名前は知っている、なんてよくあること。もちろん、彼らはPFP10傑なんて全く知らない。※これはアンソニー・ジョシュアやタイソン・フューリーらの英国での認知度のことで、米国ならヘビー級選手もPFPも知らない。

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ボクサーがスターになるための条件とは何だろうか?

まず、 Pedigree。「血統」だ。

ここでいう血統は、競馬の馬の血筋ではない。アマチュア実績のことだ。

多くのボクサーが本業を別に持ちながらキャリアをスタートするのに対して、五輪のメダリストの多くは、厚遇で大手プロモーターに迎えられ、スターダムに駆け上がるまでを逆算したマッチメイクを用意される。

もちろん、アマチュア実績が14試合しかないフリオ・セサール・チャベスのような存在もたまに現れるが、彼らは例外だ。

そして、プロデビューすると、もはやそこは欺瞞の渦巻くビジネスの世界。

「無敗」はその内容に関わらず、一定の商品価値が認められる。

これを最も効果的に利用して、その値を釣り上げたのがフロイド・メイウェザーだ。

 Mayweather’s perfect record, along with the villain role that he carefully constructed, turned him into the biggest Box Office draw that boxing has ever seen, the face of boxing, and one of the wealthiest athletes of all time.〜無敗のヒールを演じることで、メイウェザーは悪役(マイク・タイソンのような演じていない悪役とは全く違う)でありながらボクシング界を代表する存在になり、時代を代表するリッチなアスリートにまで登り詰めた。

ロッキー・マルシアノを史上最高のファイターと呼ぶ人はいない。それどころか、史上最高のヘビー級とも評価されていない。しかし、彼は「無敗」の王者のままリングを去ったことで、特別な存在になった。

現在のファイターはメイウェザーと同じか、それ以上に無敗に執着しているが、自らを悪役に貶める勇気まで持ち合わせていない。

リングの中の退屈すぎる無敗を、品性下劣な言動で味付けすることで、アンチの敵意を刺激したのがマネー・メイウェザーだったが、現代のボクサーは退屈な無敗にしがみつくだけで、度を超えた(ように見える)品性下劣な行動は控えてしまう。

さて、「血統」と「無敗」はスターの条件だが、この二つは自分でコントロールできる。

五輪で金メダルを獲る、プロで無敗を続ける。これは実力を磨けば不可能ではない。



しかし、三つ目の条件「ライバル」はそうはいかない。

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 The biggest stars in boxing history have had dance partners that acted as the Joker to their Batman.

歴史の残るスターにはバットマンに対するジョーカーのように、必ず魅惑的なダンスパートナーが存在した。

モハメド・アリは、史上最強の呼び声高いソニー・リストンを2試合連続で撃破、ジョー・フレイジャーとの激闘3部作を完成させ、ジョージ・フォアマンを相手に奇跡を起こした。

アリに王座を奪われたフォアマンが20年後の世界でトップファイターを薙ぎ倒して、王者に返り咲いたことはアリの偉大さを間接的だが、衝撃的に印象づけた。

シュガー・レイ・レナードはロベルト・デュラン、トーマス・ハーンズ、マーベラス・マービン・ハグラーがいたからこそ、スーパースターたりえた。3人のうち誰か一人でも欠けていたら、レナードの評価も印象も大きく減退していたのは間違いない。

それは他の三人にとっても同じこと。彼らは三位一体ならぬ、まさに〝四位一体〟だったのだ。

金メダルどころか五輪出場の経験すらない(2008年北京五輪でフィリピン代表団の旗手を務めているが)マニー・パッキャオは咬ませ犬として米国に呼ばれ、大番狂せを繰り返しながら、メキシコ史上最強に数えられるマルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスとの総当たり戦に大きく勝ち越して、外国人で初めて米国市場の頂点に立った。

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マイク・タイソンが年上のイベンダー・ホリフィールドやレノックス・ルイスとの総当たりに勝ち抜けていたら(実際は3戦全敗実質3KO負けで〝予選敗退〟)?若きビタリ・クリチコを退けていたら?その評価はどれほど高かっただろうか?

「タイソンが勝ったのは弱い相手だけ」なんて、誰も口にできなかっただろう。タイソンはライバル運には恵まれていたが、実力が足りなかった。

ロイ・ジョーンズJr.もヘビー級にとどまって強豪王者との試合に応じていたら、そこで勝利していたら、彼の評価は全く違うものになっていた。



英国圏限定ながら、クリス・ユーバンクとナイジェル・ベンの火花散るライバル関係は、90年代英国リングのハイライトだった。

彼らの再戦には4万2000人がスタジアムの席を埋め、英国人口の4分の1にあたる1600万人がテレビ観戦した。

この二人の息子たちの戦いに盛り上がる英国を、世界中のボクシングファンは冷めた目でみるが、彼らは90年代の余熱がまだ残っていることが理解できないのだ。

Ultimately, boxing isn’t just a sport; it’s also the entertainment business. 

とどのつまり、ボクシングはスポーツではない。エンターテイメント(スポーツ)なのだ。

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サウジアラビアの〝ボクシング・スーパーリーグ構想〟は、実に非常に奇妙な形をしています。

かつて日本も〝カネ余り〟の勢いでゴッホの「ひまわり」を買い、マイク・タイソンを招致しました。当時は、多くの人がバブルは永遠に続くと考えていました。そもそも、バブルの真っ只中では「バブル」などという言葉は存在しません。

しかし、あれは一夜の泡沫でした。日本列島は、ひまわりやタイソン、バブルの祭りに酔っていました。

サウジのカネ余りは、バブルに沸き立った日本とは違います。バブルではなく豊富な石油資源によって支えられたサステナビリティな繁栄です。

有限の化石燃料をサステナビリティと呼ぶのは倒錯しまくりですが、そもそもがお笑い種の流行語です。そういえば、私が小中学生の頃は「石油はあと30年で枯渇する」と言われていた記憶がありますが、世の中って本当にいい加減で間違いだらけです。




さて、ラスベガスで最大勢力を誇るカジノ&リゾート企業、MGMグループをして「招致合戦をする相手ではない」と、戦う前に戦意喪失、白旗を挙げさせたサウジアラビアと、バブル期の日本やラスベガスには大きな違いがあります。

まず、資金力の大きな格差。ラスベガスがメガファイトを招致するとき、その経済効果を考えてサイトフィー(招致する金額)を決めます。

フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスのサイトフィーは1000万ドル単位でしたが、それを補って余りあるネを落としてくれる宿泊客が訪れてくれるのです。

ボクシングは衰退産業で、一般のスポーツファンには名前を聞いたことがなくても、メイウェザーやパッキャオ、アルバレスはボクシングファンなら誰でも知っています。

井上尚弥がどうしてラスベガスに招致されないのかというと、ボクシングファンレベルですら無名だからです。サイトフィーまで支払って招致する対象ではないのです。

先日、マディソン・スクエア・ガーデンの興行に招かれた井上尚弥に多くの観客が気づかず、世界王者ですらないエドガー・ベルランガらの方に多くの人が集まり写真を撮られている光景にティモシー・ブラッドリーは「ここ(米国ボクシングシーン)では井上尚弥が何者なのかを誰も知らない。誰も彼と並んで写真を撮ろうともしないんだ」と現実を伝えていました。

当たり前です。ボクシングファンは日本と中国や韓国との区別もつきません。日本人がバルト三国を知らないのと同じです。

知らない、というよりも知ろうともしない、そもそもの関心がないのです。

さらに、ライト級が文字通りの軽量級で、そこからさらに軽いジュニアフェザー級など存在しないに等しい、それほど興味を持たれない事情も横たわっています。

もちろん、絶対的不人気階級でもメキシカンのスターが登場するなら、話が変わってきます。

パッキャオが神がかり的に幸運だったのはメキシカンのスター、それも軽量級では歴史的なスーパースターが3人も包囲網を形成してくれたからです。

一方の井上が手に入れたメキシカンはルイス・ネリが最高の名前…もはやメキシカン云々の次元で語ることもできない全く無名の雑魚。井上の運の悪さ、巡り合わせの悪さも神がかり的です。

No one knows who he is. Nobody cared to be next to him. No pictures.

こんな状況では、サイトフィーなど発生するわけもなく、だからラスベガスでメガファイトなど夢のまた夢なのです。



経済原理で動くラスベガスや日本と、サウジは根本的に違います。

ラスベガスや日本では招致したメガファイトに沸き立ちますが、サウジの国民は全く興味がありません。

首都リヤドのキングダム・アリーナのあの不気味な静けさには、違和感を通り越してゾッとします。それは国民性などという単純なものではありません。

かつて、ザイールのモブツ大統領やフィリピンのマルコス大統領が世界で最も有名な人物であるモハメド・アリのメガファイトを招致することで自らの権威を誇示し、国威発揚を狙いましたが、サウジの目的はそこにはありません。

そもそも、国民はタイソン・フューリーもオレクサンデル・ウシクも知らないのですから。

そして、招致合戦に敗れたラスベガスは「奴らがやってることはスポーツウォッシングだ」とは公には口にしません。

当たり前です。ラスベガスにとって最も巨額の金を落としてくれる乗客は、サウジの王族たちなのですから…。

ここで、正義(そんなものがあるとしたら)を振りかざす気は毛頭ありません。

サウジが標榜する「ボクシング界を長らく低迷させ、ファンを幻滅させ続けてきた大手プロモーターや、デタラメなランキングで王者を作り出す認定団体、テレビ局やネット配信の縄張り争い…そんな障害物を超えて最高のマッチアップを実現する」というスローガンは、ボクシングファンにとっては夢の話です。

ジのスポーツウォッシング事業が本格的に立ち上がるのがあと10年早ければ、無敗時代のアンソニー・ジョシュアとデオンティ・ワイルダーによるヘビー級完全統一戦も、あれほど難航することはなく、あっさり実現していたでしょう。

あるいは15年早ければ、メイウェザーvsパッキャオも。


Big numbers have been tossed around - $2billion,according to The NewYork Times.  
〜ニューヨークタイムズによると(リーグ立ち上げの初期費用として)巨額の資金、20億ドル(約3200億円)が準備されたという。


さて、サウジが米英のプロモーターに持ちかけ、来年に立ち上がる計画のElite Leagueです。

人気階級12クラスから、欧米の人気選手15人を集めてリーグを編成するというもの。

12階級はヘビー級とそこに連なるクルーザー級、ライトヘビー、スーパーミドル級、ミドル級、ジュニアミドル級、ウエルター級、ジュニアウェルター級、ライト級と、その他(招待階級)になる模様。

腰が重いのは、超大物カネロ・アルバレスと言われています。キャリアを通して対戦相手を選び続けることに慣れた陣営の頬を札束で叩いて、アラビア半島までのチャーター機に乗せることができるかどうか?注目です。

欧米で不人気階級、認知度も低い井上尚弥らは招待選手として、セミファイナルなどに起用されるかもしれません。しかし、サウジがタンク・デービスらを当ててきたとき、自身のペースで慎重に階級を上げてきた(アスリートとしては当然です)井上がカネと欧米向けの栄光のために首を縦に振るとは考えられません。

いずれにしても、このボクシング・スーパーリーグが本当に展開されるなら歴史が変わります。いっそのこと独自のチャンピオンシップ制を敷いて(リング誌買収なんて最高です)、腐敗し切ったアルファベット団体を駆逐するのも妙案です。

毒には毒を持って制す。

不人気階級で詐欺まがいのトーナメントを行ったWBSS(World Boxing Super Series)とは、真逆のサウジ・スーパーリーグ。

ヒルベルト・メンドサをはじめ認定団体の腐敗チェアマンたちが戦々恐々とし、英米のプロモーターが喜色満面で参拝するサウジアラビア。

エディ・ハーンやフランク・ウォーレンは、アリのような尊厳のためではなく、カネだけのためにイスラム教への改宗も考えているかもしれません…。



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5月18日にサウジアラビアで行われた今年一番のメガファイト、オレクサンデル・ウシクとタイソン・フューリーが争ったヘビー級Undisputed championship。

英国ボクシングニューズ(BN)誌の5月30日号から「Streaming wars〜The men(and women)who stole the world heavy weight fight (ネット配信を巡る戦争〜彼らは世界ヘビー級タイトルマッチを盗んだ」。

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 the Dairy Mail 紙によると、少なくとも2000万人が違法に試合を見て、その損害は9500万ポンド(約162億円)にのぼるそうです。

世界2000ヶ所で違法に配信され、そのうちの18%(約400万人)が英国、25%(約500万人)が北米だった。この数字はスポーツイベントでは史上最高記録。

月極料金を支払っている上に、約30ポンド、5100円のPPVを支払って見た人にとってはやりきれない事態です。

IF YOU MATCH THE BEST BOXERS , THERE WILL ALWAYS BE INTEREST

ネット配信がボクシング中継のメインストリームになったいま、多くのボクシングファンは、これまでテレビのチャンネル数の問題(米国のプレミアムケーブルも含めて)から、見たくても生で見れない試合がありました。

ネット配信によって、より多くの試合を見ることができます。

やはり、テレビの番組枠の問題からメインイベントを中心に切り取った試合しか見ることのできなかったイベントでも、4回戦のオープニングファイトから見ることができる、マッチメーカーの意図を読む楽しみも増えました。

その結果、DAZNが参入したときに高らかに宣言した「HBOやSHOWTIMEの高額なPPVに不満を持っているボクシングファンを解放する」という理想はどこへやら。

DAZNやネット配信企業はあれほど攻撃していたPPVに手を染め、ボクシングファンの支出は大幅に増えてしまっています。

その金額をなんとが捻出するマニアと、違法に見ようとする人々…そこにはカジュアルなボクシングファンの姿は見当たりません。



ボクシングの未来は、どこにあるのでしょうか?
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