IMG_2707 (1)



カネロ・アルバレスはボクシングの興行史上ベスト5に出場経験のある唯一の現役ボクサーだ。

フロイド・メイウェザーとのメガファイトでPPV売り上げ1億5000万ドル、ゲート収入2000万ドルを記録した。

カネロは現在34歳。引退についてはまだ何も口にしていないが、彼のキャリアがカウントダウンに入っているのは間違いない。

マニー・パッキャオとフロイド・メイウェザーが引退してしまい、米国市場で巨額のイベントを作ることができるファイターはカネロだけ。そして、カネロの引退で、その系譜はついに途切れてしまうかもしれない。


それでも。かつての威厳は失っているものの、ヘビー級は今なお大きな興行を立ち上げ続けている。

I often find my friends who usually pay no attention to boxing know the names of the top heavyweights yet have never heard of most of the fighters on the top 10 pound-for-pound list.

ボクシングに興味のない友人でもヘビー級選手の名前は知っている、なんてよくあること。もちろん、彼らはPFP10傑なんて全く知らない。※これはアンソニー・ジョシュアやタイソン・フューリーらの英国での認知度のことで、米国ならヘビー級選手もPFPも知らない。

IMG_5712 (1)



ボクサーがスターになるための条件とは何だろうか?

まず、 Pedigree。「血統」だ。

ここでいう血統は、競馬の馬の血筋ではない。アマチュア実績のことだ。

多くのボクサーが本業を別に持ちながらキャリアをスタートするのに対して、五輪のメダリストの多くは、厚遇で大手プロモーターに迎えられ、スターダムに駆け上がるまでを逆算したマッチメイクを用意される。

もちろん、アマチュア実績が14試合しかないフリオ・セサール・チャベスのような存在もたまに現れるが、彼らは例外だ。

そして、プロデビューすると、もはやそこは欺瞞の渦巻くビジネスの世界。

「無敗」はその内容に関わらず、一定の商品価値が認められる。

これを最も効果的に利用して、その値を釣り上げたのがフロイド・メイウェザーだ。

 Mayweather’s perfect record, along with the villain role that he carefully constructed, turned him into the biggest Box Office draw that boxing has ever seen, the face of boxing, and one of the wealthiest athletes of all time.〜無敗のヒールを演じることで、メイウェザーは悪役(マイク・タイソンのような演じていない悪役とは全く違う)でありながらボクシング界を代表する存在になり、時代を代表するリッチなアスリートにまで登り詰めた。

ロッキー・マルシアノを史上最高のファイターと呼ぶ人はいない。それどころか、史上最高のヘビー級とも評価されていない。しかし、彼は「無敗」の王者のままリングを去ったことで、特別な存在になった。

現在のファイターはメイウェザーと同じか、それ以上に無敗に執着しているが、自らを悪役に貶める勇気まで持ち合わせていない。

リングの中の退屈すぎる無敗を、品性下劣な言動で味付けすることで、アンチの敵意を刺激したのがマネー・メイウェザーだったが、現代のボクサーは退屈な無敗にしがみつくだけで、度を超えた(ように見える)品性下劣な行動は控えてしまう。

さて、「血統」と「無敗」はスターの条件だが、この二つは自分でコントロールできる。

五輪で金メダルを獲る、プロで無敗を続ける。これは実力を磨けば不可能ではない。



しかし、三つ目の条件「ライバル」はそうはいかない。

img_0792_1_b05d3a0b-e682-4e20-a5fb-f5124371e907_2000x


 The biggest stars in boxing history have had dance partners that acted as the Joker to their Batman.

歴史の残るスターにはバットマンに対するジョーカーのように、必ず魅惑的なダンスパートナーが存在した。

モハメド・アリは、史上最強の呼び声高いソニー・リストンを2試合連続で撃破、ジョー・フレイジャーとの激闘3部作を完成させ、ジョージ・フォアマンを相手に奇跡を起こした。

アリに王座を奪われたフォアマンが20年後の世界でトップファイターを薙ぎ倒して、王者に返り咲いたことはアリの偉大さを間接的だが、衝撃的に印象づけた。

シュガー・レイ・レナードはロベルト・デュラン、トーマス・ハーンズ、マーベラス・マービン・ハグラーがいたからこそ、スーパースターたりえた。3人のうち誰か一人でも欠けていたら、レナードの評価も印象も大きく減退していたのは間違いない。

それは他の三人にとっても同じこと。彼らは三位一体ならぬ、まさに〝四位一体〟だったのだ。

金メダルどころか五輪出場の経験すらない(2008年北京五輪でフィリピン代表団の旗手を務めているが)マニー・パッキャオは咬ませ犬として米国に呼ばれ、大番狂せを繰り返しながら、メキシコ史上最強に数えられるマルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスとの総当たり戦に大きく勝ち越して、外国人で初めて米国市場の頂点に立った。

bxp003xlarge


マイク・タイソンが年上のイベンダー・ホリフィールドやレノックス・ルイスとの総当たりに勝ち抜けていたら(実際は3戦全敗実質3KO負けで〝予選敗退〟)?若きビタリ・クリチコを退けていたら?その評価はどれほど高かっただろうか?

「タイソンが勝ったのは弱い相手だけ」なんて、誰も口にできなかっただろう。タイソンはライバル運には恵まれていたが、実力が足りなかった。

ロイ・ジョーンズJr.もヘビー級にとどまって強豪王者との試合に応じていたら、そこで勝利していたら、彼の評価は全く違うものになっていた。



英国圏限定ながら、クリス・ユーバンクとナイジェル・ベンの火花散るライバル関係は、90年代英国リングのハイライトだった。

彼らの再戦には4万2000人がスタジアムの席を埋め、英国人口の4分の1にあたる1600万人がテレビ観戦した。

この二人の息子たちの戦いに盛り上がる英国を、世界中のボクシングファンは冷めた目でみるが、彼らは90年代の余熱がまだ残っていることが理解できないのだ。

Ultimately, boxing isn’t just a sport; it’s also the entertainment business. 

とどのつまり、ボクシングはスポーツではない。エンターテイメント(スポーツ)なのだ。