カテゴリ: ESPNから

前回までのお話を、私見も絡めてまとめると…。

ファイターはリスクとリターンを考えて試合に臨むのは当然です。しかし、敗北を極度に恐れてファンが期待するマッチアップを敬遠したり、「何がなんでも勝つ」ではなく「何がなんでも負けない」つまらないスタイルに凝り固まると人気は出ません。

しかし「フロイド・メイウェザー」という史上最悪のサンプルが、特にアフリカ系米国人をミスリードするケースが見受けられます。

まずボクシングは、没落しているスポーツです。どんどんマイナーに、どんどんマニアックな色合いを濃くして一般のスポーツファンからは認知されない地下深くに潜り込んでしまっているのです。

さらに、アフリカ系米国人は社会的地位が向上、往年のようにボクシングが身近なスポーツではなくなっているのです。

多くの母親にとってはボクシングは選んで欲しくないスポーツで、人気のある球技に才能が流れていますが、それでも世界ヘビー級チャンピオンはアフリカ系米国人にとって最強で最高の英雄だった時代がありました。

アフリカ系アメリカ人は、過去と同じことをやっていてはいけないのです。

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Promoters don't often work together
プロモーターは互いに反目しあう。


現在の米国プロボクシングの世界は、4つのプロモーターが3つのネットワークと業務提携を結び、3つのグループに分割されています。

ESPNはトップランク、DAZNはマッチルームとゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)、ショータイムはプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)。

彼らは、自分たちが囲い込んだ選手でイベントを作り、ライバルのプロモーター傘下の選手と戦わせることはまずありません。

もしそういった交流を行うと、収益をどう分け合うかという問題が生じます。そして、そもそもどちらネットワークで放送するのか?

自分たちだけで興行を打っていた方が儲かるなら、交流にビジネス的な意味はありません。

また、当たり前の話ですが、彼らはライバル関係にあり、互いにいがみ合っています。

商業的に意味が薄く、互いに反目し合っている…プロモーターやネットワークを超えたマッチメイクが成立しないのは当然です。

それでも、今年はガーボンタ・デービスとライアン・ガルシアの試合ではアル・ヘイモン(PBC)とオスカー・デラホーヤ(GBP)が一時的に提携しました。

2002年にはレノックス・ルイスとマイク・タイソン、2015年にはフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオ、2017年にはアンソニー・ジョシュアとウラジミール・クリチコのメガファイトがHBOとショータイムのPPVで同時生中継されています。

2020〜2021年にわたって行われたタイソン・フューリーとデオンティ・ワイルダーの三部作の第2、第3戦もESPNとFOX の共同PPV。

ファンの要求が大きく、莫大な収益を生み出すメガファイトなら、商業的意味が発生し、彼らは一時的に互いに向ける憎悪を忘れることができるのです。



Details matter
問題はカネ。しかし、金だけじゃない。

現代のメガファイト、たとえばカネロ・アルバレスの試合を見ればわかるように、メキシコ音楽を奏でるマリアッチバンド、花火、ミュージシャンのパフォーマンスなど長い前奏が付き物です。

さらに、Bサイドのボクサーは先にリングインするので、Aサイドのボクサーが入場するまでかなりの時間を待たされてしまいます。

しかし、王者同士の戦いとなると、そうはいきません。「どちらが先に入場するか?」は些細なことに聞こえますが、「どちらが待たされるか」なら少しニュアンスが変わってきます。

瑣末な問題の例では、2014年にWBCミドル級王者セルヒオ・マルチネスに挑戦するミゲール・コットがイベントのタイトルを「コットvsマルティネス」と挑戦者を先にすることを主張。王者にも関わらずBサイドのアルゼンチン人は、これを受け入れました。


オレキサンデル・ウシクとフューリーの試合が決裂したのは、再戦条項での報酬の分配でした。

初戦で3−7の分配を受け入れたウシクは、再戦で7−3を要求、ここでフューリーは交渉の席を蹴りました。

「Bサイドの分際で何を偉そうに!」ということです。

カネロとゲンナジー・ゴロフキンの対決が引き延ばされた最大の要因は、カネロ陣営がGGGの衰えを待っていたということです。しかし、当初の交渉で王者GGGが報酬の分配で挑戦者カネロに大幅に譲歩することを受け入れられなかったのも一因です。

カネロからしたら「俺と戦うだけでキャリアハイの何十倍も儲かるのに、お前は何様なんだ?」ということです。

他のスポーツでは、勝者がより多くの報酬を手にします。決勝戦を戦う前から報酬の分配が決まっているなんてことはあり得ません。

Aサイド、Bサイドなんて、およそスポーツの概念から程遠いワードが跳梁するのもこのスポーツの闇です。

相手陣営の見ている前で開封するルールのグローブを、勝手に開けて試していても井上尚弥なら不問、ドネアのクレームはカネで解決したのでしょうか。井上はAサイドの傲慢で好き勝手しているのではなく、おそらくそのルールを知らず、今までもやっていたはずです。

「え?ダメなの?」という感じだったんでしょう。

フロイド・メイウェザーはオスカー・デラホーヤとのメガファイトで、グローブやウエイトでデラホーヤ寄りの条件を丸飲みしました。キャリアハイの3倍の報酬、さらにデラホーヤというビッグネームとの対戦。

勝つ自信があったメイウェザーにとって「ビジネスとして成立する」試合だったのです。この本人の言葉を借りれば、全盛期のコットやアントニオ・マルガリートとの試合は報酬こそキャリアハイが期待できても、負けるリスクが高かったから「ビジネスとして成立しない」と言い放ったのでしょう。

カネロとの試合で、ビリー・ジョー・サンダースは「リングの一辺を2フィート広げなければ契約書にサインしない」と要求、カネロが二つ返事でこれを受け入れた理由は二つ。サンダースのWBOのストラップをコレクションに加えたかったことと、サンダースを破壊する自信があったからです。

ジュニアフェザー級以下の井上らの対戦相手は「日本で戦う以外の選択肢はない」(ノニト・ドネア)というビジネス上の絶対的事実から、条件面での綱引きは「日本側がどこまで譲歩してあげるか」の問題。

ファイター同士のプライドと金銭欲、そしてプロモーターとネットワークの対立と算盤勘定…。

ファンが見たい試合には、いくつもの障害物が立ち塞がり、成立しないこと、成立してもベストのタイミングを逸することが当たり前になっています。

そして、ボクシングは低迷と没落の谷底へ深く沈んでいくのです。

このスポーツが米国で再び陽の目を見ることが、たった1試合でもあるでしょうか?
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ESPNから「How to fix boxing: Why is so difficult to make the 'big fights'? Let's start there.(米国ボクシングの凋落:ファンが望むビッグファイトはなぜ実現しないのか?話はそこからだ)」を取り上げながら、徒然に。

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シリーズものでこれが第一弾。

昨年廃刊に追い込まれたリング誌は、すでに3年ほど前から魅力的な読み物は誌面から消え、その役割はESPNや英国ボクシングニューズ誌が担って来ました。


The matchup between Spence and Terence Crawford, long considered the two best 147-pound fighters in the world, was just an example of the type of bout fans craved but didn't receive.

エロール・スペンスJr.とテレンス・クロフォードのウエルター級最強決戦は、長年ファンから熱望されながら実現しなかった一つの例に過ぎない。


まともなスポーツは、カネやメンツや利害関係で動かせるものではありません。ボクシングの世界ランキングはかなり変わっていて、4つの認定団体が4つのランキングを毎月発表しています。

そのランキングは、団体によってまちまちです。どの団体のランキング作成者も自分たちのランキングが間違っていることをわかっています。それでも、営利団体たる認定団体は本部にゆかりのある選手や、認定料の支払い能力・実績がある選手を優遇します。

4団体17階級時代になると、少なくとも80年代から続く没落はさらに顕著になりました。





In 2010, the Nevada State Athletic Commission sanctioned 30 boxing events. That number dwindled to 13 each in 2021 and 2022.

2010年にネバダ州アスレティック・コミッションは30のボクシング興行を認定していましたが、その数は2021年と2022年はそれぞれ13にまで落ち込んでいます。



Risk vs. reward: Protecting the '0'(リスクとリターン:無敗を傷つけたくない)

ハイリスクの試合に臨むのに報酬がそれほどでもないなら、誰も戦いたくありません。



"If a fighter is going to take a risk, it's got to be for a reason, for the reward," Arum said. "And if he has to take a risk and there's no real reward for him, he's not going to do it."

「ファイターがリスクを犯すのは、それに見合った報酬が保証されたときだ。もし、そでなければ彼は冒険に打って出ることはない」(ボブ・アラム) 

アラムが仕掛けたミドル級ウォーズ。

マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、ロベルト・デュラン。彼らが繰り広げたスペクタクルなラウンドロビンは、ハイリスクに相応しいハイリターンが用意されていました。そして何よりも、世界中のボクシングファンの尊敬と注目を浴びることが出来ました。

例えば、日本のボクシングファンでも「レナードvsハーンズ」「ハグラーvsハーンズ」「レナードvsハグラー」のような試合と、今の「スペンスvsクロフォード」を注目している人の数と熱気の総量は全く比べ物にもなりません。

それを言い出すと「ソニー・リストン」「モハメド・アリ」「ジョー・フレイジャー」「ジョージ・フォアマン」は、当時のスポーツファンなら誰でも知っている名前でした。






And then there is the "Mayweather Effect."


Floyd Mayweather, the greatest fighter of the past generation, retired with a 50-0 record. His combination of ring skills and business acumen created a transcendent megastar and, perhaps, a troubling trend.
そして…「メイウェザーの悪影響」です。一つ前の世代で最も大きな足跡を残したメイウェザーは50戦全勝0敗で引退しました。彼のボクサーとしての技術だけでなく、ビジネスマンとしての嗅覚がメガスターへの道を切り開き、お騒がせで注目させるトレンドも残してしまった。

メイウェザーは人気の本質が「好感」ではなく「嫌悪感」であることを見抜いて、下劣な行為とつまらない試合で勝利を重ねるコンビネーションで、ファンに「負けるところが見たい」という気持ちを惹起させました。

「嫌悪感」は「好感」の反対語ではありません。「嫌悪感」は「好感」の最上級語なのです。「嫌悪感」や「好感」の反対語は「無関心」です。

勘違いしてはいけないのはつまらない試合を繰り返すだけでは大金を稼げません。注目もされません。「嫌悪感」を燃え上がらせなければ、ただの面白くないヤツです。

誰のこと勝って?数え切れないほどいるけど、最近なら、デビン・ヘイニー、お前のことだ!

衰えた伝説に引導を渡せないヘタレ。たとえ無敗のままでもジョージ・カンボソスごときにもスターパワーで負ける冴えないキャリアを、これからも続けていくのでしょう。



In 2006, Mayweather turned down a career-high $8 million purse to fight Antonio Margarito in a welterweight title unification and instead opted to buy out his Top Rank contract for $750,000.

2006年、メイウェザーはアントニオ・マルガリート戦で提示されたキャリアハイの800万ドルの報酬を拒否 、逆に75万ドルを支払ってトップランクとの契約を解除した。


マニー・パッキャオとは違い、マルガリートのようなタフな巨人への苦手意識を露わにしたメイウェザーはチキンの謗りを浴びまくり、多くのファンから軽蔑されます。

この時点の〝プリティーボーイ〟メイウェザーが「マルガリートからの逃亡」を周到なセルフプロデュースの一環として手掛けていたのかどうかはわかりません。

しかし、 翌2007年にオスカー・デラホーヤをスプリットデジションで破り、デラホーヤが熱望した再戦には応じず、ファンの嫌悪感を焚き付けたのは、明らかにマーケティングの一環でした。

そして、この試合はボクシング史上最大の興行となりました。

「名誉やファンのために戦うんじゃない。カネのためだ。俺様は マネー(銭ゲバ)メイウェザーだ」。

そして、マネーは紙幣をばら撒いたり、DVなどの下劣な行為を重ねながら、ブラックホールのように嫌悪感を引きつけるキャラクターを完成させるのです。

彼に唯一の誤算があるとしたら、2008年にパッキャオがデラホーヤを自分とは比べようもなく鮮やかに粉砕してしまったことでしょう。

パッキャオは、メイウェザーが初戦で実質負けていた(メディアやファンの多くは115−112と採点)ホセ・ルイス・カスティージョをスピードとパワーで遥かに上回るファイターで、サウスポー。

メイウェザーにとって全盛期のパッキャオは、多くの意味ですぐに対戦する相手ではありませんでした。

この、メイウェザーのゼロ(無敗への執着)が、不遇の色彩が色濃くなる一方の米国の黒人ボクサーを勘違いさせてしまった罪は少なからずあるでしょう。 
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「カネロ、負けろ」。ずっとそんな逆応援してきました。

しかし、それが広義の熱狂的ファンであることはフロイド・メイウェザーが教えてくれました。

もし、また負けると、寂しい気持ちになるかもしれません。

なにしろ、今の米国市場にカネロの後継者は一人も見当たりません。

ライアン・ガルシアはアンチになるには弱すぎ、PPV100万セールス超えで大騒ぎでは人気の天井も低すぎます。

週末に迫った「THE KING is COMING HOME 」。ESPNの記事の拙訳です。




ジョン・ライダーはこの週末、2010年9月のデビューから13年、37戦(32勝18KO5敗)のプロキャリアの中で飛び抜けた金額のファイトマネーを手にする。

しかし、戦前予想もオッズも誰も彼が勝つとは思っていない。

地元でも米国でも英国のトップファイターが惨めに撃退されたカネロ・アルバレスを相手に、ライダーは完全敵地のメキシコ・グアダハラに乗り込むのだ。

希望のカケラを見つけるのさえ難しい場所で、惑星最高のボクサーの一人と戦うのだ。

興味深いことにザ・ゴリラのキャリアは、2019年11月23日に喫した敗北から好転した。

今回と同じように、圧倒的不利とみられたカラム・スミスとの英国対決はユナニマスデジションで落としたが、試合を見ていたファンが勇敢に戦い続けた彼が勝者だと不当判定を訴えたように、勝っていてもおかしくない内容だった。

復帰戦の2試合を難なくクリアすると、大勝負がセットされた。

米国のビッグネーム、ダニエル・ジェイコブスとのクロスゲームをスプリットデジションで潜り抜けたライダーは、昨年11月に無敗のザック・パーカーの変則スタイルに手を焼いたWBOスーパーミドル級の暫定王者決定戦は、パーカーが右拳を痛めて4ラウンド開始ゴングに応じられず棄権。

カネロ・アルバレスと戦うことは「報酬と名声」という意味において、地球上の全てのボクサーにとって究極の目標だ。

「報酬と名声」という意味において…ボクサーを職業とする者にとって、他に意味などあるわけがないから、この表現は正しくない。正しくは「カネロ・アルバレスと戦うことは、プロボクサーという存在にとって究極の目標」だ。

それにしても、ライダーは5つも敗北している。カネロ・アルバレスがそんな見映えのしない相手と戦うのは、2012年5月のシェーン・モズリー以来、11年ぶりの珍事。もちろん、モズリーが見映えがしない相手であるわけがない。

つまり、ジョン・ライダーはカネロがこのスポーツのキングになってから戦う、最も見映えのしない相手なのだ。

それだけでは済まない。ライダーが負けた5敗のうちの3つは、カラム・スミスとロッキー・フィールディング、ビリー・ジョー・サンダース。

そう、カネロになす術もなく破れ去った英国の〝惨敗三人衆〟だ。

惨敗三人衆は、世界王者の看板と無敗のレコードを引っ提げて、カネロに挑んで粉砕された。

そんな三人に負けたライダーは暫定王者になったことしかなく、5敗もしている。カネロの対戦相手としては完全な不良品だ。

WBOの暫定王者になったからUndisputed championのカネロに挑戦する、というのは一見筋が通っているように見えるが、ジョン・ライダーという男の履歴書を読めば読むほど、どうしてこのファイターがカネロと戦えるのか、全く理解できなくなる。

ボクシングでは何が起きても不思議はない、そういうことだ。

そう、ボクシングでは何が起きても不思議はない。
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ESPNの「I sacrificed for this fight': Ryan Garcia's long road to Gervonta Davis bout」からの拙訳です。

タイトルの I sacrificed for this fight': Ryan Garcia's long road to Gervonta Davis bout .…どう訳しましょうか。

直訳すると「俺はこの試合に全てを捧げてきた。ライアン・ガルシアがガーボンタ・デービス戦に至るまでの長い旅路」あたりでしょうか。

しかし、タイトルなんてものは、全文を読んで筆者の真意が読み取ってからでないと訳せません。

本文の種明かしをギリギリ抑えて「ライアン・ガルシアの本物を求める、厳しく長い旅が、ようやく終着駅に近づいている」。

こんな感じでしょうか。

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彼は、不安と憂鬱に押しつぶされそうな日々を送っていた。

いや、正確にいうと…最後は押しつぶされてしまった。

暴風のように吹き荒れ、落石のように襲ってくる不安と憂鬱に立ち向かう必要はない、病院の先生はそう教えてくれた。

忘れられる場所、忘れても良い場所を探しなさい、と。

ライアン・ガルシアが見つけたのはロスアンゼルス郊外のカジノだった。

そこは、誰の目も気にせずに一人になれる場所。そして、孤独の沼に足を囚われてしまわない場所。


先生に「カジノはダメですよね」と聞くと、笑ってくれた。「最高の場所を見つけたな!」と。


カードゲームが好きだった。どんな酷いカードが回ってきても、ここから勝利への道が始まると信じることができた。ほとんどのケースで、負けてしまうのだが、そんなことは関係なかった。

「ここから勝利の道が始まる」と思えることが、彼には大切だった。



しかし、ある夜。一人の男の視線を感じた。

ライアンは数百万人のSNSフォロワーを抱え、端正な顔立ちの軽量級のスターボクサーだ。他人の遠慮ない視線には慣れっこだった。

ただ、その視線は、それまで何万回、何十万回と感じてきたものとは明らかに種類が違った。

人間の視線じゃない、もちろん動物でもない、もしかしたら視線ですらないかもしれない不思議な感覚。

男はスッと近づくと彼の耳元で囁いた。

"Ryan, do you know who you are?"

「ライアン、お前は何者だ?」。

男が怖いわけじゃないはずなのに。当たり前だが、ライアンは腕っぷしには自信がある。それなのに、無性に怖かった。

The man continued. "Do you know what you're called for?"

男は淀みなく囁いた。「お前は何者だ?神がお前を地上に使わした意味がわからないのか?」。

"God called you, and you know it," 

「お前は神の意図を知っているはずなのに、何をしてるんだ?」。

ライアンはあと一枚でストレートになるカードを持ったまま、男を呆然と見つめていた。ふっとトランプに目を戻して、今日はもうお開きだとディーラーに精算を申し出た。

そして、その男と話そうと振り返ったが…男はどこにもいなかった。周囲を見渡しても、あの男はどこにもいなかった。

あの男の姿を探しながら、ライアンは信じられないことに、気づいてしまった。

さっきまですぐそばにいたというのに、その男の顔も身なりも、何一つとして思い出せないのだ。

魂を抜かれたように立ちすくむライアンを怪訝そうに見ながらディーラーは清算のチップを渡した。

ライアンは「今まで私の横にいた男はどこへ行った?」と聞こうとしたが、やめた。ディーラーの答えは分かりきっていたからだ。

聞けばディーラーはつまらなそうに答えてくれるだろう。

「あんたの横?ずっと誰もいなかったよ」。そう言うに違いなかった。



あれは、人間の視線などではなかったのだ。

視線ではなく、啓示だったのだ。

 "I told myself, 'Let's get back in it. Let's go through the fire and face the demons.'"

ライアンは心の中で叫んだ。「リングに戻るんだ。炎の中を突き進んで悪魔と対決するんだ!」。

いつも大騒ぎするファンに囲まれたライアンだったが、このとき、心の中に忍び込む悪魔と、拳の負傷に自分一人で向き合うしかないと覚悟を決めた。



彼の人生同様、週末のラスベガスで行われるビッグファイトは奇妙な不協和音を奏でている。

世界タイトルが腐るほどありふれた時代というのに、なぜかノンタイトル、そしてプライムタイムの若い人気スターが、キャッチウェイトで戦うのだ。



タイトルなどステイクされていなくても、この試合はアメリカが提供できる最高の試合。

リングサイドには、豪華な顔ぶれが揃うだろう。

そこには…あの男も座っているはずだ。
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WBA /IBFジュニアフェザー級王者ムロジョン・アフマダリエフが3−4月に、マーロン・タパレスを迎えて防衛戦を行う模様です。

昨年6月25日、ロニー・リオスを12ラウンドでストップ、統一王座の3度目の防衛に成功したMJでしたが、この試合で負傷した左拳が回復、練習再開のメドがついたようです。



ESPNによると開催地は米国ではないとのことで、リオデジャネイロ五輪の銅メダリストが米国以外のリングに上がるのは母国ウズベキスタンのタシュケントで岩佐亮佑を5ラウンドTKOした初防衛戦(2021年4月3日)以来2度目になります。

タパレスとやるなら井上尚弥とやれよ、と思うのは多くのファン共通の思いでしょうが、MJ陣営も軽量級ではありえない大金が期待できる「井上と日本でタイトルマッチ」は、報酬釣り上げのためにも出来るだけ先延ばしを企むはずでです。

残る二つのストラップ、WBO /WBCのベルトを持つスティーブン・フルトンはブランドン・フィゲロアとWBC暫定王座決定戦を争うということが内定しているとも言われていますが、まだ具体的には何も発表されていません。

全く人気のないフルトンとしては、人気者フィゲロアとの試合は逃したくないカードである一方、軽量級がリスペクトされ、報酬も大きい日本での井上戦も魅力的です。

フルトンを考えると、減量が苦しいとはいえ、122ポンドで井上と戦ってから、フィゲロア戦と、キャリアハイの報酬を立て続けに稼ぎたいところでしょう。

しかし、ダニエル・ローマン戦で漏らした「このクラスの体重を作るのはもう無理」という言葉がどこまで切羽詰まっているのか?

井上のジュニアフェザー進出で見たいのは、フルトンとMJ撃破で、一気にUndisputed championです。

Undisputed titleの2階級制覇となると、4団体時代では世界史上初、日本ではファイティング原田(フライ〜バンタム)以来という快挙です。果たしてどうなりますやら…?
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バンタム級で半世紀ぶりのUndisputed Championとなった井上尚弥ですが、ESPNのPFPランキングは2位のまま変わらず。 

しかし、21人の選考者のうち8人が29歳の118パウンダーに1位票を投じて、1位のテレンス・クロフォードが集めた9票に肉薄しました。

2位票は井上が7票、クロフォードが8票で、ここも1票差でクロフォードに及ばず。

クロフォードが4位までに21人の票を集中させたのに対して、井上は1〜6位票まで評価がバラつきました。

1位票はクロフォードと井上の他に、オレクサンダー・ウシクが3票、カネロ・アルバレスが1票を獲得しています。

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1. TERENCE CRAWFORD  
 Previous ranking: No. 1

RECORD: 39-0, 30 KOs
DIVISION: Welterweight (champion)
LAST FIGHT: W (TKO6) David Avanesyan, Dec. 10
NEXT FIGHT:

2. NAOYA INOUE
  Previous ranking: No. 2

RECORD: 23-0, 20 KOs
DIVISION: Bantamweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (TKO11) Paul Butler, Dec. 13
NEXT FIGHT: TBA

3. OLEKSANDR USYK  
  Previous ranking: No. 4

RECORD: 20-0, 13 KOs
DIVISION: Heavyweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (SD12) Anthony Joshua, Aug. 20
NEXT FIGHT: TBA

4. ERROL SPENCE JR.  
  Previous ranking: No. 3

RECORD: 28-0, 22 KOs
DIVISION: Welterweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (TKO10) Yordenis Ugas, April 16
NEXT FIGHT: TBA

5. CANELO ALVAREZ  
  Previous ranking: No. 5

RECORD: 57-2-2, 39 KOs
DIVISION: Super middleweight (undisputed champion)
LAST FIGHT: W (UD12) Gennadiy Golovkin, Sept. 17
NEXT FIGHT: TBA

6. TYSON FURY  
  Previous ranking: No. 6

RECORD: 33-0-1, 24 KOs
DIVISION: Heavyweight (champion)
LAST FIGHT: W (TKO10) Derek Chisora, Dec. 3
NEXT FIGHT: TBA

7. DMITRY BIVOL  
   Previous ranking: No. 7

RECORD: 21-0, 11 KOs
DIVISION: Light heavyweight (champion)
LAST FIGHT: W (UD12) Gilberto Ramirez, Nov. 5
NEXT FIGHT: TBA

8. ARTUR BETERBIEV  
   Previous ranking: 9

RECORD: 18-0, 18 KOs
DIVISION: Light heavyweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (TKO2) Joe Smith Jr., June 18
NEXT FIGHT: Jan. 28 vs. Anthony Yarde

9. DEVIN HANEY  
   Previous ranking: No. 8

RECORD: 29-0, 15 KOs
DIVISION: Lightweight
LAST FIGHT: W (UD12) George Kambosos Jr., Oct. 16
NEXT FIGHT: TBA

10. SHAKUR STEVENSON  
   Previous ranking: No. 10

RECORD: 19-0, 9 KOs
DIVISION: Junior lightweight (unified champion)
LAST FIGHT: W (UD12) Robson Conceicao, Sept. 23
NEXT FIGHT: TBA 

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年末年始に田舎に帰ったり、旅行したりするとき、リング誌最新号を携帯して移動中にくまなく読むことが当たり前にありました。

リング誌はA4サイズで薄く、携帯してもかさばりません。

この季節だと大体が2月号。 

こんな感じで、リング誌2月号は「HAPPY NEW YEAR」↓でした。

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大判であらゆるアメリカンスポーツをデタラメ的に斬ってきたESPNマガジン(画像左)も2019年で廃刊。

創刊当初から存在意味が問われていたESPNマガジンに、経営難からしょっちゅう廃刊や月刊体制崩壊を繰り返してきたリング誌も今年、また廃刊。

紙雑誌に逆風が吹き荒ぶ中、両誌の復活は絶望的です。



今年は、リング誌の入っていないバッグを持って新幹線や飛行機に乗る、寂しい年末になりそうです。
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今年はビボルで納得ですかね?

大方の予想通りです。

ESPNのFighter Of The Yearは、大番狂せでカネロ・アルバレスに完勝したドミトリー・ビボル。

これ、来年もカネロを返り討ち、アルツール・ベテルビエフとのUndisputed championshipにも勝利するようなら、2年連続もあります。

次点はライト級でUndisputed championになったデビン・ヘイニー。

井上尚弥はバム・ロドリゲスの次の順位で4位評価…バム以下はないでしょ、普通に考えて。寺地拳四朗は圏外。

Upset Of The Yearも、ビボルvsカネロでした。


Fight Of The Yearはリー・ウッドvsマイケル・コンラン。寺地拳四朗vs京口紘人は圏外でした。


KO Of The Yearもウッドvsコンラン。ジョー・コルディナvs尾川堅一が3番手に入ってしまいました…。井上vsドネアが圏外なのは,仕方ないか?



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最も権威のある
Fighter Of The Yearは、もちろん全米ボクシング記者協会のシュガー・レイ・ロビンソン賞です。

まだ、日本人では誰も手にしていない、これぞサッカーならバロンドール、いつか誰かがあのトロフィーを日本に持ち帰る日が来るでしょうか?

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Men's boxing's top 100: The best boxers in the sport, including Tyson Fury, Shakur Stevenson and Errol Spence Jr.

世界最大のスポーツメディアESPNが「ベストボクサー100傑」をアップ。

PFPでは井上尚弥をテレンス・クロフォードに次ぐ2位に評価しているESPNですが…この100傑では第1位に〜〜〜!!!!!!!

22位に井岡一翔、26位に寺地拳四朗、36位に中谷潤人、97位に京口紘人と5人が100傑入り
。

Just missed(惜しくも落選)のメンバーには村田諒太の名前も。

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https://global.espn.com/boxing/story/_/id/35147249/boxing-top-100-meet-best-fighters-sport-including-tyson-fury-shakur-stevenson-canelo-alvarez-more


ヘッドラインの「Men's boxing's top 100: The best boxers in the sport, including Tyson Fury, Shakur Stevenson and Errol Spence Jr.」も含めて、井上の扱い、なんか解せないわぁ。

リング誌のような扱いも気持ち悪いですが…。
 
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ESPNが、日本代表と現地に詰めかけたファンの〝ギャップ〟を面白い記事に仕上げてくれています。

ヘッドラインは「While their fans help to clean up off the pitch, Japan are looking to make a mess of their own at FIFA World Cup 」。

「ピッチの外では、日本のファンは観客席を綺麗に掃除してスタジアムを去る。しかし、ピッチの中での日本代表は大暴れして、W杯の秩序を乱す」。


▶︎日本人メジャーリーガーが、ベンチやロッカールームを美しく使い、大谷翔平がフィールドに落ちたゴミを拾うように、日本人が公共の場所を、自分たちが出したゴミでなくても自主的に掃除することは珍しいことではありません。


Even the Samurai Blue are famous for leaving their dressing rooms in a spotless condition. Perhaps even cleaner than when it received them.

「サムライブルーが控え室を掃除して去るのも有名な話。もしかしたら、彼らが入る前よりも去った後の方がきれいになっているかもしれない」。


That is not to say that the Japanese footballers are not making a mess in Qatar.

「ところが、ファンの行儀の良さとは反対に、日本代表はピッチの中では序列を守らず、混乱を引き起こしている」。

1938年まで遡っても、アジアの国が勝利したのは108試合でわずか17勝。

しかし、カタールでは第1週ですでに3勝しているのだ。

そして、日本代表は厚かましいことに、ベスト8進出を公言している。


To be one of the last eight teams at a World Cup would indeed be upsetting the established order, with the competition usually dominated by the European and South American nations.

アジアの島国がベスト8に入るということは、欧州と南米が作り上げてきた、せっかくの秩序を乱すことに他ならない。

観客席を隅々までゴミ拾いしてスタジアムを去るファンと、ピッチの上では整理整頓の心掛けを微塵も見せないプレーヤー。

それが、日本だ。


Come 6 p.m. local time at Ahmad bin Ali Stadium in Al Rayyan on Sunday, there are things that will definitely happen, are likely to happen and could just happen.

今日の現地時間午後6時、アフマド・ビン・アリ・スタジアムで行われるコスタリカ戦では「確実に起こること」「起こるであろうこと」「起こるかもしれないこと」がある。

「確実に起こる」のは、試合結果がどうあれ、日本のファンが観客席をきれいに掃除、試合が始まる前の状態に現場復帰してスタジアムを去ること。

「起こるであろうこと」は、サムライ・ブルーの英雄たちがコスタリカを撃退し、2連勝を飾ること。

そして「起こるかもしれない」のは、スペイン対ドイツ戦の結果次第で、日本が世界の秩序を乱す大きな一歩を、1試合残して早々に踏み出すことになるかもしれないということ、だ。



▶︎日本のファンが自分たちのゴミだけでなく、観戦していた一帯のゴミを拾って帰ることに「掃除を職業とする人から仕事を奪うことになる」と、以前から間抜けで的外れな指摘が散見されています。

「そんなことが定着」するというなら、MLBの清掃スタッフは仕事を失っているのか?

W杯の運営は日本のファンの振る舞いが美徳として報道され、伝播することを見込んで清掃スタッフのリストラを検討・実施する未来があると、本気で考えているのか?

大馬鹿にも程がある。

ESPNが示唆しているように、ピッチの内外で見られる日本人の対照的で二重人格的な行動は、いずれも〝大番狂せ〟。

常識では考えられないことです。

大番狂せは、誰にでも真似できることではありません。

また、勝利の歓喜や敗北の幻滅を抱えながら、観客席を掃除して帰る真似なんて誰もやろうとしません、彼らがそんなことをするわけがありません。

「MOTTAINAI」も「おもてなし」も、外国人からすると「そんなもん知るか」です。

遠い外国の清掃スタッフが失業すると心配している馬鹿どもは、安心しろ。清掃スタッフがリストラされることはないから。
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