カテゴリ: 世界最強の女

勝つべき人が勝つ。

実はそれがどれほど難しいことか、スポーツファンはよく知っています。

そして、五輪の舞台は特別です。

陸上競技の本物のチャンピオンは、ダイヤモンドリーグのシーズンを戦い抜いて勝ち名乗りを挙げる優勝者です。

しかし、一発勝負にも関わらず、オリンピックの舞台は特別です。

いつも満面の笑みで大声で笑う女性が、ずっと厳しい表情でヨーロッパ最高のスタジアム、スタッド・ド・フランスの美しい芝のフィールドを睨みつけていたのは、そこが特別な場所だからです。

彼女は、勝つべき人でした。

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陸上フィールド競技の面白さの一つは、他の競技ではあり得ない心理戦を孕んでいるからです。

早い段階の投擲や跳躍で記録を出して、ライバルを威圧する。それに威圧されない不屈のアスリートは最終投擲や跳躍で全てをひっくり返して見せる。

北口榛花は間違いなく、後者のアスリート。逆転の女王様でした。

その彼女がオープニングスローで勝負を決めました。

大きな大会で優勝しても周囲に笑顔を振りまいていた女性が、まるで目の前しか見えていないように狂喜する姿、スタッド・ド・フランスの勝者だけに許された鐘撞で子供のように鐘を打ち鳴らす姿を見て、五輪が特別であることを改めて思い知らされました。



「PARIS 2024」と刻印されたあの鐘は五輪が終わると取り外され、ノートルダム大聖堂の鐘楼の一つとして吊るされるそうです。

なんと洒落た発想でしょう。腹立つくらいにお洒落です。



パワー競技(この表現は高度な精密技術をマスターした北口に失礼千万ですが)で日本女子が世界を圧倒してみせるーーー今回は逆転のドラマを見せてくれませんでしたが、かっこ良すぎるよ、北口榛花さん。


いつかノートルダム大聖堂に行って、北口が打ち鳴らしたあの鐘を拝みたいと思います。




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「なぜこの試合を地上波でやらないのか!」と、怒り爆発のレスリング53kg級で金メダルを獲得した藤波朱理の試合。

53kg級、ボクシングでいうとバンタム級です。プロボクシングの4団体のチャンピオンは日本人が独占していますが、藤波は〝5人目〟。

メディアの扱いは、5人の中で比較にならないレベルでずば抜けています。



国民的関心が高いスポーツを「特別指定」して有料テレビやネット配信による独占中継を禁止した英国放送法の一つが
ユニバーサル・アクセス権。日本でも2022年サッカーW杯から話題になりました。

井上尚弥らボクシングの世界戦について「地上波でやれ!」なんて声はほとんど聞かれません。「特別に高い国民的関心事」とはいえないからです。

では、藤波は「特別に高い国民的関心事」と言えるかどうかです。藤波の知名度がどれほどあるか?となると、井上より下です。

しかし、五輪は「特別に高い国民的関心事」であり、もっと集約すると日本人の金メダル獲得が「国民的関心事」です。

今回のパリ五輪で、最も金メダル獲得の可能性が高いと見られていた藤波のチャンピオンシップが「特別に高い国民的関心事」であることは明らかでした。

決勝で激突したルシア・ジェペスは昨年の世界選手権で勝利している相手でしたが、7失点を喫して〝苦戦〟を強いられました。

20歳の日本人は「(勝ってはいても)悔しかった」と〝リベンジ〟のチャンスを待ち望み、23歳のエクアドル人は王者の気迫に気圧されているように見えました。

藤波の強さは「あれほど(多彩な技を駆使して)器用に攻める選手はトップレベルでもまずいない」(ソウル五輪金メダリスト小林孝至)。

ブルース・リーの「私が恐れるのは1万通りの蹴りを一度ずつ練習した者ではない。私が恐れるのは、たった一つの蹴りを1万回練習した者だ」の言葉を借りるなら、最強は「1万通りの蹴りを1万回ずつ練習した者」です。


圧倒的な力の差を見せつけ、10−0で見事〝リベンジ〟した藤波は、これで137連勝。最後に敗れたのは中学2年のとき。

吉田沙保里、藤波のコーチでスパーリングパートナー伊調馨、少女の面影を残す藤波は最強の系譜を受け継ぎ、完成型になろうとしています。


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ESPNの総合トップページをなでしこジャパンが飾りました。

大谷翔平は数えきれないほどあるものの、ボクシングでは井上尚弥や井岡一翔らでも一度も実現出来なかった快挙です。

なでしこが準決勝で当たるUSWNT(米国代表)、これが米王で問答無用のメジャーという背景はありますが…。

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Surviving group of death will have prepared Japan for huge quarterfinal test against USWNT〜死のグループから勝ち上がった日本代表は米国代表との大一番に挑む。

ウィリアム・ヒルのオッズはUSWNTの勝利が4/7(1.43倍)、なでしこ17/5(4.4倍)。

なでしこが勝ったのは、あの2011年World Cupでの激闘だけ。

W杯優勝後も、USWNT史上最高のスーパースター、アレックス・モーガンに好き放題される敗北を繰り返してきました。

4.4倍。大したオッズじゃありません。強さの反対語が弱さではありません。スポーツの世界において、強さと弱さは、同義語とは言いませんが、紙一重の類似語です。

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やっぱり、五輪は最高です。

ロシアは排除でイスラエルは参加、採点競技のモヤモヤ感、そして阿部詩の独唱、さらに五輪を慮ってユニコーンはノーヒット試合を継続…世知辛い現実を忘れさせてくれるのが清廉なスポーツなんてわけはなく、美しいものも薄汚いものも全部包含した世界の縮図を見せてくれています。

開会式で混交した素晴らしさと薄汚さなんて、その象徴です。

なんて、酔っ払いの戯言はこの辺にしておいて、下手くそなりにずっとスポーツをプレーヤーとしてやってきて良かったと思うことがあります。

イヤでも交友関係が増えるということは、もしかしたらスポーツをやり続ける最大の成果物かもしれません。

今夜もオンラインでバレー部の面々と女子バレーを見ていたのですが、こっち側の質問に短く完全な答えを速射でピピッと返してくれるのはありがたいにも程があり、楽しすぎる時間でした。

「陸上始まっても、俺は一人で見たいからすまぬ。というか最近はダイアモンドリーグもほとんど見ないからよく知らんねん」という私を受け入れてくれる、おおらかな友よ…といってもかなり久しぶりに会うので顔は覚えていても名前が出てこないという、かなり申し訳ない状況なのですが。

期待されていた男女バレーボール、決して弱いチームではありませんが、強いと言い切れるチームでもありません。強いチームとは一次リーグで苦戦しても、ステージが上がると徐々にリズムを取り戻し、調子を上げてゆくようなチームです。

日本は、つまり、初戦に勝って勢いに乗る必要があるチームでした。

過去2大会でオリンピックに嫌われた女、古賀紗理那が、やはり3度でも厳しい現実を突きつけられて散ってしまうのか、それともこの大逆風でもまさか散らないのか、しっかり見届けましょう。




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角田夏実が金メダル第1号。

いや、強かった!

準々決勝のシリーヌ・ブクリ戦が一つの山場と思われましたが、警戒されまくっていた巴投げで見事な一本勝ち。

準決勝は対戦相手の18歳のスウエーデン選手(タラ・バブルファス)にとって可哀想な判定でした。角田も納得できる勝利ではなかったかもしれません。

そのバブルファス、3位決定戦に勝利。銅メダル、おめでとうございます!美しい女性です。まだ18歳、日本柔道の強敵に成長するのでしょう…お手柔らかにお願いしますね。

決勝のバルドルジもモンゴル人特有の体幹の強さを見せて難敵でしたが、いや、角田は強い。

勝利の瞬間に微笑みすら見せない勝負師の顔が印象的でした。

感動して、嬉し泣きするのは人間だけ。泣きながら笑うのも人間だけ。

そして、自分を律して表情を崩さないのも人間だけ。




巴投げからグラウンドでの絞技へ。それが来月32歳になる、柔術にも精通した柔道家の、勝利の方程式です。

…方程式というか。それしかない、柔道家です。

彼女が最初に世界の頂点に立ったのは2016年のグランドスラム東京。それから8年間も世界からマークされ続けてきました。

迷いもあったでしょう。もっと幅広い技を習得して、引き出しの多い柔道家になるべきだと。

しかし、彼女はそれを貫き通しました。

そんな彼女が、ついに最高の舞台で、最高の色のメダルを掴み獲りました。

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格闘技の奥義を極めたブルース・リーは語りました。

I fear not the man who has practiced 10,000 kicks once, but I fear the man who has practiced one kick 10,000 times.

「私が恐れるのは1万通りの蹴りを一度ずつ練習した者ではない」と。「私が恐れるのは、たった一つの蹴りを1万回練習した者だ」。



角田夏実様。

金メダル、おめでとうございます。感動しました。



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大坂なおみが、ウィンブルドン1回戦をなんとか勝ち抜けました。

フランスのディアヌ・パリに2-1、勝負の第3セットは先にブレイクされる大苦戦の末に掴んだ薄氷の勝利。

元世界1位の大坂は四大大会で四度の優勝を勝ち獲っていますが、そのサーフェイスはいずれもハードコートの全豪と全米を2度ずつ。

芝のウィンブルドンは過去4年間は出場なく、最高成績は3回戦敗退と、テニスの代名詞どいえる大会は女王にとってジョーカーです。

追い詰められた第3セット、敗北のストレスに脆弱な一面を見せていた大坂は「負けても少しずつ成長しているところを示したい」と相手の攻撃に耐えました。

この大会がReturn of the Queen となる。そう確信するには至らない勝利でしたが、世界を破壊した強烈なサーブは徐々に戻ってきています。

「芝の女王」となって、再びビッグタイトルを手にするときが近づいています。





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パリ五輪の組み合わせ抽選が終わりました。

日本のプールBは…ポット1:ブラジル(世界1位)、ポット2:ポーランド(4位)、ポッド3:日本(世界7位)、ポッド4:ケニア(20位)、の4カ国。

FIVBのランキングは、ボクシングのアルファベット団体ほどではないものの、五輪出場をすでに決めている国にとってはテストマッチやチューンナップで臨んでいるネイションズ・リーグ(VNL)の結果を受けたもので、日本の7位はかなり高めの評価です。

五輪金メダルを狙う国と、VNLで五輪出場枠を争う日本とでは競技レベルのステージが違うと言い切っても良いかもしれません。

ブラジルには勝てるわけがない、ポーランドはVNLでストレート負けしているようにランキング以上に格上。

ウィリアム・ヒルが叩いた出場12国の優勝オッズは以下の通り。カッコ内は世界ランキング。

イタリア(2位)4.00倍
トルコ(3位)5.00倍
ブラジル(1位)6.00倍
米国(5位)7.00倍
セルビア(9位)8.00倍
中国(6位)9.00倍
ポーランド(4位)10.00倍
日本(7位)11.00倍
オランダ(8位)51.00倍
ドミニカ(11位)67.00倍
フランス(19位)501.00倍
ケニア(20位)751.00倍

イタリアの4倍から日本の11倍までは、一ずつ積み上げた数字で、全体的にもかなりアバウトです。

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それでもセルビアまでの上位5カ国が決勝トーナメントに進出、優勝争いを繰り広げると見られています。

残る3つの枠はそれぞれのプールで3位に付けるであろう中国、日本orポーランド、オランダの4カ国で1次リーグの成績によって争われます。

バレーボール。

普段はあまり見ないスポーツですが、学生時代の運動部では必ず一定の勢力を持っていた時代を過ごしました。

練習場所は私は屋外、彼らは屋内であまり接点はなかったのですが、それでも何人かは古い友達がいます。

女子バレーとなると、男子と同等の注目度が集まる数少ないスポーツの一つでもあります。

野球やサッカーとは違い、ファーストインパクトで世界一になった女子バレーは重い宿命を背負い続けてきました。



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「東洋の魔女」の謂れは、1961年のヨーロッパ遠征で24連勝をマークした日本代表(日紡貝塚)の強さに、世界最強のソ連のメディアが「東洋から来た魔法使い」と報じたのが最初のことでした。

その翌年、敵地モスクワで開催された世界選手権。魔女たちは圧倒的不利の予想を覆して、無尽蔵のスタミナと回転レシーブ、揺れる変化球サーブによって決勝でソ連を撃破、金メダルを獲得します。

彼女たちは、大袈裟ではなく誰も見たことのない魔法を、確かに使ったのです。

あり得ない魔法は、あり得ない練習量と集中力によって現実のものとなりました。

練習の合間の水分補給、小休憩での軽食、短い昼寝までーーー1950年代末という時代に、現代にも通じる科学的なメソッドが、あり得ない練習量とあり得ない集中力を可能としたのでした。

そこには「練習中に水を飲むな」などという馬鹿げた根性〝論〟ではなく、勝利だけを追求する〝根性〟だけが純粋に科学的に研ぎ澄まされていたのです。

そして、東京五輪を翌年に控えた1963年。東京国際スポーツ大会では、「(ホームでやられた屈辱をアウエーで)やり返す」と雪辱に燃えたソ連を3−0のストレートで返り討ち。

世界最強を再び破壊した東洋の魔女に、皇太子夫妻は拍手を送り、横浜文化会館を埋め尽くした大観衆は熱狂しますが、当の彼女たちは「負けるわけがないじゃないか」と平然としていたと伝えられています。

そして、東京五輪。もはや、立場は逆転。ソ連が番狂せを起こす側でしたが、それは起きませんでした。



東京1964から60年もの歳月が経過しています。

ソ連はすでに崩壊して、その名の国は地球上に存在しません。そして、舞台はパリへ。

世界最強を当たり前に倒した魔女たちの血脈を受け継ぐ日本代表は、悪戦苦闘にのたうち回りながらなんとか五輪出場の切符を掴み取りました。

時代は変わりました。

当たり前です、60年とは、何もかもを変えてしまうのに十分すぎる時間です。




何もかも変わった世界で、半世紀以上も頂点から遠ざかっている代表を率いるのは、古賀紗理那。

彼女は魔女ではありません。

代表メンバーに落ち、怪我に泣いた、五輪に嫌われ続けたバレーボール選手です。

そして、彼女をパリで待ち受けてるのも、また悲劇かもしれません。


それにしても、ウィリアム・ヒルの11倍は失笑するような数字です。好調の大谷翔平のホームラン打率並みです。現実には110倍ですらないでしょう。


21世紀のパリに東洋の魔女は再び現れるか?そんな可能性が1%もないのは、誰にでもわかります。

そう、1%もありません。


それでも、たったの1%もありませんが…、0ではありません。



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19日に、パリ五輪のグループ分け抽選会が行われます。

この手の話題で必ず耳にするワードが「死のグループ」。世界ランキング1位ブラジルのプールB、2位イタリアのプールCには入りたくありません。

世界ランキング7位の日本が決勝ラウンドに進出する可能性がより広がると考えられるのは、開催国の世界ランク19位フランスのプールAを引き当てることです。

とはいえ、8チームが進む準々決勝ラウンドが目標ではありません。

だったら、どこのグループに入ろうが関係無し。

死のグループ、上等です。


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昨夜、日本バレーボール協会が女子日本代表のパリ五輪出場が決まったと発表しました。

カナダ代表に逆転負けした時点では「他チームの勝敗に関わらず、出場決定は持ち越し」と報道されていましたが、国際バレーボール連盟などが13日終了時点の各国ポイントをあらためて計算したところ、残りの試合結果に関わらず、日本が出場資格を満たすことが分かったそうです。

…いや、これ、こういうこともあると思います。人間がやることです。

プロ野球でもアウトカウントの数え間違い等があります。しかし、しっかり見ているファンには「もう3アウト、チェンジだ」と分かってる人もいます。

このバレーボールで問題なのは、ポイント計算があまりにも複雑すぎて、マニアでもよく分かっていないという分かりにくさにあります。

ヒューマンエラーの、問題ではなく、ポイント計算の複雑さの問題です。

これ、他にも間違いないか?あっても誰もわからない?



「五輪出場、ここで決める!」…TBSにも迷惑な話や。

でもでもでも、とにかくおめでとうございます。

さあ、ここから戦いが始まります!
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この数日、世界のスポーツメディアを最も沸かせたのは大谷翔平でも今永昇太でもありません。

そのパワー同様に圧倒的に大坂なおみでした。

テニスの全仏オープン第4日は29日、パリのローランギャロスで行われ、シングルス2回戦で女子の元世界ランキング1位の大坂なおみが大会3連覇を狙う現世界1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)に6―7、6―1、5―7で競り負けました。

世界No.1評価を受けるシフィオンテクは「勝てる気がしなかった」と本音を漏らし、フランスのレキップ紙は「元女王は勝利だけを逃した」と大坂のパフォーマンスを絶賛。

ESPNも「大坂は完全に戻っている」。

当の本人は「ベスト5に戻れるかも」と手応えを語りましたが、戻る場所は「5」でも「4」でも「3」でも「2」でもありません。



女王様、おかえりなさいませ。



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サッカー女子、日本代表が北朝鮮を下して、パリ五輪出場を決めました。

キャプテンの熊谷紗希の「ほっとした」という言葉が全て、です。

五輪出場を逃すと女子サッカーはますます盛り上がりに欠けてしまう、大きな危機感を胸に抱いて挑んだ大一番でした。

内田篤人は北朝鮮について「もっと荒れるかと思ったが、フェアプレーに徹してくれた」と、予想外だったと語りました。

初戦を0-0の引き分け、アウエーに乗り込んで来る北朝鮮。私も全く同じ予想をしていました。

長谷川唯があからさまなファールを仕掛けられて何度も倒され、スタンドにブーイングが吹き荒れる、後味の悪い試合…。

全く失礼な予想でした。

戦前、リ・ユイル監督は警戒する選手と聞かれて「長谷川」と即答、嫌な予感がしました。

しかし、彼らは正々堂々と日本の司令塔を封じ込めてみせました。

リ監督は「こんなに応援してもらったのに、良い結果をもたらすことができず、大変申し訳ない気持ちでいっぱい」と泣きました。

あの戦いぶりに、謝る必要なんてどこにもありません。

北朝鮮チームはホームで戦えず、サウジアラビアと日本という過酷な2連戦を、堂々と戦い抜いたのです。

その姿からは、不屈の精神がビンビン伝わって来ました。

惜しいシュート、不運な判定もありました。

昨夜の山下杏也加が「1ミリ」だったかどうかは別にして、三笘はVARで事実が確認され、山下は人間の審判に救われました。

五輪切符を賭けた大勝負。VARを導入しない理由が、コスト面や急転直下で決まった試合日程なのだとしたら、悲し過ぎます。

それにしても、彼らの威風堂々の戦いぶりを強烈に後押ししたのは、アウエーのスタンドに駆けつけた在日北朝鮮人を中心とした大観衆だったように感じました。

はっきり言って、在日の人(朝鮮でも韓国でも)、彼らにとって日本は住みにくい〝母国〟です。

彼らにはなんの責任もないのに、偏見や差別を受けたことは何度もあるでしょう。

昨夜、国立競技場に響いた北朝鮮応援団の轟きは、私たちがなでしこやサムライブルーを応援するときには配合されない複雑な悲哀が帯びているようにも聞こえました。

残念なことに、北朝鮮ではあの誇り高い敗北をしっかり報じていないようです。

彼女たちが、世界4位の経済大国を向こうに回して堂々と戦ったことを、きちんと報道して欲しかった。

打倒・日本へ向けてサッカーファンも一体となって、もっと強くなった彼女たちと再び激突したいと思える、闘争心溢れる良いチームでした。

彼女たちが強くなることは、きっと必ず、なでしこをさらに研ぎ澄ませてくれるはずです。

ここまで書いて、少し不安になりました。あの国にサッカーファンはいるのでしょうか?

北朝鮮の選手たちは母国で「日本なんかに負けるな」と、試合や練習で応援を受けていたのでしょうか?



私たちがなでしこやサムライブルー、大谷翔平らを応援するような純度100%のスポーツを、彼らも、いつの日かなんてじゃなく、一日も早く楽しめる日が訪れますように。
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