カテゴリ: 世界最強の女


最も八百長が横行しているスポーツは?

答えは「犯罪組織が絡むことが多い八百長は明るみにでていないものが多く、正確な統計がないのでこの質問に答えはない」。

しかし、推測はできる。

頂点と底辺の光と影のギャップが大きなメジャースポーツで、チームごと買収する必要のない個人競技だ。

テニスはその典型で、選手1人を丸め込めば勝敗だけでなくさまざまな八百長を仕込むことができる。

トップに立てばフォーブス誌の眩いWorld’s Highest-Paid Athletes(アスリート長者番付)に名前を刻む大富豪に、底辺に沈殿する選手は1試合で100ポンド(2万円)も稼げないから、あちこちでアルバイトをしなければ生活が成り立たない。


女子テニス協会(WTA)主催の公式トーナメントのうち、最もグレードの低い大会は賞金総額1万5000ドル。シングルスの優勝賞金は2200ドル(約33万円)。

初戦で敗れれば100ドル(約1万5000円)ほどしか手に入らないから、道具代や交通費を差し引くと大きな赤字だ。

そんなときに「八百長で負けたら1000ドル」と耳元で囁かれたら?

「いま特に経済的に厳しいから1回だけなら…」。そんな気持ちはわからないでもないが、闇の世界は一旦足を踏み入れると引き返せない。


もちろん、そんな暗闇から聞こえる声には耳も貸さずに、ひたすら貧窮と戦いながら、歯を食いしばりながら、七転八倒しながら頂点を目指す、往生際の悪いテニスプレイヤーも、少なからず、いる。



A sneak peak inside The All England Lawn Tennis Club



カーソン・ブランスタインはまさに、そんな1人だ。

南カリフォルニア在住のカナダ人女性は24歳。「ガソリン代を払うと食べ物を節約しなければならない」ほど物価の高い米国でテニスプレイヤーを続けることに少しだけ疲れていた。

今年2月にメキシコ・カンクンで行われる大会に向けてトレーニングに励んでいたある日の朝、破産する夢から覚めてベッドから飛び起きると、彼女はあわてて銀行口座を確認した。

「残高は25ドル(約3700円)しかなかった。破産する夢じゃなくて、現実に破産しているようなものよね。全財産が25ドルなんだから。朝から涙があふれて止まらなかった」。

「いい年して変な夢見て、テニスなんてしてる場合じゃない。生活が破綻してしまう」。泣きながら友達に電話して、惨めな自分を曝け出した。

友達も「もうやめなさい。こんなことしてるのはあなただけ。あなたはもう十分頑張ったよ。まだ若いんだしいくらでもやり直せる」と励ましてくれたが、そのとき彼女の中で何かが火花を散らした。

テニスをやめるなんて、絶対に受け入れられない。

どんなに貧乏でもテニスだけはやる、やり続ける。もしかしたら、多くの普通の人から軽蔑されるかもしれないけど、テニスをやめたら心の中のもう1人の私が私を絶対に許さないだろう。

泣くだけ泣いて、涙が出なくなって、カーソンは友達に宣言した。「ありがとう。もう、泣き言はしない。私、テニスはやめないよ、絶対に。私、バカだから、テニスが好きで好きでたまらないんだよ」。

友達は「そうだろうと思ってたよ。あなたからテニスを取ったら何にも残らない」とケラケラと笑った。

両親に話したら無理矢理にでもテニスをやめさせられると思ったから、電話しなかった。友達からお金を借り、Uber Eats の配達員として働いた。



そして。

カーソンはテニスの世界で最も権威のある大会、ウィンブルドンの本戦出場を目指して予選3試合を見事にクリア、伝統のAll England Lawn Tennis and Croquet Clubの芝生の上に立った。

相手は、アリーナ・サバレンカ。世界ランキング1位の絶対女王だ。

ストレート負けの予想とオッズの通りに、カーソンは敗れ去った。

本戦1回戦進出で6万6000ポンド(約1300万円)を獲得したが、悔しい試合だった。


第1セットを1−6で落としたが、第2セットはタイブレークまで喰らいついて5−7で力尽きた。

しかし、スコアが示す通り、どうしようもない惨敗ではない。

あのサバレンカ相手にフルセット直前まで、粘り抜いたのだ。

いかにも彼女らしい、往生際の悪い闘い方だった。

そして、世界は初めてカーソン・ブランスタインを見た。

Had never seen branstine but she’s actually a pretty decent player 
ブランスタインを初めて見たが、かなり素晴らしいプレーヤーだ。

It was a match that showed her way of life.
コートの中に彼女の生き様を見た。




女王に最後まで挑み続けたカーソンの姿は、世界中に感動をふりまいた。

経済的にも、しばらくテニスに集中できるだけの大きなものを手に入れた。

それでも、彼女はただただ悔しかった。

スマホには祝福のメールが溢れていたが、大きなチャンスを逃してしまったと、悔しさだけが募った。

電話で泣きついた友達からもメールが届いていたが、それはお祝いの言葉ではなかった。

しかし、それを見たカーソンはようやくクスッと独り笑いした。そこには、こう書かれていた。


「6万6000ポンドって9万ドル?10万ドル?とにかく、すぐにカネ返しに、戻ってこい!」


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女子スポーツは男子と比較して「スピードがない」「パワーがない」「迫力に欠ける」と見られ、プロスポーツとしては同じ種目でも人気も報酬も男子よりも遥かに下であるのが現実です。

例外的に「女子テニス」や「女子ゴルフ」などは〝遥かに下〟ではなく男子に準じる地位を確保しています。また、米国限定ですが「女子サッカー」は男子よりも遥かに上の注目度と報酬、尊敬を集めていますが、「女子ボクシング」となると〝遥かに下〟というだけでなく「女子が殴り合って血を流しているのなんて見るに耐えない」という拒絶感まで入り込んできます。

亀田和毅ら非力な男子ファイターを解説者が「まるで女子の試合を見ているよう」と笑うのは、女子ボクシングは面白くないという偏見の発露です。

専門家やコアなマニアがチェックするPFPでは非常に高い評価を集めたリカルド・ロペスは日本でも人気のあるレジェンドですが、米国のカジュアルなボクシングファンの間では全く無名、女子ボクサーの前座をつとめるなど人気と報酬面では不遇のままでキャリアを終えました。

とはいえ、それは男子とはいえ全く関心の払われない軽量級だから。「女子がメインで人気階級の男子を従えた」わけではありません。




それでも、少しずつ時代は動いています。

2022年4月30日「ケイティ・テイラーvsアマンド・セラノ」のUndisputed Jr.Welterweight championshipがマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)140年の歴史で初めて女子の試合がメインで起用されました。

もちろん、シアターではなくキャパ2万人のアリーナ。チケットは早い段階でソールドアウト。当日は1万9187人が詰めかけました。

このメガイベントをジェイク・ポールと共同プロモートしたエディ・ハーンの「今夜の問題は男子がどうとか女子がどうとかではない。素晴らしいファイターが素晴らしい試合を見せてくれた」という通りの内容。

アイルランドのテイラー、プエルトリコのセラノというニューヨークにファンベースを持つトップファイターの激突とはいえ、女子がMSGのアリーナをフルハウスにしたのです。

女子ボクサーが、ワシル・ロマチェンコやゲンナジー・ゴロフキンを人気で凌駕したのです。





そして、7月11日にこの2人の第3戦目がやはりMSGでセット。このイベントも歴史的な意味を持ちます。

メインからアンダーカードが全て女子の試合という非常に珍しい、画期的で野心的なイベントです。





プロモートは、ジェイク・ポールが立ち上げたMost Valuable Promotions(MVP)。ジェイクはこのイベントに先立つ6月28日にフリオ・セサール・チャベスJr.とのビッグファイトに登場、そのアンダーには契約初戦のホリー・ホルムもリングに上がります。

カネロ・アルバレスの後を継ぐスーパースターを完全に見失った米国ボクシングに、女子ボクシングという一筋の光が射し込んでいます。


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ずっと前、といっても私が札幌から戻ってからですから、せいぜい5〜6年前のちょうど今頃の話です。

一緒に野球と勉強を教えている中学生が「お姉ちゃんも来ていいか?」とぶっきらぼうに聞いてきました。

男子中学生の表情からは「お姉ちゃんが行ってみたいと言い出したから、一応聞くけど、お姉ちゃんを呼ぶのは俺は嫌だ、断ってくれ、頼むから」という心の中の叫びが思いっきりあふれていました。

私は「おお、全然大丈夫!今連れて来い!今は無理?じゃあナルハヤで連れて来い」と、顔をしかめる少年に意地悪にタタミかけるのでした。

アホ中高生の宿題レベルの勉強を一緒にしている私は正直「またアホが一人増える、しかも女の子か」と、面倒を背負い込んだかもしれないと思いました。

そして、なんと、やって来たのは、顔見知りの子!

駅までの通勤路、彼女の通学の時間帯と同じなのか、何度も、顔を合わせていた中学生だったのです。

「あー!」と戸惑う私に、彼女の方も「すみません、ここまで押しかけちゃって」と頭を下げるのですが、鈍感極まる私もようやく「朝の!」と気づくわけです。

彼女は毎朝すれ違うだけでなく、野球の試合の応援で弟を応援に来て、コーチ役の俺もスタンドで応援してる彼女の顔を覚えていました。

それなのに。

朝の通勤時にすれ違うときに気づかなかったのは、私の勝手な思い込みです。スタンドで応援する彼女が、グラウンドから離れて遠くだったということもありますが。

スタンドの彼女はバカ男子中学生のお姉さんで、いつも底抜けに明るい笑顔を見せていました。

そして、通勤時にすれ違う彼女も、やはり最高の笑顔を見せて挨拶してくれていたのですが…。

俺だけに挨拶するなら「知り合いだったか?」と思い出そうともしますが、すれ違う誰にでも明るくハキハキと挨拶するのです。

今どき珍しい、どころか、そんな朗らかな少女はどんな時代でも稀有な存在です。

そして、スタンドの彼女と通勤時の彼女、誰かに見せたいような素晴らしい笑顔はまったく同じでしたが、グラウンドから見上げると見えていないことがありました。

左膝から下が義足なのです。

中学1年のとき、テニスの部活帰りに交通事故にあったそうです。

それなのに、どうしてあんな笑顔を振りまけるのか、俺ごときが知る由もありません。

彼女のご両親、そして弟はあの笑顔にどれほど救われたことでしょう。

そんな彼女が、勉強を教えて欲しいとやって来たのです。

弟が嫌がっていた理由はその日のうちに分かりました。

バカな弟と全く違って、お姉ちゃんの方は俺のバカ野球塾なんかに来るような高校生ではなかったのです。

高校も地域一の公立校で、俺が受験生の頃ならまだしも、今の俺なんかが教えることなどほとんど何も無い、教えられないレベルの子でした。

私の付き合いのある、数だけは多い友人知人らの中でも、学問に対する感性はちょっと抜けていました。

しかも、塾にも予備校にも通ってないというのです。

弟の話だと学校でも「このまま普通にやってけば、普通に東大に行ける」と先生からもお墨付きをもらっているそう。

彼女に英語と数学を教えて、しどろもどろになった俺は彼女の帰り際に「ごめんな、さすがに自分より賢い子は教えられんわ」と言うと、彼女は悲しそうな顔をして「もう来たらダメ?」と聞いて来るのです。

そして彼女は言った。

「東大の医学部に行きたい」。

なるほど、それなら少しだけアクセルを踏み込まないと行けないかもしれない、なんていっても高校2年の春時点で模試判定はB。完全に射程圏内です。

こんなに賢い子なら2年後の入試は楽勝だろうと思っていました。

実際には東大医学部以上の大物をぶっ倒すのですが。

そんな彼女が一時帰国した2月、夜中に連絡を受けて少し遅いバレンタインチョコをいただきました。

お酒も飲むようになった彼女と、日本語がカタコトな彼女の友達と、英語がカタコトな私は朝までとりとめのない話に笑い合うのでした。

彼女は40近くも年下ですが、私みたいな怠け者の酔っぱらいからすると尊敬しかありません。

私の酒飲み友達は99.9%がどうしょうもない大馬鹿者ですが、彼女は非常に珍しい残り0.1%の人間。

いつまで連絡をくれて、友達でいてくれるのか非常に怪しいのですが楽しい徹夜でした。

とはいえ、遥かに年下ですごいヤツと酒を酌み交わすのは年に一回くらいで良いかな…。







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表に出ることをこれほど嫌った人なのに、ボクシングファンで、その名を知らないひとは1人もいない。

米国のアル・ヘイモンのことではない。彼は要所要所で姿を現し、自分がボクシング界をコントロールする支配者であることを誇示したがるフィクサーだった。


しかし、彼女は全く違う。

日本ボクシング史上最高のマネージャーが老衰のため、1月1日に亡くなった。

享年99歳。

そういう御年齢といえばその通りだが、それでもあまりにも寂しすぎる。

1980年代の終わり頃から1990年代の初め頃まで、私はよく後楽園ホールに通っていました。

リングサイドに彼女を見つけると、幸せな気分になったことを思い出します。当時、すでに彼女は伝説でした。

初めて見たとき、パンフレットにサインをもらおうと思って「そうだ、あの人はそういうことを嫌う人だった」と思いとどまりました。

意外かもしれませんが、当時の帝拳はチャンピオンメーカーではありませんでした。

大場政夫、浜田剛史が世界王者になっていましたが〝たった〟2人だけ。

現在のように業界を仕切るパワーハウスでもありませんでした。

それでも、ファンやメディアが「帝拳」を特別な目で見ていたのは、彼女の存在があったからでしょう。

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あの大場政夫が唯一、頭が上がらなかった人。




その人が、生前
「大場以来の才能」と褒めたのが、那須川天心だったそう。

天心、また一つ絶対に負けられない重たい理由が増えちゃったよ。
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アマンダ・セラノ、いいボクサーです。

ひどいカットを負いながらも、常時プレッシャーをかけ続けました。

すごい試合でした。

それなのに、また、議論を呼ぶ判定です。
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Wednesday 23, October 2024
  
Madison Square Garden Theater, New York, New York, USA
commission:New York State Athletic Commission
promoter:Lou DiBella (DiBella Entertainment)
matchmaker:Ron Katz
media:ProBox TV



バンタム級が熱いのは、男だけではありません。

男のバンタム級が日本国内に閉じこもっているのに対して、女のバンタムはニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンのシアターでメインを張ります。

IBF女子バンタム級チャンピオン、36歳の吉田実代です。



39歳の シュレッタ〝SHA〟メトカーフとは昨年10月以来の再戦、吉田にとってはリベンジマッチ。

MSGで4“Heroes on the Hudson 2” と銘打たれたイベントのメインをつとめるーーー男子でも出来ない舞台です。

オッズはチャンピオンの吉田が9/4(3.25倍)でアンダードッグ。メトカーフが1/3(1.33倍)でフェイバリット。

まあ〝女パッキャオ〟にとってはオッズは関係ありません。

2戦連続の番狂せといきましょうか!


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「本当に強い投擲選手は逆転勝ちなんてしない」。

そう切り捨てたのは、やり投の日本記録(87m60)を30年間以上保持し続けている溝口和洋でした。

もちろん、それは北口榛花のことを言っていたのです。

室伏広治も指導した溝口が、他の選手、それも女子に厳しい批判を向けるのはあまり聞いたことがありませんでした。

それを聞いて、そうか北口榛花は本当にすげえヤツなんだとわかりました。

そして、パリ五輪では溝口も納得の最初の投擲でライバルたちを鎮圧しての金メダル。



それでも、ダイヤモンドリーグ・ファイナルではいつもの最終投擲での大逆転。

それにしても、凄いやり投げ選手が出現したものです。

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そして、やっと帰国。

というか、チェコを本拠地にしている女王にとって、束の間の帰省。

「ラーメン、お寿司、北海道の美味しいものをいっぱい食べたい」。

いっぱい食べてください。


来年の東京国立競技場「DAY 8 09/20」、女子やり投げ決勝。21時5分からの競技スタート。世界最強の女、見に行きます!

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日本女子サッカーのクライマックスは、現在のところ2011年の2011年FIFA女子ワールドカップ優勝です。

なでしこはUSWNT(米国代表)との死闘を制して優勝、澤穂希が得点王と最優秀選手に選ばれた、ドイツで開催の大会です。



あの大会で、米国ではすでに人気スポーツにのし上がっていた女子サッカー、USWNTの最年少選手として大きな注目を浴びていたのがアレックス・モーガンでした。

滅多にお目にかかれない〝スター然〟とした強烈なオーラを纏っていたストライカーでした。

決勝戦でも可愛い顔してるのにエゲつないにも程がある攻撃力で、なでしこを何度も崖っぷちに追い込みました。

とにかく、影響力のある女性でした。

私の友人の娘さんが全米代表のジュニアチームに選抜されるほどサッカーのめり込んだきっかけも、やはりアレックスでした。


MTk5NDI5ODEzOTE0NTc2ODQ2のコピー
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ESPNはスーパースター引退を伝える冒頭で「There is no weight like the expectation of being the next star of the U.S. women's national team.〜USWNTの次期スター候補と期待されるほどの重圧は他に存在しない」と書き始めています。


2009年代表デビューを果たした20歳はすでに、伝説のミア・ハムと比較されるほどの才能を撒き散らせていました。

そして「Just as Hamm came to be known simply as "Mia," Morgan is known to most as "Alex" without any other qualifiers needed.〜ミア・ハムが〝ミア〟と呼ぶだけで彼女を指すように、アレックス・モーガンも〝アレックス〟だけで誰でもわかる存在になったのです」。



特別な美貌を持つアスリートは、いつの時代でもスペシャルです。

サッカーで真っ先に思い浮かぶのは、男子のデービッド・ベッカムでしょう。

ピッチの外でもファッションや言動で芸能面を賑わせた点では、共通していますが、アレックスとベッカムは決定的に違います。

アレックスはセクハラや賃金など、男性優位の社会で虐げられた女子アスリートの代表として、敢然と戦いを挑み勝利を勝ち取る、ピッチの外でもストライカー…というかファイターでした。

この意味で、アレックスはベッカムよりも、モハメド・アリに近いグレートでした。



There is no weight like the expectation of being the next star of the U.S. women's national team.〜USWNTの次期スター候補と期待されるほどの重圧は他に存在しない。

この世界一重いスーパースターのトーチをアレックスから受け取るのは、誰になるのでしょうか?




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チェコの小さな町、ドマジュリツェに〝凱旋〟した北口榛花。

NHKをはじめ、多くの民法テレビが報道したので目にした方も多いのではないでしょうか。

人口1万人の町で、200人のお出迎え。こじんまりした〝凱旋〟でしたが、日本人として見ていて嬉しくなる映像でした。

「(チェコ名物の)ビールは好きか?」と聞かれた北口は「ビールは苦くて嫌いだったけどチェコに来て飲めるようになった」と答えていたのが、印象的でした。

ここからは私の勝手な想像ですが、彼女は今もビールを好きではないと思います。

大会で優勝してレポーターから「今、何がしたい?」と聞かれるのを何度か見ましたが、「チェコのビールが飲みたい!」とは一度も聞いたことがないからです。

実際はそうではなくても、そう発言したならチェコをますます喜ばせることができるのに、彼女はそういう、良い意味でリップサービス、悪くいうとウソはつけないアスリートです。

そんなわざとらしさが微塵もないのも、魅力の一つかもしれません。



月陸、雑誌「月刊陸上」のチャンネルです。



…高校時代、野球部と兼部する形で陸上競技部にも籍を置いていた私。

短距離と跳躍、複合競技をこなす、ひとつ上の先輩から「野球やってるならヤリを綺麗に飛ばせるって言われてんの知ってる?これ、逆もまた然りなんやけど。強肩やって聞いてるで、君」と、私にちょっと投げてみろとヤリを渡してきたことがありました。

野球の強肩選手は投擲種目にも向いているーーーというのはメカニクス的にも正しいのですが、だからといって全く同じではありません。

私が初めて投げたそのヤリは、急に失墜する紙飛行機のように20メートルほどゆらゆら飛ぶと地面に刺さることなくパシャっと腹這いにワンバウンドしました。

先輩は、何度投げてもきれいな放物線を描かない私の槍を大声で笑いまくりました。

先輩が短い助走で力感なくスッと投げると、槍は放物線の弧を描きながら、30メートルほど飛んで土のグラウンドにきれいに刺さりました。

「君は中長距離を走ってればよろしい」と言われた私は全く悔しくなかったのですが、槍は奥深いなあと感心したのを覚えています。

記録会や試合のスタンドには、強豪校の投擲ブロックが作った応援横断幕がいつも翻っていました。

そこには、力強い真っ黒の筆文字で「描け、大放物線」と揮毫されているのです。



中高だけでなく、大学の陸上競技部でも投擲ブロックに入部する選手が世代を繋げず、槍やハンマー、円盤、砲丸が手入れもされずに錆びたり、劣化して使い物にならず、廃棄されているというニュースを聞きました。

1年ほど前に、よく顔を出す高校の野球部の子が「体育倉庫にあったコレはなんだ?」と2枚の円盤を重ねてガチャガチャ鳴らしながら聞いて来たことがありました。

円盤の周囲をぐるっと回る鉄枠が錆びついているのを見ると、さすがに悲しくなりました。

最近はカーボンファイバーを使った最新型が流通していて、しっかり手入れをしていてもとっくに〝引退〟している代物ですが、かつてこの高校の陸上競技部にも円盤投げの選手がいたということです。

北口榛花の活躍を見て、私も投げてみたい、俺も大放物線を描きたいという中高生が増えてくれたら嬉しいのですが…。

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【Český rozhlas(チェコ国営放送)】

Díky Haruce Kitagučiové bylo oštěpařské zlato tak trochu i české. 

私たちの誇りを取り戻してくれたのは、北口榛花だった。






私たちは陸上競技フィールド種目、特に投擲種目に思い入れがある国民だ。

五輪や世界大会でチェコ人が金メダルを獲れば国中が喜びに沸き立つし、そうでなければ落胆してきた。

負けてしまったときは、私たちの誇りが奪われたような気分になってしまって、その日は誰もビールを飲む気になれない。

実際に飲む飲まないは別にして(笑)。

そういえば。世界の人々は大きな勘違いをしているが、世界で一番ビールを飲むのはドイツ人でもベルギー人でもない。

チェコ人だ。

そして、世界で圧倒的に人気があるのはピルスナービールであり、世界のビールのほとんどがピルスナービールなのだ。

何が言いたいのかって?

ピルスナービールはチェコのピルゼン地方で生まれたビールのことなんだ。

地球上の何十億人という人類が今日も明日も明後日もビールをたらふく飲むだろうが、あなたの喉を潤し、全身に活力を与えるこの飲み物がどこからやって来たのか、ほんの少しでもいいから思い出してくれたら、私たちも嬉しい。

ドイツでもベルギーでもないのだ、チェコなんだ!(笑)。



そういうわけだから、女子槍投げの世界記録保持者バルボラ・シュポタコバは私たちにとって、ほとんど神のような英雄だ。

私たちを誇らしい気持ちにしてくれて、美味しいビールを飲ませてくれるのだから、まさしく神だ。

バルボラが2008年の北京、そして2012年のロンドンで大放物線を描いて金メダルを持って帰って来てくれてから、もう10年以上も経ってしまった。

そして、バルボラは2022年の欧州選手権で3位になって引退してしまった。

私たちの太陽が沈んでしまったってことだ。

私たちは、少し長い間、暗いトンネルの中をとぼとぼ歩かなければならない…そう覚悟しなければならないはずだった。

しかし、不思議なことにそんな予感は、湧いてこなかった。


プラハから南西に130kmも離れたところに、ドマジュリツェという小さな町がある。

そこに、アジアの最果てからやって来た一人の女性が2018年に「憧れのシュポタコバの国で槍投げをマスターしたい」と住み込んでいた。

デービッド・セケラックの指導を受ける、ただそれだけのために。

セケラックの名前は、チェコの陸上ファンでも知らない人がいる。つまり、無名だ。セケラックはジュニアのコーチの一人に過ぎなかったのだ。

北口は「フィンランドで参加した国際講習会でセケラックの指導法に惹きつけられた。私はシュポタコバのチームに入れてくれなんて言えるレベルじゃない」と、チェコ語はもちろん、英語もほとんどできないのに何度もメールを送って、槍投げの優秀な指導者がいるということだけしか知らない私たちの国に、たった一人でやって来たのだ。



申し訳ないが、私たちも、極東の最果てにある日本について何も知らない。他の欧州の国と同様に、中国と韓国と日本の区別もついていない。

しかし、怒らないでくれ。

私たちはあなたたちにビールを捧げた。そして、あなたたちは私たちに金メダルを取り戻してくれた。

金色の飲み物と、金色のメダルを交換したんだ。

これでイーブン、貸し借りなしだ。

だろ?



それに、私のようなメディアに携わる人間なら、日本のことを少しは知っている。

マンガとアニメの国で、みんな子供のように小さくて可愛い。

やはり、北口榛花もアニメの主人公のように前向きで天真爛漫で可愛らしかった…しかし、彼女は小さくはなかった。

そして、彼女は大嘘つきの傾向もあった。

「私はレベルが低いから、シュポタコバのチームに入れてくれなんて言えない」というのは、アジア人によくある謙遜の中でも、呆れ果てるほどの最上級の謙遜だった。

彼女が大嘘つきだという証拠は、ちょっと調べただけでいくらでも出てくる世界大会の鮮明な動画を見れば誰にでもわかる。

彼女は世界陸上やダイヤモンド・リーグの大舞台、絶体絶命の最終投擲で全てをひっくり返して金メダルをかっ攫って見せた。そう、やはり日本のアニメの主人公のように。

そして、優勝インタビューではチェコ語で喜びを爆発させてくれるんだ。槍投げと同じくらいにどんどん上達するチェコ語で。

それを聞いたチェコ人がどんな気分になるのか、あなたたちにわかるだろうか?

「誰か教えてくれ。チェコ人が北口榛花を嫌いになるには、どうしたら良いのか?」という気分になってしまうのだ。

昨年、チェコ人が全員敗退してしまったブダペスト世界陸上の決勝で、やはり最終投擲で大逆転の金メダルを獲って、北口が「チェコに教えてもらって優勝した」と、いつものように破顔一笑、チェコ語で叫んでくれたとき、私たちは北口榛花を嫌いになる方法も理由も永遠に失ってしまった。



あの世界選手権で、孤高の英雄バルボラ・シュポタコバは、外国人の北口が最終投擲の助走を始めたとき絶叫して応援していた。

英雄は「私たちはパリで必ず誇りを取り戻す」と興奮気味に宣言した。

それがどういうことなのか、少しだけ複雑な話になるけど、肌の色やパスポートの国籍を重視する人にはわからない話だろうけど、北口榛花の胸には日章旗が縫い付けられているけど、北口榛花はどう見てもアジア人かもしれないけど…図々しい話だが、彼女は私たちにとってはチェコ代表でもあるということだ。

きっと、こういうことは日本の人は嫌がるだろう。日本だけでなく、どこの国でもそうだろう。

自分たちの国のヒーローが獲った金メダルを「チェコの取り分もある」というようなものだから。同じことを言われたら、私たちだって嫌な気分になるかもしれない。

それでも、それは偽りのない気持ちなんだ。

いや、「金メダルの取り分」じゃないな。私たちは、北口榛花の金メダルを日本人よりも喜びたいんだ。

まあ、どっちにしても厚かましい話ではある(笑)。


"Je to bojovnice, zapsala se do dějin. Je to obrovský úspěch. Předvedla hezký výkon šestým hodem, takhle se vyhrává. Moc hezký a navíc ještě ta česká stopa. Samozřejmě by bylo lepší, kdyby tam byla nějaká naše oštěpařka,"

インタビューを受けたり、フィールドを離れている彼女は底抜けに明るいパーティガールだが、槍を握った途端にファイターになる。

すでに榛花は歴史に残るジャベリンスローワーだが、来年のパリ五輪でまたヨーロッパに来て、彼女は最後の証明書に署名するだろう。


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そして、その通りになった。



最後に。

野球が大好きな日本人にお伝えするのを忘れてはならないことがある。

アトランタ・ブレーブスのトライアウトを受けてアメリカ中の話題を集めたヤン・ゼレズニーもチェコ人で槍投げの世界記録保持者なんだ。



ありがとう、北口榛花。

ありがとう、日本。



以上。






*************



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本当ならチェコの英雄・北口榛花のホーム旭川の地酒「男山」あたりを飲みたかったのですが…自宅の貧弱なサケナリーには見当たらず。

新潟の限定品「雪国 甚九郎 生酒」を。

しかし、チェコのビール「ピルスナー・ウルケル」は2本だけあった!!!

乾杯!

うう、しかし、甚九郎…美味すぎる。


昨年のワールド・ベースボール・クラシックでも大きな話題を呼びましたが、チェコは気質的にも日本人と相性が良い国です。

おめでとうございます、北口榛花。

おめでとうございます、チェコ共和国。


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