カテゴリ: 日本でも馴染深い拳闘家達の生き様

今年2月、ダニー・ガルシアに痛烈にノックアウトされた元WBA世界ライト級王者ブランドン・リオスは、引退を宣言しました。

ところが、その舌の根も乾かぬうちに、日本時間の明日〝バンバン〟リオスはカンザスシティでラモン・アルバレスと拳を交えます。

34勝25KO4敗のリオスはまだ32歳とはいえ、直近7戦で3勝4敗、明らかに峠を越したボクサーです。

対するアルバレスは同い年の32歳、27勝16KO6敗3分。2年前にはアントニオ・マルガリートと空位のWBO北米ジュニアミドル級王座を争ってします(1−2の判定負け)。

そう、今回のリオスvsアルバレスはジュニアミドル級(154ポンド)ノンタイトルで争われるのです。

といっても151ポンドのキャッチウエイトですが。

元々が減量苦と超リバウンドで有名だったリオスですが、ライト級(135ポンド)から19ポンドも漂流してきたことになります。
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「マニー・パッキャオの後を継ぐのはリオスかカネロか?」(リング誌2011年11月号)。7年前はボクシング界を代表する二人の人気者でしたが…。

グローブを吊るすことを頑なに拒む人々、その理由は栄光への未練や、経済的な困窮が大概なのですが、リオスの場合は少し変わっています。

「戦い続ける理由はたった一つ。特別な黒いベルトが欲しいんだ」。

リオスは、政治家のように雄弁にESPNのインタビューに答えます。

「あと4年、俺はあと4年は戦うんだ。35歳になったらリングを降りるさ。それがデッドライン。7歳になる娘、ミアに約束しちまったんだ」。

「お父さんはもう一回世界チャンピオンになる。チャンピオンベルトはミアにプレゼントする」。

リオスは勢いで話したそうですが、娘は「私も稽古している空手で黒帯を取る!そしたらお父さんのチャンピオンベルトと交換しよう!」と大喜び〝ベルト交換〟の約束をしてしまったのです。

「我ながら、きっつい約束をしちまった。でもミアとの〝ベルト交換〟を果たさなければ、俺は引退できないんだ」。

「カネ目当てじゃない。もう一度、チャンピオンベルトを獲得して、ミアが頑張って取った黒帯と交換したい、単純にそれだけなんだ。こんなに純粋な気持ちでボクシングに打ち込んだことなんて初めてかもしれない」。

リオスは2015年にティモシー・ブラッドリーに惨敗したときも引退宣言しましたが、1年半でリングに帰りアーロン・ヘレラをKO、復帰を果たしています。

今回は、それよりずっと短い、わずか9ヶ月の引退でした。

ガルシア戦のパフォーマンスはけして悪くありませんでした。それでも、肉を斬らせて骨を断つ、激闘型のリオスの頑健な肉体と鋼鉄の顎は、歴戦で消耗・磨耗していましたが、ボクサーの多くは客観的に自分を見ることが出来ません。

「ガルシア戦は絶好調だった。不用意にパンチをもらってしまったが、それは誰にだってあること。俺はまだ出来たし、レフェリーが止めなければ違う結果になっていたのに」。

不摂生が代名詞のリオスは「今回は真剣だ」と繰り返す狼少年でした。

しかし、今度こそは本気かもしれません。

「きっちりコンデションを整えるために栄養士を雇ったんだ。『大酒食らってゲロ吐いて減量だ』なんてふざける悪い友達とも距離を置いている。気の合う奴らとは、引退後に思いっきり遊べばいいんだと気付いたんだ。今は〝黒帯〟を手に入れるためだけに俺の全てを捧げる」。

リオスといえば、犬猿の仲のあの男が思い浮かびます。

同郷のライバル、ビクター・オルティスです。

この〝ガチで憎しみ合っている二人〟の対戦は、すでに交渉が進んでいる模様で、彼らが育ったカンザスの町の名をとった"the Garden City Grudge Match."」(ガーデンシティの因縁対決)が来年実現しそうなのです。

まあ、日本のボクシングファンにとっては、メイウェザーとパッキャオの餌にされた二人の劣化対決にはそこまで関心はありませんが…。

「オルティスは強姦容疑で裁判が立て込んでいるから、ヤツと戦えるかどうかはわからない。なるようになるさ」。

「とりあえずはラモン・アルバレスに勝たなきゃ、何にも始まらない。地元カンザスシティで戦うのは2007年以来だから、もう10年以上も前のことだ」。

「2007年…俺はまだ世界タイトルも獲っていない、でも連戦連勝で怖いもの知らずだった。ミアはまだ産まれてもいない…だからミアに見せたいね、あのときの俺の強さを…」。



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リオスの娘さんは空手をやって黒帯を目指してるんだ、と思うと親近感がわきます。

しかしリオスには、リオスの理由があるように、ラモンにもラモンの理由が必ずあります。

相手は、なにしろ〝バンバン〟リオスです。ビッグネームです。

ウィリアムヒルのオッズはリオス勝利が1/12(1.08倍)、ラモン6/1(6倍)。アバウト6−1で、リオス圧倒的有利です。

しかし、この試合の勝利はリオスにとっては生き残りですが、ラモンにとってはジャイアントキラー、世界を驚かす花火を打ち上げる絶好のチャンスです。


この試合に賭ける思いはラモン・アルバレスの方が強いかもしれません。
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世界王者になってからも副業を続ける、続けざるを得ないボクサーは日本でも珍しくありません。

まして世界に目を向けると、東南アジアや中南米、アフリカ、貧しい途上国が軒を連ねる地域で主流の軽量級ボクサーが〝専業〟になることはレアケースです。

三階級制覇を果たし、六車卓也や葛西裕一、渡辺雄二を倒したウィルフレド・バスケス父は豊かな日本人相手の試合をこなし、ボクシングに専念することも出来ましたが、トレーラーの運転手としての副業を続け、報酬でより大きなトレーラートラックを購入、事業を拡大していきました。

ラスベガス・ハードロックホテル&カジノでWBOジュニアフライ級王座の二度目の防衛戦のリングに上がったアンヘル・アコスタも、副業をこなしながら戦うチャンピオンです。

昨年5月、16戦全勝16KOの完全無欠の戦績を引っ提げ、田中恒成に挑むも0-3の完敗。田中が三階級制覇を目指して返上して空位となった王座をファン・アレホと12月に争い10ラウンドKOで念願のタイトル獲得。

今年6月にはカルロス・ブイトラゴを最終回KOに下して初防衛に成功。28歳のプエルトリカンは、この13か月足らずの間に「世界挑戦失敗」「世界王座獲得」「世界王座防衛」と3試合をこなし、濃密な時間を過ごしてきました。

明日、迎え撃つのはアブラハム・ロドリゲス、23歳。戦績は23勝11KO1敗と立派なメキシカンですが、強豪との手合わせはなく、アコスタ有利の予想が立てられています。

ロドリゲス唯一の黒星は今年3月にアレハンドロ・ビラセノアに5ラウンドでドクターストップされたものです。ロドリゲスの左目上の激しい出血はパンチによるものではなく、バッティングだったように見えましたが、無名のボクサーの頭突きをかわせないのは技術的に未熟な証拠です。

試合は2ラウンドKOで、アコスタは20戦19KO1敗に数字を伸ばしました。勝った19試合は全てKO、負けたのは1試合だけ。田中恒成の強さを際立たせてくれています。
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衝撃的なKO勝利をまた一つ加えたアコスタは、バンタム級のエマニュエル・ロドリゲスと並ぶプエルトリコ軽量級のスターなのですが…。

アコスタはプロボクサーとして順調なキャリアを重ねながらも、地元サンファンの宅配ピザ屋・マイケルピザでも働いているのです。
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「オフなど時間があるときは、今でもマイケルピザで働いてるよ。性格的にも接客業が向いてて、この仕事が好きなんだ。給料も入ってくるし。車を買ったり、携帯電話料金を支払ったり、いろいろお金もかかるからね」。

「ボクシングで稼いだら、将来は自分の店を持ちたいと考えているんだ。店舗経営のノウハウはわかっているから」。

一日働いたら70~80ドルになることもあり、25ドルのチップをもらったこともあるといいます。

明日のロドリゲス戦はその100倍以上の収入を彼にもたらすことになりそうです。

初防衛戦は独立系のPPVで放送、視聴者数は寂しいものでしたが、今回はフェイスブックでストリーミング放送されるゴールデンボーイ・ファイトナイト(先日のホルヘ・リナレスの試合もそうでした)です。

タイトルを獲得した昨年12月のアレホ戦は、母国の伝説ミゲール・コットの引退試合(vsサダム・アリ)の前座にセットされましたが、その時を凌ぐキャリア最高の報酬を手に入れることになりそうです。

「ミゲール・コット・プロモーションに所属しているおかげで、ゴールデンボーイ・プロモーションが手掛ける大きなイベントに参加することが出来た。本当に感激している」と喜び、「私の強さは母親似。母親は本当に強いんだ。ノックアウトで勝つことに価値を覚えている。なによりも観客が興奮してくれるから」と強打を打ち込むスタイルについても説明しています。

プエルトリコでは特別な意味を持つ〝Tito”の異名(もちろん最も偉大なボクサーの一人、フェリックス・トリニダードから来ています)を戴くアコスタは「同じ階級の田口良一vsヘッキー・ブドラーはすごい試合だった。ブドラーは凄いよね。無敗の拳四朗の試合も観ているけど、彼も素晴らしいボクサー。プロモーターには統一戦がしたい、オファーがあったら報酬は関係なく受けたい」と、ジュニアフライ級統一の野望も口にしています。

もし、統一王者にまで昇り詰めることが出来たら、念願の宅配ピザ屋をすぐに開業できるでしょう。そして、プエルリコのサクセスストーリーとして語り継がれていくに違いありません。
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あと10日を切った村田諒太の米国メインイベント。

米国ではHBOでもSHOWTIMEでもなくESPN+が、日本では地上波でもWOWOWでもなくDAZNが生中継する 、新時代を象徴する一戦です。

今夜のテーマは新しいボクシング中継、観戦ボクシングの未来の話の話…ではなく「しぶとく現役を続けるボクサー」のお話です。

ラスベガスのMGMパークシアターで行われるこの興行の前座リングに、アントニオ・デマルコが上がります。

2004年、18歳でプロデビュー、そのクラスはバンタム級でした。

身長178㎝、リーチ180㎝の体格が118ポンドで収まるわけはなく、2戦目を3階級上のジュニアライト級、4戦目をライト級で戦い、この激選区でコンテンダーとして生き残っていきます。

2009年9月には、前の年に小堀佑介に敗れてWBA王座を手放したホセ・アルファロを10ラウンドTKO、WBC暫定王座を獲得しました。

そして、翌2010年2月に地元メキシコでエドウィン・バレロとWBC正規王座を賭けて拳を交えます。このときのバレロは26戦全勝26 KO、その対戦相手に強豪の名前はありませんでしたが、完全無欠のレコードを驀進中でした。

オッズも4−1でバレロ有利。

結果は9ラウンド終了時点でデマルコが棄権。オープンスコアで行われ、8ラウンド終了時の採点「三者とも79−72」のアナウンスを聞いて諦めたデマルコは「クイッター(試合を投げ出したヘタレ)」の烙印を押され、メディアからもファンからも非難されてしまいます。

そして、〝試されたことのない怪物〟バレロはこの試合を最後に、ついに試されることがないまま、その人生を自ら閉じてしまいました。

しかし「クイッター」の汚名を晴らす機会は意外なほどすぐに訪れます。

2011年10月、ロスアンゼルス・ステイプルセンター。バーナード・ホプキンスvsチャド・ドーソンのビッグファイトの前座で、空位のWBCライト級王座を争うチャンスが与えられたのです。

しかし、相手はスピードスターのホルヘ・リナレス。オッズは今回も1−4と完全なアンダードッグでした。

10ラウンドまでのスコアは二人のジャッジがリナレスに98−92、もう一人が99−91をつける展開でしたが、デマルコが11ラウンドにリナレスを血だるまにして逆転KO勝ち。

2012年11月、このタイトルの三度目の防衛戦でまたもやアンダードッグ。しかも1−10という圧倒的不利のオッズを立てられます。そして、そのオッズの通りにエイドリアン・ブローナーに切り刻まれ、8ラウンドでストップされてしまいました。

このブローナー戦から5勝4敗と負けが込んだデマルコがジュニアウェルター級10回戦で、村田の前座を務めるのです。

その相手は28歳のロシア人、マキシム・ダダシェフ。〝マッド・マックス〟の異名を持つ11戦全勝10KOのホープです。

32歳のデマルコは咬ませ犬です。
それでも、リナレスに噛み付いたように、マッド・マックスにも番狂わせを味あわせて欲しいところです。

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Jhonny-Gonzalez-vs-gusano-rojas

そして、先週10月6日。メキシコシチーで、やはり日本のボクシングファンに馴染みの深い二人のボクサーが拳を交えました。

空位の、WBCインターナショナルの、シルバーの、暫定王座(もう何が何だか訳がわからないタイトルですね)を賭けた一戦です。クラスはジュニアライト級。

ジョニー・ゴンザレスvsトマス・ロハス。

西岡利晃、長谷川穂積という日本を代表する二人と印象的な試合を見せたジョニゴンと、山中慎介に糸の切れた操り人形のようにKOされたロハスです。

強打とグラスジョーを持つスリリングなジョニゴンと、6年前の山中慎介による戦慄のノックアウト劇が日本のファンの網膜に焼き付いているロハス。

ジュニアライトという階級からも、38歳の元ジュニアバンタム級王者ロハスが圧倒的不利と思われましたが、「金星供給マシーン」37歳のジョニゴンは空振りを繰り返しSDで試合を落とします。

ロハスが再び世界挑戦の機会を得るとしたら、それもジュニアライトで…感慨深いものがあります。そこまで漕ぎ着けて欲しいですね。50勝16敗の38歳を純粋に応援したくなりました。

ジョニゴンも強打は健在です。パンチャーはあらゆる可能性を秘めています。かつてのスーパースター候補は、スターダムに駆け上がることはなく、今は37歳、66勝11敗の泥臭いロートルになりました。

そして、ロハスにまさかの敗北。それでもその強打が、最後のひと輝きを、もう一度見せてくれることを期待したいですね。
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