
まあ、時代とはいえとんでもない試合数です。リングの中は基本八階級、王者は世界に一人だけという清廉潔白でしたが、リングの外ではマフィアが興行を仕切るダークサイドの影も色濃く、八百長をはじめ犯罪と陰謀が陰鬱に渦巻いていました。
この時代を振り返って「昔は良かった」なんて口が裂けても言えませんが、モノクロのピカレスク映画に登場するキャラクターそのままの当時のピュギリスト(拳闘家)の生き様は恐ろしくもドラマティックで、引き込まれてしまいます。
続きです。
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1938年8月17日 ヘンリー・アームストロング vs ルー・アンバース 第一戦
アンバースは、カンゾネリとのラバーマッチを制してから9勝無敗1分と快調に王座を守ってきた。
防衛戦に迎えるのは、ヘンリー・アームストロング。
前の試合で世界フェザー級タイトルを保持したままバーニー・ロスを下して世界ウェルター級王者となっていたアームストロングは、わずか10ヶ月で前人未到の三階級同時制覇を達成した。
判定はSDだったが、5ラウンドにダウンを奪ったアームストロングの勝利は揺るがない。

70年後の2008年、同じ10ヶ月でWBCジュニアライト(ファン・マヌエル・マルケス戦)、WBCライト(デビッド・ディアス戦)、ウェルター(*ノンタイトル:オスカー・デラホーヤ戦)で勝利したマニー・パッキャオは「アームストロングの再来」と一部で賞賛されるが、両者の内容は全く違うことを考えなければならない。
1966年11月28日 カルロス・オルティス vs ガブリエル“フラッシュ”エロルデ
日本にも馴染みの深い二人のグレートの対決。
2年前の初戦では、地元マニラに6万人の大観衆を集めた「元祖〝フィリピンの閃光〟」が出入りの激しいボクシングで主導権を奪うも、中盤からオルティスが盛り返す。14ラウンド、エロルデは右目が切れて出血、ストップ負けとなった。
そして、今回、負けた気のしないエロルデは勇躍ニューヨークに乗り込むも、奇しくも14ラウンド、プエルトリカンの強烈な右フックを浴びてマットに叩きつけられた。
プロ108戦目のエロルデは、テンカウントを聞かされてキャリア初のKO負け。フィリピンの英雄が悲願した二階級制覇の夢は、ニューヨークの空に散った。
1971年9月13日 ケン・ブキャナン vs イスマエル・ラグナ 第二戦
ブキャナンは、前年にプエルトリコでパナマ人のラグナをSDで下して戴冠。全く意外な事実だが、英国ボクシング界には100年破られなかったジンクスがあった。
「英国人は海外で王者になれない」。この忌々しい呪縛を始めて解いたのが、ブキャナンの拳だった。
しかし、再戦では、第3ラウンドにはブキャナンが左目下を腫らして大苦戦(ブキャナンは「サミングが原因」と主張している)、5ラウンドにはこの腫れが裂けて出血してしまう。
この出血も「チーフセコンドのエディ・トーマスが腫れが膨らみのを抑えようとカミソリで切ってしまったことが間違った判断だった」とブキャナンは振り返っている。
左目は完全に塞がってしまったが、スコットランドのタフガイは15ラウンドに渡り、パナマ人を押し切って10−5/9−6/8−6−1のUDを勝ち取った。
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