3月11日、マイキー・ガルシアがセルゲイ・リピネッツを振り切って四階級制覇を達成しました。

長らく三階級制覇が偉業であり記録でもあったボクシング界ですが、階級と承認団体が増殖する中では、四階級制覇といっても全く驚くに値しなくなってしまいました。

2018年現在、最も多くの階級を制覇した記録は、マニー・パッキャオの「8」です。

オスカー・デラホーヤが「6」で続き、「5」となるとトーマス・ハーンズ、シュガー・レイ・レナード、フロイド・メイウェザーJr.、ホルヘ・アルセ(暫定含む)、ノニト・ドネア(暫定含む)と5人が名乗りを上げています。

そして、四階級制覇はマイキーがなんと11人目です。

四階級制覇以上を達成した18人を時系列で並べると、最初に達成したのはハーンズの1987年、それまで100年近くも記録の数字だった「3」が破られると、その後わずか30年で18人ものボクサーがヘンリー・アームストロングやアレクシス・アルゲリョら稀代のグレートを易々と超えていったのです。

さらに、その18人のうち13人が2000年以降に誕生しているのです。2年に一人以上のペースで増産されている計算になります。

三階級制覇まで含めると、2000年以降は年一人のペースを優に上回ります。

偉大なアームストロングやアルゲリョが毎年濫造されているカラクリが、階級と腐敗承認団体の増殖であることは明らかです。
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偉大なヘンリー・アームストロングですら四階級目は鬼門でしたが、現代のボクサーは散歩のついでのように四階級制覇を果たしていきます。=写真はリング誌電子版「Movin' on Up 階級制覇とは何なのか?」より


1団体11階級の1960年代に達成されたファイティング原田のフライ〜バンタムの二階級制覇は、史上初の大偉業と最高の評価を得ていますが、今や二階級制覇では誰も驚かすことなど出来ません。

しかし、マイキーの四階級制覇で欧米メディアが気になる取り上げ方をしていました。

「126ポンド(フェザー級)から140ポンド(ジュニアウェルター級)までの四階級制覇は史上3人目」と格別の評価を与えているのです。

マイキーの二人の先輩はマニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケス、疑問を挟む余地の無い一発殿堂確実のグレートです。

そういえばアルゲリョが阻まれた四階級制覇も、このロードマップでした。

では、四階級制覇で最も難易度が高いのは、フェザーからジュニアウェルターなのでしょうか?

…どうもこれは、違う気がしますね。

隣接階級の体重差が大きいほど、階級制覇の難易度は高まると考えられますから、最も困難な階級制覇はヘビー級をからめたものであることは論を待ちません。

同じ階級制覇でも105ポンドのミニマム級と108ポンドのライトフライ級の間の体重差は、わずか3ポンド、1.36kgです。

ヘビー級をからめない最大の体重振幅差は、175ポンド(ライトヘビー)と200ポンド(クルーザー)の25ポンド=11.34kgですから、ミニマム〜ライトフライの8倍以上です。

体重の振幅の大きさと難易度が比例するとしたら、ヘビー級を除外しても、マイキーらの14ポンド=6.35kgに渡る四階級よりも、ミドルからクルーザーの160ポンドから200ポンドの間に横たわる40ポンド=18.14kgを鎮圧する四階級制覇の方が遥かに難しそうです。

しかし、階級制覇の難易度を考えるにあたって体重の振幅ともう一つ忘れてはならないファクターがあります。

階級の攻略難易度です。

ボクシングの階級には人気とそれに直結した報酬面で厳然たる貴賤が存在します。

先日、SUPER FLY2の〝決勝戦〟でシーサケット・ソールンビサイと激闘を繰り広げたファン・フランシスコ・エストラーダが「軽量級の報酬は中量級と比べてあまりにも劣悪。不当な虐待を受けている」と抗議の声をあげましたが、プロスポーツはビジネスです。仕方がありません。

「軽量級は迫力不足で面白くない」という欧米に染み付いた蒙昧な誤解を解いていくしかありません。

それでも、全17階級を通して最も競技人口が多く、ゆえに最もレベルの高いウェルター級をからませた複数階級制覇は、競技人口が少なく、隣接階級との体重差も少ないミニマム級がらみの階級制覇とは難易度は明らかに違うはずです。

体重の振幅と、階級難易度。この二つに加えて最も重要なもう一つのファクターを考慮すると、ボクシング120年の歴史で一番困難な複数階級制覇を成し遂げたのは一体誰になるのでしょうか?

そしてそのボクサーは、四階級制覇に失敗した歴史上のグレートを数字だけでなく、内容的にも凌駕しているのでしょうか?

上記の18人を独断と偏見でランキング、歴史を彩ったグレートとの優劣を決着させてゆきます。