IMG_0124 (1)

【20世紀初頭、ジャック・ジョンソンの時代。PFPなんてチンケな概念は、必要性が全く無く、そもそも存在しませんでした。100年後の現在、ヘビー級はボクシングの頂点から完全に陥落してしまいました。ヘビー級の世界王者であるがゆえに、社会常識であった人種差別にも真っ向から挑むことが出来たジョンソンには、ヘビー級が軽視される未来など到底信じられなかったでしょう。】

時代や階級を超えたPFPを語るとき、無視してしまうと不公平が生じてしまう、その3つ目が、今回のテーマ、なぜ軽量級の方が見てて面白いのかという真実の根拠にもなっている「スピードとダイナミズムの公平性」です。

この「公平性」を無視した考え方が、原理主義的なPFPで、軽量級に大きく肩入れしてしてしまうのです。

時代や階級を超えてボクサーの優劣を判定すること自体が、土台不可能です。

だったら、「時代」や「強さ」を補佐・修正するなんて無意味なことはしないで、ボクサーの見た目のまま、サイズを拡大・縮小して単純明快にPFPを語ろうとする立場です。

Yahoo!スポーツのケビン・アイオラ記者らが、この考え方に立っていますが、この「見た目のまま、サイズだけ」というのが曲者です。

デオンティ・ワイルダーと井上尚弥が体重同一時なら…夢のマッチメイクに思えますが、どう考えてもワイルダーに不利な仮定です。

ワイルダーのリーチは211㎝、井上は169㎝です。

二人が同じスピードでパンチを放つと、当たり前ですが井上の方が速く見え、より早く着弾します。

速度が同じなら、距離が長ければ長いほど、移動時間がかかるのは当然です。

一発のパンチでも明らかな錯覚をしてしまうのに、これが連打、パンチの回転数となると、ヘビー級はさらに鈍重に、軽量級はさらに快速に見えてしまいます。

〝縮小拡大〟PFPの世界では、重量級はその立派な体躯ゆえに、不当な評価に甘んじなければならないのです。

ネズミのように動ける象など、いるわけがありません。もしネズミを象のサイズに拡大したら、ネズミの足はその体重を支えることが出来ず、へし折れてしまいます。

しかし、単純な縮小拡大解釈は、ネズミのように動く象を生み出してしまうのです。

PFP自体が不可能で不条理なSF的着想なのだから、そこで生物学的にあり得ないなどと言い出すのは、ジェダイの騎士が振るうライトセーバーを「科学的にあり得ない」と切り捨てるのと同じことかもしれません。

さらに、迫力満点のパワーは重量級の大きなセールスポイントですが、ショッキングなKO劇は軽量級でも珍しくありません。

より過酷な減量を強いられる傾向にある軽量級のボクサーは、打たれ強さの面で大きな不安を抱えていることから、重量級のようなパワーがなくとも、戦慄のKOシーンが生まれるのです。

無理に減量して、より有利な階級で戦おうとする姿勢は、スポーツの観点からもけして賞賛できるものではありませんが、そのことが衝撃的な展開につながりやすくなっているのです。

リングサイドで重量級を観戦するとパンチの音、筋肉がぶつかる音、ロープのたわみ、二人の体重で軋むカンバス…二人のボクサーのあらゆる動きに、重さと強さが表現され、軽量級にはありえない迫力が堪能出来ます。

なんでもないシーンでも「おおっっ…」と思わず口をついてしまう、それが重量級です。

しかし、今はテレビで試合を見る時代です。欧米の一部を除いて、リングサイドで重量級を見る機会に恵まれるファンは稀有です。

モニター越しに見る重量級からは、重さも大きさも、現実の迫力が伝わってきません。

薄っぺらなモニターでわかりやすいのは、見た目のスピードだけです。

PFPが軽量級に光を当てる救済措置だった時代なら、それでも良かったのかもしれませんが、時代は移り変わりました。

アリの時代を最後にヘビー級に主役の座は回ってきていません。クルーザー級やライトヘビー級に至っては、その階級に脚光が当てられた時代すらなかったといっても過言ではない有様です。

ヘビー級以外の階級への救済措置だったはずのPFPですが、そのヘビー級が今や救済してあげなくてはならないクラスに転落、クルーザーとライトヘビーを含めた重量級3クラスは暗黒時代が続いているのです。

1980年以降で、ヘビー級のボクサーがリング誌の年間PFP1位になったのは1988、1989年のマイク・タイソンだけです。(2003年のロイ・ジョーンズはヘビー級王者でしたが、ヘビー級でのパフォーマンスではなく「ヘビー級を制覇した元ミドル級王者」として評価されたので除外します)

そのタイソンの季節にしても、綺羅星の如くスターがひしめきヘビー級が盛り上がったアリの時代とは違い、タイソンだけに注目が集まるだけの、一時的な現象でした。

それでも、不遇の時代を迎えていても階級制のボクシングにおいて、ヘビー級が頂点であることは不動です。

PFPでは井上より下でも、現実にぶつかったら井上が二人がかりでもワイルダーに破壊されるでしょう。

そういう意味では、アンソニー・ジョシュアとデオンティ・ワイルダーの対決は久しぶりに鳥肌モノの頂上決戦です。今年、見れたらいいですね。

なんだか、当初の趣旨から逸脱してしまいましたが、重量級は面白いんです、とにかく同じ人間とは思えない弩級の迫力です。

ミドル級は世界的には中量級ですが、村田諒太の試合なんて、人間のパワーとは思えません。亀田興毅が「(村田と戦ったら)ジャブだけで殺される」と、軽量級との差をわかりやすく語ってくれています。

しかし、テレビで見ちゃうと「井上と比べたら遅いな〜」とか言っちゃうファンも多いんですよね。

軽量級が面白いのは二次元のモニター越しだからです。PFPでアジアの軽量級が躍進するようになったのは、リング誌の記者や専門家が YouTube で見て評価してしまうからです。

スーパーミドルとクルーザー級の最強を決める World Boxing Super Seriesなんて、ボクシングファンなら絶対に楽しめるのに、日本でも米国でもまともに取り上げていません。不憫です。

酔っ払って、電車の中で書いて、しっちゃかめっちゃかだと思いますが、テレビでトップ選手を見て面白いのは軽量級ですが、リングサイドで見たいのはヘビー級ですね。