先月終わったMLBドラフト会議。

日本と同様にファンから様々な意見が上がっていました。

特に、SFジャイアンツが昨年に続いて、TWPを1位指名したことは大きな話題を呼びました。

「もう10年近くもTWPの発掘作業をして、まだ一匹のユニコーンも見つかっていないのに、まだ続けるの?」「ユニコーンは一匹しかいないからユニコーンだってこと、ジャイアンツのスカウトは知らないのかな?」「最初に大谷が獲れなかったからといって往生際が悪すぎ」…。




▪️サンフランシスコ・ジャイアンツ 2023ドラフト1位(全体16位)▪️

ブライス・エルドリッジ(18歳:ジェームス・マディソン高校・ポジションTWP=Two Way Player)

渾名:the American Ohtani

身長2m1㎝/体重101kg


100マイルに近いファストボールを投げ、場外ホームランを次々とかっ飛ばすエルドリッジは、特にこの1年間は大谷翔平と比較され、「大谷のようになれるかもしれない」「いや、絶対になれないから投手に専念すべき」「大谷以外の選手にとって二刀流は時間の無駄」…嵐のような雑音の中を過ごしてきました。

ーーー大谷のことを聞かれないインタビューを受けた記憶は?

「この1年間はない。いつも同じことを聞かれるのは正直面倒だけど、大谷は特別。100%嬉しいだけ。大谷がいたから、つまり誰も否定できない大きな成功例があるから、ここまで二刀流を続けることができたんだから」。

ーーー大谷がいなかったら、二刀流の競技生活は難しかった?

「絶対に無理だという人が沢山いたと思う。MLBでも出来ると励ましてくれる人は、もっと少なかったのは間違いない。大谷の存在が、絶対に不可能とは言えなくさせてくれている。そもそも、大谷がいなかったらドラフトでもTWP枠なんて存在してないわけだから」。

ーーー大谷になれると思ってるのか?

「そう思ってなきゃ、やっていない。実際には超えてやると思っている。大谷を超えて、大谷に『よくやった』と認めてもらうのが究極の目標だ」。





MLBのルールまで変えた日本人の登場は、アメリカの常識を一変させました。

「衝撃的」という表現が的を射ないほど物足りないため「この日本人を表現するには、全く新しい言葉が必要だ」とまで言われています。

考えてみれば当たり前。人類は初めてユニコーンを目の当たりにしたのだから。起きるわけがないことが、確かに目の前で起きている、そんな衝撃の伝え方など知るわけがありません。

そして、この10年近く、北米大陸では、もう一匹のユニコーン探しが続いています。日本には「二匹目のドジョウ」という言葉がありますが、まさに「二匹目のユニコーン」探しです。

「一匹しかいないからユニコーンなのに、もう一匹なんて見つかるわけがない」。そんな否定派の言葉が毎年強まる一方ですが、今年のドラフトでは過去最多の8名のTWPが「もしかしたらユニコーンの卵ではないか?」と期待されて指名されました。

しかし、TWPという新たなポジションが創設されてから50人近くがドラフト指名されてきましたが、残念ながら、まだ一つの卵も孵化していません。

彼らの多くは投手か野手を選択して、「卵であること」を早々にやめてしまっています。


では、SFジャイアンツなどMLBの冒険的なチームの取り組みは多くの人が笑うように無駄なのでしょうか?

私は、SFジャイアンツがTWPを指名し続けるのは、2匹目のユニコーンがどこかに生息しているはずだという思い、それだけではない気がしています。

過酷なメジャーリーグで生き抜く球に最も必要なのは、何があっても挫けない挑戦者魂。12歳で投手か野手かを迫られるケースが多い米国で、TWPを貫くことは不屈の精神力が求められます。

MLBドラフトのその日まで、そんなTWPを貫いてきた彼らは、たとえユニコーンの卵でなかったとしても、偉大なプレイヤーになる可能性、強烈な挑戦者魂を秘めた卵であることには何ら変わらないはずです。



いつの日か。ブライス・エルドリッジの夢が叶うことを祈っています。