「学説・藤浪晋太郎論」を始めた最大の理由は、この才能が迷い込んだパズルを解くには精神論や技術論を超えた方向にしかないと考えたからでしたが、そこに至る前に「そもそもパズルに迷い込んでいない」、「迷い込んで右往左往してたのは日本のベンチだけ」という、想定内ではあるものの、おそらく最も可能性が低いと思われた形で落ち着いてしまいそうな状況です。

https://www.mlb.com/player/shintaro-fujinami-660261

このブログでも書いてきましたが、藤浪の制球難は「草野球でも使えない、投手として詰んでいる」なんてのは、何も分かっていない大間違いの見方で「あとは制球難だけ、つまり世界最高峰の舞台に王手をかけている」と見るのが正解でした。

阪神ファンであることを抜きにしても「阪神が使いこなせなかった」とは、今も思ってません。あんな見たこともない暴れ馬、ファイターズだろうがライオンズだろうが、乗りこなせるわけがありません。



タイムリミットは長くて3年と見ていました。2年目の来季が30歳、3年目で31歳、MLBではまだ3年でも31歳、そこで何らかの形を作ることができなければ「いのち短し」のアスリートです、タイムアップだと思ってましたが…。



それにしても、日本時代10年、MLB1年半ばの11シーズン。大谷の日本5年、MLB6年の11シーズンは選手成績としては比較する対象ではありません。

思い切り、藤浪寄りに語れば、日本でのルーキーイヤーは藤浪が勝ってたが、その後の10シーズンでは差は開くばかりーーーというか大谷は別のステージに旅立ってしまった、と言ったところでしょうか。

しかし、純粋なアスリートとしてみた場合、恐るべきことに藤浪は大きな怪我を一度もしていないのです。MLBが飛びつく剛球を投げ込みながら、日本でもアメリカでも全くの健康体。

藤浪のボールの質が「マイナーにもゴロゴロ転がっている160キロ投手」とは全く異質であることにアスレティックスのスカウト陣が気づいていたのは明らかですが、契約を決定的にしたのはメディカルチェックの結果だったでしょう。

「メディカルチェックのあと契約するのは当たり前」ではなく、藤浪のケースは靭帯や軟骨、関節の、ありえないほど健康で磨耗していない数値に驚いたはずです。おそらく、関節ネズミなどの兆候も全く認められなかったのでしょう。

「甲子園、NPBというアメリカから考えたら科学を無視した無茶苦茶な環境で10年以上も投げ続けてきたのにどうして?」。

野球の豪速球投手、ボクシングの強打者は故障・手術がセットであるはずです。しかし、藤浪やマニー・パッキャオのように説明不可能の例外がときとして現れます。

藤浪やパッキャオが他の選手と比べて次元が違う節制と規律を持って練習してきたからなのか?他の選手の手本になるほど理にかなった美しいフォーム、メカニクスだから故障しないのか?

…二人には失礼ですが、絶対に違います。

もともと肩や拳が頑丈だったのはあるでしょうが、トッププロの世界です。それだけで故障から免れるなら、プロ野球選手や世界チャンピオンはまず怪我なんてしません。

実はその裏付けを、アスレティックスもオリオールズもすでに把握していると思います。

藤浪の個人情報になるだけでなく、所属チームにとっては企業秘密、公開してくれるわけもありませんがスポーツドクターの説明を聴きながら拝見したいです。もしかしたら、未来の「ピッチャーズ・バイブル」が変わり、故障しないトレーニングに大きな道筋が出来るかもしれません。

いずれにしても「世界最高の剛球を投げる絶対に壊れない肩を持つ投手」が藤浪です。課題はたった一つ、制球難だけ。それも、いつも暴れているわけではありません。

その原因は技術と心理、両方にあるでしょうが、アスレティックスとオリオールズは「それ一番、簡単なヤツ」と考えたのは間違いありません。


藤浪がこの曲を登板テーマに選んだのは、一つの登板がどんな結果になろうが、それが「終わりなき旅」の一部分でしかないことを、早くから理解していたのだと思います。



大谷翔平に慣れてはいけないのは分かっています。もっと評価されて然るべきアスリートです、あんなの100年後の野球ファンが「100年前に生まれて大谷が見たかった」という怪奇現象です。

しかし「分かってても打てないど真ん中のファストボールを投げる」「MLBでも絶対に故障しない鋼鉄製の肩を持つ」「大谷翔平よりも巨大な日本人」なんていう、ユニコーンがもう一匹現れたら、常人の感覚は麻痺します。



来季はどこのチームにいるかはわかりませんが、たった数ヶ月前まであちこちで聞かれた「今年でMLBはクビ、NPBも手を出さないから独立リーグにでも拾ってもらえ」なんて意地悪な声は、もう潜んでしまいました。

もちろん、ここで扱っているのは誰であろう、藤浪晋太郎です。

日本であれほど私たちをヤキモキさせた暴れ馬を、MLBがやすやすと乗りこなす…それはそれで、もちろん99.99%の喜びです。

しかし「MLBの南蛮どもにも、もうちょっとヒヤヒヤさせろ」 「まさかこれで阪神のコーチ力が貧しいなんて結論づけはされないよな?」という0.01%の忸怩たる思いも小さな棘のように刺さっています。 

とにかく、がんばれ藤浪晋太郎!