ボクシングの階級は17もあります。

JBCも17階級を認定していますがスーパーミドル級以上では野中悠然樹(スーパーミドル級1位)と但馬ブランドン・ミツロ(ヘビー級王者)がランキングに名前があるだけ。

ライトヘビー級とクルーザー級は空位で、ランキングに一人の名前もありません。

この4階級に加えて、日本ランキングで10位までが完成していないのはストロー級、ジュニアフライ級、ライト級、ジュニアウェルター級、ウェルター級、ジュニアミドル級、ミドル級の7階級。

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まともにランキングが組めているのはフライ級、ジュニアバンタム級、バンタム級、ジュニアフェザー級、フェザー級、ジュニアライト級の6階級だけ。

ボクシング人気の低迷に伴う、競技人口の減少で「このままだと全ての階級でランキングが組めなくなる日もやって来る」という予想も悲観しすぎとは言い切れません。

しかし、10位までランキングが組めていない11階級の競技人口(ライセンスを持ちこの1年以内に試合をしているボクサー)はストロー級・60人、ジュニアフライ級・61人、ライト級・118人、ジュニアウェルター級・74人、ウェルター級・82人、ジュニアミドル級・25人、ミドル級・34人、スーパーミドル級・6人・ライトヘビー級・0人、クルーザー級・0人、ヘビー級・3人。

※3月26日のBoxRecから。

ストロー級は重岡兄弟ら世界王者クラスの実力を持つボクサーを抱え、ジュニアフライ級は階級最強王者の呼び声高い寺地拳四朗が君臨しています。

現実としてタレントが枯渇している階級は、ジュニアミドル級(69.8㎏以上)の6階級と言えるでしょう。

村田諒太という突然変異が、この体格で身体能力の高い才能をボクシングの世界に惹きつける磁力に少しはなりうると思っていましたが、現実にはそうではありませんでした。

ミドル級は大きすぎるにしても、ウェルター級がストロー級やジュニアフライ級を単純な競技人口で上回っている現実はどう受け止めれば良いのでしょうか?

そのウェルター級は、白井義男の世界挑戦のためにJBCが設立された1952年から71年にわたって存在し続ける伝統の階級にもかかわらず、まだ一人の世界王者も生み出せていません。

1976年にWBA王者ピピノ・クエバスに挑戦した辻本章次は6ラウンドTKO負け、1978年にWBC王者カルロス・パロミノに挑戦した龍反町も7ラウンドKO負け。

クエバスもパロミノもウェルター級の歴史に名を刻む名王者。その壁はあまりにも高すぎました。

龍反町がラスベガスで沈められてから10年後の1988年、尾崎富士雄がWBA王者マーロン・スターリングに挑戦、攻勢のまま試合終了。しかし、判定は大差でスターリング。生中継したHBOの解説者ハロルド・レダーマンが「判定はおかしい、勝ったのは尾崎だ!」と叫んだほどの内容でした。

あの夜、尾崎が勝利者コールを受けていてもおかしくありませんでした。「日本人にウェルター級は絶対無理」なんていうのは、妄想や幻覚に過ぎないことを尾崎は教えてくれました。

この大健闘が評価され、翌1989年に尾崎はWBA王者マーク・ブリーランドを後楽園ホールに迎えて2度目の挑戦。しかし、ロス五輪金メダリストで、卓越した身体能力を持つ黒人を絵に描いたようなブリーランドに3ラウンドでTKO負け。

尾崎から20年後、2009年に佐々木基樹がWBA王者ビチェスラフ・センチェンコに挑戦するも大差判定負け。

日本人がウェルター級の牙城に挑んだのはこの延べ4人、5試合だけです。ウェルター級王者が誕生しない最大の原因は、あまりにもチャンスが少ないからです。軽量級のような頻度で挑戦機会が与えられていたら、とっくの昔に日本人のウェルター級王者が生まれていたはずです。

もちろん、日本人が失敗した5試合を振り返ると、この階級のディープさも思い知らされます。

クエバスとパロミノは名王者でしたが、シュガー・レイ・レナードによるウェルター級〝開闢〟以前。判定までもつれ込んだスターリングとセンチェンコは、スーパースター王者ではなく穴王者。プロ転向時は期待の大きかったブリーランドですら、尾崎との対戦時は後楽園ホールに引っ張り込まれたことからもわかるように、スター戦線から脱落していました。

辻本、反町、尾崎、佐々木はレナード後のスーパースターと拳を交えたわけではありません。

尾崎が健闘した80年代末は、フェリックス・トリニダードやオスカー・デラホーヤがウェルター級に出現する前夜、佐々木の2009年にウェルター級を席巻していたのは、あのマニー・パッキャオでした。

現在の世界王者はWBAとWBC、IBFがエロール・スペンスJr.、WBOがテレンス・クロフォード。日本人などお呼びじゃない、そんな無敗の強豪王者です。

「絶対無理」ではなく、そこをブチ破るしか、人気階級でチャンピオンになるしか、このスポーツで本当の意味で輝くことは出来ません。

誤解を恐れずに言うなら、競歩じゃダメなんです。100メートルじゃなきゃ。