現代ボクシングは「誰に勝ったか」が全てです。

しかし、1団体8階級、オリジナル8の時代では世界に1人しかいない王者であること、世界に一つのランキングで10位以内の世界ランカーを相手に防衛することは、それだけで大きな価値を持っていました。

それでも、ボクシングは物語性の強い競技です。つまり〝脚本〟と〝登場人物〟が非常に重要なのです。

その意味では、オリジナル8と、混沌の4-Belt eraに違いはありません。

マニー・パッキャオとフロイド・メイウェザーは〝登場人物〟として最高でしたが、その激突の時期は5年は遅く〝脚本〟としては最低でした。

最高の〝登場人物〟と〝脚本〟が揃うことは、まずあり得ません。

例えば、井上尚弥は最高の〝登場人物〟ですが、たった1人の独演会、目立ったダンスパートナーがチキンのオマール・ナルバエスと、アラフォーのノニト・ドネアという最低の〝脚本〟の中に閉じ込められています。

レオ・サンタクルスやアブネル・マレス、カール・フランプトンらがバンタム〜ジュニアフェザー級にいた時期なら、私たちは全く違う光景を目にしていたはずです。

〝登場人物〟と〝脚本〟が完璧だったのは、私の見てきたボクシングシーンでは80年代のウェルター〜ミドル級です。

そして、私の知らない時代を包含したボクシングヒストリーでは60年代のヘビー級でしょう。

前置きが長くなりました。

リング誌電子版から「ON THIS DAY」のご紹介。

日本時間の今日、7月23日はネバダ州ラスベガス・コンベンションセンターで、ソニー・リストンが2ラウンド2分10秒でフロイド・パターソンを粉砕、世界ヘビー級王座を防衛した日です。



1963年のことですから59年前、この前の年にリストンはパターソンを同じ2ラウンドでノックアウトしてタイトルを奪っていたので、一年越しの再戦でした。

このパターソンはヘビー級にいくつかあったジンクスの一つ「世界王者には返り咲けない」を覆したグレート。スポーツイラストレイテッド誌のSports-man of the year(1959年)を受賞したインゲマル・ヨハンソンからタイトルを奪いました。

今はSports-person of the yearに名前を変え、そのステイタスはESPNのESPY賞に取って代わられましたが、約60年前は「ボクサーが世界最高のスポーツ選手」に選ばれることに違和感がない時代だったのです。

「リストンは恐ろしいほど強い」。

9ヶ月後、そんな最強・最凶の役者の前に立ったのがアマチュア、それもライトヘビー級上がりのカシアス・クレイでした。

「クレイは殺される」。

登場人物と脚本が揃い、最高の舞台装置が用意されました。

初戦のクレイ圧勝を受けた再戦でもリストンが圧倒的有利の予想とオッズだったことも、モハメド・アリが何者なのかを世界にあらためて知らしめる格好の〝演出〟になります。

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さて、ボクシングがまだメジャースポーツだった時代から幾星霜。

ボクシングはマイナースポーツに没落。

米国最高のスポーツ賞もスポイラのSports-man of the yearから、ESPNのESPY賞に取って代わられました。

そのESPY賞「最優秀男性アスリート」は、93年の第1回から90年代最後の第7回までバリー・ボンズら4人のMLB選手を選出していましたが、99年のマーク・マグワイア以来、23年間もベースボールに門戸を閉ざしていました。

MLBを冷遇してきたESPNですら、大谷翔平を無視し続けることは出来なかったのです。

グローバルデータ社の調査によるとMLB視聴者の推定平均年齢は57歳!ちなみにNBAは42歳。

MLBの収益は右肩上がりながら、それは放映権料やスポンサー料を軸にしたビジネスモデルのおかげで、その軸は「死にゆく老人スポーツ」である限り、いずれ崩壊するのは目に見えています。

若い人が目を向けない主な理由は「ルールがわかりにくい」「試合がいつ終わるかわからない、試合時間が長すぎる」。

野球ファンからすると「だったら見るな、ボケ!」と言いたくもなりますが、彼らに見てもらわないことには未来はありません。

聡明なMLBは「時短」への取り組みを断行しています。

わかりやすいヒーローが活躍しやすいように、ルールまで変えます。大谷翔平です。

大谷がどれほど凄いのかを知ることは、野球のルールを知ることの入り口にもなります。

将来に暗雲漂う米国野球の救世主、その期待の一番手が28歳の日本人であることは誰の目にも明らかです。