スターというのはみんなの期待に応える存在。

でもスーパースターの条件は、その期待を超えること。(長嶋茂雄)


この50年、日本のボクシング界をリードした世界王者11人を【みんなの期待に応えたか?】【その期待を超えたか?】の2点から独断と偏見で評価してゆきます。


③辰吉丈一郎
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日本ボクシング史上で、国内評価の最大風速が最も強烈だったファイターです。


【みんなの期待に応えたか?】

時期尚早の声もあったプロ8戦目での世界挑戦。

当時バンタム最強と見られていたミゲール〝ハッピー〟ロラからラウル・ペレス、グレグ・リチャードソンと渡ったWBCのストラップを、圧倒的なパフォーマンスで奪ったとき、日本のボクシングファンの夢は天井を突き破りました。

ルーベン・オリバレスやカルロス・サラテ、ウィルフレド・ゴメスのような手の付けられない軽量級の怪物を、ついに日本のボクシングファンも手に入れた。

多くのファンがそう信じました。

しかし、その「最初の期待」は、早々に裏切られてしまいます。

その意味では辰吉丈一郎は「みんなの期待」に応えることが出来ませんでした。


【その期待を超えたか?】

眼疾と防御甘さを露呈する辰吉に、ファンは描いた夢が蜃気楼だったことに気づいてしまいます。

しかし、天才は浪花節へと変換されます。

圧倒的不利と絶望視されたシリモンコン・ナコントンパークビュー戦で劇的なTKOで王座返り咲き。

世界初挑戦までの膨れ上がった期待は超えられなかったかもしれませんが、予想もしていなかった番狂わせは日本中のボクシングファンを感動させました。 

当時、あのイチローも辰吉の試合を追っかける熱烈なファンでした。

リングの上で七転八倒する辰吉の姿は、イチローでなくとも惹き寄せられる、蠱惑的なまでの魅力を確かにたたえていたのです。

この意味で、辰吉丈一郎は「期待を超えた」と断言して差し支えないでしょう。

何よりも、今年5月で52歳になるというのに、今なお現役。

「期待に応える」ことが出来なかったのに「期待を超えた」。なんとも矛盾する表現ですが、それもまた辰吉丈一郎という男らしいと言えましょう。

辰吉をスーパースターと呼ばずして、誰をそう呼べば良いのでしょうか。