この一年。

半世紀近く生きてきた中で、最悪の一年でした。

これまで、生ぬるい人生を歩んできた私は、深刻な大病を患うこともなく、大きな災害に遭うことなく、超のつくひねくれ者にもかかわらず、多くの人が優しく認めてくれました。

このパンデミックで、良かったことがもしあるとしたら、私みたいなのと仲良くしてくれた人たちが「オンラインで飲もう」と誘ってくれて、多くの人と何十年ぶりかの旧交を暖めることができたことです。

本当にたくさんの人から誘っていただき、そこで改めて気づいたのは、自分から誘わない私の薄情さです。

せめてもの思いから、最後は「ありがとう」とお礼を伝えて「今度は俺から誘うから」と、ちょっとしたお詫びじみた感じでzoomやV−CUBEを退室するようにしてます。

「やめてー、〇〇君から誘うなんて、気持ち悪いから!」というやつには「じゃあ、これで永遠のお別れじゃ」と言い残して退室します。


そして、自分から誘った珍しいケース。2月中旬、ちょっと前のお話です。

しかし、私が誘うのは当たり前ですがオンラインではないオフライン。リアル飲み会です。PFPのような妄想は御免です、ソーシャルディスタンスはとっても、やっぱりリアルの飲み会です。


どっちが優れたボクサーかがリングの中でしか決まらないのと同じように、私にとって飲み会はリアルでしかありえません。

オンライン飲み会というのは、テレビ電話をしながらの一人飲みに過ぎません。飲み会ではなく一人飲み。


予約したのは、九段下の有名ホテル。ボクシングの記者発表会などでも伝統的にお馴染みの古き良き佇まいを見せるホテルです。

この日は古い友人と3人で昼食を食べよう、そして酒も飲もう、20時の閉店まで居座るかもしれんと、お店にはお願いしてるから、と集まりました。

このホテルで食事するのは初めて、ホテル内のお寿司屋さんを予約するのも当然初めてでしたが、素晴らしいサービスでした。

1人は高校時代に担任の先生から紹介された右翼の同級生。名前は「赤尾くん」にしましょうか。


もう1人は大学時代にデートしたこともある一つ上の左翼の先輩。こっちも名前は「重信さん」でいいかな。

ノンポリの私は「三島」にしましょうか、ああそれだとノンポリじゃなく右翼じゃ、でも考えるのもめんどくさいからノンポリの三島じゃ。 
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そして、なんということか!私の仕事で年1回レベルのトラブル発生で、言い出しっぺの幹事が約束の11時半に間に合わないという最悪の事態に。

最悪というのは「赤尾くん」と「重信さん」は私の共通の知り合いですが、二人は面識がないんです。

私がホテルに入ったのは、もう12時半過ぎ、1時間以上もアラフィフの面識のない男女、しかも右翼と左翼を寿司屋の座敷で二人きりにしてしまったのです。

携帯電話がブルブル鳴るのも嫌なので、ノートやスマホは上着もろともフロントに預けて「事故的に絶対盛り下がってる」はずの現場へ。

私が座敷に上がり込むと、二人は長年連れ添った夫婦のような感じでお話ししてる最中でした。

二人から「遅い!」と叱責されると思いきや、重信さんが「お疲れ様、ビールでいい?」、赤尾くんは「(ソーシャルディスタンスで)席離れてて変な感じやろ?」と、心配したムードは全くなし。

重信さんとはもう何十年も会ってませんでしたが、あの頃のままシュッとした綺麗なおばさんになってました。

赤尾くんとは「五輪イヤーに会う」ような感じで、付かず離れずな関係でしたが、去年も会ってたので2年連続、まあ五輪もそんな感じなので、やっぱり〝五輪イヤー〟です。

バブルがはち切れんばかりに膨張して、日本列島が浮かれきってた80年代後半に青春時代を過ごした私達で、学生運動の残りカス(現実にはそんなものすら存在してませんでしたが)に惹かれた重信さんや、日本の未来を憂いて右翼活動にのめりこむ赤尾くん。

私は、二人には「3人で飲む」ということしか伝えてませんでした。飲み会の最初に「左翼の重信さんと右翼の赤尾くん」と私が紹介して、この三国志な飲み会を進めるアイデアでしたが。。。

遅刻した私を責めずに、軽く酔った二人は「三島は本当にセンスある」「ここを選んだのは靖国神社とあしたのジョーからだろ?」「ちょっと感動したよ、さすがだよ」と、予想だにしないホメゴロシな雰囲気に。

確かに、その通りなんですが、簡単に気づくとは、逆にさすがです。

まあ、九段下のホテルは靖国神社が至近で、ボクシングの世界戦の発表記者会見が行われる舞台でもありました。ジョーにもこのホテルが描かれてたかもしれません。

「靖国神社=右翼」「あしたのジョー=左翼」というステレオタイプな発想です。

それに気づいてるということは、二人とも身上を話してるってことでした。



重信さんがフロントに荷物を預けようとすると、先に赤尾くんがいて、お互いを「宿泊客の人」「セレブなアジア人」だと思ってたら、同じ店に入って、同じ部屋に案内されて…。



そして、私も「今日は誰にも邪魔されずに3人で飲むぞ、携帯のブルブル音はしらけるからな」と同じことを考え、荷物をフロントに預けたのでした。

携帯ブルブルがしらけるとフロントに荷物を預けた二人に「さすが極右と極左のお二人です。寿司食うときでも気合いの入り方が違う」と頭を下げる私に、重信さんは「三島くんも同じことしてるんじゃん。三島くんも普通じゃないんだから、無理して中道歩かずに右か左に極端に生きたらいいんだよ。やっぱりどっちかといえば左でしょ?」と30年ぶりにオルグされかかり、赤尾くんも「いやいや三島はこう見えて本質的に右ですから、こっちでいただきます」と、あまりありがたくないモテモテ状態に。

さすがに20時までは飲みませんでしたが、それでもホテルを出ると真っ暗。18時を回ってました。

重信さんが「今度はお二人が激論する洋々亭に連れっててよ」と言うので、私は「じゃあ今行きましょう、我々のアジト洋々亭へ!ラーメンで締めましょう」とレッツゴー。

すると、まさか、まさかの閉店。55年もこの地で町中華を営んでいたそうですが昨年4月30日で閉店した、とのこと。

しかし「しんみりしてしまったままでは収まりがつかん!」と近くの居酒屋で飲み直し。10時間近いロングランを完走した3人。

長い間、三島〜赤尾の男二匹で〝五輪式〟開催していた「九段下飲み会」は次回から左翼の美魔女もレギュラーとして加わることが決定した夜でした。