1937年10月から1938年8月。わずか10ヶ月の時間で、ヘンリー・アームストロングはフェザー、ウェルター、ライトの順で3階級制覇を成し遂げる大偉業をやってのけました。

その動機は「ヘビー級が動くが如くボクシングは動く」と言われたヘビー級絶対時代への反抗と嫉妬 。

オリジナル8の時代。世界チャンピオンが世界に8人しか存在しなかった時代。

確かに、ヘビー級だけが別格でしたが、ジミー・ワイルドやパンチョ・ビラ、パナマ・アル・ブラウンらフライ級やバンタム級の王者にも現代にはない尊敬と十分な報酬が与えられていました。

誤解を恐れずにいうと、当時はヘビー級だけが別格で、残りの階級には現在ほどの格差はありませんでした。

確かに、ヘビー級は特別なクラスです。

20世紀に入ってからのディケイドを切り取っても1910年代:ジャック・ジョンソン、1920年代:ジャック・デンプシー、1930−40年代:ジョー・ルイス、 1950年代:ロッキー・マルシアノ、1960−1970年代:モハメド・アリ…極東の島国のボクシングファンでも時代を代表してきたヘビー級王者は当たり前に覚えています。

他のクラスでこんなことはありえません。

そう、それは1970年代のアリの時代までは絶対不変の常識でした。

逆にいうと、1980年代に入るとヘビー級は別格ではなくなるのです。
Welterweight
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シュガー・レイ・レナードとボブ・アラムという、リングの内外で傑出した才能が結託、時を同じくして米国ボクシング市場で進行する凋落が、ヘビー級が絶対だったはずのボクシング界の地殻に大変動をもたらします。

米国アマチュアボクシングが最も燃え上がったモントリオール1976の金メダリストと、良い意味でも悪い意味でもプロモーターの鑑のような怪人の刹那のランデブーが、現代に続くウェルターとミドルを中核とした中量級時代をあっという間に作り上げたのでした。

あのときと同じようなことが、起きないか?

軽量級のメキシカンが五輪か世界選手権で金メダルを獲って国民的英雄に、そしてプロ転向ーーそんなことがあれば…〝ウェルター〟で起きた同じ現象が、フライ級やバンタム級でも起こるのではないか…?

アブネル・マレスやレオ・サンタクルスにもっと「箔」があれば、バンタムでも100万ドルかそれ以上のビッグファイトが実現していたのではないか?

そんな箔のついたメキシカンの台頭と、日本の才能がオーバーラップしたら? 

井上尚弥は残念ながらタイムアウトでしょう。

では、近未来にその可能性はあるのか?

メキシコの「箔」と、日本の「才能」を探してみましょう。