フェリックス・ベルデホもまたEl Diamante(プエルトリコのダイアモンド)と大騒ぎされた逸材のはずでしたが、現時点ではトップ戦線からか脱落。

7月16日にはウィル・マデラとMGMグランドカンファレンスセンター〝The Bubble〟でライト級10回戦を戦います。

ロベイシ・ラミレスのケースと同じで、ベルデホもイスマエル・サラスを新トレーナーに迎えて捲土重来を期します。

日本でもお馴染みのサラス、いまや「挫折したホープの救済請負人」 ですね。
IMG-20170918-WA0021-770x471

対するマデラは15勝8KO無敗3分のニューヨーカー。無敗とはいえ29歳で18戦しかこなしていないだけでなく、対戦相手はことごとく無名。

3つのドローはWBCインターナショナル・シルバーのライト級戦が含まれますが、6勝7敗のメキシカンともどっこいと不純物のないローカルファイターです。

かつてのトップランク一番星が28戦目で迎える相手ではありません。

この〝ガラス製の疑似ダイアモンド〟もロベイシほどではありませんが、傑出したエリートアマでした。

パン・アメリカのユース選手権バンタム級で金メダル、2012リオ五輪の米国予選で優勝。リオでは準々決勝でウクライナのハイテクに判定負けするも「プエルトリコの未来のスーパースター確実」とボブ・アラムにベタ惚れされてプロ転向。

温室の中に慎重に敷設した線路を補助輪付きで走っていましたが、咬ませ犬のアントニオ・ロサダ・トーレスにまさかのTKO負け。〝事故〟では済まない完敗の内容でした。

アラムは「叩き上げのメキシカンを相手に選んだのは間違いだった」と悔やむポーズを見せますが、ベルデホがトップランクのスター構想から外されたのは明らかです。

プエルトリコのホープが無様な敗北を重ねる〝プエルトリコ・ドミノ〟の、不名誉な一枚目になってしまいました。 

スクリーンショット 2020-06-03 23.50.35

「プロとアマは別物」という見方は誰も否定しないでしょう。一方で、それゆえに「アマはレベルが低い」とも多くの人は考えないはずです。

それどころか、プロでアルファベット団体の王者になるのと、五輪や世界選手権で金メダルを獲得すること、どちらが難しいかと聞かれて答えに困る人はいません。

米国野球のメジャーとマイナー、日本野球のNPB一軍と二軍や甲子園、これらを「合算評価」することがありえないのは「別物」ではなく、同じ野球で「マイナーや二軍、甲子園はレベルが低い」と考えられているからです。

ここに、ボクシングにおける「アマとプロの実績は合算評価すべきかどうか」の問題の難しさが横たわっています。

この難問に、トーマス・ハウザーは「別物であるがゆえに合算してはいけない」と断言しています。

これまでも、モントリオール1976の金メダリスト5人が BWAAのFighter of the year に選ばれるなど、プロとアマをごっちゃに評価するケースが散見されてきました。

ハウザーは「世界王者が一人しかいないアマチュアはタイトルそのものが評価される。それに対して、いくつもタイトルがあるプロでは〝誰に勝ったのか〟が評価の対象で、タイトルがどうの言ってるボクサーは最高レベルじゃない。プロとアマは、そもそも評価の基準までもが別物なんだ」と説明。

In evaluating whether a fighter was great, the most important factor to be considered is who he beat. 

「モハメド・アリは世界タイトルのホルダーだから偉大なのか?違うよね。ソニー・リストンやジョー・フレージャー、ジョージ・フォアマンに勝ったから偉大なんだ」。

「アリの1960ローマは金メダルを獲得したからこそ偉大なんだ。ポーランドのズビグニェフ・ピトロシュコスキに勝ったからじゃない」。

「それに人々の意識もプロとアマを合算評価するなんてそもそも発想がない」。

「今でもジョー・ルイスは伝説として語り継がれているが、彼が1934年の全米アマチュア大会ライトヘビー級で優勝したことをどれほどの人が記憶しているだろうか?」。

「もちろん、アマチュアで傑出した実績を残せばプロ転向のときに、アマ実績のない新人と比べると明白な経済的サポートとファンの大きな支持が受けられる。アマで培った技術もプロでは箸にも棒にもならないわけじゃない」。

「しかし、プロ仕様に適応しようとしないなら残酷な結果しか待っていない。プロで躓いたとき『良かったときの自分を取り戻そう』とアマで頂点だった時代のビデオを見るなんてのは論外だ。これはアマのビデオに限らない。そのビデオに映ってるお前が負けたんだ、そのことを理解することだ」。

そういうことです。

エリートアマだけの問題じゃありません。「今日、相手を打ち負かした良手は、研究されて明日には悪手になる」(羽生善治)のです。