現在のPFPキングはカネロ・アルバレスです。

井上尚弥をPFP1位とする boxing scene.com など素っ頓狂なカルト・メディアも一部存在しますが、カネロ1位が世界の共通認識です。

しかし、私もそうですが素直に受け止めることは出来ません。 

その理由は、公平であるはずのスポーツの試合に自分が有利になるようなキャッチウェイト等の奇天烈で見苦しい手枷足枷を、立場の弱い対戦相手に飲ませるからです。

階級性のボクシングでは「どの体重でやるのか」は勝敗に直結する重要問題です。

なぜ、井上尚弥は約10kgもの過酷な減量をして、わざわざ層が薄く人気もないバンタム級で戦うのか?

ヘビー級を制覇することが最も注目され、歴史的な評価も得られるのにどうしてマニー・パッキャオはそこに足を踏み入れないのか?

理由はたった一つです。 


リング誌電子版のDOUGIE’S MONDAY MAILBAGから「WEIGHT CLAUSES(体重契約)について考える」を拙訳、ご紹介です。


Q:マニー・パッキャオとの第2戦でエリック・モラレスは過酷な減量に疲弊していた。あの試合の契約には、何らかの形で体重の項目が盛り込まれていたのではないか?

パッキャオの歴史的な勝利には、キャッチウェイトによって相手の戦力を減退させた裏側がある。

パッキャオvsモラレス2の事実と、過去にあった体重契約について教えて欲しい。

〜マイク @ソルトレイクシティ

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A:パッキャオvsモラレス第二戦に体重契約はなかった。第一戦と同じ純粋な130ポンド、ジュニアライト級の試合だった。 

確かに、計量時のモラレスは脱水状態だったように見えた。ただし、それは El Terrible(恐怖の男)にとってはいつものこと。

ジュニアフェザー級で戦っていた20代でも、彼が健康な状態で計量に臨んだことはなかった。いつも減量に疲れていた。

 It’s not like Pacquiao demanded that he fight at a catchweight or limit how much weight he could put on following the weigh-in. 

パッキャオがモラレスにキャッチウェイトや、計量後のリバウンド制限などの体重契約を飲ませた事実はない。

それどころか、モラレスとの初戦ではパックマンが愛してやまないレイジェスのグローブを付けることも許されない契約だったのだ。

パッキャオは最初からAサイドだったのではない。彼がAサイド(ダークサイド?)に回ったのは、2008年にオスカー・デラホーヤを破ってから。

「キャッチウェイトでタイトルを懸けるのはおかしい」と拒むコミゲール・コットにリミットを2ポンド下回る145ポンドを無理やり飲ませた。

アントニオ・マルガリートと争った空位のWBCジュニアミドル級では4ポンドも少ない150ポンド契約だった。ちなみに二人とも「ジュニアミドルでは一度も戦ったことがない」という「これぞWBC」というタイトルマッチでもあった。

そして、あれほどキャッチウェイトを唾棄していたコットはセルヒオ・マルチネス、ダニエル・ギールにミドル級リミットを下回るキャッチウェイトを突きつけ、当日のリバウンド制限まで契約に盛り込んだ。

カネロ・アルバレスとの試合では、カネロが要求したもので、ミドル級リミットを5ポンドも下回るご存知のカネロ・ウェイト(155ポンド)で戦ったが、それはコットにとっても心地良い重さだった。

大きな違和感を覚えたのは、ミドル級タイトル戦(160)をカネロ級155ポンドで見せられたファンだ。

フロイド・メイウェザーはそれまで135ポンドまでしか戦った経験のないファン・マヌエル・マルケスに144ポンドのキャッチウェイトでは珍しい大増量を受け入れさせた。さらに、自らは60万ドルの罰金まで払って146ポンドにビルドアップしてリングに上がった。

これを卑劣と呼ばないなら、何を卑劣と呼ぶのだろうか。

メイウェザーはカネロとのリング誌/WBC/WBAのタイトルを懸けたジュニアミドル級戦でも152ポンドを飲ませた。

体重契約は、本来なら実現が難しいメガファイトの〝免罪符〟ではない。Aサイドのスーパースターが立場の弱い相手に突きつける、悪魔の所業だ。

リングの中でなく、観客の見えない場所で対戦相手を痛めつける卑劣な契約だ。

バーナード・ホプキンスはオスカー・デラホーヤとのミドル級完全統一戦で157ポンドのキャッチウェイトを快諾「ミドル級がそんなに怖いなら156にしてあげようか?」と挑発した。

シュガー・レイ・レナードはもはや犯罪的だった。ライトヘビー級のドニー・ラロンデにスーパーミドル級の168ポンドを飲ませて、1試合で二つのタイトルを手にいれた。あれが許されるなら「デビュー戦で17階級制覇」もありになる。 

カネロは直近のコバレフ戦では「キャッチウェイトではない」と公言しながら、当日のリバウンド制限を設定した。

しかも、あのときのコバレフは劣化版であるばかりか、個人的な訴訟問題が深刻化、とてもリングに集中出来る状況ではなかった。そして、その情報をカネロ陣営は我々よりも詳細に把握していたはずだ。
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キャッチウェイトであったことを忘れがちになるのは、その試合が議論を呼ぶ判定になったときだろう。キャッチウェイトと不可解な判定は、Aサイドお得意のAセットでもある。

パーネル・ウイテカーvsフリオ・セサール・チャベスのWBCウェルター級戦は145ポンド、トーマス・ハーンズvsシュガー・レイ・レナード第二戦のWBO/WBCスーパーミドル級団体統一戦は164ポンドのキャッチウェイトで行われ、いずれもBサイドが優勢の内容だったが結果は引き分け。

あのとき、ハーンズは162ポンド1/2、レナードは160ポンドを作ったが、ミドル級(160ポンド)でやれば良かったんじゃないのか?あまりにも倒錯しすぎている。

レナードはロベルト・デュランとの第三戦でも162ポンドのキャッチウェイトでWBCスーパーミドル級タイトルマッチを行ったが、これは両者にメリットがある体重だった。とはいえ、168ポンドのスーパーミドル級を162ポンドで無理やり行う意味は誰にも理解できない。

もし、1989年前後にもインターネットが発達していたら、レナードは今以上の悪者にされて、あれほどあからさまなキャッチウェイトや1試合2階級制覇などの狂乱行為は出来なかったかもしれない。

ただ、ボクシングの世界では不平等や不条理が当たり前に横行している。その中でパッキャオやホプキンスは、完全BサイドでありながらAサイドをひっくり返したから意味がある。

ましてや、時代のことを言い出したらキリがない。

レナードは今週(日本時間5月18日)、誕生日を迎えて64歳になった。

モントリオールで米国に金メダルを持ち帰り、プロでも素晴らしいパフォーマンスを披露したレナードは多くの米国人にとって今なおアイドルだ。

最後のボクシングヒーローと言っても良いかもしれない。

それは私にとっても変わらない。

おめでとう、レナード。