ボクシング17階級のうち、一つだけ廃止せよ。

そんな宿題が課せられたら、あなたはどの階級を選びますが?

日本のボクシングファンなら馴染みの薄いスーパーミドル、ライトヘビー、クルーザーの重量級三役のいずれかを選びそうですが、世界の多数決ではストロー級が廃止されてしまうのは避けられません。

ESPNでもジュニアフェザー級以下の階級はランキングは5位までなど、女子同然の扱いを長らく受け、今なお注目度やそれに付随する報酬は劣悪なままです。

最軽量の中でも105ポンド、ストロー級は、競技人口が最も少なく、マイナーの極致です。

日本のボクシングファンの多くが重量級三役に関心がない以上に、欧米での軽量級の扱いは悲惨です。

日本でも足を踏み入れた経験のあるミドル級の一つ上、スーパーミドルは今ならカネロ・アルバレス、かつてはシュガー・レイ・レナードらも活躍したクラスでメジャー階級

重量級三役はその上に世界中が無視できない横綱階級であるヘビーを戴いており、それは日本でも同じで、

無視されているどころか、そもそもその存在すら気付かれていないのです。
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ジュニアフライにジュニアバンタム、ジュニアフェザー、スーパーミドル、クルーザー…ボクシングの水増し階級は、世界戦を増やしたい承認団体の邪悪な陰謀によって新設されて来ました。

それはストロー級も変わりませんが、日本がより積極的に絡んでいったという点で、スペシャルな階級になっています。

1987年に井岡弘樹がWBC初代王者になってから33年の間に、日本は最軽量クラスに13人の王者を輩出して来ました。

1976年の具志堅用高をパイオニアとするジュニアフライ級は44年間で15人、1952年の白井義男のフライ級は68年間で22人と、歴史の浅いクラスほど世界王者の数は少ないという常識的な傾向が見られます。

しかし、1年あたりの出現率を見るとストローは3.9人、ジュニアフライは3.4人、フライは3.2人と非常識な逆転現象が浮かび上がってきます。


これは、1995年の竹原慎二から25年間で2人、年間出現率0.08人のミドル級は突然変異クラスにしても、日本人が踏破したストローからミドルまでのウェルターを引いた12階級で群を抜いて多いものです。

「ストロー級の逆説的な王者量産」の理由が思い当たらないボクシングファンは、1人もいないでしょう。 

ストロー級で世界王者が大量生産されている理由はあらゆる意味で〝お手頃〟だからです。

このクラスを代表するビッグネームといえば、最高位PFP3位のリカルド・ロペスと軽量級史上初めてPFPキングの座を射止めたローマン・ゴンザレス(PFP1位を極めたのはフライ級時代)の2人です。

この2人はお手頃どころか、もし日本人がストロー級時代のこの2人からベルトを強奪していれば、竹原と村田諒太のミドル級王座獲得なんて問題にならないほどの偉業でした。 

しかし、そのイフが現実になっていたとしても、一部のボクシングマニアを除いて正確な評価は与えられなかったでしょう。

それは、世界的にも同じです。カルトでコアなマニアとメディアの評価がこそ高かったロマゴンとリカロペでしたが、カジュアルなスポーツファンはもちろん、一般のボクシングファンにとっては全く無名の存在のままでした。

メディアの評価が高い…実はこれも微妙です。PFPなどの評価はトップクラスだった2人ですがリング誌を単独カバーすることは一度もありませんでした※。

無名のボクサーを表紙に使っても売れないからです。軽量級はカネにならないからです。

では、やはり無名で2人よりも評価の低い井上尚弥がどうして8ヶ月で2度も単独カバーを飾ったのでしょうか?

簡単な話です。カネの匂いがしたからです。「集合写真カバー」で井上を小さく載せただけで1億2000万人の大人口を抱える経済大国で、一般紙はもちろん日本経済新聞までが社会面で取り上げたからです。

※私をはじめ世界中の意地悪なボクシングファンがリング誌に異議を唱えたからではないでしょうが、リング誌最新号(6月号)でロマゴンがキャリア初の単独カバーを飾りました。…遅すぎるっちゅうねん!



ニカラグア人のロマゴンは仕方ないにしても、メキシコ人のリカロペは同胞のウンベルト・ゴンザレスから屈辱的な挑発を浴びてもストロー級にとどまり、母国でも決して人気のある選手ではありませんでした。

ロマゴンの相場は10万ドル前後(キャリア最高報酬は60万ドル=シーサケット・ソールンビサイ2=でしたが断末魔のHBOがなんとかロマゴンをスターにしたいと無理やり予算を割いたもの=が1度だけ)。

リカロペは2〜3万ドルが相場。20〜30万ドルではありません。当然、対戦相手はもっと下です。100倍以上のファイトマネーでリングに上がったタイソンが自己破産や財産差し押さえで経済的に七転八倒したのに対して、ロペスは地元テレビの解説者や指導者として地道な生活を送っています。

ボクシングに限らず「大金を手にした選手と薄給に甘んじた選手で、引退後に自己破産する確率は前者が圧倒的に多い」という事実は納得できます。 

それにしても、ロペスは報酬面でもっと評価されるべきでした。最も高額の報酬を手にできたのは日本でしたが、手がつけられないほど強くなると、もう呼ばれなくなってしまいます。

ロマゴンは人種、リカロペはスタイルも仇になりましたが、ストローという階級が人気に影響を及ぼしたことは間違いありません。

現役のロマゴンは現在進行形、ストローではなく3階級目のフライ級でPFP1位評価を受けるなど、水増し階級のアダ花ではありません。

では、具志堅用高がフライ級では通用しなかったと推察されるように、リカロペもまた上の階級(ジュニアフライ)では通用しなかったのでしょうか?

キャリア晩年にジュニアフライのIBFピースを拾い、2度防衛していますが「あのまま現役を続けていたらアマ・プロ通じて初黒星は時間の問題」(リング誌)と見られていました。

もちろん、ロッキー・マルシアノだろうがフロイド・メイウェザーだろうが「現役を続けていたら黒星は時間の問題」が当てはまらないボクサーなど存在しません。 

ロペスの「生涯無敗」神話が、勝ち逃げであることは当然です。勝ち逃げでない、無敗などありえないのですから。

お話の中核を剥き出しにします。ロペスが強く見えたのは、ストロー級という名の浅瀬の静かな波打ち際で戯れていたからでしょうか?

何度も侮辱的に挑発してきたウンベルト・ゴンザレスらと拳を交えていたら、ストローのひ弱さを曝け出して粉砕されていたのでしょうか?