当初、屋外特設会場で予定されていた前日計量は、30度を超える高温と風雨が激しいために屋内に変更。

シカゴも大荒れなんですね。

試合会場のウィントラストアリーナで行われた計量には、多くのウクライナ系アメリカ人が詰めかけウシクに声援を送りました。

オレクサンダー・ウシクが215ポンド(97.5kg)、チャズ・ウィザスプーン242ポンド(109.8kg)。

これまで236ポンドを超えて秤を降りたことがないウィザスプーンは、プロ15年41戦のキャリアで最重量。

今年3月の試合からも10ポンド(4.54kg)も重く、メディアの間では「今回の〝ピンチヒッター〟出場にどれほど準備をしていたか疑問」と、試合がワンサイドになる可能性を懸念しています。

ウシクがこの〝デビュー戦〟に合格点の勝利を収めると、11月7日の砂漠の決闘(アンディ・ルイスvsアンソニー・ジョシュア)の勝者への指名挑戦権が行使される見通しです。

アナトリー・ロマチェンコのコーチのもとヘビー級デビューを明日に控えたウシクは「世界挑戦が次の試合になるかどうかはわからないし、今は興味がない。ウィザスプーンにしか集中していない。私はミスのないボクシングをしなければならない」。

今回215ポンドだったウエイトについては「将来的には217ポンド前後で肉体を仕上げたい。それが一番強く動けるナチュラルウエイトなんだ」と語り「減量がない、強くなるためだけに集中して練習に取り組むのは素晴らしい気分だ」と〝ヘビー級の自由〟を楽しんでいます。

「人生最大の戦いが始まる」(ウシク)。

クルーザー級完全統一王者の矜持と、ヘビー級への情熱。ウシクの思いを特集したESPNの記事をご紹介。


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Oleksandr Usyk trying to follow in Evander Holyfield's footsteps  憧れのホリフィールドの道を往く。

昨年10月。ウクライナの首都キエフで開催されていた第56回WBC年次総会にウシクは出席していた。

あの強面のウシクが、玩具屋に連れてこられた子供のような表情でウキウキして腰掛けていた。32歳のウクライナ人が有頂天になるのも無理もなかった。

座席の並びにはイベンダー・ホリフィールドにレノックス・ルイス、ウラジミールとビタリのクリチコ兄弟、さらにロベルト・デュランまでが座っていたのだから!
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190㎝のウシクが子供のように小さく見えます。彼が挑もうとするものの巨大さと偉大さを象徴するような一枚です。

普通ならどこを見ていいかわからない、眩暈のするような状況だ。

しかし、ウシクの眼はホリフィールドにだけ注がれていた。ホリフィールドを直接見るのは2度目だったが、アイドルを目の前にするのはいつだって新鮮なものだ。

「私のことを知らないかもしれないが、そんなことはお構いなしに彼に話しかけた。ずっと私のアイドルです、と。私はこれからあなたの後を追いかける気持ちです、と」。

「あなたの試合をどれほど観たか、どれほど感動したか。あなたには感謝しかない」。

For me, I was like a little mosquito being there with these guys. It was incredible being among those people, those great fighters."

「ここに居並ぶ偉大なヘビー級と比べると私なんて小さな蚊みたいなものだ。それでも、こんなグレートがそばにいるなんて、もう信じられない」。

緊張しながら挨拶に来たウシクをホリフィールドは暖かく迎えてくれた。

「一度だけ君の試合を見たよ。一番最近の試合だ。速くて巧いボクサーだ。素晴らしい」。

2012年ロンドン五輪ヘビー級の金メダリストがプロ転向を決意したのは、ホリフィールドのようになりたいという強烈な思いからだった。

完全統一クルーザー級王者から完全統一ヘビー級王者へ。そして、国際ボクシング名誉の殿堂へ。

ウシクがクルーザー級を完全制覇したのは2018年7月。WBSSトーナメントでムラト・ガシエフを大差判定で下し、クルーザー級で史上初めて4団体のベルトをコレクションした。
Undisputed Champions In Four-Belt Era
FIGHTERDIVISIONYEAR
Oleksandr UsykCrusierweight2018
Terrence CrawfordJr. welterweight2017
Jermain TaylorMiddleweight2005
Bernard HopkinsMiddleweight2004
ホリフィールドがクルーザーを征服したのは、カルロス・デ・レオンをKOした1988年4月。ウシクとの違いは、時間だけではない。当時は3団体時代でクルーザー級のリミットが200(90.7kg)ではなく190ポンド(86.2kg)だったことだ。

2年後の1990年10月、ホリフィールドはバスター・ダグラスを痛烈にKOしてヘビー級でも完全統一王者の座に就く。二階級制覇達成だったが、そこに注目するメディアもファンもいなかった。

他の階級で当たり前のように見ることができる階級制覇とは明らかに違う偉業だったからだ。下のクラスからヘビー級を制圧するーーそれを他の階級制覇とは同列に語ってはいけないことを、みんな理解していたのだ。

「ホリフィールドと比較されるのはこれ以上ない幸せだ。しかし、私は彼をも超えたい。それが彼への恩返しになることを知っているから。彼は魂のチャンピオンだった。勇気を武器に大きな相手に挑んだ彼に、世界がどれほど感動したことか」。

ホリフィールドは「君に会うのを楽しみにしていた。私のあとを追う者が現れてくれるなんて、嬉しいよ。4団体時代にヘビー級に挑む彼には、私を乗り越えて欲しい。記録は破られるためにある」。

32歳のウシクは現在プロ16戦目(全勝12KO)。ダグラスを沈めたときのホリフィールドは28歳で25戦目。

ホリフィールドよりも早いキャリアで、世界ヘビー級王者になる可能性が十分にある。もちろん、ホリフィールドは完全統一王者ダグラスとの1試合で全てのベルトを手に入れたが、ベルトが分散している現在でウシクがそれをするには時間がかかるかもしれない。

ホリフィールドはESPNのインタビューに答えて「彼は史上初めて4つのベルトを腰に巻くクルーザー級王者になった。ヘビー級でも同じことを成し遂げたら〝新記録〟だ。素晴らしい偉業だ」とウシクを讃えます。

さらに「最も大切なことは完全統一、議論する余地のない王者へのこだわりだ。もし私の時代に10団体のベルトが存在していたら、私は10本のベルトを全部獲ろうとしただろう。自分以外に王者を名乗る者を許さない、その気概が一番大切なんだ。ウシクはそれを確かに持っている」と、迷宮に迷い込んだ現在のボクシング界でも目指す本質は何も変わらないと主張している。

まさしく、リアル・ディール(本物)。

「ウシクはヘビー級で失敗する、なんて言う奴らのことは適当に聞いていればいい。確かにサイズの違いは大きい。それはときには絶望的に思えることもあるだろう。それでもウシクは巨人を倒すスピードと技術がある。ボクシングにおいて、高い技術を持った小さなサウスポーは常に最も厄介な相手だ」。

「デオンティ・ワイルダーやアンソニー・ジョシュアの大陸間弾道ミサイルのような爆撃に小さなウシクが耐えられるか?ウシクが自分の距離で戦えば、やつらの長距離砲はウシクには当たらない。当たってもクリーンヒットしない。クロスレンジではウシクの方がはるかに数多くのパンチをまとめることが出来る」。

「一つだけ断っておこう。私もウシクも気まぐれでヘビー級に挑戦しようとしたわけじゃない。デビューした時から何年も構想してきたことだ。頭の中で、数え切れないほどシミュレーションを重ねてきたんだ」。

「ヘビー級は体格だけではなく全てが違う?どうしてそんなことを聞くんだ?まさか、私たちがそんなことも知らずに、ヘビー級に挑もうと思ってたとでも?」。


"Of course, I have this goal to be undisputed as a heavyweight," he said. "But we have to go step by step, from bout to bout."

Just like Holyfield.

「議論する余地のないヘビー級王者になる、目標はそれしかない。それには一歩一歩、1試合1試合を大切に積み重ねなければならない」(ウシク)。

そう、まさにホリフィールドのように。 
 

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クルーザー級は日本人に馴染みが薄いクラスです。

日本のボクシングファンがクルーザー級に憧れたり、華やかだと思い入れることもまずありません。

「全17階級で一番格好いい階級を一つ挙げろ」と聞かれて「クルーザー」と答える人はなんて一人もいないでしょう。



しかし、それに「ヘビー級に挑む」クルーザーという形容詞が修飾されたとしたら……どうでしょうか?