1952年5月19日、4万5000人の大観衆で埋め尽くされた後楽園球場で白井義男がダド・マリノを3-0(146−139/149−145/149−146)のユナニマスデジションで下し、フライ級のUndisputed Championの座を獲得してから67年の歳月が流れました。

1954年11月26日、やはりフルハウスの後楽園球場で白井はパスカル・ペレスに判定で敗れ、日本はチャンピオンベルトを失ってしまいます。

再び日本に世界王座が戻ってくるのは8年後の1962年10月10日、ファイティング原田がタイの英雄ポーン・キングピッチを11ラウンドで攻め落とすまで待たねばなりませんでした。

白井が日本に初めて世界タイトルをもたらしてくれた1952年は、NHKがテレビ放送を開始(1953年2月1日)する前で、街頭テレビが定着するのですら白井が現役時代が終わろうとしていた頃でした。

もし、テレビの普及があと3年早ければ白井の世界戦は、永遠不滅のとんでもない視聴率を叩き出していたでしょう。

テレビは高卒公務員の初任給が5400円の当時、テレビは17万5000円もしたのですから一般家庭に普及するわけもなく「視聴率」などという概念すらありませんでした。

ビデオリサーチが視聴率調査を開始するのは1962年12月3日から。

それから57年間の放送局や番組を超えた〝視聴率PFPベスト10〟(関東地区)が以下です。
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ベスト10のうち7つまでが、スポーツ中継でした。

そして、その7つ全てが〝日の丸が世界と戦う〟大勝負。巨人も大鵬も卵焼きも、ドメスティックなスポーツにはこのランキングに入り込むスキがありませんでした。

実にわかりやすい結果です。

価値の多様化が進み、日の丸への愛着が希薄化していると言われる21世紀で、唯一ランキングされているのがサッカーW杯で戦う日本代表です。

かつて、力道山やファイティング原田、オリンピックとさまざまな種目の「日本代表」に夢を託していた日本人ですが、今ではサッカーの一択に絞られている構図も浮き彫りになっています。

「日本代表」「日の丸」に熱い思いを託すという行為においては、価値の多様化どころかサッカーA代表へ激しく集中寡占しているのです。

そして「日本代表」の先駆けであった力道山のプロレスは、スポーツというステージから完全に退場。

ボクシングは70年代までなんとかかんとか「日本代表」の匂いを発散させていました。

しかし今では、具志堅用高が汗とワセリンで光る顔で君が代を歌っていた、あの当時の香りはほとんど消え去りました。

現在のリングでは「日本代表が国際試合で戦う」という色彩は薄まり、無味無臭になってしまいました。

これは、こういう閉鎖的なブログの中でしか囁くことが出来ない分析でしょうが、観る側の頭が良くなったということです。

「サッカーは世界的なメジャースポーツ。どこの国の代表も命がけで戦ってくる」…その一方で…

「プロレスは八百長。そもそもスポーツじゃない」。「五輪はほんの一部の種目を除いてマイナースポーツの祭典」。

事実上の国技・野球の「ワールドベースボールクラシック(WBC)優勝」も10位に入ることが出来ませんでした。

それは「WBCは米国を筆頭にどこの国も最強チームを編成しないで、日本と韓国だけがムキになっている大会」「ESPNはMLBのオープン戦結果を先に大きく報じている」「WBCは国の威信をかけた真剣勝負じゃない」「MLB主催の世界的なオープン戦」という実態を視聴者も理解しているからでしょう。

ボクシングの現実も、視聴者は少なくとも間接的には見抜いています。
団体と階級の増殖で世界王者が乱立「何がすごいのか、誰が強いのか誰もわからない」。「日本人の世界王者が常時10人前後もいるスポーツってどうなの?」。

そんな、何が本物かわからない怪しいボクシングで「ミドル級は特別なクラス」「ミドル級は世界が注目しているという事実の金看板でスポンサーとファンを集めたのが村田諒太でした。


先日の井上尚弥の快挙も日本代表ではなく〝日本人代表〟〝日本人ボクサー代表〟という色彩でした。

「世界的に注目を集めている」と報道されても、冷静なファンなら「だったらどうして田舎のスコットランドで、マニアじゃないと知らない英国人の前座なんだ?」と訝しがるでしょう。

「本当に世界的に注目されてるなら、モハメド・アリやマイク・タイソンのようにその国のボクサーを前座に従えるんじゃないのか?」と。



そして…勝利を収めて国旗を振り回すには、日本人は年を取り過ぎたのかもしれません。

日本人ボクサーが日の丸を背負う時代は、とうの昔に終わっています。

メキシコ国旗に身を包み「ビバ!メヒコォー!!!」と勝利の雄叫びをあげるカネロ・アルバレス、「フィリピンのために戦った。この勝利はフィリピンの勝利だ」と胸を張るマニー・パッキャオは、今の日本人には共感出来ない異界のヒーローです。

村田に「ミドル級征服」という最も明るいスポットライトが当たる舞台で主人公になることを期待し、井上には地味な階級でも傑出したパフォーマンスで「PFP1位」という実を取って欲しい…ボクシングファンの目は、サッカー日本代表を絶叫応援する熱狂的サポーターとは違い、非常に冷ややかです。

村田も井上も現状では〝視聴率PFP〟にその名を刻む日は訪れないでしょう。

しかし、 もしかしたら魔法のスパイスをふりかければ〝視聴率PFP〟に食い込んでくる可能性は十分にあります。

それは「米国がようやく注目し始めるクラス、ライト級で無双しろ 」とか「カネロとGGGをノックアウトしろ」という難題ではありません。もっと簡単なことです。

次回はボクシング中継の高視聴率ベスト10から、このスポーツがサッカー日本代表以上に注目される可能性を探っていきます。