6月13日(月)軽量級の聖地・後楽園ホール IBF世界フライ級タイトルマッチ 


2008年、当時IBFフライ級王者だったノニト・ドネアへの挑戦を6ラウンドで粉砕されたムザラネですが、以来11年間にわたり14連勝。

18歳でデビュー、それから20年に及ぶキャリアで黒星は、11年前のドネア戦と15年前の南アフリカフライ級戦で喫した二つだけ。

南アフリカ史上最高のトレーナー、ニック・デュラントが最も高い評価を与えていたのがムザラネです。

「モルティの背があと10㎝高かったらメイウェザーは無敗じゃなかっただろう」。

そのデュラントは2年前の4月にバイク事故でこの世を去ってしまいます。

そのあとを継いだのが、コリン・ネイサン。

ネイサンは「ニックはモルティがもう一度世界王者になると信じて疑わなかったが、昨年7月の再戴冠を見ることが出来なかった。それをモルティは今でも『私がもっと頑張っていたらもっと早く世界戦が出来たのに』と悔やんでいる」と名匠を悼みます。

身長159㎝(リーチ164㎝)のムザラネからベルトを奪わんとする黒田は167㎝(171㎝)。

前日計量を111.5ポンドでクリアしたムラザネは、デニーズで大盛スパゲッティを平らげた後にリング誌のインタビューに答えて「背の高い相手はずっと得意にしてきた。黒田の身長は全く問題ない」と自信を見せました。

ーー黒田は「ムザラネは特別な武器を持っていないからやりやすい。特別な作戦はないと言っているが?

「彼の考えと作戦について私は何も言うことはない。自分がコントロールできることだけに集中する」。

ーー初めて東京で戦う、それも軽量級の歴史的なメッカ後楽園ホールだが?

「後楽園ホールのことを知って、ものすごく興奮している。軽量級に詳しいボクシングファンを喜ばせることが出来たら最高だ」。

ーー東京の次はどこで戦いたい?

「今は目の前の試合に集中しているが、どこかと聞かれたら英国だ」。

ーーWBC王者チャーリー・エドワーズですね?次は統一戦?

「先のことは考えない。ただ、タイトルを奪った試合でエドワーズが私との対戦を希望したのは聞いた。英国で統一戦が出来たら嬉しいが、明日の夜黒田に負けたら全てが吹っ飛んでしまう。今の私にとって黒田戦よりも大切な試合はない」。



実は、このムザラネへのインタビューでは二つのタブーがありました。

事故死したデュラントと、2ヶ月前に生後5ヶ月で亡くなったムザラネの娘の話です。

ネイサンは「大切な人を失って私もチームも傷ついている。この悲しみは何をもってしても埋めることなど出来ないが、モルティが勝利することは少しの慰めと、二人へのプレゼントにもなる。だから彼は絶対に負けるわけにはいかないんだよ」と下を向いたまま、誰かに言い聞かせるように語りました。

来日してからの公開練習では、ネイサンの指示でムザラネがずっとサウスポーでスパーリングを続けるなど、圧倒的有利と見られている王者陣営に油断や余裕は見られません。

ネイサンは「油断?それはデュラントが一番嫌う態度だ。数え切れないボクサーが油断して破綻してきた。そして何よりも油断は対戦相手への侮辱だ。私たちは黒田を最大に尊敬している」と真剣な目を向けてきました。



リングに上がる誰にでも、絶対に負けられない理由の一つや二つがあります。

黒田もこの大試合が決まってからも週5日、コンビニエンスストアでの早朝アルバイトをしばらく続けてきました。

昨日の計量後(111.7ポンドでパス)も「バイトからそのままリングに上がりたい」と平常心で挑むと意気込みを語っています(さすがにバイトには行かないようですが)。

2005年デビューから足掛け14年。世界戦での1敗(2013年2月27日等々力アリーナ:WBA王者ファン・カルロス・レベコ戦0−3判定負け)を含む7つの敗北に倒れながらも32歳の今日までリングにしがみついてきた黒田。

デニーズで食事する36歳の世界チャンピオンに、コンビニで早朝バイトに励む32歳。

誰が聞いたってどっちも応援したくなりますが、リングで勝ち名乗りを受けるのは一人だけです。